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チャレンジスクールで新たに誕生したeスポーツ同好会 生徒の熱意で半月で立ち上げ

【高校eスポーツ探訪・7】
 東京都内に5校存在する“チャレンジスクール”。そのうちの1校である大江戸高等学校で新たにeスポーツ同好会が立ち上がりました。生徒の声をきっかけにその輪は徐々に広がり、現在では部員数7人まで拡大しています。顧問の池尻啓輔先生と部員たちに話を聞いてみると、eスポーツをきっかけに生徒が将来を考え、それに大人たちが応える様子が浮かび上がってきました。

 

学校の文化が支える生徒の挑戦

池尻先生

 

――恥ずかしながら、チャレンジスクールという存在を初めてお聞きしました。どのような学校なのでしょうか。

池尻先生(以下、人名は初出以降敬称略) 簡単に言うと3部制の総合高校です。まずベースとなる4時間単位の1部・2部・3部があって、そこにプラスアルファとして他部と呼ばれる時間割を自由に取捨選択できる制度をとっています。学校全体としては朝9時から夜9時までの12時間授業をしていることになりますね。

――学校の特色として「挑戦」を掲げているとか。

池尻 そうですね、もともとチャレンジスクールというのがいわゆる不登校の子どもたちの支援を目的として東京都がつくった学校なんです。最大の特徴は、入試において学力を用いた試験がないというところで、作文と面接の二つで合否が決まります。小中学校までの学力を問わず、みんなのこれからの挑戦をサポートしていくよ、という学校になります。

――確かに小中学校で学力の差だけで物事を決めてしまうと、彼らの可能性を狭めてしまいます。そういった課題もフォローしていく学校なんですね。

池尻 そうです。

――今回、eスポーツ同好会を立ち上げられたとのことですが、その前に先生ご自身についてうかがいたいです。年齢やeスポーツ、ゲームに対するお考えをお聞きしてもいいですか。

池尻 今年で33歳になります。私自身はいわゆるオタクで、アニメや漫画はもちろん、ゲームもよく楽しんでいます。現在はフォートナイトやAPEX(Apex Legends)を個人的にやっています。小さい頃からポケモンなどをプレーしていて、世間的にはその頃からちょっとずつゲームが認知され始めてきていたと思います。風当たりの強さはあまり感じませんでしたね。

――そうなんですね。eスポーツ同好会を立ち上げるにあたっては、そういったゲーム好きな部分があったのでしょうか。

池尻 もともとパソコン部自体がなかったので、eスポーツ部をつくりたいというよりも、eスポーツも含めたパソコン系の部活をつくりたいという思いがありました。ただ、今回に関しては私ではなく、生徒から設立したいという要望があり、顧問をやってくれませんか、と相談があったので、それを引き受けた形です。

――生徒からですか。何かきっかけはあったんですか。

池尻 そうですね。(教室内のSTAGE:0のポスターを指さして)うちではこういったポスターを貼っているんですが、それを見た生徒から「部活はないの?」って聞かれまして、「そりゃあ、誰もつくってないからないよ」って話をして(笑)。そこから、じゃあ、つくるかみたいな。

――確かに身近に情報があると興味を持ちますよね。設立自体はどういったスケジュールで進んだのでしょうか。

池尻 立ち上げ自体は今年の7月の頭に申請して、中旬には認められた感じです。

――かなりスピード感がありますね。

池尻 そうですね。通常であれば生徒総会を通さないと同好会の設立はできないため時間がかかるんですが、ちょうど学校行事ができないとか、ごたごたしていた時期でしたから。すんなり通すことができました。ただ、通常通り生徒総会が開かれたとしても通っていたとは思います。もともと、うちの学校の特性上、新しいことに対して、強く否定するような雰囲気はないですから。それに、うちの生徒の中にはゲームが好きな子が多い、というのも先生の間では認知されていますので、ようやく要望に合わせたものが完成したという感じです。

――チャレンジスクールの特色が反映されていますね。設立にあたって苦労されたことはありますか。

池尻 eスポーツ部というよりも、パコン系の部活をつくるつもりだったので、機材の用意が大きなハードルでした。ゲーミングPCの準備では予算を出したりしていたんですが、昨今のグラフィックボード不足の影響で、パソコン自体は用意できてもグラボはない、という厳しい状況が続いています。

――環境の整備はどの学校も苦労されているようですが、予算以外にも市場的な背景があるんですね。

池尻 そうですね。あとは、東京都の場合ですとパソコンを購入すること自体が、手続きなどの関係で難しいということもあると思います。私たちの場合ですと、既存のものをバージョンアップさせる形で対応しています。一部のパソコンは授業で組み上げたものなんです。

――パソコンを組み立てる授業があるんですか。

池尻 うちでは2D/3Dにかかわらずコンピューターグラフィックスについて学ぶ授業があるんですけど、その一環としてVRコンテンツをつくるカリキュラムがあるんです。そうするとVRが動くパソコンが必要になるので、それを授業用に組み立てたんです。

――VRが動くとなるとゲームソフトも問題なく動作しそうですね。

池尻 そうですね。ですが、現状では全てのパソコンを合わせても、1チーム分はあるけど全員は同時にできないという状況で、やはりこの機材不足が一番の問題だと感じています。(注:11月17日現在、ようやくグラフィックボードを購入できたとか)

――現在の主な活動について、うかがいます。主に練習しているタイトルはなんでしょうか。

池尻 APEXをやっています。あと、フォートナイトやフォールガイズとかですね。

――高校生の部活でAPEXというのは珍しいように感じます。メインの練習タイトルとして選んだ理由はあるんですか。

池尻 うちの場合、設立したタイミングとしても大会に向けて練習というよりも、まずは“できるゲーム”をやっていこうという方針になりました。部員たちがそれぞれでやっていたゲームを中心に始めた形です。大会ありきではなく、まずは部としての形をつくることが大切ですから、しっかりと集まって練習するとか、それぞれの環境にいてもちゃんとコミュニケーションが取れるということを優先させている感じですね。

――それで生徒がなじみ深いタイトルを選択されているんですね。活動において、今後生徒たちに学んでほしいことなどはありますか。

池尻 まずはコミュニケーションやチームワークなど、eスポーツによって身につけられる部分に取り組んでほしいというのはもちろんあります。単純にゲームとして楽しいだけでなく、戦略などの部分ですね。それと同時に勉強との両立については設立当初からずっと話をしていますね。

――その部分は保護者も気にされているかもしれませんね。具体的に施策は用意されているんでしょうか。

池尻 現状ではそこまでルールを定めているわけではありませんが、「ゲームを優先して学校に遅刻したりということはないようにしようね」といったことは共通認識としています。今後、活動を広げていく中で、例えば成績などを見ながら、場合によっては面談も実施する、こういった対応も考えています。

――生徒との会話を密に取りつつサポートしていくわけですね。続いてですが、活動における目標はありますか。

池尻 先ほどとは矛盾するかもしれませんが大会への出場でしょうか。

――確かにせっかく部活としてチームで活動できるのであれば、大会には参加したいですよね。

池尻 今はまだ1年目なので、環境を整えていく時期だと思っていますが、それでも1個でも大会に出られればと考えています。将来的にAPEXなどの大会には積極的に参加してもらえたらと。フォールガイズとかも、今年のSTAGE:0で競技タイトルとして採用されていますし、全国大会なども期待しています。

――これから生徒たちがいろんな大会に出場して、活躍していく姿を想像すると楽しみですね。

池尻 そうですね。

生徒に聞く同好会の今と未来

(左から)井坂君、徳永君、門間君

 

――まずは自己紹介をお願いします。学年とよくやっている普段プレーしているゲームなどを教えてください。

門間君 部長で2年の門間です。普段はAPEXとかをPCでプレーしていて配信もしています。

徳永君 2年の徳永です。普段はスマホゲームや大乱闘スマッシュブラザーズをやっています。

岡田さん 3年の岡田です。兄の影響で昔からゲームをやっていて、最近はフォールガイズや、スマホのソシャゲとかをやっています。

井坂君 2年の井坂です。物心ついたときからゲームはやっていて、今はポケットモンスターを遊んでいます。

 

岡田さん

 

――同好会の立ち上げは生徒さんから持ち上がったとお聞きしていますが、どなたが声をあげたのでしょうか。また、なぜ立ち上げようと思ったんでしょうか。

徳永 僕です。もともと、ずっと大会に出てみたいなという気持ちが自分の中にあって、それがきっかけでした。以前からYouTubeでスマブラの大会をよく見ていて、興味を持ったんです。

――確かに、大会に出場するというと有志ではメンバー集めが大変だったりしますよね。ちなみに、他の方はどういった経緯で参加したのでしょうか。

門間 メンバー探しをしたのは僕です。徳永君が声をあげて僕が計画する、という感じで2人で立ち上げました。今では7人が在籍しているんですが、設立した当初は僕と徳永君と井坂君とあと一人の4人で、岡田さんたちは後から入った感じです。

――そうなんですね。井坂君としては最初、eスポーツ同好会に誘われた時はどう思いましたか。

井坂 新しい同好会で不安もあったんですが、やっぱり大好きなゲームをできるっていうのがあって、一度頑張ってみようと思いました。

――自分が大好きなものを趣味としてだけじゃなくて、学校でもできるのはうれしいですよね。岡田さんはどんな経緯で入ったのでしょうか。

岡田 前々からeスポーツには興味があったんですけど、大会に出るまでは考えていませんでした。ただ、いつもパソコン室に集まっているeスポーツ同好会の姿を見ていて……。興味がある人は来てくださいっていう同好会の張り紙を見つけてから、やっと一歩を踏み出せた感じです。あと、そもそも同好会自体が珍しいので、どう広がっていくのかにも興味がありましたね。

――なるほど、人が集まって楽しそうにしている様子は確かに気になってしまいます。周囲の反応についてはどうでしょうか。

門間 同級生とかには、びっくりされましたね。eスポーツ同好会自体に対する驚きと、新しい同好会を立ち上げたことに対する驚きのどちらの意味でもびっくりしていたと思います。

徳永 学校でゲームをやるってことを意外に感じているところもあるとは思いますが、最近いろんな学校でeスポーツ部が立ち上がっていることを多分知っていて、「ついにうちにもできたか」みたいな反応だと思います。

――保護者さんからはどうでしょうか。応援されたり、逆に反対されたりとかはありましたか。

徳永 全く何も言われませんでした。

全員 (笑)

――全くですか。皆さんそれぞれ何もなかったんですか。

門間 はい、もともと家族が結構ゲームをやる人だったので。

徳永 僕も、家族からは普通に自分がやりたいことをやればいいと言われました。

――最近になると、保護者の世代も理解がある方が多いのかもしれませんね。部活動の中で、目指している目標などはありますか。

門間 とりあえずは大会とかで結果を残してみたいよね。

全員 そうだね

門間 一応、現状はAPEXの大会で実績を残すことが目標になると思います。

――チームワークが問われるタイトルですが、練習とかはどうですか。

門間 できたばかりなのであまり練習はできてなくて……。個人がそれぞれで練習している感じです(注:11月現在、毎週火・木曜日に2時間弱の練習を行っている)。

井坂 ただ、やっぱり部員同士でのコミュニケーションは少なからずとっていて、お互いの実力なんかは何となくわかっている感じです。

――そもそも、機材が足りていない状況とのことでしたし、ここは難しいところですね。ちなみに池尻先生もAPEXをプレーされていたそうですが、先生は強そうですか。

全員 あー(笑)。

門間 まあ、結構いろんな知識があるから、立ち回りとかがうまそうだと思います。

――監督やコーチみたいなアドバイスもしてもらえそうですか。

岡田 してくれる……かな?(笑)

――先生との関係も楽しみなところですね(笑)。今後、部活を通じていろんな経験をされると思いますが、どんなことを学びたいと思いますか。

門間 なんというか、ゲームを通じて、高校卒業後の実社会で役立つ力を身につけられたらいいな、とは思っています。

――なるほど、この中には将来ゲームに関連した仕事につきたいと考えている人はいますか。

徳永 僕はゲームを制作したり、配信したり、そういった活動が将来できるようになりたいと思っています。

岡田 私はゲームプログラマーを目指していて、そのために専門学校に行く準備を進めたりしています。

――配信者とプログラマーですか!幅が広い分野ですが、実際に競技としてゲームをプレーする経験はどちらの領域でも生きてきそうですね。

――最後に、これから部活を大きくしていくにあたって、部員数や特色など、どういう部活にしていきたいといったビジョンはありますか。

井坂 人数は増やしたいですけど、あんまり増えすぎても大変なので……。

門間 そうだね、今後のことを考えると10人くらいは欲しいかな……。あとは機材が足りていないのも解消したいと思っています。

――やっぱり人数分のパソコンをそろえて、リアルで集まってやりたいですよね。

門間 そうですね。ただ、一方で、同好会を立ち上げたとき、先生に対してeスポーツ同好会のプレゼンみたいなことをしたんですけど、「コロナ禍だからこそオンラインでもできる」ってことを説明したんです。今の世の中ならではの部活でもありたいとは思っています。

――なるほど。リアルとオンラインの両方を大切にするということですね。

門間 はい。あとは和気あいあいと楽しく、真剣にやっていきたいと思います。

――本来の部活動のあるべき姿ですね!今日はお時間ありがとうございました。

 

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