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「ゲームセンター生まれ」のゲシピ真鍋社長が語る、eスポーツジムの狙い

ゲシピの真鍋拓也社長

 東京メトロ南北線・赤羽岩淵駅三番出口の脇、地下からの階段を地上まで登った出口の同じ建物右側に、ゲシピが東京メトロとの協業で運営する「eスポーツジム」があります。人が集まってゲームができる場所というと、思い起こされるのはゲームセンター。通常は賑やかな繁華街の一角で広く大きな建物のイメージです。しかしこの周辺は赤羽を貫くメインストリート・北本通り沿い。駅徒歩0分の便利な立地ではあるものの、周辺にはマンションや一戸建ての住宅が建ち並ぶ住宅街です。あたりには主婦が自転車にチャイルドシートを前後に二つ付けて行き来したりするような場所になっています。

 “ゲーマー”の雰囲気のカケラもない、と言っても過言ではありません。建物も地下鉄の出口の建屋部分で、保育所や会計事務所という雰囲気のサイズ。また広い窓からのぞく内部のムードもゲームセンターのイメージとは大きくかけ離れた明るい雰囲気です。なぜここに? なぜこのサイズで? なぜこの雰囲気? そんな疑問がつきまといます。その背景には「ゲームセンター生まれ」と自らを語るゲシピ社長 真鍋拓也氏の人生観やビジネスに賭ける熱い情熱がありました。今回は、真鍋氏にeスポーツジムへの思いを語って頂きました。

「ゲームセンターで育った」と語る真鍋氏

── まずは「eスポーツジム」の特徴についてお聞かせください。

真鍋社長(以下、敬称略) 10台前後のゲーミングPCを設置できる広さと対面でのレッスン、この2点が目指すサービスの根幹と言えます。最大の特徴はコーチが実際にジムにいることですね。そしてここで実際にレッスンを受けることができる。仕組みとしてはオンラインでも出来ますが、やはりこの場で受けることによって、伝わるものが全く異なります。

 ゲームは実際のところ手の動きなので、オンラインではその辺が伝わりにくいのです。Webカメラでやろうと思えばできますが、しっかりと横について見るのとは違いますよね。ゲームセンターで上級者の手元を見ながら技を盗んでいた経験から、もっと効率よく強くなるための手段として、「ジム」を立ち上げました。


── eスポーツ施設というと、これまでは賑やかな街の中にオープンするケースが目立ちました。「eスポーツジム」は赤羽岩淵という住宅地にありますが、どのような理由があるのでしょうか。

真鍋 「ゲームで遊ぶ場所」という意味では、私の地元でもそうでしたが、地域のゲームセンターって小さいところはこのぐらいの感じですよね。

 私がゲームセンターに入り浸っていた当時、『ストリートファイター2』が大流行していました。ゲームセンターにはいわゆる「ストツー好き」が集まってくるわけです。年齢も性別もばらばら。お互いのプライベートに深入りしない。本名も本業もお互い知らないけれど、何となく名前と年齢は知っていて、ゲームを接点に熱く語り合って切磋琢磨して仲間意識が芽生えてくる、という雰囲気です。

 私自身もそこで育てられました。そして、そこで生まれた人の輪は社会にとってとても価値あるものだと思うのです。いまゲームセンターは減ってしまって、ゲーム対戦はオンラインに移り変わりつつあります。ボイスチャットで遠くの人と繋がることはできますが、”あの感じ”のものはオンラインにはありません。

 そうであるなら、eスポーツでもゲームセンターのようにローカライズされたコミュニティー、学び場、「寺子屋」というのか、そういう場を数多く創っていきたいのです。東京中から人が集まるような巨大施設ではなく、赤羽のこの街の人と南北線沿いから人が集まってくれば、ということで開設します。

“ゲームセンター”とは印象が異なるeスポーツジム

── ゲームセンターと比較すると、控えめな印象があります。このサイズ感にも何か狙いが。

真鍋 一番重視しているのが規模感です。たとえばゲーミングPCが100台、200台という規模は目指していません。10台前後の規模感で、地元の人が気兼ねなく集まれるようなコミュティーを作っていきたいと考えているからです。広過ぎると、他の人と話そうという気にはならないですよね。同じ場所にいると感じられる広さ、そういう規模感を大切にしたい。そしてそういう場を各所につくっていきたいという思いがあります。

 イメージとしてはフィットネスジムのeスポーツ版。我々にとってゲーミングPCとは、フィットネスジムにおけるランニングマシンであり、筋トレマシンです。月額料金の範囲で自由に使っていただく。かつ人によっては筋肉を付けたいのか、エアロビを覚えたいのか、ヨガで精神統一をしたいのか、いろいろ目的があります。そのように、ここでは『VALORANT』や『リーグ・オブ・レジェンド(以下、LoL)』など、ユーザーごとに目的が異なるので、それに合わせてレッスンをチョイスする仕組みです。そこが「eスポーツジム」と言っている背景です。


── ということは、さまざまなユーザーが訪れるかもしれませんね。

真鍋 超初心者からプロ志望の方まで幅広く想定しています。レッスンもそのような形で準備しています。「アカウントの作り方がわかりません」という方についてはチュートリアルの段階から説明します。また「プロ特化コース」もあります。プロチームの選手に月2回教えてもらえるプログラムです。しかもそのチームが3カ月に1回トライアウトをしているので、それも受けることができます。合格するにはどうすればいいかトレーニングしてもらうことができる、という内容ですね。

 メインのターゲットは大学生や若い社会人の方ぐらいの年齢が中心かなと考えております。学生や社会人の方もサークルとか部活などに参加されているケースも増えてきて、全国大会などがどんどん増えてきている状況ですので、良い成績を狙いたいとか、せめて1回戦を突破したいとか、そういう人たちをメインにコミュニティーが生まれてほしいところですね。


── 現状、プロの方の指導が前提ですが、今後プロではない、普通にゲームに習熟された方が指導するケースはあるのでしょうか。

真鍋 あると思います。超初心者のチュートリアルにプロのゲームの腕前が必要か、というとそうではなくて、むしろかみ砕いて分かりやすくという点が重要だと思います。そういう場合、講師の資質としてコミュニティーの中核になるような人柄が大切ですかね。


── ゲームセンターの“ヌシ”のような?

真鍋 そうです!そうです! そういう感じです。「あの人に教わるとめっちゃ分かりやすいよね」といった展開を多く作れるよう、体制を整えていきます。


── ゲームセンターのコミュニティを再現されるとのことでしたが、一つ気になる点があります。ひと昔前は、その場独自の暗黙の作法があるというか、少し閉鎖的なイメージがありましたが、いかがでしょう。


真鍋 確かに“暗黙のルール”のようなもがありました。ただ、そういった雰囲気はeスポーツの門戸を広げるハードルになるので、払拭していきます。そのために、常駐のスタッフは“コミュニティーマネージャー”と位置づけました。

 スタッフの仕事は、受付業務や利用条件の説明、機器のトラブル対応だけではありません。「LoLのランクがプラチナで止まっている」「仲間が欲しい」などのお悩みにも積極的にお応えします。仲間が欲しい場合は「他の曜日に来ているユーザーで面白い人がいるんですけど来てみませんか?」や「そのゲームのその悩みだったらあのチームのあのコーチがオススメですよ」などのサポートですね。既存のユーザーはもちろん、初訪問の方が雰囲気に馴染めるような環境を作り上げていきます。


── ジムでも、誰に何を聞いたら良いか分からない、なんてことありますよね。

真鍋 そうです! なので、そういう悩みの解決や人の輪の媒介となるような人が常駐するわけですね。そしてそのスタッフも初心者のゲームの指導ができるレベルです。昔のゲームセンターでも、ゲームをプレーしている店員がよくいて、その人と雑談をする中で他のお客さんを紹介しもらい、「1回対戦してみなよ」なんてことがよくありました。そういう感じですね。


── そうなるとスタッフの方もゲームのスキルが問われるわけですね。

真鍋 そうですね。ただ、ゲームの腕前というよりも人と話をしていろいろな人の輪を作っていくのが好きな人であってほしいと思っています。ゲームセンターのコミュニティーも初心者が何も知らずに入るのはハードルが高かったですよね。そういう補助してくれる人がいるのは心強いですよね。特定の人だけで集まってしまい、その中でマウントを取られてしまうと、他の人にとってはとても居心地の悪い場所になっていってしまいます。そうではなくて、たとえばお子さん連れのお母さんが「お姉ちゃんといっしょにあそんでなさい」なんてできる場であって欲しいですね。


── では、地元の方がふらっと来て、説明を受けるということは可能なのでしょうか?

真鍋 もちろん大丈夫です。そのために無料エリアに受付とゲーミングPCを設け、どのような場所なのか説明する仕組みを作りました。段差の向こうは有料エリアですが、外からでも少し覗き見ることができます。

柔らかい雰囲気の休憩スペース

── 窓の外から見ると“ラウンジ”のような雰囲気ですね。eスポーツ施設は画面に集中できるようにする、という意味でも室内を暗くするケースがありますが、そういった演出とはまた違った方向性ということでしょうか。

真鍋 そうですね。私もゲームセンター生まれで、愛していますが、外からゲームセンターを見たとき、イメージが良くないのを知っています。暗くてキラキラしていますけど、現実、周囲からのイメージはあまり良くありません。

 私たちがつくるのは「教育施設」ですから、これまでのゲームセンターのイメージとは変えていきたい、と考えています。店舗のデザインを決める段階で、そのあたりは細かく吟味しています。窓ガラスがきちんとあって、中もゲームセンターというより最近のコワーキングスペースなど誰が見ても清潔感があって、落ち着けるような場所ということですね。

 室内を見ていただくとゲーミングスペースが一段高くなっています。こちらの空間が有料とわかるようにするための工夫です。フリーエリアにも2台だけゲーミングPCがありますが、基本はレストスペースとしてオープンでフリーな場所と考えています。地元の方がふらっとお越しいただいて見学していただいてもかまいませんし、極端な話、お子さんがNintendo Switchを持ってきて、Wi-Fiに繋いでいただいて練習するのもかまいません。カーテンも日差しを遮るために付けてあるだけです。基本は丸見えで、外から何をしているか分かる状態です。


── 「ジム」であるってことですね。

真鍋 ですね、ジム、教育施設であると。かといって教育施設でも「塾」のようにきまじめで良いか、というとそうではなくて、そこの微妙な感覚を打ち出していきたいです。今回は内装設計もアパレル・洋服屋さんとか、セレクトショップに強い業者にお願いしまして、木目調で落ち着いた雰囲気のつくりになりました。


── ゲームタイトルの選定基準はありますか。

真鍋 『VALORANT』、『LoL』、『レインボーシックス シージ』、『Identity V』、『ぷよぷよ』ですね。国内だけではなく、海外でも大きな大会があるようなタイトルを基本選んでおります。ゲーム会社にも許諾を取っております。しっかりと連携して、きちんと海外も視野に入れた市場を一緒につくっていく、というところを重視しています。


── 今後、タイトルや提携されるチームを増やされると言うことはありますか。

真鍋 もちろんあります。まずは今回スタートとして、このタイトルと「Crest Gaming」というコーチ陣というところです。


── 料金設定の基準などをうかがえれば。

真鍋 料金設定は結構難しいテーマでした。まず、メインとしては月額制にしたいというのはありました。一方で席/1時間いくらという考え方もあると思うのですが、安定的な教育コンテンツを提供して生徒の方も安心して練習に打ち込める場所と時間を提供するには、やはり月額制が一番良いのかなと。ただ、「まずはちょっとやってみたい」というニーズに応えるためにも、都度会員の制度を設け時間単位の利用も可能にしました。ユーザーが継続的にやって行こう、ステップアップしていこうというニーズとの適合性と価格そのもののバランスでこういう形になったわけです。

 月額料金の金額は、レッスンを月に2回ほど受けて頂くことに加え、その日はそのまま施設を使っていただくと想定して1カ月1万円前後になるよう調整しました。レッスン後にそのまま仲間と共有し合うことも出来ますし、仲間そのものをここで探すことができます。また、レッスンが無い日も施設は使い放題です。オンラインだと家で教わりレッスンが終わったところで終了になるので、オフラインの強みですね。「学び」というものが次のアクションに連鎖していく、そこが大きくオンラインと違うのかなと思っています。


── オンラインゲームのゴールデンタイムと言えば22時くらいからですが、営業時間はどのように決めたのでしょうか。

真鍋 平日が15時から22時。土日祝日が11時から23時です。メインになる時間帯は社会人でしたら19時くらいから、大学生であれば17時くらいからという感じでしょうか。塾とか英会話教室と同じ時間帯で設定しています。そういったところと並べてユーザーに考えて頂けるように、と考えました。現在は全て予約制ですが、都度利用で予約してそのままお越し頂くことは可能です。ただ、予約を入れずに来店してすぐプレイ、はPCの空きがないこともあるかもしれないので、ちょっと難しいかもしれません。

── オープン記念で無料キャンペーンもされるそうですね。

真鍋 本当はゴールデンウィークにここを無料開放してコーチも常駐して無料トレーニングをやる予定だったのですが、緊急事態宣言になってしまいまして、いったん中止にさせていただきました。現在は登録会員限定で無料のオンラインコーチングイベントを実施しています。今後、コロナ禍が落ち着きましたら、土日にeスポーツジムを無料開放するなども検討していきたいと思います。そのときはぜひ、みなさまにお越しいただきたいですね。