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「eスポーツな人」第3回 久保田裕「IP教育は世界で戦うときに必ず役に立つ」

 長年、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)でITソフトウェアの著作権保護に携わってきた久保田専務理事は、日本eスポーツ連合(JeSU)のコンプライアンス委員会の委員としても活動しています。eスポーツやゲーム実況に携わる場合、著作権や知的財産(IP)の教育は大人だけでなく、これから社会に出て活躍する学生が、世界で戦うときに必ず役に立つ身に付けておくべき知識だといいます。

取材・文/細田 立圭志 写真/南雲 亮平

コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の久保田裕専務理事

根っこにあるのは「知的財産(IP)」への理解

―― 日本eスポーツ連合(JeSU)のコンプライアンス委員会の委員として、eスポーツとどのように関わるのでしょうか。

久保田裕専務理事(以下、敬称略) ゲーム配信の分野ではまだ著作権のグレーゾーンが多いです。著作権や知的財産(IP)の存在を知っていても、どこを超えたら違法で、どこまでなら安全か、グレーにしないために契約や標準化をどのようにすればいいかなど、具体的なことをサジェストできる人は少ないと思います。ですので、ACCSとしてサポートできることは多いと考えています。eスポーツで活躍する子どもたち、それをコーディネートする先生たちが、著作権やIPを理解せずに関わってしまったら、大変なことになりますから。

―― この領域でeスポーツ業界でも抑えておくべきポイントは多いですね。

久保田 メーカーが使用許諾のガイドラインをつくったり、個別の問い合わせに対応してくれたりしますが、大きな視点から見れば、やはりJeSUがeスポーツを代表する団体として、こうしたことを理解しておくことは大切です。根っこにある一番大切なことはIPです。ゲームソフトという著作物です。上手なプレイヤーが生まれようが、広告代理店がどんなに大規模な大会を仕切ろうが、IPがしっかりしていないとeスポーツの文化やビジネスそのものが崩れてしまいます。JeSUがIPの守護者として、どっしりと構える存在になることは重要ではないでしょうか。

―― eスポーツ業界を支える大人たちが理解する必要性はわかりますが、生徒たちも理解する必要性があるのはなぜですか。

久保田 既にわれわれは高度なネットワーク情報化社会の中で生きています。これからの子どもたちが、こうした社会に参画するときに、著作権やIP教育を受けてないと困ってしまうからです。

 具体的には、eスポーツのプレイヤーだった生徒さんが、社会に出たらゲームタイトルをつくるプログラマーになるかもしれません。あるいは、eスポーツの大会を統括するプロデューサーになるかもしれません。そのプロデューサーが、映画監督のように白熱するeスポーツのシーンをどのようにカット割りするかというときに、すべてが著作権保護の対象になるわけです。そこで使われる素材は、すべてもともとゲームソフトメーカーの素材、コンテンツなわけです。子どもたちがeスポーツを楽しみながら著作権やIPについて学習しておけば、将来、プログラマーやプロデューサーになっても、面白いアイデアを企画に活かしたり、サービスを開発したりするときにきっと役立つはずです。

 

「子どもたちが社会に出て活躍するときに著作権やIPの知識は役に立つはず」

教育を受けることで将来の活躍の場が広がる

―― 土壌を整えるためにも教育が大切になってきますね。

久保田 国民全員が情報化社会への意識が高く、そうした教育を受けていたら、違法なコピーなんかしませんよね。なぜなら、今後のビジネスで自分が活躍するフィールドや、世界に打って出る可能性の芽を、自分自身で摘み取っていることと同じですから。契約社会に必要な知識や情報化社会に適合した子どもたちがどんどん社会に出てくると、クリエイティブな分野でグローバルで戦っていけるはずです。

―― 確かに、世界で戦うときにも身に付けておかなければいけませんね。

久保田 eスポーツも、こうした大きな流れの中でとらえておかなければいけません。根っこがしっかりしてないところで、とにかく儲かればいい、得をすればいいという考えだけでやっていると必然的に違法行為は起こります。違法行為が起きる背景の一つに、著作権が多少気になっていても、何が合法か違法かを知らず、違法にならないためにどうすればいいのかがわかっていないことがあります。つまり、教育をしっかりと受けていないと、違法行為が起きる可能性は高まってしまいます。

「著作権法とライセンスビジネスは表裏一体の関係にある」

―― 現状、違法行為を避けるにはどうすればいいのでしょうか。

久保田 しっかりとライセンスをもらうことです。違法コピーって何?と聞かれれば、著作者や著作権者に許諾をとらずにコピーすることです。つまり「許諾をとること」「ライセンスを取得すること」が必要なのです。このように、著作権法とライセンスビジネスの成り立ちは切っても切り離せない表裏一体の関係にあるのです。

 昔話を一つすると、今、eスポーツが世界を席巻していますが、日本にPCが入ってきたばかりの頃は、あまりにコピーがひどかったので任天堂がチップで守ったという歴史があります。それにより、任天堂の8ビットのファミコンに、PCゲームをつくっていた数多くのクリエイターが移ってきたのです。つくってもつくってもコピーされたら、クリエイターのビジネスは成り立たないからです。その後、ソニーが対抗馬としてプレイステーションを出すという歴史になりますが、いずれにしても著作権やIPの問題が絡んでいます。

―― 最後に、コロナ禍でなかなかリアルで教えることが難しくなっていますが、どのようにして教育の輪を広げていきますか。

久保田 私は少し楽観的に見ています。ネットワーク社会なので、例えばわれわれがリテラシーに必要なツールをつくれば、ネットワークを通じた教育で広く普及していくでしょうし、そのスピードはこれまでのリアルでコツコツと教育しながら普及させてきた動きより、ずっと早くなると期待しています。

(了)

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