BCN eスポーツ部 高校eスポーツを応援するニュースサイト

MENU

NASEF本部代表が語る、教材にゲームを選んだ理由 「eスポーツで教育を広く届ける」

 「勉強嫌いだけど、ゲームなら大好き!」な人は、むしろ勉強に向いているかもしれません。一見、矛盾しているように思われますが、ゲームをプレーすること自体が勉強になるとしたらどうでしょう。

 2022年8月にNPO法人化した北米教育eスポーツ連盟 日本本部(NASEF JAPAN)が力を入れるのは、競技としてゲームを楽しむ「eスポーツ」を使った教育です。土台としているのは、米国のNASEF本部が整えた1000ページ以上のカリキュラム。なぜ、遊びとされてきたゲームを教育に取り入れようと考えたのでしょうか。米国NASEF本部の代表を務めるジェラルド・ソロモン氏に話をうかがいました。(取材・文/南雲 亮平)

 

NASEFのジェラルド・ソロモン代表

 

── “遊び”とされてきたゲームを教育に取り入れようと考えたのは、どのような経緯からでしょうか。

ジェラルド・ソロモン氏(以下、敬称略) そのことについてお話するために、まず私のこれまでの経緯をお話します。私はもともと社会福祉の活動に携わっていました。学生向けに、働くためのITスキル育成プログラムを考えて、教育する仕事です。アメリカだけでなく、全世界でそういった仕事をしていました。

 あらゆる環境で、さまざまな背景のある学生を支援するなかで、私はある課題に気が付きました。社会的な問題や各々の事情から学校に行かない、あるいは行けなくなった子どもたちに教育が届いていない、ということです。当時はどのように届ければいいのか、明確な答えもない状態でした。

 でも、同時にそういった子どもたちに共通点があることにも気が付きました。それがゲームだったのです。

 

社会福祉活動に長年関わってきたジェラルド・ソロモン氏

 

── 子どもたちが持つ、ゲームへの関心の高さに注目したのですね。

ジェラルド 多くの子どもたちが興味を持っているゲームを通せば、あらゆる子どもたちに教育を届けることができると考え、NASEF(North America Scholastic Esports Federation、北米教育eスポーツ連盟)を立ち上げました。

 NASEFの使命は、中学校、高校、大学で実践的なスキルを身に着け、仕事につなげる「道しるべ」となることです。ですので、子どもたちはただゲームをプレーするだけではありません。チームやクラブといった組織での役割やルールを重視して活動し、ときには大会やイベントに参加するため懸命に励む、“eスポーツ”に取り組んでいます。

── eスポーツを教育に取り入れるうえで、大切にしていることはありますか。

ジェラルド 子どもたちに一番知ってほしいことは、ゲームやeスポーツを成り立たせるためには選手だけでなく、コーチングやデザイン、ソフトウェア開発、広報活動、ビジネスモデルの構築など、多岐にわたる仕事があることです。こうしたゲーム以外の仕事でも大切なスキルを子どもたちが学べるよう、私たちは1000ページ以上のカリキュラムを作成しました。

 カリキュラムに紐づくのは、先ほどあげた仕事のほか、アナリストやマーケティングなど15の仕事です。

 

無料のカリキュラムと繋がる15の仕事(NASEFの公式ホームページより)

 

 カリキュラムはアメリカ・カリフォルニア州の文部科学省にも認証されており、実際に教育で使うことができます。教員の研修は有料ですが、カリキュラムは無料です。将来につながるスキルを、自由に学べるチャンスを提供しているのです。

── プロジェクトは現在どれほどの規模になっているのでしょうか。

ジェラルド 25校から始まったプロジェクトですが、いまではアメリカの中で2500校が採用するまでに広がりました。世界では、23の国や地域と連携をとっています。

 NASEFは、頑張る子どもたちを手伝いたいという、同じ考え方・価値観を持っているパートナーを探しています。例えば、NASEF JAPANとは「社会的背景や立場に関わらず、どのような子どもにもITで将来に役立つスキルを提供する」という目的を共有しています。こういった関係をモデルに、アジアの中でも活動を広げていきたいです。

 

ジェラルド・ソロモン氏のフェイバリットゲームはFPSタイトル「Overwatch」

 

── 教材とするゲームタイトルはどのように決めているのでしょうか。

ジェラルド いくつかのゲームタイトルの中から選んでもらう形ではなく、生徒が興味のあるタイトルを教材にしています。シューティングゲームでも「Call of Duty」や「Fortnite」、ほかにも「Minecraft」、「League of Legends」など多岐にわたります。ゲームへの興味を教育につなげることが目的なので、最初から入り口を狭めるようなことはありません。

 また、ただゲームをプレーするだけにならないよう、プログラムではゲームタイトル毎にクラブを運営し、所属する生徒一人ひとりに役割を用意しています。SNSでの広報担当やマネジメントなど、仕事を体験する機会にしています。得意なゲームタイトルによってどのような仕事に適正があるのかわかるようなカリキュラムも用意しています。

── どのようなゲームで何を学べるのかが具体的にまとまっているんですね。

ジェラルド 例えば、車でサッカーをする「Rocket League」は、物理学の題材にすることができます。また、「Minecraft」の「Farm Craft」という追加要素では、学生に農業の基礎からビジネスまでの流れを見せることができます。イベントには68の国と地域から2000以上の学校が参加しました。生徒たちにはMinecraft内で実際に種を買って、畑を耕し、種をまいて、お世話して、収穫し、そして販売するまでのすべての工程を体験してもらうことができました。農業やマーケットについて勉強する機会となったのです。

── 「Minecraft」もそうですが、プレーするために料金が発生するゲームタイトルもあります。そういったタイトルを教材にする際はどのように対応しているのでしょうか。

ジェラルド NASEFは世界で唯一、無料でゲームを通じて教育の機会を提供する団体です。ですから、ゲーム会社の理解を得て、ゲームタイトルも教材として無料で提供しています。

── 子どもたちが学ぶ上で大切な講師は、どのくらいいらっしゃるのでしょうか。

ジェラルド 約3年半の活動で、3700人以上の講師を育成してきました。これからも増やしていきます。そのために大切なのは、講師を育成できる資格を持つ「スカラティック・フェロー」です。この資格を取得するのは簡単ではありません。しかし、各国にNASEFの取り組みを広げる際は、その地域で講師を増やすことができる“メンター”の存在が欠かせません。

 今後はメンターを増やすことで、さらに幅広い国や地域でNASEFのプロジェクトを実施し、eスポーツを通じてより多くの子どもたちを教育につなげていければと考えています。

■関連記事

■外部リンク

NASEF
https://www.nasef.org/

NASEF JAPAN
https://nasef.jp/