高校eスポーツニュース
2023.01.31
打倒トップ! eスポーツ強豪校をASUSがサポート、ゲーミングノートPC5台で熱意を後押し
- 高校eスポーツ
ゲーミングブランド「ROG」を展開するASUSは、試験的に実施しているeスポーツ部支援で、岐阜県立岐阜商業高等学校(県岐阜商)と岡山県共生高等学校(岡山共生)の2校にゲーミングノートPCを贈呈しました。同社が支援する学校は千葉県立浦安高等学校に続き3校なりました。大会の上位陣として名を連ねる県岐阜商業と岡山共生は、贈呈されたPCどのように活用するのか、取材しました。
ASUSのeスポーツ部支援
ASUSが実施しているeスポーツ部の支援は、その名の通りeスポーツに取り組む学校へ機材を提供し、活動を支援していく取り組み。2022年12月には、レビューや展示などで使っていた試用のゲーミングノートPC5台を浦安高校に贈呈。同校はこれをもとに、eスポーツの活動をスタートさせる計画です。
(参考記事)
千葉県立浦安高校でeスポーツ活動スタート! ASUSが強力サポート
https://esports.bcnretail.com/highschool/221225_000890.html
最初の1年は貸与で、活動実績に応じてその後の対応を決定します。機材の用意だけでなく、インターネット回線の開通や指導員の仲介など、さまざまな方面からサポート。試験段階では限定的に展開することで、今後広く展開するとしたらどういった支援が必要なのかを探ります。
今回、ゲーミングPCを贈呈された2校は、先述の通り強豪校。県岐阜商業は、第5回 全国高校eスポーツ選手権のリーグ・オブ・レジェンド(LOL)部門で予選決勝まで進んだ全国ベスト8の実力。岡山共生はブロック準決勝まで進むことができる強さです。さらには両校とも、夏の高校対抗eスポーツ大会「STAGE:0」LoL部門でも決勝トーナメント(上位9校)まで上りました。
素晴らしい結果を残していますが、県岐阜商業も岡山共生も、まだまだ満足していません。もちろん目指しているのは“No.1”だからです。しかし、その前には大きな壁が立ちはだかっています。eスポーツに力を入れる通信制高校たちです。両校は「打倒・通信制高校」を胸に、ASUSの機材を受け取りました。
すでにプロの姿勢 県岐商eスポーツ部
岐阜県立岐阜商業高校では、EDP(電子データ処理)部内にeスポーツ部門「県岐商eスポーツ部」を設置して、LOLに取り組んでいます。2023年1月初旬時点のメンバーは5人。実績から見ても人気の部活かと思いきや、LOLをプレーできる最小人数です。部長の高藤柊輔さんによると「説明会には教室からあふれるほど人が来ていました。6、70人くらいでしょうか。でも、残るのは数人です」と、ただ“学校で、ゲームで遊べる”という考えでは続かない活動であることがうかがえます。
実際にストイックな部活です。まず、入部条件は国家試験の基本情報技術者試験に合格すること。練習は日曜日以外、平日は5時間ほど、土曜日は8時間以上練習する場合もあります。メンバーにはそれぞれ一人ずつコーチがつき、担当するポジションに応じたトレーニングを実施。部室にはゲーミングPCも一人につき1台使えるだけは用意されています。ただし、成績が著しく下がったら退部になってしまうことも。ほかの部活と同じように、文武両道が基本です。
そんな厳しい環境でも生徒たちがeスポーツに取り組むのは、「ゲームが好きだから」です。水野響さん(ITGEAR)は「LOLが、めちゃめちゃ好きです。運要素が少ないので、ほぼ100%実力で勝負できるところが面白いです」、坪井煌来さんは「磨けば磨くほど上手くなるLOLが大好きです」と、メンバーは口々にLOLへの愛を語ります。
県岐阜商業に入学した理由も、「eスポーツに関する活動があって、資格も取れるので入学を目指しました」(今井皇心朗さん)、「ホームページでeスポーツの活動があることを知って、志望校になりました」(大前結愛さん)と話すほどゲームが好きです。部活が休みの日もLOLで遊ぶとのこと。長時間の厳しい練習を結果につなげることができるのも、メンバーの熱意があるからこそです。
その熱意が高じて、県岐商eスポーツ部には企業のスポンサーがついています。顧問を務める坂英明さんは「県岐商eスポーツ部の“e”はエリートのe」と熱弁。岐阜県からの依頼でイベントや大会に参加することもあります。メンバーはすでに部員ではなく、プロとして活動していました。
家が遠いと話す坪井煌来さんは「家と学校の往復だけで4時間かかりますが、勉強と部活を両立してeスポーツを続けられるのは、部活を通じて時間のマネジメントを学ぶことができたからです」と、eスポーツ選手としてだけでなく、人としての成長を実感していました。
ASUSも県岐阜商業の熱意に動かされた1社です。今回、ASUSが提供したゲーミングノートPCをさっそく活用しているという大前結愛さんは、「家で使っていたPCをROGに切り替えたら、すごく使いやすくて快適です」と、ハイスペックPCの使い心地を笑顔で語りました。新入生が入ってきた際には、練習用として活用していく予定です。
楽しく努力 岡山共生eスポーツ部
岡山共生は、部員数52人の大所帯。学校にはゲーミングデスクトップPCを20台以上、ゲーミングノートPCを十数台備えるほか、自宅から持ち込む生徒もいます。とは言え全員が一斉に使えるほどの数ではないので、交代で利用したり、帰宅してから参加したりとやり繰りすることで練習時間を確保しています。
同校は、佐倉涼太さん(akabuff、赤バフ)の出身校としても有名です。赤バフさんは、第1回全国高校eスポーツ選手権やSTAGE:0のLOL部門で準優勝した際にチームを率いていました。その後はプロチームで活躍しているほか、東京五輪の際には聖火ランナーとして走った経歴を持ちます。
赤バフさんの頑張りもあって高校eスポーツの黎明期から強豪校であった岡山共生は、STAGE:0を主催したテレビ東京の番組でも注目を集めました。知名度が上がったことでeスポーツ部に興味のある生徒が集まり、部員数が急増。赤バフ選手が卒業した2020年以降もさまざまな大会で結果を残し続けています。その活躍を支えているのは、ゲームへの興味です。
部活に入った理由について、岡山共生の2年生 石井颯さんは「テレビで岡山共生を見てeスポーツ部の存在を知りました。ゲームはただ趣味でしたが、テレビで見たSTAGE:0に出場してみたいと思い、競技として取り組める点に惹かれて入部しました」と話します。同 土居俊介さんも「ゲームが好きなのでeスポーツなら真剣に取り組めると思っていたところ、岡山共生をテレビで見て、設備が整っていたので入部しました」と話し、ゲームが好きな生徒たちがテレビで知った情報をもとに意思をもって集まったことがうかがえます。
練習についても兒玉拓真さんは、「LOLは5人でプレーできるので好きです。みんなで楽しんで練習しています。個別に練習することもあるのですが、5人のときの方がはかどります。チームで練習するときはコミュニケーションを意識しています」と紹介します。赤バフ選手が月に1回ほど指導することもあるそうです。
それだけ真剣に取り組んでいるからこそ、「夏のSTAGE:0でN高校と戦ったときはすごく緊張しました。次元が違うんです。それが悔しくて。全国高校eスポーツ選手権のブロック準決勝でルネサンス高校に負けた時もすごく悔しかったです。その悔しさが今のやる気につながっています。いつか倒したいです」と井上幸大さんは悔しさをにじませながら振り返ります。情報系の大学に進学することが目標の木山悠月さんも「次のSTAGE:0で優勝したいです」と決意を固めていました。
こうした、目標に向かう高校生の背中を後押しするのが、今回のASUSのeスポーツ部支援プロジェクトです。今回、提供した機材は5台のゲーミングノートPC。学校や私用のノートPCの画面が小さく悩んでいた石井さんは「画面も大きく、キーボードの押し心地がしっかりしています」と喜んでいました。家にゲーミングPCが無い生徒や、画面が小さいノートPCに悩む生徒が練習に使う計画です。
目指せNo.1
全日制の強豪である両校に共通しているのは、高い壁として立ちはだかる通信制高校を越えて、頂点に立つという目標です。時間の融通が利きやすい通信制高校に比べると、全日制では練習時間の確保が難しく(寮生活ではなおさら)、さらに公立校はゲームにアクセスするための回線を確保するのも簡単ではありません。こうした課題をクリアして活躍する両校が、ASUSの強力なバックアップを受けて日本一に邁進することになるので、目が離せません。
ASUSは支援プロジェクト参加校からフィードバックを受け、今後の製品開発や支援プロジェクトの方針などの参考にしていく方針です。プロジェクトを担当するASUS セールス本部 コマーシャル営業部 2課の金城勇秀氏は、「今回、提供したゲーミングノートPCはいい点も、悪い点もあると思います。遠慮なく意見が欲しいです。PCだけでなく、ほかの機材やコーチの斡旋など、悩み事があれば教えてください。一緒に解決しながら、今後の参考にします」と、高校におけるeスポーツ活動の拡大に向けたメッセージを両校に送りました。
機材をはじめ、eスポーツ部の活動にはまだまだハードルが多いので、ASUSの支援が拡大するかどうかも、高校eスポーツ活動の普及に大きく関わってきそうです。
■関連記事
■外部リンク
岐阜県立岐阜商業高等学校
http://kengisho.ed.jp/
岡山県共生高等学校
http://www.kyousei.ed.jp/
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