高校eスポーツニュース
2023.08.19
イベント運営を通して社会人の意識を学ぶ 太田工業「太工 SuperDrive」レポート後編
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7月22日にイオンモール太田(群馬県太田市)で開かれたグランツーリスモ7の大会「太工 SuperDrive」。なんといっても、太田工業高等学校のeスポーツ部が企画から運営まですべて行っているというのが大きなポイントです。しかも、このeスポーツ部、ゲームの大会を運営することがメインの活動というから驚きです。大会の模様を伝えた前編に続き、後編では顧問の金子先生をはじめ、大会運営の様子を間近で見てきた大人たちの率直な声を聞いてみました。(取材日:2023年7月22日)
↓↓大会の様子を取材した前編記事はコチラ↓↓
群馬・太田の“高校主催”eスポーツ大会! 太田工業「太工 SuperDrive」レポート
https://esports.bcnretail.com/highschool/230722_001277.html
授業では学べないことを経験 すべてを生徒が準備したイベント
イベント終了直後、関わった大人たちに話を聞いてみました。金子先生は、直前まで準備の手伝いに追われていましたが、無事にイベントが終わり安堵した様子。生徒について聞かれると、熱意を持って質問に答えてくれました。
──どう思いましたか。企画から開催まで、間近で生徒たちを見てきて。
金子 正直、企画がスタートした時はどうなるんだろうなと思いました。ただ、イベント前の最終打ち合わせの時は、セクションごとにしっかりと統率が取れていて、「イベントを成功させるぞ」という責任感が伝わってきて内心ほっとしました。経験がなかったところは仕方がありませんから、それを除けば大会運営はほぼパーフェクトだったんじゃないかなと思いますよ。しかもSUBARU(以下スバル)の久保田さんの助言で工程表なんかも作ったんですよ。
──工程表ですか。まるでイベント運営会社のようですね。
金子 各セクションで何をやるのかすべてまとめて、これを元に生徒が動いていました。イベントのシナリオや台本なんかも生徒たちが作っています。ポスターに使った画像やロゴも、彼らが各企業の管財課に確認を取ったうえで、頂いた公式の素材です。関係者、特に大人の人たちとミーティングも重ねてきて、学校の授業では触れることのできないことも、たくさん経験できたのかなと思います。
──もう生徒たちだけでもイベントが開けそうですね。
金子 開けますね。でも年に一回だったら部活動の存在意義がないので、学期に1回イベントを開くのが目標です。
──ところで機材などはどうされたんですか。
機材はやっぱり大変でした。一部は群馬銀行さんからの寄付や太田市からの貸し出し、本校のお金もかかっています。それでヘッドセットも地元のベイシア電気さんからの協賛という形で安価に提供していただきました。「では今後のことも考えて」なんてうれしい言葉もあって、次回はベイシア電気さんのステッカーをヘッドセットに貼ってイベントに使うとか、そんな動きも考えています。
──では今後の展開にもつながるイベントになったわけですね。
金子 そうですね。今日は希望が持てる一日でしたね。
イベント運営は大人たちの業務と同じ 県も活動を後押ししたい
ユニフォーム姿でレーシンググローブをつけて、ペアを組んだ高校生とも和気あいあいと交流する姿が印象的だった群馬県財産有効活用課の高橋さんも、このイベントへの思いを語ってくれました。
──大会ではいい走りでしたね。今回の大会、参加してみてどう思いましたか。
高橋さん 今回の大会って見ていただいたなら分かると思うんですが、企画してきた人がいて、運営している人がいて、司会を進行している人がいて、eスポーツ部の部員の人たちがチームとしてイベントを行っている。これって、ふだん私たちが群馬県庁でしている業務と全く同じなんですよね。生徒たちもイベント運営を通して一回り成長できたんじゃないですか。
大会の視察に来ていた同じ群馬県の木村eスポーツ係長も、こうした取り組みの将来性に期待を抱いているそうです。
木村さん 県としてもeスポーツには力を入れていますが、一過性のものになってしまわないように、知見や経験とかはどんどん積み重ねていってほしいと思っています。今回のイベントを試金石に、私たちのほうでも、ほかの自治体に横展開を進めていきたいと考えています。eスポーツ大会を開催すること自体も目的ではありますが、やっぱり世代間の交流だとか、地域の活性化、そうしたものを通して、eスポーツを盛り上げていくことが大切だと思います。そしてeスポーツ事業が自走して、それらが地域に根差したものになっていく、それが私たちの最終目標ですね。
学生の熱意を形にする イベントは社会人の意識を気軽に学ぶ良い機会
金子先生に頼まれ解説を務めたスバル群馬製作所eモータースポーツ部の久保田部長にも話をうかがいました。同部は部員たちの自費で運営されており、今回のイベントも仕事ではなくボランティアでの参加です。久保田さんも生徒たちの頑張りに、とても感心していました。
──イベントに参加した感想は。
久保田さん(以下敬称略) 生徒たちはほんと頑張っていましたね。学生たちって熱意はあるんですけど、どうやってそれを形にしたらよいか分からなくて、その熱意を周りの人にも見えるよう形にしようっていうところで手助けをしました。私たちはそれを導いてあげた、でも実はそれが重要だったんだなと。
──打ち合せも定期的にされていたんですよね。
久保田 二週間に一回くらいは準備状況だとかを聞きながらアドバイスをしていたのですが、「準備して」という言葉だけじゃやっぱり生徒たちには伝わらないですね。でも「こういう視点で考えてみれば?」と少し助言すれば、すぐにできたりする。この経験が何かの気づきにつながって、今後に生きればいいなと思いますね。
──なかなか大人と関わる機会がないですから、言い方も考える必要があるのですね。
久保田 そうですね。でも彼らは本当によくやりました。企業から協賛を取ってきたときも、私たちは何もしていません。生徒たちが自主的に企画書を配りながら企業を回って、お願いした結果ですから。告知も自分たちだけでやっていましたし。
──こういうイベントが増えると、生徒たちも学ぶことが多いですね。
久保田 本当にね。これをモデルケースにして同じようなイベントが増えていくのもアリじゃないかなと思いますね。民間企業でインターンシップってあるじゃないですか。内容は業務体験だと思うんですけど、仕事ってなっちゃうと、やっぱり緊張感が増しちゃうじゃないですか(笑)。本質的には同じなんですが、変にかしこまってハードルを上げるよりも、もっと参加しやすくして、社会人の考え方や意識を知るだけでも得るものは多いと思います。次の機会があれば私も全然拒む気はありませんよ。
eスポーツ部と民間企業のコラボなど可能性は多い
金子先生は、今後の展開を問われ「うちの部活をプラットフォームにして民間企業さんがeスポーツイベントを開くのもいいかなと思っていて、そうした活動の仕方もこれから考えていきます」と答えてくれました。
今後も斬新な方法で企画に取り組む、そんな将来の方向性も感じられるイベントでした。編集部では、引き続き太田工業高校eスポーツ部の取り組みをフォローしていきます。
■書いた人
寺澤 克
幼少期からレースゲームとスマブラをプレー。グランツーリスモシリーズは全作皆勤賞。スマブラの実力は到底VIPには及ばない。好きなものはセガラリーなど古めのアーケードゲーム。最近は原神のデイリーをさばくのが日課になっている。
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■外部リンク
群馬県立太田工業高等学校
https://tako-hs.gsn.ed.jp/
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