ゲーム
2022.12.26
生粋のデジタルカードゲーマーが“ドはまり”! 新作「Marvel Snap」の魅力に迫る
- レビュー
「Marvel Snap」というスマホゲームをご存じでしょうか。本作はSecond Dinnerというデベロッパーが手掛ける基本プレイ無料のカードゲームで、2022年10月18日にリリースされたばかりでありながら、先日発表されたThe Game Awardsのベストモバイルゲーム部門で最優秀賞を獲得している、まさに今大注目のゲームです。
Second Dinnerという名前にはあまり聞き馴染みの無い読者がほとんどかもしれませんが、実はこのスタジオ、かつてBlizzardの人気カードゲームHearthstoneを手掛けていたBen Brode氏が独立して立ち上げたスタジオです。
何を隠そう筆者はHearthstoneにどっぷりハマっていた生粋のデジタルカードゲーム好きであり、Ben Brode氏の新作はどんなゲームになるのかと首を長くして待っていたのですが、このMarvel Snapというゲームは筆者の期待を大いに上回る良作でした。本稿では、そんなMarvel Snapの魅力を存分に紹介していきたいと思います。
1試合3分のテンポの良さが生み出す中毒性
Marvel Snapは従来のカードゲームのようにお互いのHPを削るゲームではなく、各プレイヤーが4枚までカードを配置できる3つのロケーションをめぐって戦うゲームです。ターンごとに両プレイヤーが同時にカードを出していき、ターン6終了時に、3つのうち2つ以上のロケーションにおいて、配置したカードのパワーの合計値が高いプレイヤーが勝者になります。カードにはそれぞれコストが設定されており、ターンごとに増加するエネルギーを消費して場に出すことができます。
本作を語るうえでまず外せないのは、1試合の短さ、待ち時間の短さです。カードゲームというと、試合時間が長いために気軽に遊べなかったり、相手が長考に入るとその間待っていなくてはいけなかったり、お世辞にもテンポがいいとは言えない作品が多くあります。しかしMarvel Snapは、例外的な状況を除けば必ず6ターンで終わるようになっており、またプレイヤーの操作もカードを配置するだけで、戦闘や呪文の発動など複雑なものがないため、ものの3分あれば1試合が終わります。この気軽さがMarvel Snapの最大の魅力。スマホのUIも使いやすいため、出先の待ち時間でも寝る前でもいつでもプレイできてしまいます。
この手軽さのせいで本作にはまさに悪魔的な中毒性があり、筆者がプレイしていた時は気づいたら4時間経っていたなんてこともありました。1試合は短いしマッチングもスムーズなはずなのに、それが故にプレイ時間がどんどん増えてしまう……一度ハマってしまうとなかなか抜け出せません。
必ず6ターンで終わるというルールを聞いて、そんなことをしたらゲームが単調になってしまうのではないかと心配になる読者もいるかもしれませんが、そんなことはないのが本作のすごいところ。6ターン目で終わってしまうということはつまり、1試合で使えるカードの枚数やエネルギーの総量があらかじめ分かっているということであり、これらをいかに活用するか、1ターン目から慎重に戦略を練っていくことが求められます。
試合終了後には自分と相手のボードをじっくり見られる感想戦の画面になるのですが、戦闘がないため1ターン目からのカードがしっかりと残っています。どんなに絶望的に思えた試合でも、「このカードがこっちだったら勝てていたな……」と改善点が見つかる試合が多く、悔しさからすぐまた次の試合を始めてしまうこともしばしば。
またMarvel Snapではデッキ構築も非常に重要です。本作ではデッキの総カード枚数は12枚で、各カード1枚までデッキに入れることができます。初手の手札が3枚で、毎ターン1枚カードを引くことになるため、順当に行けば12枚中9枚、つまりデッキの75%は確実に手札に来るということで、これは他のカードゲームと比べると破格の数字です。このため、よほど偏った構築でない限り極端な手札事故が発生することはありません。デッキの枚数が多くないからこそ、たった1枚の違いが勝敗を分けることも多くあり、やればやるほど奥が深い構造になっています。
スナップによる心理戦で運ゲーをやり過ごせ
そうはいってもカードゲームですから、運の要素はあります。ランダムに引かれるロケーションの効果や、一部カードのランダム効果は、プレイヤースキルではどうにもできません。しかし、そんな運ゲーを解決(?)してしまう神システムが、ゲームのタイトルにもなっている「スナップ」です。
Marvel Snapでは他のゲームと同じように、オンライン対戦の勝敗にあわせてランクポイントが増減していきます。ランクにはブロンズ、シルバーといったように層分けがあり、100ポイント貯まるごとにランクアップしていくようになっています。通常の試合では勝敗によって増減するのは2ポイントですが、プレイヤーは試合中にスナップをすることによって、増減するランクポイントを2倍に増やすことができます。
そして面白いのが、プレイヤーはゲーム中に「撤退」という選択肢を取れるということです。撤退を選択した場合、そのゲームは負けになってしまいますが、失うポイントを半分に抑えることができます。
増減するランクポイントを倍にするとどうなるのか、実際にプレイしてみないと伝わらないかもしれませんが、これは簡単にいえば相手に心理的なプレッシャーを与える行為です。例えば自分の手札的に、7割の確率で勝てる状況があったとします。これは反対を言えば3割の確率で負けるということであって、運ゲーであることには変わりないのですが、ここでスナップ(勝敗ポイントを増やす)すると一気に状況が変わります。相手からすると、7割の確率で負けてしまうのに、通常の倍のポイントを失うリスクは負いたくないはずですから、自ずと1ポイントの失点で済む撤退を選ぶようになります。つまりこちらからすれば、負けてしまう3割のリスクを負わずして1ポイントを獲得することができるのです。
またこうした状況を逆手にとって、本来は自分の勝率の方が低いはずなのに、あえてスナップすることで相手を撤退させる、ポーカーでいうところの「ブラフ」に近いプレイングをすることもできます。ただしブラフを相手に読まれてしまった場合は、相手にスナップ返しをされてしまい、この場合ゲーム終了時には通常の4倍である8ポイント失うことになります(筆者もこのせいで苦渋を舐めたことが何回か……)。といった調子で、単にボード上で勝つだけでなく、スナップを絡めた盤外の心理戦によっても勝敗が大きく変わるため、単に「運ゲー」といって評せないのが本作の奥深いところです。
これまでに紹介したのは、Marvel Snapの魅力のほんの一端に過ぎません。大人気マーベルキャラクターたちの美麗なアートワークや、無料プレイでもなるべくカードを収集できるように作られたシステムなど、語り出すときりがありません。確実に言えるのは、Marvel Snapは細部まで考え抜かれて作られたゲームであり、Ben Brode氏がHearthstone制作で培ったカードゲームのノウハウを存分に注ぎ込んだゲームであるということです。今までのカードゲームに飽きてしまった方には、ぜひ本作をプレイしてみてほしいと思います。
なお、現在Marvel Snapはゲーム内イベント「ウインターバース」の最中で、12月20日から1月2日までの間は通常のログインボーナス50クレジットに加えて、限定のログインボーナスがもらえるようになっています。この記事を見て本作に興味を持った方は、ぜひこの機会に初めてみてください。(ライター・スサキ リョウタ)
■関連記事
■外部リンク
Marvel Snap
https://www.marvelsnap.com/
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