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2021.03.20

教育を変える「eスポーツ」! NASEF JAPANが本格始動

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 北米教育eスポーツ連盟 日本本部(NASEF JAPAN)は3月20日、都内で「NASEF JAPAN 国際教育eスポーツサミット 2021」を開催しました。同日には同連盟の活動について説明したほか、「NASEF JAPAN league 2021シリーズ開幕」を発表。4月に正式リリースする予定です。

3月20日に開催された「NASEF JAPAN 国際教育eスポーツサミット 2021」

 NASEFは、次世代を担う若者が社会におけるゲームチェンジャーになるための教育に取り組む米国に本部を置くNPO団体です。eスポーツは学習や教育を促進するための効果的なツールとして活用しています。世界11カ国で活動しており、加盟生徒数は約1万2000人。日本では2020年11月から活動を開始し、すでに49校が加盟しています。

 第1部のシンポジウムでは、さまざまな登壇者がそれぞれの立場からeスポーツと教育の関係について話しました。最初に登壇したNASEF JAPANの内藤裕志ディレクターは、eスポーツの実態とNASEFの活動について説明。日本では20年11月から本格的に動き始める予定です。

 基調講演にビデオ出演したカリフォルニア大学アーバイン校のコンスタンス・スタインクーラー博士は、子どもたちがeスポーツに一生懸命に取り組む姿勢から、eスポーツが教材になると考えました。勉強は本来、受験のためではなく生活を豊かにするためのものだからです。eスポーツを教材として活用することで勉強に興味を持ってもらい、キャリアや社会性、コミュニケーション能力の育成に役立てることができます。そうすれば、学校だけでなく学外でも活用できる技術や考え方を学べるはずです」と、eスポーツの教材としての可能性について語りました。

カリフォルニア大学アーバイン校のコンスタンス・スタインクーラー博士のプレゼン

好きなことから可能性を広げる

 クロストークセッションでは、内藤ディレクターとNASEF JAPANの松原昭博代表、クラーク記念国際高等学校の笹原圭一郎教諭、全国高等学校eスポーツ連盟(JESEF)の大浦豊弘理事、阿南工業高等専門学校 創造技術工学科 電気コースの小松実教授が登壇しました。

左から、内藤ディレクター、松原代表、笹原教諭、大浦理事、(小松教授はオンライン参加)

 笹原教諭は「高校でeスポーツに取り組むと、コミュニケーション能力の向上に大きな影響を与えます。約3年間携わって感じたのは、このほか課題解決能力や集中力など、実社会で活躍するための本質的な力を育むことができました。それには、ただゲームをプレーするのではなく、大人が導くことが重要です」と、eスポーツを教育で扱うメリットについて語ります。

 小松教授は「ある発達障害のある学生がいました。学校では何事にも怖気づいていますが、ゲームのことについてはよく話しました。それならゲームを教える立場になってみないかと誘って、障がい者支援施設に訪問しゲーム体験会のブースを任せてみますと、2時間以上ずっと説明を続けていました。学校でも体験会を開いたところ、自ら説明しやすいように工夫している姿勢をみて感じ入るものがありました」と、eスポーツが学生と社会の関係を深めるきっかけになった事例を紹介しました。

 大浦理事は、「eスポーツを日本の新しい文化にしたいということで活動しています。全国高校eスポーツ選手権の第1回当時は、この規模のeスポーツ大会などありませんでしたから、私たちが高校に出向いて参加していただけませんかと説明して回りました。ただ、学校でゲームに取り組むには理解を得なければならない人がたくさんいます。ですので、eスポーツの教育的価値の啓発活動として当連盟を立ち上げました」と、JESEFの設立背景について説明します。

 松原代表は、「eスポーツを盛り上げる、という目的ではなく次世代の人材育成の手段として、eスポーツを使う感覚です。子どもたちがやる気や興味を注ぐゲームを教育に活用しない手はない、というNASEFと同じ発想ですね。海外で開催されている『マインクラフト』を通じたプログラミングのコンテストでは、論理的思考やIT技術の育成に役立っています。ゲームは配信や動画制作などの要素もあります。eスポーツを通じて才能を発掘し、成長の手助けをしていきたいです」と、eスポーツを教材にする背景について語りました。

eスポーツが教育を変えた

 セミナーは全部で三つです。「北米における教育研究事例について」ではNASEF JAPANの坪山義明スカラスティック・ディレクターが登壇。「アメリカでの教員生活を10年以上つづけていたが、コロナ禍でオンライン主体になった際、オンラインで授業をする方法がわかりませんでした。アメリカでは、生徒に授業へ興味を持ってもらうため、eスポーツを活用するNASEFのカリキュラムを採用する先生は多かったです。ゲームを通じて明るくなった、友だちができたなど、あらゆるきっかけになっているという保護者からの声も聞きます。eスポーツにはフィジカルスポーツにはない、性別や年齢、障害の有無にかかわらず、フェアに戦えるという特徴があります」と、eスポーツの教育における可能性について紹介します。

NASEF JAPANの坪山義明スカラスティック・ディレクター

 「eスポーツを通じた教育現場の今」について発表した星槎国際高等学校帯広学習センターの大橋紘一郎教諭は、「eスポーツゼミは全校生徒180人のうち3分の1が参加しています。ゲームの紹介プレゼンテーションや十勝毎日新聞で隔週連載のゲーム紹介記事作り、大会参加、大会や体験会の企画と運営、eスポーツの研究と発表会といった活動をしています。eスポーツを通じて、自他ともに認めるほど苦手だったはずの作文で躍動感あふれる文章を生み出すなど、生徒に変化がありました」と、eスポーツを通じて成長した生徒を多数紹介しました。

星槎国際高等学校帯広学習センターの生徒が参加したeスポーツイベント

 「スポーツがもたらすグローバル教育の可能性?ゲシピ:eスポーツ英語教育?」では、eスポーツ英会話サービスを展開するゲシピの真鍋拓也代表取締役が「コロナ禍によってゲームをプレイする時間も増えている点に目をつけ、その時間をそのまま教育の時間にできたら、と思って立ち上げました。オンラインの習い事が増えていることも追い風になっています」と、事業を立ち上げた背景について語ります。

 英会話のレッスンでは、『フォートナイト』を使います。4人一組になり、講師が1人チームに入ってプレーします。開始前には単語を学び、プレーする中で使います。勝つためには英語を使う必要があるということで、生きた英語を学ぶことができます。「10年間英語を学ぶより、外国人の恋人ができた方が英語の上達が早いのと同じですね」と真鍋氏は語ります。文脈より伝える方が大切なので、間違えた英語を話すことが怖くなくなるというメリットもあるようです。

真鍋代表取締役(左)と村田氏(右)

NASEF JAPANの今後の展望

 最後に、松原代表がNASEF JAPANの今後について、「eスポーツが教育に役立つものとして育てていきたいです。母体は北米にあるので、国境を越えた高校生同士の交流にもつながるでしょう。情報も年に2回のシンポジウムや2カ月に1回程度のウェビナーなどで発信していきます」と説明しました。公式サイトでも情報を随時発信していくとのこと。eスポーツが教材として当たり前になる時代が来るかもしれません。

NASEF JAPAN league 2021シリーズ

 第2部の「NASEF JAPAN 2021年度活動構想発表会」では、オンラインeスポーツ大会「NASEF JAPAN league 2021シリーズ」の開幕を宣言。今回発表したのは「NASEF MAJOR」と「NASEF EXTRA」の二つです。では、地方ブロックで予選後、トーナメントを実施。1年に2回以上の実施を予定しています。またEXTRAではNASEF JAPAN主催のカジュアルトーナメントで、2カ月に1回程度実施する予定です。MAJORの第1回大会は『フォートナイト』。5月中旬から6月上旬に予選を開始し、6月19日に決勝戦を行います。正式リリースは4月中旬で、情報は随時アップしていくといいます。

NASEF JAPAN 2021年度活動構想発表会に登壇した内藤氏、松原代表、小澤智史氏

 このほか、eスポーツの教育的価値を創造するため、NASEFが提唱するeスポーツエコシステムの実現を目指します。想定している取り組みは大きく二つ。一つはチーム戦略を立案する司令塔の育成。もう一つが配信技術や動画制作を担うクリエイターの育成です。これらはNASEF JAPANのメンバーシップ限定で参加することができます。

NASEFが開催する大会

 メンバーシップ制度は無料で利用可能。高校教員の個人向けと、学校向け(部活有り)、学校向け(部活無し)、フェローシップ教員の四つを想定。NASEF JAPANのコンテンツへのアクセス権やメールマガジン、研究会への参加など、加入したメンバーシップの種類に応じて、利用できるコンテンツが変わるとのこと。4月から募集を開始する予定です。

メンバーシップの種類による利用可能なコンテンツの違い

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