eスポーツが育む上達への向上心と仲間の輪 開志学園高等学校【後編】
【高校eスポーツ探訪・15後編】2021年に設立した開志学園高等学校eスポーツ部。先生が立ち上げ、生徒が形を作った同部活は、今でこそ熱意のある生徒たちが集まっていますが、設立当初はゆるい部活だったのだとか。高校eスポーツ探訪第15回の後編では、生徒たちを中心に過去のエピソードや日々の活動の裏側に迫ります。(取材・文/銭 君毅)
前編=生徒主導の部活動づくりで未来の部員が快適に過ごせる環境を創る 開志学園高等学校【前編】

■登場人物
Ritoさん 2年生部長
Rikuさん 2年生
yukkuriさん 1年生
部活の方針を決めた大会の経験
――eスポーツ部での活動の様子を詳しく教えてください。
Rikuさん(以下、人名は初出以降敬称略) 先生がこの大会に出ようって目標を決めてくださるので、それに向かってみんなで話し合ったり、一回試合を回すのにも、ちゃんと目的を持って練習したりしています。終わった後はちゃんと反省会をして、ずっと練習してると疲れるのでみんなで遊んだりとか、そういう感じです。
――本当に普通の部活と変わらないですね。ゲームをして遊んでいるわけでなく、競技としてeスポーツに接している印象を受けます。
Ritoさん 今いるメンバーは勝ちたいと言ってくれるやる気のある子が結構多いので、定例会とかでちゃんと相談をして、自分たちで決めたルールを守って活動してます。
――素晴らしいです。ちなみにどんなルールがありますか。
Riku 例えば、週5日ある部活の日のうち最低でも週2日は部室に出てみんなと顔を合わすとか。
Rito 遅刻するにしろ欠席するにしろ、「報連相」とか人として当たり前のことはちゃんとしようとか、学校を休んでるのに部活だけ来るのはダメだとか、あとは部活中の暴言は止めようといったルールですね。
Riku ほかにも、自己管理などが部活動の目標として定められているので、それに背かないように自分のテンションやモチベーションなどを管理して練習しています。
――これらは全て自分たちでつくったのでしょうか。
Rito そうですね、先生の手も借りながら自分たちがメインで意見を出して、多数決を取って決めました。
――非常にモチベーションが高いようですが、いつ頃から活気が出てきたのでしょうか。また何かきっかけはあったのでしょうか。
Rito みんなのやる気が出てきたのは、だいたい昨年9月頃からですかね。その頃、部活が本格的に動きだして。初めての大会(群馬県が開催するU19eスポーツ選手権)があって、そこに2チームが出たんですけど……。
Riku ボロボロだったよね。
Rito そう、かなり悔しい思いをして、次は勝ちたいねって、なった。
Riku ちゃんと練習をしないままU19に出たんですが、U19は高校生以上も出場するので結構レベルが高いんですよ。なので練習せずに出たら当然負けちゃいます。ストレートでぼこぼこにされて悔しいなあって……。部活のメンバーの中には自宅でできる子とできない子がいて、そこの差がかなりあったので、みんなも協力しようということになったんです。

――大会での苦しい思い出は成長させてくれますね。
Riku そうですね。いい経験をさせてもらいました。
Rito その後も3、4回くらい大会に出て、2年生が出ている中で、勝って嬉しい思いもしましたけど、まだ全然熟練度とかも足りてなくて、負けることのほうが多いです。悔しい思いをたくさんしているので、みんなでうまくなって次は勝とうって思います。
Riku 私個人の考えとしては、明日(注:11月11日に取材)から始まる今年のU19とかは、もしかしたらこのメンバーで出るのは最後かもしれないっていう思いもあるので、1試合1試合悔いのないようにやりたいなって気持ちがあります。
――大事にしていきたいと。
Riku メンバーが変わって一年生が入って来たけど、一年生にこのタイトル楽しいなって思ってもらえて、悔いの残らないように、いっぱい楽しい思いをさせてあげたいですね。
――そうですよね、今度の高eとかは練習したうえで臨めそうですね。
Riku そうですね
――1年生も結構出るんですか。
Riku 5人チームのうち、3人が2年生で2人が1年生です。
――ここはしっかり勝って、勝つ喜びみたいなのを伝えてあげたいですね。
Riku そうですね。今かなりチームの練習も頑張って、ある程度形に……なったのかな(笑)。
――これは楽しみですね。
Rito 頑張ります(笑)。
今までにないeスポーツ部ゆえの良いところ
――eスポーツを部活として取り組むとき、良さを感じることはありますか。
Riku まず、学校内で同じ好きなタイトルをやっている仲間と大会に向けて一つの目的に向かって頑張れる楽しさがあります。
Rito 大会に出て対戦相手が他の学校の壁を越えて仲良くなれたり、一緒に上手くなっていけるっていうのは、eスポーツをやっててよかったなって思います。
Riku 結構趣味として扱われるジャンルだからこそ、競技面で切磋琢磨したり、一緒に遊ぶきっかけになったり、そういうところではeスポーツ部に入って素敵だなと思いました。私自身が中学生の時に運動部に入っていたんですが、その競技を使ってこの日に遊ぼうよっていうのは、なかなかできなかったんです。そことは違っていいなって感じます。
Rito 私は中学の頃、今やっているLoLではなくて第五人格というタイトルで大会にちょろっと出てたんですが、普段やっているメンバーと顔を合わせたことがなかったんです。実際に顔を合わせてみんなで上手くなろうって頑張っていくのが、高校の部活としてやってみていいなって感じた点ですね。
――yukkuri君はどうですか。
yukkuri 中学校の頃、もともとコンピューター部に入ってたんですが、先輩とかとあんまり関わりを持ったことがありませんでした。eスポーツ部に入って優しい先輩方と一緒にできるのは嬉しいです。
――コンピューター部だと関係は薄いかもしれませんね。
yukkuri そうですね。誰かとしゃべってやるってことが少なくて。

――コンピューターをいじるという点では同じですが、活動内容はかなり異なりますね。
Rito eスポーツ部は部活でやっているだけあって、普段家でやっているゲームとは違った楽しさがありますね。よりうまくなりたいっていう向上心につながるのは、部活の存在が大きいんだと思います。
Riku 学校生活で勝ち負けに関係する経験は少ないので、eスポーツ部に入って毎日楽しいなって思っています。
練習を糧に、目指すは勝利のみ
――直近で特別な活動はされていますか。
Riku そういえば、11月26日にプロチームのコーチの方からコーチングを受けることになったんです。
――それはすごいですね。
Riku プロチームのDetonatioN FocusMeでヘッドコーチをしているKazuさんが、高校生を対象にコーチングする企画をされていて、早い段階から見つけられて先着順の枠の中に入ったんです。今はみんなそれをモチベーションに練習を頑張っているところです。
Rito 聞きたいことがいっぱいあるなとか、自分のいいところ見てもらいたいな、とか考えてます(笑)。

Riku それこそ、大会に出て知り合った星槎国際高等学校帯広センターの友達に「Kazuさんがこういうの募集しているけどそっちは応募する?」って聞かれて、「じゃあ先生に掛け合ってみるよ」って話をして。
Rito 先生あとは頑張ってくださいって(笑)。
Riku 割とそういうのを見つけてくるのも生徒主体ですね。
Rito 練習試合を先生が見つけてくれることもあるんですけど、私たちのほうで、ここの高校さんと仲良くなったんだけどスクリム組ませてくれない?って相談したこともあります。
――練習する際の機会を自分たちで探すのはすごいですし、申し込むまでのスピード感も早いですね。コーチングの内容は高eに生かせるところも多いかもしれませんね。
Rito せっかく教えてもらったからにはちゃんと実践したいですね。
――大会での活躍が今後の目標になりそうです。
Riku それこそさっき言った高eとかSTAGE:0とかの主要大会でやっぱり順調に勝ち進みたいです。
Rito 予選突破はしたいよね。
――大きい壁かもしれませんが、LoL部門だとN高とかが強い印象があります。
Rito 実は今回の高eでは予選を2回突破したらめちゃくちゃ強いところと当たる予定なんです。
Riku だから、負けたとしても相手のいいところを吸収しようっていう意識でいます。もしそういった強いところと当たれるなら、せっかくの機会だから、自分たちの力がどれだけ通用するのかを試せるのかなって思います。
――格上と対戦する際もそういったモチベーションがつくれているのは、いい雰囲気である証拠ですね。目標ですが普段の活動としてはいかがでしょうか。
Rito 個人のレベル上げでしょうか。なんとなくの動きはみんなできるようになってきたので、あとは個人の細かな動きを外部の上手な方から教えてもらったり、部活の中で経験のある人たちからみんなに教えあっていきたいです。
Riku あと、せっかくみんなで同じゲームをやっているので、やっぱり根本にあるのはそれを楽しんでほしいと思います。楽しんでみんなが練習に打ち込める環境をつくるっていうのは目標です。
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開志学園高等学校=https://www.kaishi.ed.jp/