高校eスポーツ探訪
2023.08.12
部活動を通じて磨かれた指導力、知識量、分析力 仙台城南高等学校eスポーツ部 後編
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【高校eスポーツ探訪・20後編】STAGE:0 2023 LoL部門で東北ブロックNo.1に輝いた仙台城南高等学校eスポーツ部。チーム「hype」の二人への取材を通して、前編ではプレーを楽しみながら実力を磨く独特の雰囲気が感じられました。後編ではeスポーツを通して学んだこと、その先の将来の話まで詳しく掘り下げてみました。(取材・文/寺澤 克)
↓↓活動内容などについてまとめた前編記事はコチラ↓↓
楽しみながら強くなる!仙台城南高等学校eスポーツ部 STAGE:0 2023 LoL部門 東北ブロックNo.1チーム 前編
https://esports.bcnretail.com/highschool/230805_001314.html
■登場人物
村上 望明(のあ)さん … STAGE:0 2023 LoL部門で東北ブロックNo.1に輝いたチームhypeのメンバーの一人。シューティングゲームを長くプレー。プレイヤーネーム(PN)はkamia。
小山 遼さん … 同じくhypeのメンバー。ドラクエなどRPGが好き。PNはyupon。
OBの助けもあり、リーダーが大きく成長
──高校でeスポーツ部に入部してから、気が付いたことや身に付いたことなどありましたか。
村上さん(以下敬称略) 今回、STAGE:0 LoL部門ではリーダーとしてチームを引っ張ってきました。その中で、人をどう動かすのか、どう後輩を指導したらいいのかといった二つが自分としては大きなポイントになったなと思います。
例えば、教えるといっても、レーンによって教えることが変わってきます。だからOBの先輩とかに手伝ってもらって、僕も個人や各レーンについて一つ一つ教えていくっていうことを繰り返していました。しかも教えるにはたくさんの知識が必要になります。だから指導力と知識量というのは自然と身に付きましたね。
──OBの方とも協力できるというのは、かなり心強いですね。しかも年上の方とも分け隔てなく接することができるというのもすごくいい環境かと思いますね。
村上 昨年は2年生が僕一人で、ほかはみんな3年生というチーム構成でした。うちの部はチームを組めば、年齢とか学年関係なく「みんなチームの一員だから」という一体感が生まれるんですよ。特に年齢とかを気にしていないのもそうしたeスポーツ部の雰囲気によるところが大きいかもしれません。
──小山さん、リーダーを務める村上さんの姿を間近で見てきてどうでしたか。
小山さん(以下敬称略) ゲーム中とかもすごく声出ししてくれますし、しっかり指示も出してくれます。プレー中どうしても周りが見えなくなることがあるので、非常に助かっていました。1年間でコールの回数も増えて、頼もしい存在になりました。
──なるほど。この一年間で成長されたんですね。では、小山さんがeスポーツを通じて得られたものは何ですか。
小山 LoLというゲームって、一人ひとりがどうにかするというよりは、周りの仲間と協力して進めていくものです。自分の状況を理解することももちろん大事です。でも、敵にも気を配ったり、周りの状況を見たりとか、周囲の環境を理解することも重要です。今までそういう力が必要になる場面が少なく、そこの部分への対応はとても難しかったです。今でも完ぺきとは言えませんが、これまでの仲間との練習を通して、少しは身に付いてきたのかなと思います。
──周囲を見て次の行動を考える、分析力というのでしょうか。
小山 はい、このゲームは毎試合ごとに環境が変わるので、いつも同じところに注意を向けていればいいというわけでもありません。その都度、見るところが変わります。だから各試合で考える力が身に付いてきたなと感じています。
──臨機応変な対応力が身についてきたんですね。それではeスポーツを続けるなかで悩みみたいなものはありましたか。
小山 LoLは選択肢がとても多いゲームで、そのたびに適切な判断をしていくには、とてつもない知識や経験が必要になります。そこが悩みどころですね(笑)。
──LoLはチャンピオンの数が非常に多いので、それだけでも難しいですよね。
小山 数が多いのもそうなんですけど、それだけスキルを打つタイミングとか、どうやって集団戦に持ち込むかとか、覚える戦略はチャンピオンの数以上なのでつらいところです。
──村上さんはどうですか。
村上 やっぱり初めからリーダシップを発揮するのは難しかったですね。間違って覚えていることもあって、そのまま教えてしまう教え間違い、たとえ正しい知識を教えようと思っても伝え方が上手くいかない。そうしたところで悩みました。
──そういう時には、OBが力を貸してくれることなどもあったのでしょうか。
村上 自分が上手くいかなかったときは、夜にDiscordでOBの先輩が集まった時にどうしたらいいのか聞いてみたりすることが多かったですね。ほかの悩んでいる部員が相談することもあって、OBの皆さんは僕らの悩みを聞いてくれるんですよね。
──OBの方々が上手いアドバイスをして部活動の支えになっていたと。
村上 そうですね。
──皆さん、部活動の後もゲームをプレーされているということなんですが、勉強はいつ頃しているのでしょうか。また部活動の中では、勉強に関して何か取り組んでいることはありますか。例えば勉強会とか。
村上 勉強会は、みんな学科が違うので難しいですね。テストの内容も全然違うので。ただ、あまり成績が良くないと休みの日に勉強させるとかそういった制度もあるにはあります。最悪、部活動に参加禁止というペナルティもあります。
──かなり厳しい措置も取られるわけですね。
村上 でも練習時間は18時までなので、それ以降は自由な時間。勉強する時間がないわけじゃないんです。仮に成績が悪くなったとしても、それは部活が終わった後も勉強の時間を割いてゲームをしているという話ですね。まあ、そういうゲーム好きが多いのがここの部活なんですけどね(笑)。
ゲーム制作、心理学を学びに進学 それぞれ別の道へ
──皆さんの将来の夢とか、これからやりたいことって何ですか。
村上 僕は専門学校に進学してゲームクリエイターを目指します。
──ゲームクリエイターですか。プロのプレイヤーになるという考えはないのですか。
村上 はい、今はeスポーツの一選手として戦っていますが、今回東北ブロック代表として全国大会セミファイナルにも進出できたのは努力の部分が大きいと思っています。ただ世界で活躍する選手たちは、努力とセンスが両立していると業界ではよく言われています。僕自身のことを振り返ると努力はできるけどセンスはないなと、そう思ったんですね。でもゲームに関わる仕事はしたいと考えています。
──将来はどんなゲームを作りたいんですか。
村上 僕は、いろいろなゲームをプレーするので、どんなゲームでもウェルカムですが、今はカプコンさんのストリートファイター6(スト6)みたいな格ゲーを作りたいと思っています。
──その理由はなんでしょうか。
村上 僕は結構スト6をやり込んでいるんですけど、格ゲーってキャラ一人ひとりに個性がありますよね。技の強さ、リーチの長さなど、性能の面で差が出てきます。こうした個性を維持しながら、どのようにゲームバランスを保っていくのかというところがプレーしながら気にしてきたところです。どんなキャラクターを使っていても平等に勝つチャンスがある、そんな理想の格ゲーを作りたいと思っています。
──ちなみにスト6をプレーして何か感想はありますか。
村上 ドライブシステムなど新しいシステムが追加されてゲームバランスが成り立っているなと思ったんですが、やっぱりいわゆる「ブッ壊れキャラ」はいます。でもそうしたキャラに対してプロがどんな立ち回りをするのかというのは、見ていて結構面白いですね。
──プロの試合も視聴しているんですね。では、小山さんの将来の夢やこれからやりたいことは何ですか。
小山 高校を卒業したら大学に進学して、心理学を学びたいと考えています。
──心理学ですか。どういった経緯から心理学を学ぼうと思ったんですか。
小山 友達と話していく中で、その人がいろいろな悩みを抱えていることがわかったり、自分の周りに心を病んでいる人が結構いたりする、そう考えることが多いんです。だから彼らの力になれないかなと思っているんです。でもそういう人たちに対してどういうケアが必要なのかわからない。変に声をかけても逆効果になる。すごくセンシティブな問題だと思うんです。心理学を学べば、良い接し方とかが見つかるのではないかなと考えています。
──心理学を通して、何か答えが見つかるよう応援しています。さて、今回は惜しくもSTAGE:0 2023のセミファイナルで敗退してしまいましたが、今後開催予定の大会にも出場されるんですよね?
村上 はい、そうですね。
小山 今のところそのつもりです。
──大会に向けてはどんなことをされているんですか。
村上 今ちょうど大きな大会が一つ終わったところなので、今は後輩の指導に力を入れているところですね。次の大会も全力で行きたいと思います!
──次の大会でお二人の指導した後輩部員が活躍できるといいですね!どうもありがとうございました!
■書いた人
寺澤 克
幼少期からレースゲームとスマブラをプレー。グランツーリスモシリーズは全作皆勤賞。スマブラの実力は到底VIPには及ばない。好きなものはセガラリーなど古めのアーケードゲーム。最近は原神のデイリーをさばくのが日課になっている。
■関連記事
■外部リンク
仙台城南高等学校 ホームページ
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