大会情報
2022.03.22
ついに始動した新生eスポーツ大会2.0 NASEF JAPAN主導の新たな育成プログラムの中身とは
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3月22日、NASEF JAPANが新たに開発したeスポーツ選手育成プログラム「Beyond the Game Program」の初日が始まりました。リーグ・オブ・レジェンド(LoL)における基礎的なスキルやテクニックを学べるという同プログラムですが、プロチーム「Rascal Jester」の全面協力によって現役選手による直接指導を受けられる本格仕様です。一方で、同プログラムの本質はeスポーツにおいて必須ともいえるスポーツマンシップを培うための仕組みにあるとも言われます。実際のところ、NASEF JAPAN自慢の同プログラムにおいてどんなレッスンが展開されるのか、3月15日に開催されたメディア先行お披露目からその中身をレポートします。
Beyond the Game Programとは
これまでNASEF JAPANでは、「NASEF JAPAN MAJOR」という大会シリーズを数多く開催し、eスポーツに取り組む高校生に向けて日ごろの練習の成果を発揮する場をたくさん提供してきました。そしてこの春、LoLを採用した「NASEF JAPAN MAJOR League of Legends Tournament Spring 2022」の開催を発表しています。注目すべきは、同大会は従来の大会とは異なる仕組みを採用し、学びと競技の一体化を図る新生NASEF JAPAN MAJORであるということ。その“学び”を司る取り組みがBeyond the Game Programというわけです。
同プログラムの内容は、大きく分けて「スポーツマンシップレッスン」と「スキルアップレッスン」の2種類があります。スポーツマンシップレッスンでは、eスポーツを取り組むにあたって必要になる心構えや仲間とのコミュニケーションのコツを学びます。LoLに限らず、eスポーツにおいてはいかに緊張する場面で心を落ち着かせていられるかや、チームメイトとの正確な情報交換、温かい雰囲気づくりが重要になってきますが、こういった要素をシステマチックに体得する機会だと言えます。
一方のスキルアップレッスンでは、LoLで勝つための純粋なスキルやテクニックを学ぶことができます。シーズン9?11においてグランドマスターを達成しているNASEF JAPANの宮川慶吾テクニカルコーチと、Rascal Jesterのプロプレイヤーという豪華な講師陣から直接指導を受けることができるプログラムとなっています。なお、スキルアップレッスンはブロンズ・シルバー・ゴールドの3ランクに分かれて実施する予定。自分の実力に合ったレッスンを受講できると言います。
Beyond the Game Programは3月22日から、大会が開始する前日、4月15日まで実施します。スケジュールの中には上記のスポーツマンシップレッスンとスキルアップレッスンのほか、受講生同士の交流試合を開催し、大会前日には大会前の心構えについて学ぶレッスンなども実施するとか。また、大会後にはプログラムと大会を通した振り返りの時間も設けています。先行お披露目会においてNASEF JAPANの岡田勇樹トーナメントマネージャーは「大会の結果などに焦点が当たるのではなく、レッスンや大会を通して生徒の皆さんが成長した部分を認識できるようにしてまいります」とプログラムの狙いを語りましたが、まさに学習・実践・フィードバックという成長に必須な3要素が揃ったプログラムになっています。
声を掛け合い心を静め判断を下す
品川近郊に位置する朋優学院高等学校で開催されたメディア先行お披露目会。岡田マネージャーと宮川コーチが登壇し、Rascal JesterからはShakespeare選手とSirotama選手が参加しました。対する受講者は朋優学院高等学校eスポーツ部HYeCの面々。計6人の生徒が参加しました。通常、各レッスンは2時間かけて行いますが、今回のお披露目会は1時間のダイジェスト版です。
まず登壇したのはスポーツマンシップレッスンを担当する岡田マネージャー。レッスンのテーマは「チームワークを重視した考え方」です。5対5のチーム戦であるLoLにおいてチームワークは勝利に必須の要素。冒頭、岡田マネージャーは「お互いを尊重しながらグループワークを実施することで良好なコミュニケーションが生まれ、その結果チームにいい効果をもたらすと理解してもらうこと」をレッスンのゴールだと語りました。
今回、岡田マネージャーは「良いチーム環境を構成する要素とは?」「緊張する場面で起こりやすいコミュニケーションエラーと緊張した場面での適切なコミュニケーション方法とは?」「冷静であり続けることの重要性と冷静さを保つ方法とは?」といった議題を提示。これに対して生徒たちは自分なりの答えを考えます。グループワークという形式をとるこのレッスンでは自主的に机を寄せ合い、普段の部活動や自主練習での経験を基に話し合う姿が見られました。
発表の際には生徒一人一人が自ら考えた回答を説明します。例えば、「良いチーム環境を構成する要素は?」という議題に対し、1人の生徒は「互いに信頼し合えること」と回答。そこで岡田マネージャーは「互いに信頼し合える関係を作るためにどんなことをしているか」と質問します。これに生徒は「味方のミスに暴言を吐かず、なぜミスしたのかなどを聞き、プラスの方向に持っていく」と答えます。生徒の答えを講師が深掘りすることで、課題を解決するための具体的な方策への気づきを引き出す形です。
そのほか、「緊張する場面で起こりやすいコミュニケーションエラーと緊張した場面での適切なコミュニケーション方法とは?」という議題においては、集団戦においてどんな判断をするべきかで緊張するという内容の回答が飛び出し、その対策としてチームメンバーに指示をする役割である「コーラー」を設置することが指摘されました。反対にコーラーを務める生徒にとっては常に冷静な判断を下せることが重要になりますが、「冷静さを保つ方法」として「自分が間違った判断をしても味方がカバーをしてくれるという安心感がある」と回答。日ごろの信頼関係がチームプレーの安定につながっていることがわかります。
数あるeスポーツタイトルの中でもLoLは試合時間が長いことから、メンタル面の影響は大きくなりがちです。常に心を静め、練習での実力をコンスタントに発揮できることが肝になるのかもしれません。Rascal JesterのShakespeare選手は「チーム戦の時はミスをしても励ましたり、負けているときでも声を出し合ったりしてチームの雰囲気をよくすることが大切」だとアドバイス。また、Sirotama選手からは「判断を下す場面でアドリブで行動するとメンバーとの実力差によって戦略のミスマッチが発生する。あらかじめこれから起こるコミュニケーションを想定しておくことが重要」だと指摘しました。
チームゲームの戦いは事前の意思疎通から
LoLの専門的テクニックを伝授するスキルアップレッスンでは宮川コーチが登壇。Rascal Jesterの選手は引き続き参加します。宮川コーチはシーズン9から11までグランドマスターを維持している実力者で、MID・JG・SUPのロールでグランドマスターを達成しているとか。また、2019年にはLoLにおけるプロの登竜門である「LJL 2019 スカウティング・グラウンズ」に出場。競技シーンの経験も持ち合わせています。
そんな宮川コーチが最初に指摘したのは、「ソロキュー(1人でマッチアップする試合)とチームゲームの違い」です。その理由として「ソロキューは個人技が光る試合だが、チームゲームはチームの戦略が重要になる。ソロキューの気持ちでチームゲームをしてはいけない」と指摘します。ここで重要になるのが「自分以外のロールをどれだけ理解しているか?」だと言います。この議題に対し、生徒たちは「50%ぐらい……?」「メインロールも不安」と若干弱気な様子。自分がメインでプレーする以外のロールはあまり知らないというのが実情のようです。宮川コーチは「確かに他レーンのことはあまりわからない。しかし、各チームメンバーには得意不得意のチャンピオンがいて場合によっては初めて対面するという状況もある。事前に意思疎通をしておくことが大事」だとアドバイスします。これらをしっかりと話し合っておくことで、バンピック(試合直前のチャンピオン選択フェーズ。相手に使ってほしくないチャンピオンを封じられる)の時点から戦略を共有し、ゲームの進行をスムーズにすることができると言います。
Rascal Jesterにおいて同じレーンでADCとSUPという異なるロールを担当するShakespeare選手とSirotama選手も事前の意思疎通は徹底しているそうで、Shakespeare選手は「ADCには生き残ってダメージを出してほしい。味方が攻めるときは攻め、攻めないときは引くという切り捨ても時には必要」だと語る一方、Sirotama選手は「基本的に2v2でいかに勝利できるかを常に考えていて、Shakespeare選手ともよく話している」と語りました。
その他、レッスン中ではマップ内の解説といった知識面での情報や、コール時のコツなどのスキル面でのアドバイス、Rascal Jesterの面々に対する戦略面での質問コーナーなども実施されました。
プロ選手「自分の時もあればよかった」
レッスンの終了後、生徒からは「プロ選手に直接指導してもらえるのがよかった」「ワードの配置の仕方など自分でも試してみたい」といった感想が得られました。顧問の先生からは「普段自分たちが思っていることを言語化する機会になったので自分の考えを整理できてよかったのでは」と語ります。一方で、「実際の試合を見てもらってアドバイスが欲しい」という希望も。実際のプログラム内では受講者同士での交流戦も予定されているため、大会前に学んだ内容を実践する機会も得られそうです。一方、Rascal Jesterの選手からは「中高からLoLをやってきたが最初に教えてくれる人がいなかった。自分の時もこういう機会があればよかった」「自分のレーンの覚えやすい知識などはしっかりと教えていきたい」といった声も。特に、直近までeスポーツの専門学生だったShakespeare選手からは「自分ができないことを知ることは難しいこと。しかし、何を知らなくて何ができないかを明確に持っていた」と生徒たちの洞察力への指摘もありました。
Beyond the Game Programは本日3月22日から4月15日まで、そして大会終了後から6月12日まで実施します。申し込み枠に空きがある場合、開始後からでも参加することができるため、検討する場合はぜひNASEF JAPANに問い合わせてみましょう。なお、文部科学省が定める大学入試資格の条件にあてはまる学校に所属しており、部活動やサークル・同好会の5人1組(リザーブとして1まで追加可能)で参加することができます。また、チームを担当する顧問の教員が必要になるので、いない場合は先生に相談してみましょう。
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