コラム

2020.09.14

「Withコロナにおけるスポーツとeスポーツ」、アマチュアスポーツのピンチをコラボで救えるか

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 ワンダーリーグが開催したオンライン発表会では、日本フェンシング協会の太田雄貴会長を招き、ワンダーリーグ代表取締役社長北村勝利氏、司会進行役の平岩康佑アナウンサーを交え、「Withコロナにおけるスポーツとeスポーツ」をテーマにパネルディスカッションが行われた。

ワンダーリーグ代表取締役社長北村勝利氏(左上)、日本フェンシング協会の太田雄貴会長(右上)、司会進行役の平岩康佑アナウンサー(下)

アマチュアスポーツの課題

 まずはコロナ禍におけるスポーツイベントの現状を太田氏が説明した。本来は世界最大のスポーツイベント、オリンピックの開催が真っ最中であり、それができていない。プロスポーツの世界では徐々に再開の目処は立ちつつあるが、アマチュアスポーツの世界では以前、見通しが立っていないと、同じスポーツでもアマチュアスポーツがより窮地に立たされていることを訴えた。

 「アマチュアスポーツが中止、延期をすると言うことは、現在生きている人たちが誰も経験したことがほぼないと言われています。誰もが初めての経験で、対応や感染症の予防など苦しんでいます。練習も3?5月はほどんどできませんでしたし、選手の多くは自宅でトレーニングをするくらいでした」(太田会長)。

 太田会長が関わるフェンシングはそれほど大人数で、頻繁に接触するスポーツでないのにも関わらず、これだけの制約があることは、もっと大人数で接触の多い競技では、その対応に頭を悩ませているのが現状だ。コロナ禍の終息はまだ見えておらず、終息を待たず付き合っていくと言うことも念頭にいれる必要性も説いた。

 これに対して北村社長は、eスポーツで行われているオンライン化もスポーツに当てはめられないか、後押しできないかと考えていることを言及した。

 アマチュアスポーツの問題点として、競技団体以上に選手が所属する企業の意向が大きいことが挙げられた。とくにコンシューマ向けの事業を展開している企業にとっては、世の中の意見を無視することはできず、自粛を求められる現状では中々、競技をしにくい。

 「フェンシングは、ソーシャルディスタンスを保って対戦している競技です。近づいたら突かれてしまうので(笑)。そういった競技でも、まだスポーツを再開して良い風潮になっていないのが現状ですね」(太田会長)。

 そんな状況下でフェンシングは9月に完全配信(無観客)で大会を開催する予定だ。画面は合成処理を使うなどこれまでの放送や配信では見られなかった試みも行う予定だ。このあたりは以前からフェンシングの様々な映像効果をつけたり、演出面を強化してきた太田会長としては真骨頂となるだろう。さらに、新たに「投げ銭」システムも導入する。投げ銭は配信動画を視聴しているオーディエンスが、配信している団体や運営、参加している選手などを支援することが目的で、お金を寄付、提供するシステムだ。

 「投げ銭を導入するのには、ふたつの目的があります。ひとつはファンと選手のエンゲージメントをどうやって強くしていくのか、ファンコミュニティを強化する意味ですね。もうひとつは運営サイドの資金調達です。会場に観に来るこれまでの方式だと席代としてマネタイズができていましたが、オンラインになると価格を落とさざるを得なくなります。配信でもリアルイベントでもかかる費用はそれほど変わらないんですが、回収するのは難しくなってきています。ただ、投げ銭だけが収入源とするのではなく、やれることはなんでもやると言う姿勢で、大会前にはクラウドファンディングで資金調達もしますし、投げ銭、スポンサーの新たな露出方法など、色々考えています」(太田会長)。

コロナ禍におけるeスポーツの強み

 競技自体がオンラインでできるeスポーツは、実際に現場に集まって競技しないと成り立たないスポーツと違い、ひと足早く、オンライン化に踏み切った。しかし、それですべてが解決できるほど、オンラインは万能ではないと北村社長は言う。

 「オンラインで対応できるとは言え、オフラインで大会を開いていたところにとってみれば、イベントによる収支で成り立っていた部分もあり、オフラインで大会を開催していた団体や運営にとってみれば打撃となっています。ただ、スポーツに比べれば、オンラインの対応がしやすいのも事実ですし、今後の計画の立てやすさも違うと思います」(北村社長)。リアルスポーツでもeスポーツでも、会場で勝った負けたで観客同士が大騒ぎすることは、観客にとっても選手にとっても重要だ。

 コロナ禍の終息が見えない今、今後もeスポーツはオンライン化が進むと見られている。オンライン化によるデメリットは先述したとおりあるのだが、メリットもある。それは、オンライン大会がオフライン大会よりも開催するためのハードルが低いと言うことだ。これにより、これまでオフラインで大会を開くほどの規模でなかったゲームタイトルの大会がオンラインで行われるようになる。それにより多種多様なタイトルの大会が開かれることで、eスポーツ自体が盛り上がりをみせる可能性があるわけだ。

 太田会長もeスポーツにはポテンシャルしかないと、その潜在能力の高さは感じている。リアルスポーツと違い、体験するまでの導線が確立しており、たやすく経験できることがその理由のひとつだ。スポーツの場合、道具を取りそろえ、会場も必要となる。一緒にプレイする参加者を集めるのもひと苦労だ。対戦、試合をするまでの導線が長い。その点eスポーツはゲーム機があればすぐに対戦でき、導線が短く入りやすい。

 「ゲームをプレイすることに社会的な地位が認められはじめており、上達者は尊敬される立場になっています。憧れられるようになってきているのは、時代の変化ですし、そのことはスポーツ界にとっても良いことだと思っています」(太田会長)。

 今後eスポーツがますます発展すると見られる中、スカウトリーグとしては、子供たちのプロへの登竜門として認知される存在になることが重要だと言う。さらに親世代に理解をしてもらうことで、よりeスポーツをより近しいものとすることだ。

 親世代への理解を求めるには、理念や指針をもって当たるべきと太田会長は付け加える。「eスポーツも頑張るけど、学校の勉強もしっかりやる。スポーツは文武両道を理念としており、そういったものあることで、親御さんの理解、共感を得られるのではないかと思います」(太田会長)。

 スポーツにおいて、本当に文武両道ができているかと言うと、ほとんどできていないのが現状だと言う。ただ、そこを諦めてしまい、スポーツだけに特化して良いとなると、さらに悪化するのは目に見えている。eスポーツもその傾向になることは予測されるので、理想的な目標となったとしても、理念は必要になると言うことだ。

 スポーツもeスポーツもはたまた何かのトップを目指すときに、競技だけに集中することで、社会性を得られなくなる可能性もある。ある程度のクラスまではそれでも問題ないが、トップをとるような状態になったとき、結果を残しても社会に認められなくなってしまう。そういった点からも勉強や社会性などを同時に身につける必要がある。

 「大人がその競技だけをやるように指導し、その競技しかできなくなって、多くの選択肢を選べなくなってしまうのが問題だと思っています。一般的にも一度就職してしまうとその後転職できなくなってしまうのもそこだと思います。それしかできないと教育することが問題なんです。ゲームをプレイしてきたことにより、こっちの道もある、あっちの道もあると言う選択肢を残していきたい。ゲームは戦略性があるので、ゲームができる人は勉強もできると思っています。できていないのはやっていないだけですね。選択肢を拡げる意味で、勉強はやっていて損はないと考えています」(太田会長)

 最後に、コロナ禍において、『マリオ&ソニック 東京2020オリンピック』内にあるフェンシングを使って、オンライン大会を開催しなかったことを悔やみつつ、今後もeスポーツとの連携を模索していきたいと締めくくった。
終息の見えないコロナ禍において、スポーツもeスポーツもオンラインでの対応を始め、新たな挑戦をしていく姿勢に可能性を感じる座談会となった。(ライター・岡安 学)

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