インタビュー
2021.03.30
夢は“全駅eスポーツ対抗戦”! JR東日本の本気を見た「ジェクサー・eスポーツ ステーション」
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1月24日、JR松戸駅にJR東日本エキナカ初のeスポーツ施設「ジェクサー・eスポーツ ステーション」がオープンしました。鉄道という少し“かたい”イメージのJR東日本が、なぜカジュアルなeスポーツ施設を手がけるのか。また、今後はどのような展開を考えているのか。施設を手掛けるJR東日本スポーツの担当者に詳しい話を聞いてきました。
JR東日本スポーツは突然eスポーツに参入したわけではない!?
まず気になるのがJR東日本スポーツとeスポーツの関わり。実はJR東日本スポーツは、今回の試みとは別に2年ほど前からeスポーツチーム「BBV Tokyo」のスポンサーをしていたのです。今回の試みは降って湧いたような話ではなく、eスポーツとの関わりの延長線だったわけです。
次になぜエキナカに展開するのかということです。ジェクサー・eスポーツ ステーションが入っている場所は、以前は「びゅうプラザ」が入っていた場所でした。旅行商品を扱うびゅうプラザは、その役割を実店舗からオンラインに移行しつつあり、松戸駅のみならず多くの駅で閉鎖されています。跡地には、同じくJR東日本が関わるカフェのベックスコーヒーショップであったり、コンビニのニューデイズであったり、ニーズの高い店舗に切り替わっています。
つまり、松戸駅のびゅうプラザも閉鎖により店舗が空いたため、ジェクサー・eスポーツ ステーションを展開する余地ができたわけです。ちょうどJR東日本スポーツはさらなるeスポーツへの挑戦を考えており、タイミング良くジェクサー・eスポーツ ステーションのオープンへと繋がりました。
eスポーツは、健常者や障がい者、老若男女などの区分にかかわらず、誰もが楽しめます。そういった意味では、誰もが利用する駅やエキナカにあるのは、必然的だとも言えるでしょう。ちなみにジェクサーはフィットネスクラブが有名で、これを運営しているのがJR東日本スポーツです。
松戸駅が選ばれたのはびゅうプラザの空き店舗のタイミングが合ったことが最大の理由ですが、それだけではありません。松戸市自体がゲームやアニメなどのコンテンツ事業に力を入れており、eスポーツを根付かせる追い風となっているのです。
二つの顔を持つジェクサー・eスポーツ ステーション
ジェクサー・eスポーツ ステーションは、誰でもすぐに利用できるイベント&コミュニティエリアと会員制のeスポーツエリアの二つのエリアから構成されています。イベント&コミュニティエリアはWi-Fi環境と電源供給が提供されています。ゲームをプレイする人だけでなく、出張中やノマドを実施するビジネスマンにも利用価値の高いエリアです。
一方、eスポーツエリアは最新のハイスペックPCとeスポーツに特化した周辺機器、デスクやチェアを用意したエリアです。一つひとつのデスクはパーテーションで仕切られており、コロナ対策と、eスポーツプレイに支障のないスペースを確保しています。
1席総額50万円以上の最新鋭設備
これらの設備は、JR東日本スポーツのジェクサー・eスポーツ ステーションに賛同したメーカーにより提供されています。高性能なPCに加え、モニターはBenQ ZOWIE、ゲーミングチェアはオカムラ、ゲーミングキーボードとゲーミングマウス、ヘッドセットはHyperXと、それぞれ一流のゲーミングデバイスを完備。個人で一通りそろえようと思ったら、1席辺りの総額が50万円を超える最新鋭の設備です。
さらにPCには約30のゲームタイトルがインストールされています。eスポーツで使用するタイトルは競技性が高く、ハードスペックの要求が高いものが多くあります。eスポーツ施設としては、快適にプレイしてもらってリピーターを増やすためにも、ゲームタイトルの要求やプレイヤーの期待に応えるスペックを用意しなければなりません。
例えば、モニターはBenQ(ベンキュー)のZOWIE 「XL2546K」 を使用しています。これは応答速度が0.5ms 、リフレッシュレートが240Hzの最上位モデルです。応答速度は一瞬の判断で勝ち負けが決まるeスポーツの世界では最重要項目。リフレッシュレートは一般的なモニター(60Hz)の4倍もあり、高いほどゲーム画面が滑らかに表示されます。
このモニターなら、動きの激しいゲームをプレイする場合や細かい狙いを付ける場合などに優位に働きます。つまり、より勝てる、上達する環境がジェクサー・eスポーツ ステーションには取りそろっていると言うわけです。同施設はeスポーツやPCゲームを始めてみようとする人にとってショールーム的な意味合いもあるので、気になる人は実際に触ってみることをおすすめします。
PCにインストールしているゲームは、eスポーツタイトルが中心ですが、一人プレイで楽しめるゲームタイトルも複数入っています。オンラインで遊ぶ場合は、基本的に利用者が所有するアカウントを使いますが、タイトルによっては店舗用のアカウントを用意しており、アカウントを持っていないゲームをプレイすることもできます。
また、電子書籍「ビューン読み放題」やドリンクバーも完備しており、eスポーツやゲームをしない同伴者が楽しめるのも魅力の一つです。回線はソフトバンクの高速回線を使用。ソフトバンクはJR東日本と関わりが深く、多くの駅ですでにインフラが整っていることも、eスポーツをエキナカで楽しめる要因になっています。
ハイスペックマシンや高速通信の体験は、ジェクサー・eスポーツ ステーション以外のeスポーツ施設やネットカフェなどでもできますが、エキナカにあるという立地条件がゲームリテラシーの高い人以外にも入りやすいという利点を生んでいます。
地域密着型のeスポーツ施設
松戸駅の改札口の正面にあるジェクサー・eスポーツ ステーションは、人通りも多く、店舗内もエキナカ同様に明るい照明です。多くのeスポーツ施設は暗めの設定で、雰囲気があるものの、初心者には入りにくいものですが、ジェクサー・eスポーツ ステーションはそういった一部の人の為の施設と言うよりはより公共性の高い場所として考えているからこその判断といえます。営業時間が9時?22時(3月30日時点、行政の要請により営業時間は21時までになります)と親子連れでも入りやすい時間帯に設定されているのも、そのためです。
「緊急事態宣言下において、営業時間は20時までとしていますが、解除後は22時までと考えています。プレイヤーがオンライン上に多く集まるゴールデンタイムはもう少し遅めですが、松戸駅自体が終電を過ぎると始発まで封鎖してしまいますので、深夜までの営業はできません」(JR東日本スポーツ総合企画開発部門 経営企画部 システム推進グループ グループリーダー兼EC企画戦略部 eスポーツ戦略グループ グループリーダー 岡村博之氏)。
ジェクサー・eスポーツ ステーションに常駐しているスタッフは、eスポーツやオンラインゲームに詳しい人ばかりというのも初心者にとってはありがたいポイントです。ゲームの操作方法や遊び方など、それこそエクササイズのインストラクターのように懇切丁寧に教えてくれます。
ジェクサー・eスポーツ ステーションは、新たな試みとしての実証実験の側面があり、そのため、ある程度の採算は度外視になっているのではないかと予測していましたが、実際には、現状でも継続的に運営できるめどは立っているそうです。「各スポンサーに協力していただいていることもあり、損益分岐点は超えています。今後はBBV Tokyoを活用し、イベントも開催してより安定した運営につなげることができればと考えています」(前出・岡村氏)。
夢は“駅対抗戦”
将来的には、JR東日本の各地方の主要駅で展開し、都市ごとの代表者が戦う“駅対抗戦”を実施したいとのこと。最終目的としては全駅での展開、最低でもターミナル駅は全部制覇することを掲げています。JR東日本だけでなく、全国のJRグループも巻き込むことも目指したいそうです。
駅は街の中心であり、多くの人がアクセスする場所です。当然、接続する他の駅から訪れやすいというメリットもあります。エキナカと言うこれ以上にない立地を得たことで、eスポーツの知名度は急速に伸びていくことが期待できます。ジェクサー・eスポーツ ステーションの数もそれと比例して増えていくことでしょう。そういった観点から考えると、eスポーツは、エキナカのジェクサー・eスポーツ スーションをもって、新たな段階にステップアップしたともいえそうです。
■外部リンク
BenQ ZOWIE
https://zowie.benq.com/ja/index.html
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