インタビュー
2025.07.10
なぜ横浜eスポーツ協会×大阪電通大でイベントを開催するのか 「すべてが学び。大人が責任を取ればいい」
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この夏、「横浜eスポーツ大会実行委員会(横浜eスポーツ協会)」(※1)と大阪電気通信大学(大阪電通大)の学生団体「OECU eSports」がタッグを組んで、eスポーツイベント「寝屋川ゲームフェスティバル」を開催します。
※1 当イベントは「横浜eスポーツ協会」のメンバーが「横浜eスポーツ大会実行委員会」名義で主催している
今回は、イベント開催直前の忙しいところ、横浜eスポーツ協会の上田さん&大阪電気通信大学の平松副学生代表に、特別にダブルインタビューすることができました。(以下、敬称略)
・なぜeスポーツ協会×学生がタッグを組んだのか
・大学OBが母校とeスポーツのイベントを実施した経緯とは
eスポーツ現場に携わる人たちの、リアルな声をお届けします。
(取材・文/小川 翔太)
横浜eスポーツ協会上田さんインタビュー

── 自己紹介をよろしくお願いします。
上田 一般社団法人横浜eスポーツ協会所属の上田です。私は、2025年8月9日(土)に大阪電気通信大学で開催される「寝屋川ゲームフェスティバル」というイベントの主催を務めております。
── なぜ横浜の団体に所属する上田さんが、大阪でイベントを開催しようと思われたのでしょうか?
上田 横浜eスポーツ協会では、2023年から「戦参(せんざん)」というeスポーツイベントを横浜市と共催で開催しています。会場は横浜市役所アトリウムで、地元の方々に愛されるイベントに育ってきました。
私はその実行委員として活動する中で、「eスポーツの楽しさや可能性をもっと多くの人に伝えたい」という思いから、地元・寝屋川でイベントを企画することを決めました。
── 今回のイベント名は「eスポーツ」ではなく「ゲームフェスティバル」ですが、あえてこの名称を選ばれた理由は?
上田 「eスポーツ」という言葉は最近よく耳にするようになりましたが、まだまだ一般的には馴染みが薄いと感じています。
「寝屋川ゲームフェスティバル」は、Switchのゲームの試遊会など、いわゆるライトユーザーの方々にも楽しんでいただける内容です。そういった方にも親しみを持っていただけるように、あえて「eスポーツ」ではなく「ゲームフェスティバル」という名称にしました。
── 開催場所は大阪電気通信大学寝屋川学舎とのことですが、どのような経緯で会場が決まったのですか?
上田 私は寝屋川市在住です。地元を盛り上げたいという気持ちから、まず行政に相談を持ちかけました。その中で大阪電気通信大学をご紹介いただき、行政の方を通じて大学関係者の皆様と繋がることができました。
実は、私は大阪電気通信大学の卒業生でもありましたので、行政から大学を紹介いただいた時には「母校に恩返しができる機会が頂けた」と、運命じみたものを感じました。
── 「母校に恩返し」とのことですが、学生時代の上田さんはどのような方だったのでしょう?
上田 お恥ずかしながら、遊んでばかりの学生でした。特に就職活動の際は、就職課の方々に迷惑をかけた記憶があります。頑固で、人の話を聞かず、時には偉そうな言動をしてしまったこともありました。
親に学費を出してもらい、大学からも多くのものを与えてもらったにも関わらず、感謝の言葉すらきちんと伝えられなかったのが今でも心残りです。だからこそ、今回のイベントを通じて少しでも大学に恩返しができれば、という想いがあります。
── 今の学生たちに、伝えたいことはありますか?
上田 偉そうなことは言えませんが、強いて言うなら「自分の得意なことを見つけて、在学中その研鑽を積んでほしい」と思います。
これは私が実際に社会に出て実感できたことなのですが、自身の短所を補う努力をするより、長所を伸ばす事を心がけたほうが、常にモチベーションが保たれます。
また、仕事についても、自分が得意である事を自覚して、そのパフォーマンスを発揮することで、他者からも評価をされ、それが自信に繋がります。特に今の時代ですと、長所に特化をしたほうが、得である事が多いと考え、この発言にいたりました。
── 今回のイベントは、大阪電気通信大学の強化指定クラブ「OECU eSports」との共同開催と伺いました。経緯を教えてください。
上田 大学にイベントの相談をした数日後、OECU eSportsの顧問・森田先生からご連絡をいただき、共同開催の運びとなりました。
OECU eSportsは、eスポーツに関する知見も深く、これまでさまざまなイベントの運営や配信サポートの実績があります。私にとっては、本当に心強いパートナーです。
── OECU eSportsの学生の印象はいかがでしたか?
上田 非常に頼りになります。個々の対応も丁寧で、組織体制もしっかりしています。「学校のクラブ活動」というよりも、「一つの法人」のような印象を受けました。
顧問の森田先生からも「ある程度は学生に任せています」と伺っており、学生たちが自発的に動いていることにも感銘を受けました。
── OECU eSportsに対して期待していることは?
上田 今回は、チラシやパンフレットの作成、配信の構築、当日の運営など、さまざまな業務をお願いしています。私の中では、「このイベントを通じて、彼ら一人ひとりが“実績”を積み上げてほしい」という願いがあります。
だからこそ、彼らのやり方にはほとんど口出ししていません。成功も失敗も、すべてが学びになると信じています。失敗したら大人が責任を取ればいい。そう思っています。この経験が、彼らにとって糧になれば、それが私にとっての最大の恩返しだと考えています。
── 最後に「寝屋川ゲームフェスティバル」はどんなイベントにしたいと考えていますか?
上田 イベントでは、Nintendo Switchの人気タイトル試遊会、大阪電気通信大学の学生が制作したゲームの体験コーナー、トッププレイヤーが集まる格闘ゲーム大会、寝屋川市の自動車教習所が制作したオリジナルゲームの試遊&大会、小型ドローンの操縦体験、地元の保育園による幼児向け遊具コーナー、キッチンカーによるマルシェ出店 などを予定しています。
「ゲームフェスティバル」という名前ですが、私の中では「地域のお祭り」のようなイメージです。来てくださったすべての方に楽しんでいただけるイベントを目指して、誠心誠意準備を進めています。寝屋川市の皆さんはもちろん、ぜひ市外・府外からも足を運んでいただけたら嬉しいです。
「OECU eSports」副学生代表 平松さんインタビュー

── 自己紹介をよろしくお願いします。
平松 大阪電気通信大学3年生の平松昇馬(ひらまつしょうま)です。大学の強化指定クラブ「OECU eSports」(https://linktr.ee/oecu.esports)の副学生代表であり、イベント・配信部門の部長をしています。
── ありがとうございます。OECU eSportsについて、もう少し詳しく教えて頂けないでしょうか。
平松 OECU eSportsは2018年10月に発足しました。現在(2025年)は、約150人が在籍をしている大きなクラブです。部内では大きく分けて2つの部門があり、「イベント・配信部門」と、実際に大会などに出場してゲームをプレイする「プレイヤー部門」があります。
私が統括をしているイベント・配信部門については、いわゆる「裏方スタッフ」として、部内でさらに企画班・ミキサー班・スイッチャー班・カメラ班・デザイン班と細分化されており、それぞれが、自身のスキル向上を目指して日々活動を行っております。
強みとして、ある程度のイベントであれば外部業者に委託することもなく、自分たちで完結できる点だと考えます。
「プレイヤー部門」では、さきほどお伝えしたように、実際にOECU eSportsのプレイヤーとしてさまざまな大会に参加をしております。取り組みを行っているゲームは、「VALORANT」「リーグ・オブ・レジェンド」「オーバーウォッチ」「グランツーリスモ」「ストリートファイター」「スプラトゥーン」と多岐に渡っており、「スプラトゥーン」では大学対抗戦で優勝をした実績もあります。
── 非常に多岐に渡りご活躍されている事が伝わりました。ちなみに、どのような方がOECU eSportsに入部される傾向がありますでしょうか。
平松 「イベント・配信部門」では、将来に映像制作やイベント制作を志す学生が多く、「プレイヤー部門」では純粋にゲームが好きな学生や、ゲームスキルに自信のある学生が多い傾向にあります。どちらにも共通して言える事は「eスポーツに強い関心があること」です。
── 今回、顧問の森田先生から平松さんに対してイベントの共同開催の打診があったかとお聞きしておりますが、共同開催に至った最も大きな理由を教えてください。
平松 OECU eSportsの「イベント・配信部門」は、もともと「学校内」で行なうイベントの要請が多く、私自身、今回のような「一般向けのイベント制作」について強い関心がありました。
部の実績としては勿論のこと、私個人としても実績と成長に繋がるチャンスだと考えています。また、私にとって寝屋川ゲームフェスティバルは、「挑戦の場」としての意味合いも感じています。
── 「挑戦の場」とは、具体的にどういうイメージでしょうか。
平松 私たちはこれまで、対戦格闘ゲーム大会の配信経験が少なく、実績もほとんどありませんでした。今回のイベントでは「road to 戦参」と題された「GUILTY GEAR -STRIVE-」という格闘ゲームのシングルトーナメントの大会を行います。
この大会の優勝者には8月30日、31日に横浜市で開催される「戦参(せんざん)」の出場枠が付与され、関西圏のトッププレイヤーが集まります。また、アークシステムからも公認をされており、イベント当日の配信についても注目されると考えています。
私たちは、これまでにない大型大会配信を担当することになりますので、失敗は許されないという良い意味での緊張感を持って臨んでいて、先ほどもお伝えしたとおり、「挑戦の場」として考えております。
── 冷静ながら熱意のあるコメントであると感じます。最後に、今回のイベントについて意気込みを聞かせてください。
平松 まず、イベントの成功を絶対条件として考え、準備を進めています。
寝屋川ゲームフェスティバルが無事成功することで、地元の方に、大阪電気通信大学のことやOECU eSportsを知っていただく機会になれば幸いです。
また、私自身としても、将来に繋がる経験の場として考えています。ひとつひとつの出来事に対して真摯に取り組みます。
みなさまが楽しんでいただけるイベントになるよう、引き続き尽力します。
OECU eSports」顧問 森田さんインタビュー

── 自己紹介をよろしくお願いします。
森田 森田浩司(もりた こうじ)と申します。大学では映像制作やライブ配信に関する授業を担当しており、OECU eSportsには2021年から参画しています。
── このたび、大学から横浜eスポーツ協会の上田さんが学内でゲームイベントを行う事を聞き、森田先生からOECU eSportsもイベントのコラボレーションをおこなうよう、お声がけをいただいたとのことですが、どのようなお気持ちだったのでしょうか。
森田 ひとつの「使命感」を感じて、手を挙げました。本学は、2018年から全学的活動として「esports project(現OECU eSports)」を発足させており、その分野に興味をもった学生が多く在学しています。
また、キャンパス内にインフラ関係が整っており、eスポーツイベントとの親和性も高く、これまで大手ゲームメーカーの関連イベントも開催されており、そこでOECU eSportsもイベントの主軸として関わっていました。
今回のケースについても、お話をお聞きした時点で、「我々が関わらずして、どうする」という想いのもと、協力のお声がけをさせていただきました。
── 森田先生からお声がかかり、正式に横浜eスポーツ協会とOECU eSportsが協力をして、ひとつのイベントを作り上げて行くことになっていると思いますが、プロジェクトが進むにつれ、当初感じていたイメージと乖離はありますでしょうか。
森田 当初描いていたイメージとの乖離はありません。学生たちも想定通りのパフォーマンスを発揮してくれています。
ただ、当たり前ながら全てがスムーズではなく、小さな課題や問題点などが可視化もされております。私は、それらが彼らにとっての「成長の糧」になれば良いと考えています。
── 顧問として森田先生は、今回のプロジェクトにどのように関わっていくとお考えでしょうか。
森田 申し訳ないことに、イベント当日、私はどうしても都合が悪く参加する事が出来ません。よって、準備段階まで、イベント当日に問題なく事が進むよう、責任をもってフォローをさせていただきます。
顧問としての心構えについて、私は学生の「自立」を最優先に考えているので、その手助けを行う事が自分の役割だと考えています。
── ここでの「自立」とは、どういうことをイメージされていますか。
森田 当たり前の話ですが、彼らは数年後「社会」に旅立ちます。社会人はミスが許されず、かつ、パフォーマンスについても一定水準を求められます。
したがって、学生時代に自身の強みを理解して、誰からもフォローされることなく一定水準のパフォーマンスを発揮し、「自立」を促すことが我々教員の役割です。
今回のプロジェクトについても、まずは学生の自由にやらせてみて、学生自身で考え、行動し、それでも問題が起きた際は、顧問である私が責任を取り、大人としての職務を果たします。
ただ、彼らもこれまで数多くのハードルを越えてきた事もあり、今回についても問題なくこなしてくれると信じています。
── OECU eSportsに所属する学生たちの強みを教えてください。
森田 我々は「配信」「イベント運営」を得意としています。また、これまで数多くのイベントについても参画を行ってきた経験もあるので、ある程度のeスポーツイベントにおいて自走できる強みがあります。
── 今回の寝屋川ゲームフェスティバルについての想いを聞かせてください。
森田 今回は、Switchのゲームの試遊会も行いますので、どちらかというと低年齢層の方が多く来場してくれると考えています。
eスポーツといえば、どちらかといえばストイックな雰囲気がありますが、今回はゲームイベントなので、カジュアルな方も多く、子どもたちを中心とした「笑顔」があふれるイベントになっていただければ幸いです。
また、これはいち教員としての想いで恐縮ですが、ファミリー層の方も多くお越しいただきますので、大阪電気通信大学を知っていただき、子どもたちの将来の選択肢のひとつになれば、とても嬉しいです。
── 最後にイベントに取り組む学生にひとことお願いいたします。
森田 学生たちは今回のプロジェクトに取り組むにあたり、さまざまな経験が出来るとおもいます。「やってよかった!」と思うこともあれば、「うまくいかなかったな……」と悔しい想いをする事もあるかと思います。
私自身も、これまで多くの経験を経て、今に至りますが、教員として一つだけ言える事があれば「目の前の出来事に、真摯に向き合うこと」を忘れないで欲しいです。私は経験する事は「種を蒔くこと」だと考えています。
そして、その種がいつ、どこで芽吹くかは誰にも分かりません。だからこそ、ひとつひとつの出来事を大切にしながら、このイベントが皆さんにとって「芽生え」のきっかけになることを願っています。
おまけ:普段の活動の様子

OECU eSportsでは、将来、技術関係の道を目指す生徒も多く在籍しているので、大学の充実した設備を活用し、日々スキル向上を行っているとのこと。

OECU eSportsは配信を得意としており、さまざまなeスポーツイベントの配信をしているとのこと。
寝屋川ゲームフェスティバル内で開催される「road to 戦参」という「GUILTY GEAR -STRIVE-」の大会の配信も担当しています。

OECU eSportsの学生は「VALORANT」「リーグ・オブ・レジェンド」「オーバーウォッチ」「グランツーリスモ」「ストリートファイター」「スプラトゥーン」と、数多くの大会に出場しているとのこと。

OECU eSportsには約150人の部員が所属しています。そのうち8割が「プレイヤー部門」に所属をしていて、日々、切磋琢磨しています。

■イベント詳細
寝屋川ゲームフェスティバル
開催日:2025年8月9日
開催場所:大阪電気通信大学 寝屋川キャンパス(〒572-8530 大阪府寝屋川市初町18-8)
URL:https://neyagawa-gamefes.senzan.jp/
主催:横浜eスポーツ協会
後援:学生団体「OECU eSports」

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外部リンク
寝屋川ゲームフェスティバル
https://neyagawa-gamefes.senzan.jp/

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