インタビュー

2023.03.04

eスポーツ大会のプロデューサーとは? 全国高校eスポーツ選手権担当 毎日新聞社 清野氏

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ゲームの進路相談室・大会プロデューサー

 練習を重ねた選手たちが熱い試合を繰り広げ、たくさんの観客が熱狂するeスポーツは、さまざまな人が支えています。連載企画「ゲームの進路相談室」では、そんな“eスポーツに関わる職業”を紹介。将来、仕事を決める際の参考になるかもしれません。第1回は全国高校eスポーツ選手権のプロデューサー 清野悠介氏に話をうかがいました。

全国高校eスポーツ選手権のプロデューサー 清野悠介氏(毎日新聞社提供)

お話をうかがった人

毎日新聞社
事業本部 スポーツ事業部
清野悠介氏

──まずは自己紹介をお願いいたします。

清野悠介氏(以下、敬称略) 毎日新聞社 事業本部 スポーツ事業部の清野悠介と申します。さまざまなスポーツ事業に携わっていますが、なかでも主にeスポーツイベントと深く関わっています。全国高等学校eスポーツ連盟と主催している全国高校eスポーツ選手権(高e)では、“プロデューサー”を務めています。

──プロデューサーとは、どのような仕事でしょうか。

清野 ざっくりと言えば、“一つの目的に向かって関係者をまとめる仕事”です。

 例えば高eを実施するには、選手や観客だけでなく、ロゴやスライド、配信画面をつくるクリエイター、選手や観客とやり取りするスタッフ、当日の運営スタッフ、開催するための資金を提供していただくスポンサーなど、あらゆる要素が欠かせません。こうした皆さまと緻密に連携し、大会を形にしていきます。

大会までの流れ(プロデューサー編)

──大会の準備から終了後まではどのような流れなのでしょうか。

清野 準備の段階では、まず概要を決めます。大会の規模や使用するタイトルですね。その後、運営スタッフや、配信するならスタジオ、オフラインなら会場さらには実況・解説の候補を探し、条件などを調整します。

 準備が整ったら選手用のエントリーフォームを作り、開催のお知らせと募集を開始します。エントリーしてくださる方以外にも、学校に直接お声がけしたり、SNSで発信したりと選手を集めます。近ごろは選手のエントリーが増えてきたので、登録時に提示した学生証と入力した情報を照合する手順にも工数がかかります。

──選手を集めたら、ついに試合ですね。難しい点はありますか。

清野 予選が一番ハラハラします。選手は家、学校、eスポーツ施設など、チームによってさまざまな場所から参加するので、通信環境や機材はバラバラ。しっかりと試合が成立するように祈るしかないので、一番の難所といってもいいかもしれません。ただ、私たちも回を重ねて知見がたまってきたので、トラブルが発生した際の対処は慣れてきました。

 決勝大会はeスポーツ施設で行うので、比較的安心して進めることができます。このほか、選手を一カ所に集めるので旅券や宿を手配するほか、SNSなどで大会を告知したり、メディアの方にお声がけしたりと、広報活動を行っています。

 大会が終われば、精算や報告書の作成で大会の一連の流れになります。

プロデューサーのやりがい

──おおよそ半年?8カ月ほどの流れですね。どのようなときにやりがいを感じますか。

清野 やはり、選手の方や保護者の方から感謝の言葉をいただいたときですね。SNSで観客の方からお声がけいただく際もうれしく思います。一度、高eに参加した選手の方から関係者それぞれに向けて直筆の手紙をいただいたときは、感動しました。今でも大切に保管しております。

──スタッフの方々それぞれにですか! それは真心を感じますね。そのほかにも反響はあるのでしょうか。

清野 やはり改善案なども寄せられます。大会を良くしようとして言ってくれているので、次回以降の大会に生かせる部分はしっかりと報告書などにも反映します。

──プロデューサーを務めるにあたって大切にしていることはありますか。

清野 大きく二つあります。まず一つは、何事にも興味を持つことですね。時代が変われば、大会のタイトルや視聴環境など、さまざまなことが変わります。大会についても毎年同じ形式というわけにはいきません。年々、ほかの大会のクオリティはあがっていますから、そういったトレンドをつかんで取り入れることも大切です。

 私自身、空いた時間にはほかの配信や海外の大会などを視聴しています。大会を開催するにあたって、ゲームもプレーしています。もともと私は学生時代、青春18きっぷで日本全国をまわり、サッカーや野球の試合を年間で100試合以上、見て回っていました。そうした下地があったので、新しいことを受け入れやすいのかもしれません。

 もう一つは多くの企業、人をまとめる仕事なので、コミュニケーション能力が求められます。ただ、現在はメールやチャットなど、連絡は直接の対話だけではありませんから、どんな手段であってもやり取りがスムーズであれば問題ありません。

──ゲームも実際にプレーしているのですね。仕事に備えてプレーするとなると、仕事の一環のような感じになってしまうのでしょうか。

清野 案外楽しんでいます。例えばフォートナイトは、子どもと一緒にプレーしています。子どもの方が上手なので、いつも引っ張ってもらっています。仕事を通じてよりゲームが好きになりましたね。

──ゲームを好きな人が運営していると、選手も安心して参加できそうです。プロデューサーの一日のスケジュール例を教えてください。

1日のスケジュール(例

清野 タイミングによってバラバラではありますが、理想的に仕事が進んだ際の一日の流れです。

──では、タイミングが悪い時とはどういった場合でしょうか。

清野 製作物が溜まるとチェックが大変になります。どうしても人は〆切が近くなると動き出すので、そういったタイミングは大変なことになります。このタイミングをコントロールするのもプロデューサーの重要な仕事ですね。

──心当たりがあり、耳が痛いお話です。最後に、学生のうちにやっておいた方がいいことはありますでしょうか。

清野 どんな仕事にも言えることかもしれませんが、とにかくなんにでも興味をもって、いろいろ体験してください。その経験があらゆることに活きるはずです。

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■外部リンク

毎日新聞社
https://www.mainichi.co.jp/

全国高校eスポーツ選手権
https://www.ajhs-esports.jp/

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