高校eスポーツニュース
2023.03.13
eスポーツで島根県益田市と関東を橋渡し、正則学園の1泊2日遠征に密着!
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島根県の益田商工会議所 青年部は3月11日~12日にかけて、「フレンドリーマッチ eスポーツフェスタ in MASUDA」を開催しました。関東の高校生を益田に招き、観光や地元の高校生とのeスポーツ交流会を通じて、萩・石見空港周辺の魅力を発信する企画です。今回、関東からは正則学園高等学校eスポーツ部のメンバーが島根・益田を訪れました。高校生たちは益田ならではの魅力や文化に触れつつ、地元の美食を楽しみ、高校生同士で友好を深めました。
島根県益田市は、同県の西端にあります。一級河川の中でも珍しくダムがない、清流日本一といわれる「高津川」や中国山地の山々、日本海に沈む夕日など、自然豊かな場所です。日本屈指の水質を誇る清流では、良質のコケが発生し、天然の香り高い鮎を育んでいます。また、雪舟が作庭した庭園があるなど、さまざまな文化に触れることもできます。
正則学園高等学校のeスポーツ部は、2022年度からフォートナイト部門を設立。1年生6人で構成されています。練習は授業のある平日+土曜日の終業後から18時頃まで。部室には、ゲーミングPCが13台(うち7台がノートPC)があります。
正則学園eスポーツ部、島根・益田を堪能 遠征1日目
今回のイベント、正則学園は11日に益田市について学び、12日に交流大会というスケジュールで動きます。
初日は羽田空港から萩・石見空港へのフライトでスタート。飛行機に乗るのが初めての生徒もいましたが、経験者がフォローしてスムーズな空の旅となりました。萩・石見空港に到着すると益田商工会議所 青年部のメンバーが歓迎セレモニーを用意していました。
同商工会議所 地域創造委員会の大畑友幸委員長は、飛行機に乗ってやってきた高校生を労いながら「eスポーツをつかってさまざまな人と繋がり、少しでも益田市を知るきっかけをつくれればと思っています。文化や魅力に触れてもらい、また来たいと思ってもらえたら嬉しいです。そしてその気持ちを、さらに拡散してもらえるようにしていきたいです」と、今回の取り組みの主旨を説明しました。
空港を出て一行が最初に訪れたのは、交流会の会場になっている益田東高等学校。同校のeスポーツ部とお互いに自己紹介となりました。正則学園 eスポーツ部のフォートナイト部門からは、鈴木佑弥さん、谷口剛さん、保岡大輝さん、神山蓮さん、田村聖也さん、松野晴季さんが参加しました。
益田東高等学校のeスポーツ部は、2023年3月時点の部員が13人、うち3人は卒業生です。部活は平日と土曜日の終業から18時まで。部室にはゲーミングPCを計9台(うち3台がゲーミングノートPC)備えています。第5回 全国高校eスポーツ選手権では、フォートナイト部門で全国大会(決勝)まで勝ち進んだ実力があります。さらに、サンタミネラルという会社のスポンサーを受けており、ユニフォームやゲーミングノートPCなど、設備の充実にもつながっています。
しかし、eスポーツ部が立ち上がったのは1年前とのこと。同校の坂田仁志校長は、「少し前に、県内の他校がeスポーツに取り組んでいる様子をうかがって、当校でも取り組もうと考えました。高校生たちの新しい活躍の場になることと、高校と地域のつながりをつくるためにeスポーツが活かせると考えたからです。教頭先生も前のめりだったので、すぐに立ち上げることができました」と、立ち上げに至った経緯と期待を語ります。
こうした背景から、立ち上がってから1年足らずにも関わらず、地元の小中学生向けに「eスポーツ体験会」を開催するなど、大会だけでなく地域に貢献しようと取り組んでいます。体験会には、保護者を含めると150人以上が来場。坂田校長は「これほど多くの小中学生が集まったのは、本校始まって以来初めて!」と喜んだそうです。
自己紹介を終えたら、昼食のあと正則学園のメンバーは「岡田屋本店」を訪れました。清酒「菊弥栄」で有名な酒蔵です。お酒は20歳からですが、20歳になる前に酒造という仕事について知ることは今後の進路を決める際に役立ちます。まだ飲むことができなくても、高校生たちは理科の授業で習った知識を活かしながら熱心に話を聞いていました。
次に向かったのは、上皇陛下(当時は天皇陛下)が訪問されたことのある医光寺。ボランティアガイドの引率で、建物の装飾や作法を学びながら、お寺の歴史に浸ります。雪舟が作庭したとされる庭園の鑑賞では、高校生たちも興味深そうにあれこれ指をさして尋ねながら、鈴木さんが「思わず浸ってしまう。また来たい」とこぼしていました。
医光寺のすぐ隣にある雪舟焼の窯元も見学に行きました。昭和24年に開窯して、現在は二代目です。雪舟焼とは、雪舟が修行で各地を回った際の姿「雲水」にイメージを重ねた、空の雲の模様が特徴。とらわれない心、こだわらない心、自由な姿を表しています。ご厚意で登り窯まで見ることができ、高校生たちは興味深そうに話しに聞き入っていました。
1日目の最後に訪れたのは、28万枚の石州瓦で覆われた島根県芸術文化センター「グラントワ」。晴れの日は飛行機からも見える赤褐色が特徴です。この日は東京スカイツリーをデザイン監修した澄川喜一さんの特別展を開催していました。劇場は工事中で入ることができませんでしたが、楽屋や舞台袖から劇場を覗くという貴重な体験ができました。舞台袖から舞台を覗いた高校生たちは「お~」と、思わず感嘆の声をあげます。
宿に到着したのは17時ごろ。早朝のフライトから一日中歩き通しだった高校生たちはへとへとでしたが、ごはんが楽しみな様子です。この日の夕食は、萩・石見空港周辺でとれる天然鮎の塩焼きやのどぐろの煮つけなど豪華なメニューでした。松永牛のしゃぶしゃぶが大人気で、ごはんのおかわりが続出。日中に体力を使った分、しっかり食べます。
夕飯の後はお風呂かと思いきや、明日に向けた作戦会議。正則学園eスポーツ部顧問の須藤先生が、情報共有の大切さについて説明します。部員たちは声掛けの重要性を自分たちの言葉に落とし込み、どんな場合にどのような声掛けをするのか、話し合っていました。一見、ネガティブな意見が出たとしても、鈴木さんや神山さんが前向きにフォロー。議論を前に進めようと努めます。
実は、この日は前日にフォートナイトの大型アップデートがあったばかり。アイテムの配置やマップの地形が変わって間もなく、正則学園のメンバーはまだプレーしたことがない未知の領域です。本当は作戦会議で情報の共有などをしたかったのですが、情報不足。朝までに各々が新環境の情報を収集するということで会議はお開きになりました。
会議後、谷口さんは「まさかeスポーツ部で遠征に来るとは思っていませんでした。話が出たとき、『ぜひ行きたい』と思って、実際に来ることができてよかったです。でも、試合は緊張します。新環境の情報も足りていませんが、メンバーと一緒に練習したので、頑張ります」と、多少の情報不足は基礎力で補う決意をしていました。
フレンドリーマッチ eスポーツフェスタ in MASUDA 遠征2日目
翌朝、朝食の場に姿を表したメンバーは眠そうに目をこすりながら「朝食は入らない……」などと言いながら席につきます。最初は昨晩の楽しかったことについて話しあっていますが、神山さんが「みんなアップデートについてちゃんと調べた?」と聞くと、場は一変。各々が収集した情報を共有し、対策や作戦について話し始めました。誰が何を持つのか、新武器にはどのように対処するのか、先ほどまでに眠そうな目から、選手の目になっていました。
交流会の会場は、七尾学園 益田東高等学校 体育館。会場に到着したら、正則学園のメンバーは、さっそく持ち込んだデバイスのセッティングを開始します。PCはまっさらな状態なので、フォートナイトやディスコードアプリのインストール、デバイスのセットアップなど、部活を通じて培った知識を発揮して着々と準備を進めます。
会場の準備と並行して、別の教室ではeスポーツふれあい体験コーナーをオープン。地元の人にeスポーツを知ってもらうための施策です。会場では、親子や友人と来た人たちが「ぷよぷよ」や「鉄拳」を体験。eスポーツとはどういったものなのか、体験を通じて学びました。
オープニングセレモニーに登壇した大畑委員長は、「近ごろ成長著しいeスポーツに注目し、何かできないかということで今回の大会を企画しました。萩・石見空港は90分で東京に行けるので、関東の高校生と益田東高の生徒がeスポーツを通じて交流し、地元の魅力に触れていただき、情報発信に繋がればと思います」と、今回のイベントを企画した背景と目指すところについて話しました。
今回のイベントは、コメディアンのムーディー勝山さんや裏切りマンキーコングの風次さんが解説・実況を担当。ご当地アイドル「プレシャス」のメンバーも応援に駆けつけました。前日から益田に入っていたムーディー勝山さんは、「昨晩は地元の美味しいごはんをいただきました。松永牛のサイコロステーキがとても美味しかったです。イカやハマグリも美味しいそうなので、またの機会に食べたいです」と益田の魅力の体験談を紹介しました。
フレンドリーマッチは、3人一組のトリオで対戦。正則学園から2チーム、益田東高校から2チーム、そして島根県立 吉賀高等学校から1チームが参加しています。公開3マッチで、撃破は3ポイント。順位は1位が30ポイント、2位が20ポイント、3位が15ポイント、4位が10ポイント、5位は5ポイント。3マッチ終了時点で得点が多いチームが優勝です。なお、第1収縮が終了するまでは戦闘禁止。チームが脱落しても、一人はリザルト画面、一人はマップを開いておくことで実況解説を手伝うなど、みんなでつくる大会になっています。
益田東高校×吉賀高校×正則学園高校
第1試合、最初は攻撃禁止なので各チームはがっつりと資源を集めます。最高レア度の武器を集めたり、弾を集めたりと、装備は豊富。中盤、安全地帯が狭くなってくると、益田東のチーム2が有利な位置を確保し、周囲のチームを威嚇します。さらに安全地帯が狭くなると、常に対戦相手と隣り合っている状態。ダウンを取られても、しぶとく起き上がりますが、最初に脱落したのは吉賀高校。正則学園は2チーム残っています。依然高所を確保しているのは益田高校ですが、安全地帯がなくなると体力勝負。最後まで耐えたのは、益田東高校の第2チームでした。
第2試合、戦闘開始と同時に益田東高校第1チームが吉賀高校を攻め、見事な連携で倒します。益田東高校第1チームは第1試合でポイントを稼げなかったため、積極的に動きます。しかし、今度は益田東の第2チームが第1チームに攻撃をしかけ、撃破しました。残っているのは、正則学園第1チームと第2チーム、そして益田東の第2チームです。安全地帯が狭くなると、3チームが盾に並ぶような配置になります。一番下の益田高校第2チームは息をひそめますが、アンチの異動に合わせて移動していた正則学園第1チームと接敵。益田東が勝利を納めましたが、最後は一番上を取っていた正則学園第2チームが体力勝負でビクロイを獲得しました。
第3試合は各チームともじっくりと資源を集める動きでスタートするかに思えましたが、益田東第2チームが正則学園第1チームを速攻で下し、撃破ポイントを稼ぎます。益田東第2チームは続けて益田東第1チームも撃破。撃破ポイントだけで18ポイント獲得します。さらに続けて正則学園第2チームと接敵。合計ポイント1位と2位が戦闘になります。益田東第2チームはこの場で2人撃破しますが、正則学園第2チームは逃亡。ここに吉賀高校が合流します。ここでも益田東第2チームが圧倒的な実力で撃破。潜んでいた正則学園第2チームも下し、12撃破でビクトリーロイヤルを獲得しました。
3試合を終えて、合計ポイントが最も多かったのは、益田東第2チームでした。合計ポイントは140ポイント。全国大会出場校の実力を発揮した形です。第2位は正則学園第2チームで、88ポイントでした。
優勝した益田東高 第2チームの塩安さんは「全国高校eスポーツ選手権で全国大会に出場したことがあるので、今回も勝つことができてよかったです。これまで、ほかの学校との交流がほとんどなかったので、交流ができてよかったです」。大石さんは「2試合目で2位になったので心配しましたが、優勝できてうれしいです」、小河さんは「どんどん戦いに行くという作戦がうまくいきました。普段と違う環境もたのしかったです」と、それぞれコメントしました。
試合の合間には、ムーディー勝山さんが選手たちをインタビュー。益田東高校の塩安さんは、「地元で大会ができるのは嬉しいです。前日の部室の見学のときに、みんなコミュニケーションできてよかったです」とコメント。正則学園の鈴木さんは「普段は地元の友達とプレーしていますが、島根まで来たので、皆さんと仲良くなりたいです」と話します。
ムーディー勝山さんは子どもと一緒にフォートナイトを楽しんでいるので解説の解像度が高く、初心者にもわかりやすい内容を心掛けていました。風次さんもフォートナイトに精通しており、状況を的確に実況するだけでなく、武器の強みや選手の動きの意味などを紹介。ゲームをプレーしたことがない保護者でもわかる内容で、楽しむことができました。
イベント後には、連絡先を交換したり、ディスコードのサーバーを立てたりと、盛んに交流していました。松野さんは、対戦相手と試合の結果について話し合ったとのこと。eスポーツを通じて友情が生まれていました。
「また来たい」
2日間の旅を通して、正則学園の高校生たちはさまざまな体験をしました。旅の終わりには口をそろえて「また来たい」と話します。2日間の感想を各メンバーに聞いてみると、それぞれ次の答えが返ってきました。
神山さん 貴重な体験をすることができました。フレンドリーマッチは慣れない環境でしたが、実力を出すことができたと思います。機会があれば、また来たいです。
谷口さん いい体験をすることができました。貴重な機会をありがとうございます。また、呼んでほしいです。
松野さん 楽しかったです。1日目はいろいろ見て回ることができたし、旅館のごはんが美味しかったのでよかったです。2日目は益田東高校や吉賀高校と交流できて、いい経験でした。1回一位になれたのも嬉しかったです。また対戦して、今度は勝ちたいです。
鈴木さん 益田のみなさん、それから先生に感謝です。交流することができましたし、さまざまな文化に触れることができました。グラデーションが好きなので、雪舟焼の窯元に行ったときは嬉しかったです。東京から1時間半ということなので、また来たいです。
田村さん 出発のときは早起きがつらく、移動も長かったので疲れましたが、知らなかったことをたくさん知ることができて楽しかったです。ごはんはすごくおいしくてよかったです。大会も楽しめました。また来たいです。
保岡さん 転学する予定なので、一つの区切りとしてここまで来ることができて本当に良かったです。行ったことのない場所に興味があるので島根に来れたのも嬉しい。食にも興味があって、普段は魚が苦手なのですが、旅館で出てきたのどぐろや鮎は美味しくて、本当に驚きました。
美術にも興味があるので、グラントワも楽しかったですし、雪舟焼や医光寺を見て学ぶことができたので、本当に来てよかったです。
大会に向けてかなり力をいれて練習したので、一度でも1位になることができて本当に嬉しかったです。少し悔いは残りますが、やり切った感はあります。対戦相手と交流できたのも楽しかったです。楽しい思い出になりました。
“また”があるか否か
eスポーツを地方創生に活用しようという動きは各地でありますが、フレンドリーマッチ eスポーツフェスタ in MASUDAでは、高校生同士の交流が今後の展開のカギと言えます。
今回のイベントは益田商工会議所 青年部が、関東と益田市の高校生同士の交流を通じて、関係人口の増加を見込んで開催しました。その結果、正則学園eスポーツ部のメンバーは「また来たい」と口々に話し、「来年は?」と青年部のメンバーに尋ねるほど。そこには確かに、益田市と、益田市で暮らす人たちとの絆がありました。
この後大切になるのは、この実績を正則学園と益田市がどのように活用するか。正則学園eスポーツ部のメンバーには、思い出をいろいろな人に話したり、SNSで発信したりと、多くの人が益田市を知るきっかけをつくるミッションがあります。引き続き益田東高校と交流することは、学校同士、地域同士の関係強化にもつながるでしょう。益田商工会議所も、高校生からの反響を今後のPRに活用することができます。
“また”の機会があるかどうか、あるいは今度は東京で集まることになるのか。本プロジェクトの成否は参加者の今後の動きにかかっています。
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■外部リンク
島根県益田市
https://www.city.masuda.lg.jp/
萩・石見空港
https://hagiiwami.jp/
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