大会レポート

2023.08.17

デジタルカード独自の“思考時間の使い方”、全国eスポーツ選手権シャドバ部門 神奈川A大会 優勝インタビュー

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 「息子(or娘)がやっているeスポーツって何?」。そんな親御さんにも分かりすくeスポーツの魅力を伝える大会レポート。今回は、今年で5度目の開催となる国体のeスポーツ版「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2023 KAGOSHIMA」の様子をお届けします。同大会は「燃ゆる感動かごしま国体・かごしま大会」の文化プログラム事業として開催されるeスポーツの全国大会です。全国の各都道府県から代表者を集めて、日本一のeスポーツプレイヤーを決めます。

 そんな全国都道府県対抗eスポーツ選手権『シャドウバース』部門の神奈川県代表を決める予選大会が8月2日(水)に開催されました。今回は見事勝ち抜いた優勝者に『シャドウバース』にかける情熱をインタビューしました。

全国都道府県対抗eスポーツ選手権2023 KAGOSHIMA シャドバ部門 神奈川A大会優勝の空白選手(左)と、横浜F・マリノスのkaoru選手(右)

優勝者インタビュー(大学生:空白選手)

──優勝おめでとうございます! 今日の試合で一番印象に残っているのはどの試合でしょうか。

空白選手(以下、敬称略) ありがとうございます! 一番苦しかったのは1回戦ですね。緊張もあったのですが、毎ターン長考してしまって、最後の1組まで残ってしまいました。対戦が終わって、一息ついたら「次始めます」ってアナウンスをされて焦りました。RAGEなどの大規模大会では経験できないような連戦でした。

 あと、対戦後に1戦目のリプレイを見たのですが、多分、何カ所か自分のカードの選択が合っていなくて、試合も1本取られたところから始まっちゃったんで、メンタル的にもきつかったですね。

空白選手

──普段からこういった地方大会にはよく出られているのでしょうか。

空白 昨年のeスポーツ選手権の神奈川予選には出ました。地方大会には出たことがありませんでしたが、今後は出ようと思っています。出てなかった理由としては、地方大会に出る理由ってRAGEのbye(不戦勝)が大きいとおもうのですが、byeが無くてもずっとRAGEのDay2に進出していたんです。

 だから「(byeを取らなくても)平気やろ」って思っていたのに、直近のRAGEは2連続でDay2進出を逃しちゃって……。

 今回のRAGEはDay2進出したのですが、直近の二つを落としたのがメンタル的にきつくて「じゃあbyeもらいに行かなきゃダメだな」というのを友人とも話して、今後は出るようにしていきます。(僕の中では)Day2進出は当たり前だと思っていたので、急に進出できなくなって焦りを感じました。


──とてもストイックですね。コンスタントにDay2に進出できるだけでもかなりの実力者かとお見受けします。

空白 初めてDay2に進出できたときはめっちゃ嬉しかったです! ただ、一緒に調整している人たちのRAGEの戦績のアベレージがとても高いので、RAGEで優勝することを目指すと、Day2に進出するのは当たり前なんだと考えるようになりました。

大会の様子

──シャドウバースの歴はどれくらいでしょうか。

空白 自分は結構新しい方だと思います。初めて2年経ってないぐらいです。


──シャドウバースを始めてすぐに競技大会に出場されていたんですね

空白 自分の中で「このゲームを競技で始める」って決めてシャドウバースを始めました。以前は違うカードゲームをやっていました。紙のカードゲーム、『遊戯王』だったのですが、コロナ禍で大会が無くなってしまい、友人に薦められてデジタルカードゲームであるシャドウバースを始めました。

──以前取り組んでいたカードゲームでも競技としてプレーされていたのですね。同じカードゲームでも違いはありますか。


空白 最初は「ゲーム中の思考時間の使い方」に戸惑いました。紙のカードゲームって制限時間が1試合ごとに決まっていて、1ターン中に明確な制限時間が設けられているわけではないんです。

 なので、判断が難しくない場面はお互いに早くプレーして、難しい場面なったら少し時間をかけられるのですが、シャドウバースはターンごとに90秒という制限時間が決められているので、それが(自分にとって)すごいキツいんです。

 紙のカードゲームをプレーしていた時の自分は大局観を重視しているプレイヤーでしたので、あんまり試合のテンプレってのを決めないでやっていました。その場面をみて「こうしたほうが良さそうだ」というのを都度判断するという形です。思考の固定化はせずに、臨機応変な対応力を身につけるための練習をして、それで勝ってきたのですが、『シャドウバース』の場合は時間制限の都合上、そういうわけにはいきません。ですので練習量を増やして、状況に応じた対応の方針を用意しておくよう心掛けるようになりました。


──練習で身につけるべき能力が違うということに気づかれたのですね。かなりシャドウバースのことを分析されて、こうやって結果も出されていますが、今後はどのようなスタンスで取り組まれていくのでしょうか

空白 アベレージ高く勝ち続けることを意識しています。一つは、Ratings杯(https://g-ratings.info/)というプロも参加している競技大会があるのですが、そこで勝ち続けること。あとはJCGという大会で勝ち続けること。現在、僕は23シーズン、24シーズン、25シーズンと連覇しています。

 勿論、RAGEなどの大きな大会でドカーンと勝つのもいいんですが、僕は「継続して勝つ」というのを周りに宣言しています。いざ大きな大会で勝ったときに「運だけのヤツやん」って言われたくないので。まだJCGでの連覇やRAGEのDay2に連続出場など、小さな実績なのですが、継続して勝ててはいるので、少しずつ界隈では評価されてきているのを感じています。


──ありがとうございます! カードゲーマーにとって勉強になることが詰まったインタビューになりました。次の予選も頑張ってください!

特別インタビュー(横浜F・マリノス:kaoru選手)

 予選会場では、神奈川に根差した活動を行うプロeスポーツチーム「横浜F・マリノス」から、kaoru選手が応援に駆けつけていました。「横浜F・マリノス」は、洗足学園中学高等学校の「e-Sports研究会」にてシャドウバースの部活指導を行っています。今回は特別企画として、kaoru選手のインタビューをお届けします。

横浜F・マリノス:kaoru選手

──高校生の頃はシャドウバースはなかったんですね。いつ頃からプレーされていたのでしょうか。

kaoru選手(以下、敬称略) シャドウバースがリリースされた時期(大学生の頃)からやっています。7年くらいやっていることになります。


──所属されているプロeスポーツチーム「横浜F・マリノス」の活動として、洗足学園中学高等学校の部活をサポートされていますね。

kaoru はい、先日も洗足学園中学高等学校へお伺いして、「e-Sports研究会」の学生たちにシャドウバースのレクチャーをさせていただいています。


──どのようなことを教えているのでしょうか。

kaoru シャドウバースのアプリのダウンロード、インストールからサポートして、まずはゲームの基本的なルールを教えます。3種類のカード(フォロワー、スペル、アミュレット)のそれぞれの違いから始めて、キーワード能力の違いなどを教えていきます。昨年から始まった取り組みなのですが、教え始めて1年でグランドマスターになる学生さんも出てきました。

洗足学園での指導の様子

──直接、高校生の方々と接してみて、実際に感じたことを教えてください。

kaoru 本当にシャドウバースを楽しんでくれているのを感じています。シャドウバースは、ハマるとのめり込んでしまう魅力のあるゲームではあるのですが、やはり最初は初心者の方には難しく見えるゲームでもあるんです。

 はじめるために「デッキを組む」という工程のハードルが高いので、僕らがアドバイスして、デッキを組んでもらっています。最初のステップさえ乗り越えれば、あとはどんどん急加速してやっていけるイメージを持ってますね。


──「e-Sports研究会」の方々は、いろんなeスポーツをされているのでしょうか。

kaoru 僕らが教えているのはシャドウバースのみですね。他のゲームを楽しんでる学生さんも多くいらっしゃるのですが、「e-Sports研究会」の主な活動はシャドウバースとなってます。

 昨年までは部員が5人で、2人が卒業して引退されて、新しく入った学生さん含めて6?7人の研究会です。


──神奈川にはeスポーツ選手権の予選が二つあり、今回はA予選でしたが、B予選の方には「e-Sports研究会」の教え子さんが出られるということですね。

kaoru そうですね。頑張っていただきたいです! 「e-Sports研究会」の学生さんには、RAGEなどの大規模な大会に参加することも促していて、実際にRAGEや今回みたいに学生向けの大会に参加することもあります。


──「e-Sports研究会」での学びをきっかけに、こういう大会に出始めたと。

kaoru そうですね。僕らが「大会は楽しいから行った方がいい!」みたいな感じでお薦めしています。また洗足学園さんからも「学生さんには、eスポーツの大会で結果を残してほしい」という方針が伝えられています。


──kaoru選手は大会の楽しみはどういうものだと考えていて、学生さんにはそれをどう伝えているのでしょうか。

kaoru 大会の楽しみは、緊張感の中で1対1で真剣勝負ができるということです。

 私は学生の頃から将棋をやっていたので多少の経験はありますが、学生時代には1対1の真剣勝負をする経験ってあんまりないハズなんです。一般的な学生のスポーツの部活だと、高校生同士、大学生同士の対戦になりますが、性別や年齢の垣根を越えて戦えるのも、eスポーツの魅力です。

 自分よりも年齢が上の人を打ち負かした時の快感とか、そういうのを味わってほしいなと。高校生だからこそこういうのを経験してほしいです。あとは仲間たちと真剣に議論する経験です。

 もちろん卒業した後もシャドウバースを続けてもらえれば嬉しいのですが、学生のうちに真剣にシャドウバースの練習に打ち込んだ時間とか、仲間と話し合ってデッキ組み上げた経験というのは、卒業した後にもかけがえのないものになるでしょう。

大会当日、敗退した学生さんはそのまま帰るのではなく、kaoru選手と交流をしてアドバイスをもらっていた

──学生さんへの指導を通して、kaoru選手が高校生の方々から学んだことはありますか。

kaoru 教えていくうちに自分の中で言語化する力がつきました。勉強でもそうですが、教え初めは自分の中であやふやな部分が多くて、「ここのプレーはこうしたほうがいいんだ」と教えたとしても、感覚的に察していた部分が多いので、説明するとなると難しい。

 感覚的な部分をしっかりと言語化して論理立てて説明することになるので、改めて自分の実になっているのを感じます。上手い人だとなんとなくやってしまってるプレーも高校生からしたら純粋に疑問なんです。たとえば同じカードでも2コストのカードでどっちを出すのかって悩んでいる時とかに、いやここはこっちだよというと、なんでこっちじゃないの?って言われたりして、えっと……みたいになる事が結構あります。そこをちゃんと高校生に納得してもらえるように言語化して説明することを意識しています。


──ありがとうございます! kaoru選手の今後のプロ活動の目標や意気込みを教えてください。

kaoru プロツアーで「横浜F・マリノス」が優勝することが一番の僕の使命です。もちろん個人としてRAGEなどの大会に勝つこと、配信活動を頑張っていくことはありますが、一番は「横浜F・マリノス」がプロツアーで優勝する姿をファンの方々に見せることです。ずっと応援してくださるファンの方もいて、まだ優勝する姿を見せれていないので。


──まずはプロツアー優勝ということですね。「横浜F・マリノス」は地域密着型で、とても地域貢献されているチームですので、応援されているファンの方々も多いのかと思います。

kaoru そうですね、スタジアムに募金活動に行った時とかも、多くの方からお声がけいただきました。

 シャドウバースファン以外の方からもお声がけいただいていて、サッカーの「横浜F・マリノス」を応援しているファンの方が「eスポーツチームも応援しています」と応援してくださるんです。本当に幅広い方々に応援していただいているので、なんとか優勝の姿を見せて、多くの方々に喜んでいただきたいなと思っています。

 大会名:全国都道府県対抗eスポーツ選手権
     『シャドウバース』部門 神奈川A大会
 開催日:8月2日(水)
 会場 :青馬堂書店本店(神奈川県横浜市鶴見区矢向6-12-11)

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■外部リンク

全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2023 KAGOSHIMA 概要
https://shadowverse.jp/event/esports_championship/?p=6042

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