大会レポート
2024.11.09
5年ぶりのオフライン「CAPCOM Pro Tour 2024 SUPER PREMIER」で見えた功績と課題
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11月2・3日、武蔵野の森総合スポーツプラザにて、「ストリートファイター6」の公式オフライン大会「CAPCOM Pro Tour 2024 SUPER PREMIER JAPAN(CPTジャパン)」が開催されました。
日本でプレミア大会がオフラインで開催されるのはなんと5年ぶり。2019年に東京ゲームショウで開催されたアジアプレミア以来です。その間はオンライン大会となっていたので、本当に久しぶりの公式オフライン大会となります。
しかも今回はただのプレミアではなくスーパープレミアなので、10月に開催されたCPTシンガポールと同様に、CAPCOM CUP(CC)への出場権が二枠用意されています。現時点では北米で行われたEast Coast Throwdown 2024で板橋ザンギエフ選手が、CPTシンガポールでShuto選手がCCへの出場枠を獲得しており、日本開催のWorld Wattior(WW)でも2枠あるため、CCへの出場が確定している日本人選手枠は4枠となります。CPTジャパンで6枠まで広げられるかが注目でしたが、結果としては、ときど選手が優勝し、LeShar選手が準優勝したことにより、日本人選手のCC出場は5人に確定しました。
CPTジャパンは1248人のエントリーがありました。EVO Japanの時は5000人を超えるエントリーがあったので、厳選された印象です。参加費が5000円とちょっと高めの設定だったのも、若年層が参加を見送ったのかもしれません。海外からの参加者も見かけましたが、思ったよりも少なめでした。
1248人→128人まで絞るDay1と運命のDay2
Day1は4つのブロックに分け、出場時間を区切ることで会場の混み合いを避けていました。1つのブロックには32のブラケットを用意し、各ブラケットにウイナーズ1人、ルーザーズ2人の計384人が次のラウンドに進出します。次のラウンドで勝ち残った128人がDay2へと進みます。
Day2は、まずベスト8進出者を決定します。ウイナーズ4人、ルーザーズ4人を決定し、ファイナルラウンドで雌雄を決します。これまではBO2(2勝勝ち抜け)でしたが、ベスト8からはBO5(3勝勝ち抜け)となり、すべての試合が配信台で行われます。
ベスト8に進出したのは、ウイナーズサイドがまちゃぼー選手、マゴ選手、ももち選手、ときど選手。ルーザーズサイドはふ~ど選手、LeShar選手、ガチくん選手、りゅうきち選手です。ベスト8に進出したほとんどがベテラン勢で、若手の台頭が著しい昨今においては珍しくベテランが気を吐いた結果となります。
一応、若手枠に入りそうなりゅうきち選手も28歳と、中堅と言える年齢。唯一の海外勢であるLeShar選手も25歳とこちらもギリギリ若手と言った印象です。また、ベスト8に残ったすべての選手がSFリーガーであり、SFリーガーの底力を見せつけた結果とも言えます。
優勝したときど選手がかなりキレのある動きであったことは確かですが、負けず劣らず切れ味が鋭かったのはLeShar選手です。ももち選手にルーザーズサイドに落とされてから、ひかる選手、ふ~ど選手、マゴ選手、ガチくん選手、まちゃぼー選手と綺羅星のごとく並ぶSFリーガーをなぎ倒し、グランドファイナルで待つときど選手に立ち向かいます。ときど選手もかなり手こずると思いましたが、LeShar選手以上に絶好調のときど選手がリセットもさせずに無敗優勝を飾りました。SFLでもLeShar選手を倒す選手がいるのかどうかと言うのが話題となりますが、その選手が同じチームだったということは、さらにSFLでのREJECTの強さが脅威になりそうです。
コロナ禍になり、CC自体が中止になったり、オンライン中心で各大会での優勝者が参加資格を得る方式に変わったりし、ときど選手のCC出場はしばらくできておらず、久々のCC出場となります。今年度のCCは初の日本開催となり、「スト6」がかつてなく注目を浴びている中で出場を決めるのは、さすがに“持っている選手”だということを再確認できました。
LeShar選手もSFLのために日本に滞在するので、韓国のWWは開催地的が遠い、日本のWWは参加規定をクリアしておらず、どちらも参加できない、しにくい状況です。CCに参加するにはオフライン大会で資格を得るしかなかったという厳しい条件でしたが、見事にCC参加資格を取得しました。日本開催だったので、日本人選手2人の選出を望んだ人は多いかと思いますが、LeShar選手の参加資格取得は日本のファンも納得の結果と言えるのではないでしょうか。
トロフィーなし
大会は好試合が目白押しで、盛り上がっていました。ただあえて言わせていただくとすれば、大会としての権威や価値が以前のジャパンプレミア、アジアプレミアには届かなかった気がします。
例えば、2018年にときど選手が、2019年にももち選手が優勝して獲得したあの大きな盾はありませんでした。というか、トロフィーすらありません。また、表彰式への登壇も3位まで。本来であればファイナリストは入賞者として称えられる存在であるのに、それも感じられない演出だったのはプレミアの存在価値を問われるような気がします。CC出場権のみを推すのであれば3位のまちゃぼー選手を登壇させた意図が良くわかりませんでした。プレミア大会自体がEVOなどのオフライン大会と肩を並べる大会だった印象があっただけに、CCへの予選としての意味合いしか見られなかったのは残念です。
オフラインならではの要素が盛りだくさん
今大会はCPTジャパンと同時にかげっち氏主催の対戦会である「Figthterts Crossover S.PREMIER」も同時に開催されていました。オフライン大会では会場の一部を使用して野試合ができるスペースを用意していますが、今回は予選で使用したスペースに近いサイズを用意。しかも、終日でサイドトーナメントを開催しており、予選の空き時間や敗退した選手が全国から集まった猛者と対戦することができ、大いに賑わっていました。大会参加者はもちろんのこと、観戦参加者もサイドトーナメントや対戦会には参加することができたので、参加者以外も大会の雰囲気を肌で感じられました。
対戦会はDay2ではベスト16になった時点で撤去する予定でしたが、その時点でも対戦するプレイヤーが途切れなかったため、最後まで設置していたほど。このあたりは、ゲームセンターで大会をやっていた文化の名残というか、オフラインならではの光景と言えました。EVO Japanなどでもサイドトーナメントは用意され、大会が終了したタイトルの予選をやっていたスペースをBYOCエリアとして対戦会をすることはありましたが、単体タイトルのイベントと言うこともあり、タイトルの分散もなく、それ以上の盛り上がりの対戦会となっていました。
今回のトップスポンサーは京王電鉄でした。京王電鉄にとってみても、大会としてもプラスになったように感じます。鉄道会社としては人を運ぶことを促進する意味で飛田給と言う場所は適していました。都心から少し離れた場所であったため、参加者にとってはちょっと不便を感じましたが、本来停車しないMt.TAKAO号を朝の時間帯のみ飛田給に停車する措置を行い、「スト6」のキャラクターがデザインされた特別チケットも販売され、快適な移動と大会の特別感を演出していました。
ほかにも、参加者のみのサービスとして、遠方からの来場者のために割安のホテルを用意するなど、単なるスポンサーとしてだけでなく、大会の運営参加企業として大きく大会に寄与していたのも印象的です。
大きな課題
大会は対戦台に全台PCを使用しています。これも異例中の異例と言えました。約170台のPCを用意することが容易ではないことはわかりますし、公平に競い合うためにどのPCも同じ環境にする“イコールコンディション”をつくるのが難しいことは、想像に難くありません。今回は4社のPCメーカーが協力していたので、設計やパーツ内容の異なるPC同士で調整することになり、さらに難易度は高かったことでしょう。
そのため、Day1では遅延を訴えるプレイヤーが散見され、その点は残念な結果となりました。ただ、PS5ではマシンとしてイコールコンディションは作りやすいものの、コントローラーの認証問題や長時間プレーによる不具合なども発生してしまいます。また、大会参加者の多くはPCを使用している割合が高く、大会のみPS5となるといつもと違う慣れない環境でプレーすることなってしまうという弊害もあります。
今のところ、今大会に限らず「スト6」の大規模なオープントーナメントではまだ最適解が見いだせていない状況です。ただ、参加費を払って参加している以上、ベストな状態で大会に臨みたいのはプレイヤーとして当然のことなので、今後も解決策を探し続ける必要があります。
筆者自身は2日間とも現地で取材していたので、その場では気がつきませんでしたが、配信についてもかなりの不満が出ていたと聞いていました。後日、配信を見直してみると、配信の試合数が決して充実しているとは言えず、配信台で行われる試合の選定にも疑問が持たれる内容でした。配信台が1台だったことが影響したのか、試合と試合のインターバルも長く感じました。これも試合数が少なくなった要因と言えます。
同じスーパープレミア大会であるCPTシンガポールでは、ベスト16からすべての試合を配信していましたが、CPTジャパンでは全試合配信となったのはベスト8から。ベスト16は、ばっさー選手対ひかる選手、オニキ選手対鶏めし選手、ふ~ど選手対Ending Walker選手の3試合で、すべてルーザーズサイドの対戦でした。大活躍だったあのLeShar選手をももち選手が如何にしてルーザーズに落としたかも、多くの人は知るよしもないわけです。
また、配信ではオーバーレイにより選手名が表示されますが、それも統一されていませんでした。「チーム名|選手名」の表示が基本的にどちらも英語表記でしたが、選手によっては選手名のみ日本語名と交互に表示されることがありました。
チーム名の表記もまちまちで、例えば優勝したときど選手は「REJECT Rohto Z!|Tokido(ときど)」でしたが、同じチームメイトの鶏めし選手は「RC|Torimeshi」となっており、チーム名が略称でした。スポンサー名が入らず、表記が短くなるはずの鶏めし選手の方が略称となっており、Day1では「CG|Totimeshi」とチーム名の略称すら間違っていました。略称であるかどうかは本人の登録時の申請だったとしても、運営でもしっかりと確認し、統一を図った方が観戦する人にとって親切です。チーム名によっては日本語表記を使うのもありだと思います。
グループごとの試合が終わると次のグループまでの時間があり、配信ではずっと広告が流れていたのも不評を買いました。現地では大会に遅れが発生しないように、グループごとにバッファを取っていたという印象で、慌ただしくなく、滞りなく進行していたと思います。余裕のある進行により、選手間の交流やプロ選手のグリーティングも行われており、会場に居た人はかなり有意義に過ごせた様子です。しかし、配信では単なる空白の時間となりかねず、それが30分以上続くとなると、さすがに耐えかねます。
同じCPTでもWorld Warriorでは予選の注目試合の振り返りを行っていたり、オンライン大会のときはリプレーを使って見返しをしていたりしていました。それらを鑑みても、もっと多くの試合を配信する手もあったのではないでしょうか。
オンライン配信のコメントやSNSでは、Startggのトーナメント表がリアルタイム更新ではなく、プールが終了した時点で一気に更新されていたことも話題にあがりました。試合の配信が少なく、Startggでの結果の確認もできないという状況だったわけです。視聴者にとって応援している推しやコミュニティの仲間の結果がまったくわからないとなると、リアルタイムで視聴している意味は薄れてしまいかねません。
トータルでみると、オフライン大会として現地では滞りなく進行し、かなり盛り上がっているように思えました。しかし、その分、オンライン配信に関しては、課題を多く残した結果になったようです。
今大会はこれまでできていなかったことに挑戦してクリアしたことも多くありましたが、これまでできていたことができていなかったという印象も残ります。課題については、これまでのノウハウで修正可能な部分もあるはずです。今年度に日本で開催されるCCでは、こうした課題が解決されていることを期待しています。(ライター・岡安 学)
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外部リンク
CAPCOM Pro Tour 2024 SUPER PREMIER JAPAN
https://cpt2024jp.j-cg.com/
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