コラム
2023.02.04
「東京eスポーツフェスタ2023」で見つけた、学生の可能性を引き出す取り組み
- 大会/イベント
eスポーツの競技面、教育面、職業など、様々な角度から楽しみながら学べる「TOKYO eスポーツフェスタ」が、今年も東京ビッグサイトで開催されました。さまざまなコンテンツが展開されましたが、今回は、学生向けのトークセッションとして「マイクラの教育的な可能性」「学生とつくるeスポーツの可能性と近未来」の2つをピックアップ。5分で読めるように注目のコメントをまとめました。
?マイクラの教育的な可能性
?学生とつくるeスポーツの可能性と近未来
参考ページ:https://tokyoesportsfesta.jp/seminar.html
マイクラの教育的な可能性
登壇したタツナミ シュウイチ氏は、マインクラフトを使った教育活動を行うために、教材研究や教材開発を行っています。講演では、タツナミ氏がマインクラフトに目を付けた理由、教育にマインクラフトを使うメリットを聞くことができました。
講演者プロフィール
名前:タツナミ シュウイチ 氏
職業(肩書):プロマインクフラフター、明治大学研究員、慶応義塾大学研究員、全国マインクラフトカップ全国大会審査員長
経歴:2018年1月マインクラフトマーケットプレイスにて、アジア初の作品をリリースし、プロマインクフラフターとしても活躍、同年マインクラフトの認定教育イノベーターMIEEを拝命。2021年9月には、日本で7人目のマイクロソフトイノベイティブエデュケーターフェローの称号を授与される。地上波のテレビ放送にプロマインクラフターとして出演、マインクラフトをプラットフォームとして使用した教育教材の製作や特別支援教育での活用を研究している。教員としての経験も持つ。
“勉強は辛く厳しい”は昭和の価値観
13年前ほどにマインクラフトと出会い、遊んでいたタツナミ氏は「これは教育にも使えるのではないだろうか?」と考え、当時、品川のマイクロソフトのオフィスを訪問したとのこと。そこでマイクロソフトの社員に向けて、マインクラフトの教育的な可能性について熱弁。「『なんか変わったやつが来た』と思われていた違いない」と話すタツナミ氏ですが、その後、マイクロソフトの社員と意気投合し、マインクラフト関連の活動が活発になっていきました。
タツナミ氏は、「マインクラフトには、プログラミングや化学、歴史、建築、光学・情報、特別支援などの学習を可能にするゲームモードやブロックが存在します。片付けの必要がないため、何回でも繰り返し実験をしたり、実験をセーブして後日やり直すことも可能です。そのため、教育の効率が高く、知識の習得から応用まで効率よく実施できます」と紹介。
マインクラフトは教育プラットフォームとしても活用でき、子供たちが苦手意識を持つことなくこれらの学習ができる点で効果的であるとしています。学習可能性がある分野は他にも農学や生物学、地質学などにもわたるそうです。
「好奇心を持ち、学ぶことが楽しければ自然と勉強ができる。マインクラフトには勉強が楽しめる環境があり、子供が自然と学習に打ち込める強みがある。高校の科目である情報?の内容を学習出来る環境も用意できるため、小学生の段階で高校レベルの授業内容を理解することも可能です。勉強は辛く厳しいものという価値観は昭和の価値観です」(タツナミ氏)。
強い口調で話したタツナミ氏は、令和の時代は技術や知識のアップデートが高速化し、効率の良い学びをしないとついていけないと解説していました。
ゲーム研究から生まれる効率的な教育
タツナミ氏は、マイクラを教育に導入することで学習意欲や学習速度の向上を目指し、効率よく学習できる環境を作っています。子どもは学習自体が嫌いなのではなく、従来型の「机に座って大量の読書を強要される学習」が苦手な子どもがいるだけなのかもしれません。ゲームと学習の境界線に位置するマイクラのようなゲームの研究がより進めば、もっと多くの分野で従来型の学習方法とは異なった、より効果的な教育が可能になるはずです。きっと私たちの頭の中にある「学習」の定義が壊れて、今までよりも楽しく勉強ができる未来が来るのでしょう。
学生とつくるeスポーツの可能性と近未来
同セッションでは、学生が関わる三つの団体がeスポーツを通じてどのような活動をしているのかについてプレゼンを行いました。学生自身がプレゼンをする団体もあり、イベントの企画運営や学校について紹介しました。後半には各団体から1名ずつ壇上に登場し、クロストークを実施。今回はクロストークの模様を中心に紹介します。
登壇者(クロストーク)
名前:田中 遼 氏
職業(肩書):京王電鉄 経営統括本部 デジタル戦略事業部
プレゼン内容:「京王電鉄×学生で取り組むeスポーツの可能性」と題して、3人の日本工学院専門学校の学生がプレゼンテーション。京王電鉄は沿線の発展を目指し、日本工学院専門学校と連携をして、学生に実践の場を与える活動をしている。
名前:中原 碧斗 氏(らいとまぐ氏)
職業(肩書):学生団体RAHY代表・さいたまeスポーツ協会理事、エイアンドエイチエンタテイメント取締役
プレゼン内容:「学生団体RAHY×地域eスポーツ」と題して、学生のみで大会の運営を行う「RAHY Tournament」の実施内容について紹介。「eスポーツが最も根付いている年代が作る大会は一番面白い」と話し、弁護士を巻き込んだ座談会配信なども実施している。
名前:キセルス氏
職業(肩書):ルネサンス高校eスポーツコース所属
プレゼン内容:ルネサンス高校グループ教務課の西添和寿氏の案内の元、同校の生徒3名によって自身の学校について紹介。eスポーツコースの説明にとどまらず学校全般について説明。
名前:とんぴ?氏
職業:eスポーツキャスター
※本イベントのMCを担当
クロストーク
らいとまぐ氏:
(キセルス氏へ)同じ年代でプロレベルで活躍している選手はどのくらいいますか?
キセルス氏:
自分はeFootballをプレイしているのでPlayStationを使用するのですが、同世代の間ではスマホゲームが流行っています。そのため、私が主に使っているプラットフォーム上の中でも同世代で上手な人は1桁ではないでしょうか。据え置き機に人気になってもらって同世代の層が厚くなってほしいです。
らいとまぐ氏:
(田中 遼氏へ)大企業から見てeスポーツに対する感触の変化をお聞きしたいです。
田中 遼 氏:
最初のころは「(eスポーツに対して)何だこれ?」といった感じでした。「ゲーセンとどう違うんだ?」という(笑)。近年は多くの企業が参加して、学生とのつながりができ、「これはただのゲームとは違うかも」と感じました。企業は若い世代との接点が欲しいと思っているので、そういった観点でも企業は注目していると考えております。
とんぴ?氏:
京王線沿線は学生だけでなくさまざまな世代の人が住んでいるので、eスポーツのように幅広い世代に楽しまれるコンテンツは相性が良いですよね。
田中 遼 氏:
そうですね。京王線沿線はそもそも学校が多く、eスポーツに力を入れている学校も多いので、そういった学校とぜひ連携を取りたいと思っております。
とんぴ?氏:
せっかくさまざまな属性を持った3団体が集まったので、(今年の)夏休み位に合同で何かイベントがやりたいですよね。らいとまぐさんからは何か案がありますか?
らいとまぐ氏:
eフットボールの選手がいるので、そちらの大会がやりたいです。どうせなら、サッカーではないスポーツ選手やほかのeスポーツタイトルの選手を呼んだり、学校の教職員の方々を呼んだりして大会にするのは面白いと思います。例えば「大人たちがプレーする大会」を学生が企画するのは面白いと思います。
とんぴ?氏:
せっかくの「学生×eスポーツ」ということなので、学生の下克上的なイベントになっても面白いかもしれませんね(笑)
クロストークで得た気付き
学生とeスポーツは親和性が高く、社会と彼らが連携をとることで新しい産業やイベントが作れるという話がとても興味深かったです。「eスポーツによる地方創生」はよく耳にする言葉ですが、それは夢物語ではなく、本当にeスポーツを通して地域や経済の発展もできると感じさせるクロストークでした。eスポーツ業界は、まだまだ発展途上であり、産業として未成熟な業界ではありますが、これからは社会人と学生の連携によって、さらにeスポーツが発展していくでしょう。(eスポーツジャーナリスト・小川)
■関連記事
■外部リンク
東京eスポーツフェスタ2023
https://tokyoesportsfesta.jp/
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