インタビュー

2023.01.14

セガが推し進める“ぷよぷよeスポーツ活用”の道のり 高校生を全力応援する裏側

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 日本発の落ち物系パズルとして、人気のぷよぷよがeスポーツタイトルとして大きな躍進を遂げています。一方で進んでいるのが、教育分野での活用です。高校ブートキャンプなど、中高生を中心に進めています。その狙いと背景についてセガに直撃しました。

日本発落ち物パズルのeスポーツとしてのポテンシャル

 もともと対戦形式のパズルゲームとして誕生したぷよぷよ。リリース初期からアーケード版を採用した一般プレイヤー向けの大会がゲームセンターによって開催されていました。しかし、セガでは2018年から、ぷよぷよが持つ競技性を生かし、eスポーツとして普及させていく取り組みを開始しています。

 18年10月には、従来のぷよぷよシリーズから打って変わって対戦モードのみができるタイトル「ぷよぷよeスポーツ」をリリースしており、セガのeスポーツ普及に対する本気度が感じ取れます。また、翌年の19年に初開催された全国都道府県対抗スポーツ選手権の茨城県大会では同タイトルが競技種目として採用されていることも注目すべきでしょう。

 その後、ぷよぷよは全国の自治体やコミュニティに属する一般プレイヤーによって、さまざまな形の大会で競技種目として採用されるように。現在では年に2000近くが開催されているといいます。

 一方で、セガのeスポーツ推進室 企画チームの正廣康伸チームマネージャーは、全国都道府県対抗eスポーツ選手権の関係で全国を飛び回る中、予選会場となった高校などでeスポーツ部の存在が広がり始めていることに気付いたとか。当時は高校eスポーツシーンの黎明期。全国高校eスポーツ選手権やSTAGE:0が始まったのもこの時期です。そういったeスポーツ部を持つ学校には現在も散見されるある問題を抱えていることが多かったといいます。

セガのeスポーツ推進室 企画チームの正廣康伸チームマネージャー

 「eスポーツ部を正式な部活として認めている学校は意外とありましたが、eスポーツを認めたものの、教える人材がいなくて困っているところが多かったですね」

 一般的な部活であれば、学生時代に同じ部活を経験したことのある教員を顧問やコーチとして担当させることができますが、直近にできたばかりのeスポーツ部にはそういった人材がいるはずもありません。教育者の問題は当時から高校eスポーツシーンの課題だったのです。

 そこで、セガでは、徐々に増えつつあるプロ選手を活用した取り組みを開始したのだとか。正廣チームマネージャーは「その頃にはプロ選手も30人近くいました。彼らのセカンドキャリアも考慮して、コロナ禍でのコーチング企画を始めたんです」と語ります。その取り組みこそが、ぷよぷよブートキャンプ。全国の高校eスポーツ部を対象にオンライン・オフラインでプロ選手が講師を担当するコーチングを実施するものです。コーチング終了後には参加した学校同士のオンライン大会も開催され、eスポーツ部の高校生たちが自らの腕を磨く機会とその成果を発揮する場を提供してきました。

ゲームは悪いものでもなければ勉強の邪魔にもならない

 一方で、より教育分野に入り込んだ形でぷよぷよを活用させる動きもあります。それがぷよぷよプログラミング。ぷよぷよプログラミングとは20年に無償提供が開始されたプログラミング学習教材のこと。プログラミング学習環境を利用して製品版のぷよぷよで使用されている実際の素材でプログラミング学習ができ、ぷよぷよを実際に作っていく過程でプログラミングのノウハウを学習できます。

 提供を開始してから現在に至るまで、セガではぷよぷよプログラミングを利用したワークショップを全国の小中学校を開催してきました。その裏側には、教育業界全体にあるゲームに対するネガティブイメージとの戦いがあったといいます。

ぷよぷよプログラミングを活用した特別授業の様子

 正廣チームマネージャーは「小学校などでeスポーツの取り組みを始めてみて気づいたのが、“学校でゲームをしていいのか”という問題意識が教育委員会や学校現場にあることです。決してゲームは悪いものじゃなければ、勉強の邪魔になるものでもない。ましてや、必ずしも依存に結びつくものでもないというのを、ぷよぷよプログラミングで、ぷよぷよを作ってみてもらって理解してほしいですね」と強調します。

 近年はコロナ禍による、おうち時間の拡大も手伝って多くの小学生がゲームを楽しんでいますが、家庭によっては視力の低下やゲームの長時間化を心配する声もあるだけに、教育現場でゲームを取り入れることに慎重になるのも理解できます。しかし、20年からはプログラミング学習必修化が始まり、IT教育の必要性が高まっていることも事実。ゲームとプログラミングを組み合わせて現場に取り入れることでゲームへの正しい理解を広めることにもつながりそうです。セガでは、ぷよぷよのプレー人口とIT人材の拡大を目指して取り組みを進めているとのことですが、正廣チームマネージャーは「将来的には、ゲームプログラマとしてうち(セガ)に入社したいと言ってくれるような子が出てくれる嬉しいですね」と期待を込めます。

高校に注力する理由と札幌市との提携

 近年、eスポーツを活用した年代別の取り組みとしては、学生を対象とした教育分野やお年寄りを対象とした介護分野など、幅広い年代へのアプローチがあります。これはセガも同様で、ぷよぷよをより多くの年代に広めていくべくこれまで取り組んできていました。そんな中でも、“高校生”という年代はセガにとって重要なターゲット層の一つであると言います。

 正廣チームマネージャーは「高校生という年齢層には、その先に大学生や社会人といった流れがあります。大学に行っても会社に入っても続けてほしいというような即戦力開拓に近いところがあるかもしれませんね」

 セガでは、22年の12月に札幌市立高校におけるデジタル人材育成を目指した連携協定を札幌市教育委員会と結びました。もともと札幌市ではIT人材の育成と市内定着を目指してさまざまな取り組みを推進してきたそうで、セガとの関係も深かったことから、協定を結ぶことに至ったとか。

締結式の様子。(左から)札幌市教育委員会の檜田英樹教育長、セガの瀬川隆哉上席執行役員

 この協定には連携・協力事項が定められており、「プログラミング教育やデータサイエンス等のデジタルスキル教育」「eスポーツ部の活動支援」「eスポーツの教育活用に向けた支援」「その他、前条に掲げる目的達成のために必要と認められること」の四つの点で協力していくとしています。

 これまでの高等学校に向けた取り組みではぷよぷよブートキャンプを通じて参加高校を募集する形で実施していましたが、今回の協定では札幌市の高校に対してより強力に支援していくことになるとか。今後は、ぷよぷよプログラミングを活用した特別授業や学習指導要領に対応した副教材を用いた授業などを展開していくほか、データサイエンス科を持つ高校とのスタッツ分析・研究での協力を推進していく考えです。また、eスポーツ部への支援としてプロ選手によるコーチングも実施していく予定です。

 特に、eスポーツ部支援については、これまでの取り組み中で各参加校によって熟練度が異なることから単一のカリキュラムでコーチングを実施することに難しさを感じていたとか。札幌市との提携では市内各校の熟練度に合わせてカスタマイズしたプログラムでコーチングを実施していくことを検討しているのだと言います。

 高校生という年齢は人格形成や将来の進路、さまざまな意味において重要になります。そんな中で一つのことに夢中になる子どもたちの背中をしっかりと押してあげることは大人の責務といえるでしょう。正廣チームマネージャーは「高校だとやはりフィジカルスポーツの方が目立つし、部員も多かったりします。一方のeスポーツはまだまだマイナーな面がある。そんな中で、彼らにも活躍できる場所があると示していって、学生さんたちのモチベーションが上がるきっかけにしていきたい」と意気込みを見せています。

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■外部リンク

セガ=https://www.sega.co.jp/

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