インタビュー
2023.05.20
【島根×東京】高校eスポーツ部顧問が対談! 確かに感じる生徒の成長
- インタビュー
eスポーツが島根県の高校と東京都の高校の橋渡しをしました。3月15日、16日にかけて、東京の正則学園高等学校eスポーツ部のフォートナイト部門が島根県益田市を訪問。自然豊かで歴史ある益田市の魅力に触れたほか、現地の益田東高等学校とeスポーツを通じて交流しました。交流を通じて見えてきたのは、環境の違いと共通点。合宿の終了間際、両校eスポーツ部の顧問の先生が、それぞれの部を見て感じたことについて対談しました。(取材・文/南雲 亮平)
↓↓合宿の様子は下記の記事参照↓↓
eスポーツで島根県益田市と関東を橋渡し、正則学園の1泊2日遠征に密着!
https://esports.bcnretail.com/highschool/230313_001007.html
eスポーツを通じて成長する生徒たち
── 今回は両校にeスポーツ部があったからこそ、交流の機会が生まれました。正則学園はeスポーツに取り組みはじめて4年目、益田東は2年目ということですが、eスポーツ部の活動を通じて生徒たちの変化を感じることはありますか。
須藤公太先生(以下、敬称略) チームで取り組むeスポーツでは会話しながらプレーしないといけないので、コミュニケーション能力が培われました。一人で戦っているゲームとは異なり、プレーしながら自分の思っていることを正確に伝えるというのは難しく、繰り返すことで精度があがっていくので成長はしているはずです。チームの一員として戦っていくという責任感も育まれました。4年目なので、卒業した大学1年生がDiscordで部活に遊びに来てくれるので、そこで大人との付き合い方も学べます。生徒たちはほかの部活と同じように成長していきます。
進藤大希先生(以下、敬称略) うちも同じく、生徒は本当に変わっています。かなり自信がついてきて、自己肯定感が培われています。学校は勉強ができて輝く子、運動ができて輝く子、ほかにもあると思いますがざっくりと二極化しています。ただ、今の時代はゲームが得意な子がいて、eスポーツという分野があって、そこで輝ける子がいるんではないか、と考えています。
昨年創部したての5月に、島根県eスポーツ連合が企画したイベント「アンジェeスポーツDAY」というイベントにうちの部員が参加しました。そこでフォートナイト部門に出場して、どうやら島根県のなかでも全国レベルのプレイヤーが出場していたそうなのですが、そこに勝ったんです。それからというもの、彼の自信がすごい。自分で「ここが居場所なんだ」と思っているような。よく話すようになって、全国大会に出場し、ついには校内弁論大会というイベントに「eスポーツ部に入って変わった自分」というタイトルで参加しました。
──それぞれ、いい方向に大きく変化しているということですね。今は自らが顧問を務める部活のお話だったので、次はお互いの部活について感じたことを教えてください。
進藤 正則学園さんは男子校ということを先ほど聞きました。見ていると、男子同士のコミュニケーションと言いますか、活気があるというイメージがあります。うちの部員も確かにコミュニケーション能力は成長したと思うんですけれども、正則学園eスポーツ部さんはちゃんと質問されたことに答えていました。そういった部分は見習いたいと思います。
須藤 男子校の特徴という部分で言いますと、女性職員も数えるほどしかおりません。ですので、男性とのコミュニケーションはずっと続けてきましたが、女子とのコミュニケーションは全く経験がなく、そういった点で思うところはあります。
昨日も宿に入ってから「女の子ってどうやって話しかけたらいいのか」「こういう行動って大丈夫?」みたいな会話がありました。そういうところは共学で学べる部分なのかと思います。
──交流会の終了後、さっそく正則学園の男子部員が益田東高校の女子生徒と連絡先を交換していましたね。1日目も部室で顔合わせをした際、すぐに打ち解けて機材やゲームについて話していました。共通言語があると早いですね。
須藤 部室といえば、そもそも当校(正則学園)には部室がありません。図書室の一角にPCがあるメディアセンターの、さらにその一角を校長先生と教頭先生の許可をいただいて借りて、平机にPCを設置しています。だれでも触れるので、最初の2年間くらいは「PCに触るべからず」といった注意書きが必要で、部員にもPCの管理を徹底してもらっていました。
部室があるとオン/オフの切り替えができるので、強みの一つだろうなと感じました。
進藤 実はうちも教材室に間借りしているんです。本当はもっと広げないといけないと思いつつ、最近できた部活なのであまり認められてもおらず、賛否いろいろあります。
とはいえ部屋の体裁は整っているので、部室でオン/オフを切り替えることができるのはありがたいです。部員たちの居場所という意味では、第2の帰る場所があるのはいいなと思います。
島根と東京の違い
──部室を見ると、両校とも機材も揃っています。益田東高校にはスポンサーもついていると、うかがいました。地元の企業から応援されているということなのでしょうか。
進藤 サンタミネラルさんですね。本当は東京に本社があるのですが、地元には支店があります。かなり前から、それこそインフルエンザが大流行した時から消毒液をつかっておりまして、その縁で新しいものに手を付けて行こう、とスポンサーに繋がりました。応援していただいております。益田東頑張れと。
──東京・千代田のオフィス街にある正則学園ではどうでしょうか。
須藤 地域とのつながりを頑張って促進していこうとしているのですが、当校の近くには秋葉原があるので……。秋葉原には全国レベルで強いクラーク記念国際高等学校などがあり、eスポーツにおいては、うちの学校じゃなくてよその学校にしようとなってしまいます。東京で地域の会社との連携というのは、学校としてはいろいろ取り組みやっているのですが、eスポーツ部としては難しいところです。
──企業も多いですが、競合するeスポーツ部も多くなってしまうのは都心部の悩みかもしれませんね。地域とのつながりについて、ほかにも益田東高校で開催したイベントには、地域の小中学生150人が集まったそうですね。
進藤 そうなんです(笑) 本当はもっと少ない予定だったんですが、僕が募集方法を誤ってしまって、贅沢な悩みを抱えることになってしまいました。管理職にも叱られましたが、結果的にその人数でイベントを実施しました。
人の温かみというのは、田舎だからこそ根強いものがあるんですかね。しかも、eスポーツに取り組む学校がなかなかないので、注目度が高かったのかもしれません。いまの子どもたちは小さいころからスマホを触っていますから、eスポーツなんて身近なものでしょう。さらに景品までもらえるとなって、人が集まったんだと思います。
──そういった面からみれば、都会は人も物も情報も溢れすぎていて、埋もれてしまうこともあるかもしれませんね。
須藤 ただ、全日制の高校に絞ると、東京でもeスポーツ部がある学校はそんなに多くない印象です。正則学園でも、昨年度まではeスポーツ同好会でした。学校としては部ではない扱いだったのです。同じ年のリーグ・オブ・レジェンド(LoL)部門で2回連続全国32位という結果を残してから、部として活動していく流れになっていきました。夏休みとかの学校見学のついでに開催した部活見学では、eスポーツ部は大変人気で、とくにフォートナイト部門は枠がすぐに埋まってしまうほどでした。
オフラインの魅力
──全日制の高校におけるeスポーツは、まだニッチな分野かもしれません。今回、島根県商工会議所青年部と全国高等学校eスポーツ連盟(JHSEF)の尽力を得て、島根の高校と東京の高校がリアルで交流することができました。これをきっかけに、今後も交流は続いていきそうでしょうか。
進藤 今度は逆に益田東の部員を東京に連れていきたいです。空港利用促進にもつながりますね。東京から来た正則学園さんの生徒たちは自然が豊かだと言ってくれましたが、益田東のeスポーツ部員たちは東京ディズニーランドに行ったこともなければ、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンも知らない子が多いんです。
そんななかで今回こうした縁ができたので、今度は合宿みたいに交流、オフラインで試合ができるといいなと。それが東京の学校、正則学園さんだけでなく、ほかの学校ともつながって、その後オンラインでつながると、生徒たちの活動の幅もさらに広がると思います。僕はこれを狙っています。
須藤 オフラインというのは非常に大事ですよね。オンラインなら遠く離れたところと繋がれますが、オフラインの“面と向かって交流できる”というのはとても大事です。うちの学校で、となると本当にビルなので開催場所は考える必要がありますが、企画自体は練ってみたいです。こうした縁をつないでいくのは大切なことだと思っています。
──次回の交流大会はLoLでも対戦しますか。
須藤 LoLは高度な情報戦でもあるので、できるだけ練習試合をしないようにしているんです。使えるチャンピオンや得意な戦術が公になってしまったら、がっつりと対策されてしまうので……。
進藤 野球と同じですね。偵察などを防止するためにも、たしかに素晴らしい徹底ですね。
須藤 ですので、フォートナイトならぜひ練習試合をやりたいです。今後とも、よろしくお願いします。
■関連記事
■外部リンク
益田東高等学校
https://www.iwami.or.jp/nanao/
正則学園高等学校
https://www.seisokugakuen.ac.jp/
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