インタビュー
2024.07.31
ハメコ。さんに聞く学生時代とキャリア、「自分たちの時代は“選択肢”が少なかった」
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7月6日に開催された「鉄拳不忍杯 2024」は、多くの強豪プレイヤーが集まっただけでなく、キャスター陣も豪華でした。今回はそのなかでも格闘ゲームのコメンテーター・キャスター業だけでなく、「EVO Japan」運営委員長やゲームライターの活動もされてきたハメコ。さんにインタビューを実施! 「自身の学生時代について」「学生の頃やっておいて良かったこと」「学生の頃やっておきたかったこと」を聞きました。(取材・文/小川 翔太)
最後に「eスポーツを頑張る学生へのメッセージ」もあります!
自身の学生時代について
──学生時代はどのように過ごしていたのでしょうか。
ハメコ。さん(以下、敬称略) 中学生のころは本当にゲームばっかりやってました。あと、本を読むのが大好きで、推理小説や伝記小説、純文学などを読んでいました。
勉強も嫌いではなく、学校では授業を真面目に受けていましたが、ゲームセンターに通うようになってからはゲーム側に引き込まれていきましたね。
自分は1981年生まれなのですが、1991年に『ストリートファイターII』が出てから、90年代はアーケード格闘ゲームがすごく流行った時期(中学生~高校生の頃)でして、その間は文字通りずっとゲームセンターに通っていました。
──ゲームにハマったきっかけは何でしょうか。
ハメコ。 中学生のころ、通っていたゲームセンターの常連さんにとても良くしてもらったんです。
ゲームそのものの面白さに惹かれたというよりも、学校では出会えないような、さまざまな知見を持った大人たちに仲良くしてもらえたことが、ゲームにハマった原体験です。
子どもの頃って、年上の人たちに対して警戒心があるというか、少なくとも当時の自分の場合は「大人は自分のことをわかってくれない」という気持ちがありました。なので「同じ趣味である」という前提条件が揃っていたのは、当時の自分としては、大人を信用できる要素だったのかもしれません。
特に自分に『鉄拳』を教えてくれた、とあるゲーセン常連の年上の友人には凄くお世話になりました。『鉄拳』の有名な選手だったんです。その出会いをきっかけに、自分も『鉄拳』にのめり込むようになりました。彼は一時期、高田馬場ゲームセンターミカドで『エアガイツ』を広めていて、エアガイツ仮面と呼ばれていましたね。『鉄拳』の有名プレイヤー「雷神青木」です。
ゲーセンの“大人たち”から学んだこと
──周囲の大人たちから、学んだことは何がありますか。
ハメコ。 その人たちから僕が学んだのは「ゲームをどうやって楽しむか」です。
今では、格闘ゲームもeスポーツのジャンルの一つとされるようになり、「ゲームを使って勝ち負けをつける」ものとして扱われることも多くなりました。当然、そういった勝ち負けを目的にプレーする人もいると思うのですが、自分の考えは少し異なっています。
というのも『鉄拳』にはいろんなコンボがあるのですが、当時の大人たちからは「最もダメージの高いコンボだけじゃなくて、創意工夫をもっていろんなコンボをすることに価値がある」と言われたからです。
当時は「そうなのかぁ」と従っていただけなのですが、いま考えるとアレは「ゲームをいかに工夫して楽しむか」「自分なりに考えてどう遊ぶか」を鍛えてもらってたんです。
高校卒業の前後からゲームライターを始めたのですが、そこでも「深くゲームを楽しむ」「自分なりにゲームのことを深掘りする」という、当時の大人たちから学んだことが活きました。
──もしハメコ。さんが、いま学生だとして、大人たちのコミュニティに参加するとしたらまず何をしますか。
ハメコ。 インターネットを活用しますね。当時の自分は運良く地元のゲームセンターで波長の合う先輩たちと出会うことができましたが、こんなことはなかなかありません。
今はインターネットを活用することで、同じ趣味を持つ人を探すのは簡単になったと思うんです。あとはゲーム内のランクマッチの機能を活用したり、大会に参加してコミュニティを探すでしょう。
──確かに当時と比べると、今はコミュニティを探す手段や、ゲームスキルを上達させるための情報が溢れているかもしれません。
ハメコ。 そうですね。ただ、その一方で「自分で工夫する」に辿りつくのが難しい時代になっているとも感じます。
先ほども言ったように、自分は大人たちから「強さだけを求めてプレーする」「強い人の真似をする」ではなく「自分で工夫する」ことの大切さを教えてもらってきました。
いまはYouTubeの攻略動画などで「正解っぽいもの」を探すのがあまりにも簡単な時代になってしまった。初心者のうちは良いですが「もっと強くなる、もっとゲームを楽しむ」を目指した場合、どこかのタイミングで「自分で試して失敗する」「失敗を繰り返して成功に辿りつく」という経験も必要になってくると思います。
それはゲーム以外でも大切なことなのかもしれません。正解を見つけやすい時代だからこそ「自分で考えて工夫する」ことの重要性が増している気がします。
学生時代の後悔は「もっと英語をやればよかった」
──学生時代にもっとやっておけばよかったと思うことはありますか?
ハメコ。 もっと英語を勉強しておけば良かったなと思いますね(笑)。
今では英語の教材も大量にありますし、動画などで昔よりも簡単に勉強できるので、やっておくべきでしょう。これからeスポーツ関連の仕事をする場合、英語は必須だと思います。
ゲームの良いところは「簡単に世界中のプレイヤーたちと繋がれること」で、コミュニケーションを取ることで自分の世界が広がっていくからです。また、英語ができると国外のeスポーツ情報にアクセスできるようにもなります。
──読書がお好きだったとのことですが、それもいまの仕事で活きていますか?
ハメコ。 自分はもともとゲームの攻略ライターをやっていて、そこから実況解説に入ったという経緯があります。いずれの仕事も、ゲームにまつわる諸々や、試合中に起きた現象を言語化して説明する能力が求められます。そういった面で、中高生時代に読書や作文を通じて養ったスキルが役立っていますね。
──いまの時代はプロゲーマーも配信などで話す機会が多いので、競技者も「言語化のスキル」が求められていたりするのでしょうか。
ハメコ。 確かに(競技者の人たちも)言語化に優れていたほうが、コミュニティの盛り上がりや外側へのアピールなど、いろいろと役に立つ場面は多いのかなと思います。
とくに格闘ゲームの競技シーンは、プロゲーマーたちが自助努力でストリーマーとしての活動も頑張ってきた結果、タレント性の高いプレイヤーが増え、格闘ゲームコミュニティの外からも認知されやすくなったという側面があります。
ただ自分としては、競技者はまず「ゲームが強い」ことが最重要であると考えています。そこまで競争が激しくなければ「ゲームの強さ」と「言語化スキル」の両取りでもいけるでしょうが、本当に競争力の高い環境に置かれた時、それをやっている余裕が果たしてあるのか、という疑問もあります。まあ、難しい話ですが。
eスポーツを頑張る学生にメッセージ
ハメコ。 うーん、自分たちの頃とは全く時代が違うので、(メッセージを考えるのが)難しいですね(笑)。
自分たちの世代って、何というか「もうゲームの道しかない!」って感じだった。「もう俺、ここまできちゃったし(笑)」みたいな、(他のキャリアを検討することについての)“諦め”というか「もうやるしかない」という状況でした。
当時の自分としては「ゲームで飯が食えれば何でも良い」だったんです。今では裏方の仕事も含めると、ゲームに関われる仕事の選択肢が増えています。勿論「飯を食えるゲームタイトル」と「飯を食えないゲームタイトル」というのは今でもありますが、昔と比べると選択肢が増えていると思います。
またゲームに限らず、それぞれ自分の好きなことがあるはずです。eスポーツ現場のメイクさんやゲームライターなど、自分の好きなことをゲームに絡めて仕事にしやすい時代ではあるので、ゲーム以外の「好き」を探しながら、ゲーム業界に関わる機会をうかがうのはありだと思います。
ぜひ、自分なりの答えを探してみてください!
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外部リンク
esports Style UENO(鉄拳不忍杯 2024)
https://esports.au.com/event/detail/20240614.html
ハメコ。 / hameko(Xアカウント)
https://x.com/hameko