レビュー
2021.06.29
ASRockのビデオカード「AMD Radeon RX 6700 XT Phantom Gaming D」レビュー、性能と価格のバランスに優れたミドルハイエンド製品
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- ゲーミングデバイス
eスポーツを愛するプレイヤーにとって、最も重要なパーツともいえるのが高性能GPUを搭載したビデオカードだ。ゲーム以外の一般的な作業ならCPUに統合されているGPUでも十分だが、最新ゲームを快適に遊ぶには単体GPUが欠かせない。ところが最近、仮想通貨のマイニングやAI学習などの需要が急増したことで、ビデオカードが品薄になり、価格も高騰している。
そこでお勧めしたいのが、AMDのRadeonシリーズだ。Radeonはゲーミング用途に特に強く、ライバル製品と比べてもコストパフォーマンスが高いことが魅力だ。本稿では、Radeonシリーズの最新モデル「Radeon RX 6700 XT」を搭載したASRockのビデオカード「AMD Radeon RX 6700 XT Phantom Gaming D 12GB OC」を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。
ビデオカードが品薄になり、高騰が進んだ理由
GPUメーカーから新しいGPUが発表されると、各ビデオカードメーカーからそのGPUを搭載したビデオカードが一斉に発売され、パーツショップの店頭に並ぶというのが通例であったが、最近、ビデオカードが品薄になり、モデルによっては店頭在庫がほぼなくなってしまうことも珍しくなくなった。その理由はいくつか挙げられる。
まずは、コロナ禍もあり、半導体自体の需給バランスが崩れ、生産数自体が減っていることがある。高性能GPUは、集積するトランジスタ数も非常に多くダイサイズが大きいため、歩留まりも低下しやすい。さらに、ここ数年、ビットコインに代表される仮想通貨のマイニング需要が増大している。仮想通貨を効率良くマイニングするには高性能GPUが欠かせない。本格的にマイニングを行っている人の中には、ビデオカードを5枚も6枚も使っている人もいる。また、AIブームもビデオカード品薄の一因だ。ディープラーニングの学習を短時間で終わらせるにはGPUが多数必要なのだ。
こうしたことが重なり、昨年からビデオカードの争奪戦が繰り広げられている。特に、マイニングやAI用途ではNVIDIAの「GeForce」シリーズの人気が高く、品薄なだけでなく実売価格も高騰しており、最新ゲームを快適にプレイしたいというeスポーツプレイヤーにとって、頭痛の種となっている。
AMDのRadeonシリーズが狙い目
そこでお勧めしたいのが、冒頭にもあった通りAMDの「Radeon」シリーズである。Radeonシリーズは、GeForceシリーズと双璧をなすGPUであり、お互いに競い合って性能を高めてきた歴史がある。Radeonシリーズを搭載したビデオカードも人気で品薄になっているが、店頭から一掃されたというほどではない。
また、ことゲーム用途という観点では、最新のコンシューマーゲーム機が揃ってAMDのRadeonシリーズを採用していることにも注目したい。具体的には、ソニーのPS5とマイクロソフトのXbox Series XがRadeonシリーズをベースにしたGPUを搭載している(PS4やPS4 Proも、AMD製のGPU統合CPUが使われている)。
最近は、ゲーム開発にUnityなどのゲームエンジンを採用することが増えており、同じタイトルがPCとPS5、Xboxなどで同時にリリースされることも多くなっているが、コンシューマーゲーム機でも主流のRadeonシリーズなら、ゲームの動作についても安心だ。
Radeonシリーズの最新モデル「Radeon RX 6700 XT」のバランスが優秀
一口にRadeonシリーズといっても、エントリークラスからハイエンドまで数多くの製品があるが、ハイリフレッシュレートにこだわるeスポーツプレイヤーにお勧めしたいのが、2021年3月に登場した最新モデル「Radeon RX 6700 XT」(以下6700 XT)である。6700 XTは、AMDの最新GPUアーキテクチャ「RDNA2」を採用しており、同アーキテクチャを採用した「Radeon RX 6900 XT」「Radeon RX 6800 XT」「Radeon RX 6800」の下位モデルに位置づけられる。6900 XT/6800 XT/6800は4K解像度でのゲームプレイを見据えたスペックになっているのに対し、6700 XTは、フルHD(1920×1080ドット)を超える1440p解像度(2560×1440ドット)でのゲームプレイに最適な製品とされている。
6700 XTの具体的な仕様は以下の通りだ。
製造プロセス:7nm
コンピュートユニット:40基
ストリームプロセッサ:2560基
ゲームクロック:2424MHz
ブーストクロック:2581MHz
ビデオメモリ容量:12GB(GDDR6)
メモリスピード:16Gbps
メモリ帯域幅:384GB/s
消費電力:230W
注目したいのは、ビデオメモリ容量だ。ライバルとなるのはNVIDIAの「GeForce RTX 3060 Ti」や「GeForce RTX 3070」だが、どちらもビデオメモリ容量は8GBである。対して6700 XTのビデオメモリ容量は12GBであり、1440pの高解像度+高画質設定でも余裕がある。価格的には、RTX 3060 TiとRTX 3070の間であり、コストパフォーマンスが高いことがわかるだろう。
ASRockの「AMD Radeon RX 6700 XT Phantom Gaming D 12GB OC」の魅力
6700 XTを採用したビデオカードも各社から発売されているが、今回はASRockの「AMD Radeon RX 6700 XT Phantom Gaming D 12GB OC」(以下6700 XT Phantom Gaming D)をチョイスした。ASRockは、台湾の大手マザーボードベンダーであり、高性能で信頼性の高い製品作りには定評がある。日本でもマザーボードの販売数で2位のシェアを獲得しており、特に「Phantom Gamingシリーズ」や「Taichiシリーズ」といったゲーミングマザーボードやハイエンドマザーボードの評価が高い。ASRockは、ベアボーンや産業向けPCでも高いシェアを獲得しており、2018年からAMDのGPUを採用したビデオカードの製造・販売を開始。こちらも高い人気を得ている。
ASRockから販売されている6700 XT搭載ビデオカードは「Radeon RX 6700 XT Phantom Gaming D 12GB OC」「Radeon RX 6700 XT Challenger Pro 12GB OC」「Radeon RX 6700 XT Challenger D 12GB OC」「Radeon RX 6700 XT Challenger D 12GB」「Radeon RX 6700 XT 12GB」の5モデルがある。それぞれ、GPUの動作クロックやファンの仕様などが異なるが、今回試用した6700 XT Phantom Gaming Dは、この5モデルの中で最上位に位置づけられる製品だ。
OCという文字はオーバークロックを意味しており、6700 XT Phantom Gaming Dは、他のモデルよりも動作クロックが高く設定されている。6700 XTの定格ゲームクロックは2424MHz、ブーストクロックは2581MHzなのに対し、6700 XT Phantom Gaming Dでは、ゲームクロックが最大2548MHz、ブーストクロックが最大2622MHzで動作するため、より高いパフォーマンスを実現できる。
オーバークロックでも安定した動作を実現するために、高性能なファンを3基搭載。ファンはARGB LED対応で、発光色を自由に制御できる。また、カードの上部にもARGB LEDが搭載されており、美しく光る。ファンのLEDやマザーボードのLEDとあわせて一括制御できるので、派手なPCを組みたいと思っているeスポーツプレイヤーには最適だ。大型ヒートシンクには発熱面との接触面積を最大化したUltra-fitヒートパイプが採用されており、効率良く冷却が可能。出力端子は4つあり、DisplayPort 1.4×3とHDMI 2.1×1という構成になっている。バックプレートが金属製で、見た目がお洒落なだけでなく、堅牢性も高い。
最近流行のeスポーツタイトルも超快適!
eスポーツで勝つためには、もちろん練習や仲間との連携が重要だが、実際のゲームタイトルでのリフレッシュレートも超重要だ。リフレッシュレートが高ければ、それだけ動きが滑らかになり、FPSやTPSなどでのエイミングもやりやすくなる。eスポーツプレイヤーなら解像度よりもリフレッシュレート(より正確にはゲームでのフレームレート)を重視すべきなのだ。PCゲームの場合、リフレッシュレート60Hzが最低ラインとなるが、eスポーツで上を目指すなら、常時144Hz以上出せる環境が望ましい。
そこで、実際のゲームタイトルを用いて、6700 XT Phantom Gaming Dの性能を検証してみた。検証に使ったタイトルは、「ファイナルファンタジーXIV」「ファイナルファンタジーXV」「Apex Legends」「フォートナイト」「VALORANT」の5つである。
また、検証環境は以下の通りだ。Radeon Softwareのバージョンは21.6.1である。
CPU:AMD Ryzen 7 5800X
マザーボード:ASRock X570 PG Velocita
メモリ:Team TF8D416G3200HC16CDC01(DDR4-3200 8GB×2)
SSD:Samsung SSD 980 PRO 1TB
OS:Windows 10 Pro
ファイナルファンタジーXIVとファイナルファンタジーXVは、それぞれ専用ベンチマークソフトが用意されているので、それを利用した。ファイナルファンタジーXIV ベンチマークの1920×1080ドット、最高品質での結果は21041で「非常に快適」、1920×1080ドット、高品質(デスクトップPC)での結果は21651で「非常に快適」となった。このベンチマークでは、スコアが7000を超えると非常に快適と判定されるようになっており、十分すぎるほどのパフォーマンスだといえる。
ファイナルファンタジーXV ベンチマークの1920×1080ドット、高品質でのスコアは10485でとても快適、1920×1080ドット、標準品質でのスコアは14758で、非常に快適となった。ファイナルファンタジーXVのWindows版は2018年に発売されたタイトルであり、かなり描画負荷が高いのだが、スコア9000以上がとても快適、12000以上が非常に快適と判定される。こちらも高品質でも十分快適にプレイできる。
Apex Legendsは、eスポーツタイトルとしても人気のバトルロイヤルFPSである。計測にはFrapsを用い、ゲームプレイ中の1分間の平均フレームレートと最高フレームレート、最低フレームレートを3回計測し、その平均を算出した。描画設定は基本的に最高設定である。結果は、平均フレームレートが209fps、最高フレームレートが296fps、最低フレームレートが129fpsとなった。
フォートナイトは、クラフト要素を持つバトルロイヤルTPSであり、高い人気を誇っている。計測にはFrapsを用い、ゲームプレイ中の1分間の平均フレームレートと最高フレームレート、最低フレームレートを3回計測し、その平均を算出した。描画設定は基本的に最高設定である。結果は、平均フレームレートが147fps、最高フレームレートが207fps、最低フレームレートが79fpsとなった。
VALORANTは、カウンターストライクなどの流れを汲むタクティカルシューターなどと呼ばれるFPSであり、攻撃側と防御側の2チームに分かれて戦う。リリースは2020年6月と新しいが、描画負荷は比較的軽い。Apex Legendsやフォートナイトと同様に、描画設定を最高にし、Frapsを用いてゲームプレイ中の1分間の平均フレームレートと最高フレームレート、最低フレームレートを3回計測し、その平均を算出した。結果は、平均フレームレートが361fps、最高フレームレートが546fps、最低フレームレートが241fpsとなった。
前述したようにFPSやTPSでは、フレームレートが144fps以上出ていれば、eスポーツの戦いにおいても十分満足できる。今回ベンチマークを行った3タイトルは、全てその基準をクリアしており、6700 XT Phantom Gaming Dは、フレームレートが重要なeスポーツプレイヤーにも、自信を持ってお勧めできる製品といえる。
静音性も優秀、ビデオカード選びに迷っている人にお勧め
また、6700 XT Phantom Gaming Dを試用していて驚いたのは、静音性の高さだ。負荷がかかっていないときはほとんどファンの音が聞こえず、負荷がかかってファンの回転数が上がっても耳障りな音を出すことはない。深夜でも気兼ねなく練習できるだろう。6700 XT Phantom Gaming Dのビデオカードとしての完成度は非常に高く、これからeスポーツの世界へ本格的にチャレンジしたいという人や、最新ゲームを高画質で快適にプレイしたいというゲーマーにはぴったりの製品だ。
製品がたくさんあってどれを選んだらいいか分からないという人でも、6700 XT Phantom Gaming Dを選んでおけば間違いない。フルHD解像度なら、十分性能に余裕があるので、今後長い間現役として通用するだろう。もちろん、もっと上を狙いたいのなら、ASRockからは6800や6900 XTを搭載した製品も販売されているので、そちらもお勧めだ。
提供:ASRock