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eスポーツが“成長”促す、思いやりあふれる仙台育英学園高校 eスポーツ部

【高校eスポーツ探訪・5】 大会やイベントが次々と開催され、注目を集めている高校生のeスポーツ活動。部活を立ち上げる学校も増え、徐々に活性化しつつある。今後の進路はそれぞれだが、eスポーツファンであることは間違いない。そんなeスポーツの明日を担う若者の今を追いかけ、明日を占う連載が「高校eスポーツ探訪」だ。

 第4回は、宮城県・仙台育英学園高等学校を取材した。

仙台育英学園高校 eスポーツ部

 同校は1905年(明治38年)の創立という伝統ある学校だが、その校風は先進的で多彩な教育カリキュラムが特徴だ。「逆転の仙台育英」を掲げて、生徒の「夢を実現する」ことを目標の一つに据えて進学、就職、技能育成と多様な生徒のニーズに応える仕組みづくりに取り組んできた。全国高校サッカー選手権の出場常連校でもあり、誰もが知る強豪校と言えるだろう。

eスポーツ部発足のきっかけ

 学校生活において、勉学に並んでもう一つの中心ともいえる部活動もその方針の例外ではない。同校には、eスポーツ部以外にパソコン部、ICT部があり、情報系の部活も充実している。

 eスポーツ部を立ち上げたきっかけは、高校生を対象とした全国大会が開催されるなど、背景にeスポーツの盛り上がりがあったという。サードウェーブが提供している「eスポーツ部発足支援プログラム(現:高校eスポーツ部支援プログラム)」が話題になったことも追い風になった。

 三年間無料でゲーミングPCをレンタルできるということで、管理職も「やってみても面白いんじゃないか」と承諾し、発足に至ったという。部員の募集も順調で20人を超える生徒が入部を希望し、最初から5人1組で4チームを構成できた。こうして2018年秋にeスポーツ部の活動を開始。18年の時点で、学校公認ではなく活動のみだったが、19年4月に部活動として本格スタートした。

 環境は、レンタルのPC5台に加えて、部室となっている学校のPC室の40台マシンにLeague of Legends(LOL)をインストールして利用しているという。チームごとに集まってLOLのランクやフリーマッチに参加するなどの活動が基本。スペック的に「カクつく」マシンはあるものの、部員全員がログインしてLOLをプレイできる環境を整えた。ちなみに、PCのスペックでいうと、若干学校側のPCの方が「メモリ性能が低い」(部員)という。

 PC利用上の制約として競技になっていないゲームはインストールできない。「競技となるゲーム」とは、国内大会が開催されたことのあるゲームのことだ。「高校生=未成年者」がプレーする前提なので、レーティングの問題があり、流血のシーンなどで抵触しても対象外となる。

 こうして整った態勢の中、創設わずか2年目にしてステージゼロの東北ブロック予選で準優勝を納めるまでになった。ブロック優勝と全国大会出場に向けて、今季こそという機運が高まった。現在、「ランクに参加できるプレーヤーのレベル30まではあげていこう」(顧問の村上先生)という方針を立てている。

全国高校対抗eスポーツ大会STAGE:0に出場した際の写真(LOLをプレイ中)

初めてのPCゲーム

 生徒たちは、今までのゲーム経験としてコンソールゲームが多かったという。コンソールゲームからPCゲームに移って、まず「操作性が全然違う」と感じたそうだ。ゲーム自体の画質とか動きがものすごく良くなったと感じる反面、操作の難しさもある。ハードルの高さはあるものの、友達と一緒にやりながら、その分、上達の手応えを感じるという。以前持っていたコンソールのゲームを売り払ってしまった生徒もいるようだ。

新型コロナの衝撃

 そんな順風満帆の状況の中、今年の新型コロナ騒動。「優勝に向けた練習はどのように?」と尋ねると、生徒は言葉を濁した。そもそも、「時間がなくてバラバラでなかなか集まれない」と重い口調。現在、「コロナ対策」で学年ごとに分散登校する状況で「部活動の時間が取れていないというのが近いところの現状」(村上先生)という。

 全員そろっての部室での練習は取材当時、行えていない。ただ、個々のチーム内ではネットを活用してコミュニケーションが取れている。生徒は、「ネットは直接会わなくても一緒にできるのが強みだと思っている。普段と変わらずコミュニケーションが取れるところが、eスポーツのいいところではないか」と語る。

 現在は、それぞれの自宅でネット越しにやり取りして活動している状況という。ただし、「顔を合わせてする方が意思の疎通も取りやすいし、直接画面を見ながらアドバイスした方が分かりやすいというのはある」(前出生徒)という。

 他校との練習試合は何回か行えている。ゲーマー向けのチャット「Discord」に高校生のコミュニティがあり、練習試合の掲示板ができているという。そこを中心に、他校のリーダー同士で連絡を取り合って練習試合をセッティングしているとのことだ。

PC室での戦略会議(LOLについて)

両親への説得、自立心を養う

 一方、生徒を見守る両親の協力はどうなのだろうか。部員に聞いてみると入部に当たっての反対や、ゲームのプレーについて時間制限などのケースはなかったが、ゲーム用のPC購入にあたって両親から難色を示されるケースがあったという。道具がゲーミングPCなだけに、高額な出費になることが一つの壁だった。

 デメリットにみえるこうした側面は、意外にも生徒にとって他の部活にない自立心と計画性を養う機会につながっているようだ。実際に、PC購入の「壁に当たった」生徒は、両親に対して設備投資の資金計画を提示。購入の総額を両親に「どのように返済していくか」計画を明らかにして、条件を交渉していくことで、「壁」を乗り越えたという。

 また、大会があるということが家族に対しても大きな波及効果になっている。大会に向かって頑張っているのを、両親が「応援してくれている」という生徒は多い。中にはゲームの大会に出場するという話が親戚中に広まってしまった、という生徒もいた。

文化部なのにスポーツ系

 同校の部活の紹介では、「eスポーツ部」が文科系の部活にカテゴリされているが、他の文科系の部活と大きく違うのは、試合があり、大会があるということだ。その点は、運動部の空気感がある。

 チームメイトとのコミュニケーションも、普段の遊びのときとは異なる。それまでは「みんなでゲームしよっか?」という感じだったが、「大会」に向けての練習が始まった瞬間、空気が変わるという。

 チームとしての力をどう高めていくか、経験の長い生徒のアドバイスを聞きながらみんなで冷静に戦略を検討する。練習を繰り返した回数が習熟と経験につながると生徒は指摘する。遊びならばミスも笑いで終わるが、大会となるとちょっとした1人のミスが全体の足を引っ張ることになるので、練習は真剣そのものだ。

 いわゆる「体育会系」のノリなのか、というとまた異質な雰囲気だ。連帯感と協調性、メンタルが普通のスポーツよりも問われるという色彩がある。

 「一人でコンソールゲームで対戦していると、カッときてモノに当たったりしていたが、部活で仲間とゲームをしているうちに変わってきた」と経験談を語る生徒。今までの自分のようにモノに当たる仲間を見ると、「周りは気分悪くなるなぁ」と気付いたり、人が嫌がることに気付きがあったりなど、ゲームの実力がついてくるにつれ、多くの気付きがあり、コミュニケーションで自制が働き、気を配るようになったという。また、高校に入って部活を始めてから両親から精神的に成長したと指摘された生徒もいた。

 eスポーツ部で「何を学んで欲しいか」を、顧問の村上先生に尋ねた。「LOLというゲームは5人が強調しないと勝てず、それぞれの役割がある。自分自身の役割を本人が意識して全体で連携していく、チームメートと協力するということが不可欠」という。「普通の学園生活では見過ごされがちな高い協調性を身につけてもらえれば」と語った。

 顧問の先生から主力プレーヤーとして紹介された生徒に、「主力ということを意識することはありますか」と尋ねると、生徒は困った雰囲気を漂わせ、だいぶ思い悩んだ後、仲間の体面に配慮してこう話した。「いや、うちはみんな強い」。他の学生たちも、言葉の端々にお互いを立てて励ましあう雰囲気が感じられた。

今期の抱負「全国へ」

 最後に生徒に今期の目標を聞いてみた。「去年の大会、一回戦は勝てたけど二回戦で敗退しまって、あと一歩のところで全国に行けなかったので…」と悔しさを滲ませながら、最後は「今年は全国に行きたい」と力強い口調で語ってくれた。

 コロナ禍で部室での練習もままならない逆境の中、「逆転の仙台育英」のメンバーは着々と成長し、まさに逆転の時を迎えつつあるのかもしれない。(取材/南雲 亮平 文/関根 航太郎)