解説

2021.03.26

「eスポーツ」とは?概要や競技種目、賞金などをわかりやすく解説

記事をシェア
エックス
フェイスブック
ライン

 近年、「eスポーツ」という言葉が広く知られるようになってきました。多数の世界大会が開催され、日本でも競技人口や市場規模は成長し続けていますから、注目している人も多いでしょう。

 その一方で、eスポーツがどんなものなのか良く分からない、という人も多いのが実情です。本稿では「eスポーツとはなんなのか」を説明するとともに、実際にどのような競技が行われているのか、世界や日本でどんな大会があるのかなどをわかりやすく解説します。eスポーツに興味がある高校生の方はもちろん、保護者の方々もぜひ読んでいただきたい内容になっています。

「eスポーツ」とは?

 「eスポーツ」は、「Electronic Sports(エレクトロニック・スポーツ)」の略称で、ビデオゲームを使って行う競技のことです。対戦するプレイヤー同士はもちろん、観戦者も楽しむことができるもので、コンテンツの一つとして親しまれています。

eスポーツを「スポーツ」と呼ぶ理由

 日本では「スポーツ」というと、汗を流して行うもの、肉体的なトレーニングをともなうもの、というイメージが強いので、ゲームを「スポーツ」と呼ぶことに違和感がある人もいるでしょう。

 「スポーツ」の語源はラテン語の「気晴らし」、「楽しむ」、「遊ぶ」という意味を持つ言葉で、広義ではゲームをプレイして楽しく過ごすことも「スポーツ」と認識されています。

 さらに、eスポーツは明確なルールの中で切磋琢磨し、チームで力をあわせ、知恵を絞って勝利を目指す要素があります。ですので、日本人が考える従来の「スポーツ」と同様の興奮を味わうこともできます。

 このような点を踏まえれば、eスポーツが世界中で新たな「コンテンツ」として定着し始めていることは、自然な流れであるとも言えるでしょう。チェスや将棋などの「マインドスポーツ」に類するものとして扱われることもあります。

eスポーツの市場規模

 eスポーツの市場規模は2020年時点で10億5930万ドル。2023年には15憶ドルを超えると言われており、3年で約50%もの伸びが予想されていますから、「単なるゲーム」という枠を超え、あらゆる業界からの注目が集まっている分野と言えるでしょう。
(※参考:Newzoo 「グローバルeスポーツマーケットレポート」)

eスポーツの主な競技種目(プレイされているゲーム)と競技人口

 ここからは、eスポーツの代表的な競技種目を紹介し、それぞれの競技概要や世界および日本国内の競技人口について解説しましょう。

eスポーツで選ばれるゲーム

 まず、eスポーツの競技の種類や特徴などを紹介します。

FPS

 FPSとは「First Person Shooter(ファーストパーソン・シューター)」の略称で、キャラクター自身の視点で行うシューティングゲームです。操るキャラクターは武器を持つ腕が見える程度で、全身を見ることはできません。現実世界の自分の目線と同じです。反射神経の良さと臨機応変な判断、針の穴に糸を通し続けるような精密な操作を要求される傾向が強いです。プレイヤー目線でゲームが進む没入感の高さが大きな魅力です。

eスポーツの大会で採用される代表的なタイトル
・エーペックスレジェンズ(Apex Legends)
・レインボーシックスシージ(Tom Clancy's Rainbow Six Siege)
・カウンターストライク:グローバルオフェンシブ(Counter-Strike: Global Offensive)
・オーバーウォッチ(Overwatch)
・ヴァロラント(VALORANT)
・コールオブデューティー(Call of Duty)

TPS

 TPSは「Third Person Shooter(サードパーソン・シューター)」の略で、FPSとは異なる三人称視点のゲームです。プレイヤーが操っているキャラクターを背後から見守る視点でプレーすることから、の姿が見えることからFPSより没入感は低いですが、広く周囲を見渡す戦略的なプレイを楽しむことができます。

eスポーツの大会で採用される代表的なタイトル
・フォートナイト(FORTNITE)
・プレイヤーアンノウンズバトルグラウンズ(PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS)※FPSモードも選択可能
・スプラトゥーン2

格闘対戦ゲーム

 格闘形式で相手を倒すことを目的とするゲームで、1対1で対戦することが多いです。反射神経に加え、相手の動きの予測など心理的な戦いになることもあります。国内でも有名なタイトル・シリーズが多く、日本人プレイヤーの影響力が強いジャンルでもあります。

eスポーツの大会で採用される代表的なタイトル
・ストリートファイターV
・鉄拳7
・大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL

スポーツ・レースゲーム

 サッカーやバスケットボール、野球などの一般的なスポーツや、車やバイク、飛行機などで順位を競うレースなどを扱います。現実世界の選手や車の性能を反映しており、幅広い知識と戦略、そしてそれを実践する技術が必要です。

eスポーツの大会で採用される代表的なタイトル
・ロケットリーグ(Rocket League)
・FIFAシリーズ
・ウイニングイレブン
・グランツーリスモSPORT
・実況パワフルプロ野球

パズルゲーム

 落下してくるパーツを素早く効率よく移動させ組み合わせる系統のゲームや、相手を妨害しつつパズルをクリアするゲームなどが多く採用されます。ランダムに生成されるパズルを組み立てながら対戦相手の状況も伺うなど、高度なマルチタスクを処理する能力が求められます。

eスポーツの大会で採用される代表的なタイトル
・ぷよぷよeスポーツ
・パズル&ドラゴンズ

RTS

 RTSは「Real Time Strategy(リアルタイムストラテジー)」の略です。戦場となるフィールドで、リアルタイムの戦略、戦術を展開しながら相手と戦うシミュレーションゲームです。多くは1対1で行われます。自らが率いる軍隊を操作しながら、刻一刻と変わる戦況を見極める必要があり、緊張感が楽しめます。

eスポーツの大会で採用される代表的なタイトル
・クラッシュ・ロワイヤル
・スタークラフト2(StarCraft II)

MOBA

 MOBAは「Multiplayer Online Battle Arena(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)」の略です。RTSと似ていますが、MOBAはチーム戦で対戦相手と互いに陣地の攻略を目的とするため、攻撃と防御のバランスを考え、局面ごとにチームワークで対応する面白さがあります。観戦するためにはある程度の知識が必要ですが、深い戦略と反射神経、高度な操作技術の組み合わせから生まれる一瞬の攻防が魅力です。

eスポーツの大会で採用される代表的なタイトル
・リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)
・ドータ2(Dota 2)

デジタルカードゲーム(DCG)

 デジタル上のカードを使ってプレイするゲームの分野で、リアル世界の紙で作ったカードを用いるカードゲームは含みません。リアルでは再現不可能なランダム性を含む効果を実現できる点が独特の面白さとも言えます。

eスポーツの大会で採用される代表的なタイトル
・レジェンド・オブ・ルーンテラ(Legends of Runeterra)
・ハースストーン(Hearthstone)
・シャドウバース(Shadowverse)
・TEPPEN

eスポーツの競技人口

 ここからは、eスポーツの競技人口について説明していきましょう。

海外(世界)のeスポーツ競技人口


 eスポーツとして参加する、あるいはeスポーツの競技タイトルをプレイする人口は世界中で1億人を超えていると言われており、直接競技をしない視聴者数は3億人を大きく超えているというデータもあります。

 また、eスポーツの競技者や視聴者ではなくても、オンラインゲームをプレイする人は世界に22憶人程度存在すると言われています。2020年現在の世界人口は約78憶人ですから、なんと世界の1/4以上の人が何らかの形でオンラインゲームをプレイしたことがある計算になり、eスポーツがさらに身近な存在になれば、視聴者は大きく増えることが想像できます。

 億単位の数字が並ぶと想像しにくいと思いますので、比較しやすい例を挙げてみましょう。日本でメジャーな競技である野球も、世界での競技人口は3500万人程度となります。また、サッカーの競技人口は約2.5億人と現状のeスポーツより多いですが、歴史の違いを考えればeスポーツが急速に世界に認知されていることがわかります。

日本のeスポーツ競技人口

 前の項目で世界にはeスポーツのプレイヤーも視聴者も非常に多く、これからも増えていくと予想されていることを紹介しました。

 一方日本では、競技人口が約390万人と言われているので、世界で約1億人いる競技者の中の3.9%に過ぎず、数字だけを見るとあまり多いとは言えません。視聴者数は競技人口より少なく、約160万人ですから、まだまだ発展途上と言えます。

 このような数値から、日本は「eスポーツ後進国」と書く記事も散見されますが、果たして本当にそうでしょうか? 世界人口78憶人に対して競技人口1億人の比率は1.2%ですが、日本の総人口1億2650万人に対して競技者390万人は約3%に当たりますから、世界平均を大きく上回っているのは事実です。そのため、まだトップクラスではないとしても悲観的に考える必要はありません。

 また、日本国内の大手企業がeスポーツの分野に次々と参入していますし、官公庁も精力的に後押ししていることを考えれば、今後発展していく分野であることは間違いないでしょう。

現在開催されているeスポーツの主な大会

 ここではeスポーツの主要な大会について、用いられるゲームタイトルや賞金、参加条件などを記載します。

The International Dota2 CHAMPIONSHIPS

 MOBAの一つである「ドータ2(Dota2)」のみの競技大会です。賞金が巨額なことで知られており、2021年の賞金総額は40億円を超えています。

 大会関連のゲーム内アイテムに課金されるほど賞金が増えるシステムなので、最初に金額が固定されているわけではない点も特徴の一つです。

World Cyber Games(WCG)

 World Cyber Games(WCG)は2019年には世界125か国から6万8000人を超える参加者が集まり、4億人以上が視聴した国際的なeスポーツの大会です。

 「カウンターストライク:グローバルオフェンシブ(Counter-Strike: Global Offensive)」や「スタークラフト2(StarCraft II)」、「ドータ2(Dota2)」、「eFootball ウイニングイレブン」などのタイトルが競技種目となりました。賞金総額は日本円で約5.8億円にものぼります。

Evolution Championship Series(EVO)

 格闘ゲームを中心に扱う大会で、「大乱闘スマッシュブラザーズ」「ソウルキャリバー」「ストリートファイター」「鉄拳」などが競技種目に設定されています。賞金総額は約1000万円です。

 日本でもEVO Japanが開催されており、2020年には6000人が参加、来場観客者数は3万人を超えたとのことで、2018年開催時より倍増しています。

World Championship

 MOBAの一つである「リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)」を扱う大会なので、LoL World Championshipと表記されていたり、略称でWorldsと書かれていたりする記事も多数見られます。優勝賞金は約2億6000万円で、2021年は中国、2022年はアメリカでの開催が予定されています。

eスポーツ選手(プロゲーマー)が得られる賞金とセカンドキャリア

 eスポーツのプロは世界に多数存在していますが、どのくらいの収入があるのかという点や、将来性も気になると思います。多くの方の疑問にお答えするために、この項目では賞金やセカンドキャリアについて説明していきましょう。

プロゲーマーとして活躍するまでのキャリアパス

 プロゲーマーになるにあたって、学歴は関係ありません。基本的にはゲームの技能を上げて大会に出場し好成績を出すこと、SNSでの活動も含め素行に問題ないことなどが必須要件です。

 大会で成果を上げれば、スポンサーがついた既存のチームから誘われることがあります。また、自分たちで作ったチームで活躍すればスポンサーがつくこともあります。現在の日本では個人のプレイヤーにスポンサーがつく例はあまりない傾向なので、チームに所属していることが有利に働く可能性があると言えるでしょう。

 さらに、日本ではJeSU(日本eスポーツ連合)がプロとしてのライセンスを発行しています。ライセンス取得はプロゲーマーとして活動するために必須の資格ではありませんが、日本ではライセンスがないと大会の賞金が減額されることがあるので、対象のタイトルでプロを目指すのであれば、簡単ではありませんが可能な限り取得しておく方が無難です。

 ライセンスを取るにはJeSUが認定する大会で好成績を収めることが条件となり、試験を受けて資格を取るようなものではありません。13~15歳向けのジュニアライセンスと、15歳以上のプロライセンス、チームに向けて発行されるチームライセンスが存在します。15歳以上向けのプロライセンス発行手数料は5000円です。

プロゲーマーが得られる賞金・給与

 世界のプロゲーマーの中には、大きな大会で好成績を収めて数千万~数億円もの収入を得ている人もいます。

 では、日本のプロゲーマーが平均的にいくらくらいの収入を得ているのかというと、残念ながら公開していないプレイヤーが多いので明確にはわかりません。ただ、スポンサーが支えているチームに所属していれば給料が出ますし、契約料や動画配信からの収入を得ている人も多数存在します。

プロゲーマーのセカンドキャリア(現役引退後の仕事)

 プロゲーマーは反射神経や動体視力、操作の速度や正確性を問われることが多いので、プロとしての現役生命が短いのではないか、という意見も見られます。

 しかし、海外には60歳を超えてプロゲーマーとして活躍している人もいますし、日本でも40歳以上の人が活躍している例もあります。そのため、20代の間くらいしかプロ活動はできないというのは、単なるイメージであることはまずご理解ください。

 それを踏まえて、第一線を退いた後のキャリアにどんなものがあるかを記載しましょう。まず、ゲーム関連で言えば試合解説者やコーチになる人もいますし、チームの戦略を立てるアドバイザー的な仕事をする人もいます。また、プロとしての経験を活かしてゲーマー養成学校の講師やゲーム会社で開発サポートを行うケースもあります。

 もちろんゲームとは全く違う職業に就く人もいます。高校生くらいの時には20歳代後半や30代の人の就業環境にイメージを持ちにくいでしょうが、世の中の平均で言えば多くの職種を選べる年齢です。先行きをていねいに考えることは大切ですが、過度に恐れる必要はないでしょう。

<高校生が活躍できる主なeスポーツ活動<

 この項目では、高校生活の中で活動できるeスポーツについて解説していきましょう。

eスポーツ部

 世の中の流れもあって、全国の高校でeスポーツ部が次々と誕生しています。eスポーツの大会スポンサーとなっている企業がゲーミングPCの貸し出しを行っていることもあって、学校内での部活動としての認知は徐々に増しています。

高校生向けeスポーツ大会

 当サイトでも数多く紹介しているように、今では高校生向けのeスポーツ大会も存在しています。代表的なものでは、「全国高校eスポーツ選手権」と「STAGE:0(ステージゼロ)」が挙げられます。

 「全国高校eスポーツ選手権」は、2020年度(決勝は2021年3月に実施)で3回目の開催となる大会です。ルールがシンプルで初心者でも参加しやすいという理由から「ロケットリーグ」が、また競技制の高さとチームワークが重視されることから「リーグ・オブ・レジェンド」が選ばれており、両方に出場することも可能です。第4回の開催も決定しています。

 「STAGE:0(ステージゼロ)」は2019年に始まった高校生向けの大会です。「フォートナイト」部門、「リーグ・オブ・レジェンド」部門、「クラッシュ・ロワイヤル」部門があり、各地域の予選を勝ち抜いた高校が決勝トーナメントを戦うという形で優勝が決定されます。

まとめ

 今回は、「eスポーツ」とはどんなものなのかという疑問から、eスポーツの大会で採用されるゲームの種類や具体的なタイトル名、プロゲーマーのキャリアなどまで紹介してきました。

 海外などに比べると、日本ではまだまだeスポーツの認知は発展途上な面がありますが、今後は競技者も視聴者も増えていくことが確実視されています。そのような流れから、高校の部活動としてeスポーツを行うことはすでに一般化しつつありますし、高校生向けの大会も多数開催されています。

 メディアでは賞金の大きさや華やかさばかりが報道されることが多いので、高校生が参加することを不安視する保護者の方々も多いと思いますが、日本では学生でも参加しやすい健全なeスポーツの業界構築が進んでいます。

 eスポーツには他の部活動と同様に、友情を育て、知恵や努力でレベルアップを目指す喜びがあります。また、「好き」や「楽しい」を職業にできる方法の一つでもありますから、この機会にぜひeスポーツの魅力に触れてみてください。

関連記事

ゲームにおける「リセマラ(リセットマラソン)」とは?概要や注意点を解説!

「アーリーアクセス(早期アクセス)」のゲームとは?遊ぶ際の注意点などを紹介

話題の「TRPG(テーブルトークRPG)」とは?魅力や始め方などを紹介!

部活紹介

おすすめ関連記事

eスポーツ部の活動日誌

新着記事

ゲーミングデバイス情報

  

ゲーミングデバイス情報

新製品 レビュー 部活紹介 eスポーツ部の活動日誌