高校eスポーツニュース
2024.10.09
オフラインの魅力に気づかされる 最大規模のeスポーツ合宿に取り組む滋賀・八幡工業高校 三浦先生の「eスポーツ部 合宿のススメ」後編
- 高校eスポーツ
合計80人、9校の学校が集まって行われた八幡工業高校(滋賀県)のeスポーツ部合宿。記事前編では規模もさることながら、メンタルトレーナーによる指導などもあり、本格的な合宿となっていることがわかりました。「思い出になればいい」と始まった取り組みですが、「練習の基礎を各校で築いてもらえれば」との思いもあったと語る同校の三浦広和先生。続けて合宿による生徒たちの成長や今後の展望などについて話を聞きました。(取材・文/寺澤 克)(取材日:2024年8月28日)
【この記事の前編】
磨かれるスキルと絆 最大規模のeスポーツ合宿に取り組む滋賀・八幡工業高校 三浦先生の「eスポーツ部 合宿のススメ」前編
https://esports.bcnretail.com/highschool/highschool-news/241002_005655.html
集中的な練習で大きくスキルアップ 身に付いたものを持ち帰りさらにレベルアップを目指してほしい
──基礎的とは言いつつも「タワーダイブ」や「アセント」などテーマを絞っており、実践的な練習内容だと思うのですが、生徒たちのプレースキルの成長についてはどうでしたか?
三浦 VAIORANTに関して言えば、かなり生徒たちの基礎力アップにつながったと思います。大学生コーチの指導した通りにサイトにエントリーできるようになって、最終日にはスペシャルコーチのSylFyさんが「もう教えることがない」っていうレベルになっていて、かなり成長していました。ある生徒が「詰めてずっと練習していたから、すぐにできるようになって楽しい」と話していて、合宿の利点も改めて認識できました。
成長という点で言えば、LoLの方も大きくて、「ダイブしようよ」って話が多くなったり、勇気を出してチャレンジする、そんな土壌はできたのかなと。上級、中級、初心者に分けてチームを組ませて、ノーマルマッチやランク戦を回して、課題にチャレンジしてもらったので、あとはこれを各高校に持ち帰る。また一から周りの部員に教えたり、練習したりしていくので、ここからまた技術が深まっていくフェーズに入るのかなと思いますね。
仲間をつくる過程を経験 良い意味で合宿の雰囲気にのまれた生徒たち
──今回3回目ということでいろいろ試行錯誤を重ねたかと思いますが、合宿で得られたものや、生徒たちの様子について教えてください。
三浦 コーチからしっかり教えてもらえる機会がないという生徒も多かったのに加えて、好きなことを24時間できるわけですから、四六時中チームメイトと話し合っているという光景が見られました。いたるところで試合のリプレーを見返していたり、ご飯食べた後すぐに話し合いが始まるとか、いい意味で合宿の雰囲気にのまれているというんでしょうか、大きな刺激になったのかなと思いますね。
三浦 そして、どちらの競技も学校関係なくチームを組ませていました。即席のチームでコミュニケーションをとって、仲間を増やしていく過程を経験してほしい、というのを合宿の大きなテーマにしていたので。もちろん技術力の向上とは銘打っていますが、教育現場的な観点で言えばそっちも大切ですよね。練習を重ねるにつれてみんな打ち解けて、いろいろと話している様子を見ていると「やってよかったな」とうれしくなりました。もう最終日なんか超仲良くなってワイワイやってるぐらいだったので、合宿の日数が足りないと言わんばかりでしたよ(笑)。
あと、女性プレイヤーが今回多かったんです。eスポーツをプレーする女子を応援したいという目標もあったので、女子チームを組んでみたりという試みもできて全体を見ても上手くできたのかなと思っています。
電源やゲームへのログインには問題がつきもの 一高校の合宿としては最大規模に到達
──逆にどんなところに課題を感じましたか?
三浦 正直、課題はそんなに感じていなくて、「やりたいこと」としては、すでに最大値に到達しているかな。おそらく40人という人数もこれ以上はキャパシティを増やすのは難しいでしょう。宿泊場所として利用した当校のセミナーハウスも、電源といったところも、結構ギリギリなところがありましたので……。だから、しいて言うなら回線のログイン問題や電源問題でしょう。
──確かにそうですよね。40台のPCを動かすと電源は大変でしょう。
三浦 これもウチが工業高校だったから対応できたのかなという感じではあるんですよね。普通科高校と異なり、かなり大きな電源が引かれているんです。でもそれでも足りない……(笑)。別の棟から延長コードを引っ張ってきて、系統を変えたりしながら、上手く調整したはずなんですけどね。
あとはゲームを始める前のログイン作業。同じ場所から40人ものプレイヤーがログインするからどうしても運営からはハッキングか何かだと判断されてしまいます。そこでさらに一斉にデータのダウンロードとなるとIPアドレスに対して制限をかけられてしまうし。ここはもう永遠のテーマですね。
イベントには電源や回線の問題は付き物だからそれ自体も楽しんで、なんてよく言われるんですけど、見事にその通りになってしまいました。
もっと気軽に合宿を開こう オフラインの魅力、勝つ喜びを味わってほしい
三浦 今回、我々は、こうやって普通の高校でできる最大規模の合宿を実現させました。ですから、他の学校でも合宿やってみたいと思ったら、いろいろと手助けはできるかなと思っています。
──確かに、お話を聞いて、生徒の成長を促すのに合宿は効果的だと思いました。ところで、合宿をするにはまず何が必要なんでしょうか?
三浦 良くも悪くもやってみることが大事なんじゃないかな。あと、やりたいと考えている生徒さんがいたら先生を動そうと思う意志、ですかね。
三浦 「教室に布団を敷いて、みんなで一泊やろうよ」。そんな温度感でいいと思うんですよ。大会前に結束を高める、例えばこの記事を見たからやってみようとか。一つポイントを挙げるとすれば、学校の施設を上手く使うってところですね。施設を貸切るとなるとどうしてもお金がかかってしまいますから。
食事だって、レトルトでもいいし、お弁当屋さんに頼んで用意してもらったりできますよね。布団がなければ寝袋を用意すればいい。とりあえずやってみるの精神で始めてみて、どんどん改善していけばいいと思います。
あとは、運動部の先生方は、合宿のノウハウをいろいろ持っていると思います。そういった先生に「どうやって合宿をやってるんですか」なんて聞いてみてもいいかもしれませんね。たぶん、参考になることは多いはずです。
──これからの合宿の展望があれば。
三浦 今の高校eスポーツって強いチームだけが勝ち上がって試合を経験していくっていうシステムで、なかなか他の選手たちが成功体験を得られない現状があると思うんです。だから合宿という形だけではなくて、「○○カップ」みたいな4~8校が集まって小さな大会を開くっていうのも良いんじゃないかなと思っています。
大きい大会ではないかもしれないんですけど、そこでの優勝や入賞って生徒たちには自信になるんじゃないでしょうか。例えば、合宿なら寝泊まりしながらスイスドロー式でたくさん試合をこなせる。そんな取り組みが全国で増えていけば、eスポーツの可能性ってもっと広がっていくし、競技全体のレベルアップにもつながると思います。
──勝つ喜び、試合の経験って本当に大きいですよね。
三浦 特に「オフライン」というのが大切ですよね。オンラインはどこでもできる利点がありますけど、リアルスポーツを経験している身からすると、試合をしてすぐ終了では勿体ないと感じる部分が多い。練習したチームと仲良くなれたり、みんなでワイワイ騒いだり、オフラインでしか味わえない「パッション」というか。良い言い方が見つからないんですが「青春」があると思うんです。そこが本来の「スポーツ」の良さですよね。
最近はSNSで、他校とコラボして何かイベントを行ったり、そういう事例が他校でもあって、良い傾向が続いています。規模はどうあれ、もっと足を使って合宿や大会、イベントを開く。「うちもやろうよ」っていう学校がどんどんこれから増えていってほしいです。
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外部リンク
八幡工業高校
http://www.hachikou-h.shiga-ec.ed.jp/
滋賀県立八幡工業高校eスポーツ部 X公式
https://x.com/hachimanesports
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