大会レポート
2025.03.26
学生考案「傀儡杯」が7.5万再生と好評! きっかけは「ふと降りてきた」 REJECT×NURO 光の背景も
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ソニーネットワークコミュニケーションズは3月21日、「傀儡杯(くぐつはい)Powered by NURO 光」を開催した。目隠しをした選手(傀儡)同士が指示役の声とゲーム音を頼りに「ストリートファイター6」(スト6)で対戦するイベント。企画したのは神戸・甲陽デザイン&テクノロジー専門学校の1年生 中島さん。REJECTの公式YouTubeチャンネルで公開されたライブ配信動画は、3月25日正午時点で再生回数が約7.5万回だった。なぜこのようなイベントを開催できたのか。産学連携プロジェクトの実施に至った経緯から聞いた。

出場者は次の通り。傀儡役のストリーマーとしてこく兄さん、Sasatikkさん、桃井ルナさん。指示役は千羽黒乃さん、乾伸一郎さん、dtto.さんが担当。傀儡役と指示役の二人一組で3チームをつくり、1本勝負の総当たり戦を行った。実況・解説は大和周平さんと立川さんが務めた。

イベントの内容を端的に表しているのが、動画のサムネイルにもなっている告知用の画像。目隠しをしたこく兄さんだけでもインパクトがあるが、さらに手や肩から天に向かって糸が伸びている様子はまさに“傀儡(くぐつ)=あやつり人形”。思わず目に留まってしまううえ、クスっと笑いを誘うこの画像はXでも話題になった。

ハチャメチャな展開を想像してしまうシュールな画に反して、実際の対戦は本格的だった。練習では、短く的確に指示を出すために掛け声の内容をすり合わせたり、見えない状況に適した戦略を立てたりといずれのチームも真剣。優勝賞品として“車の鍵”が提示されたことも理由の一つかもしれないが、本気で勝ちにこだわる姿勢は思わず応援したくなった。

試合内容と同等以上に、チームのボイスチャットの実況・解説に力が入っていた大和周平さんと立川さんも印象的。特に注目を集めたのは、Sasatikkさん、乾伸一郎さんペアのボイスチャットを実況したとき。責任の押し付け合いから始まり、錯綜する指示、果ては指示の声が大きすぎてゲーム音が聞こえないというハンデを背負うなど、チームワークは散々だった。ただ、遠慮のない二人のやり取りは笑いを誘い、盛り上がりに一役買っていた。

総当たり戦の結果、優勝したのはこく兄さん(リュウ)、千羽黒乃さんペア。いずれの試合もストレートで勝利した。見えない状況でも当てやすい飛び道具(波動拳)や、音と勘を頼りにつないだコンボ、そしてお互いの位置や戦況を簡潔に伝える指示が勝因となった。

なお、優勝賞品として提示された“車の鍵”は「トヨタ GR 86」の10分の1モデルの鍵だった。傀儡とラジコンがかかった洒落た一品。「本物の車かと思ったらラジコンだった」ということで拍子抜けするかと思われたが、こく兄さんと千羽黒乃さんは思いのほか喜び、和やかな雰囲気のまま幕を閉じた。

傀儡杯は初めての試みではあったが、飛び道具や遠距離攻撃が有利であることなど、ファイターによって適正がありそうだということもわかった。第2回があれば、参考になるかもしれない。

傀儡杯の誕生背景
今回の取り組みは、福岡デザイン&テクノロジー専門学校(福岡校)と神戸・甲陽デザイン&テクノロジー専門学校(神戸校)が実施している産学連携企画「企業プロジェクト」の一環として実施された。
福岡校の教員 北川景丸さんによると、「企業と連携することで、社会に出た際に生かせる実践的な体験を提供したい」という思いでスタートしたプロジェクト。同校は普段の授業でも現役のプロを講師に招いており、傀儡杯の運営に関わったREJECTもトークショーへの登壇や、卒業生がREJECTで働いているなど、以前からつながりがあった。

REJECTの事業統括本部 営業部長 岩村載峰さんは、「eスポーツ業界は急速に進化しています。市場や事業が拡大すれば、それに合わせて人材も増やす必要がありますが、進化のスピードが速すぎて1から人材を育成する環境が整っていません。一先ずは中途採用を実施していますが、まだ経験者も不足しています。であるならば、自分たちで実践的な場を用意するしかないと考えました」と、企業プロジェクトに参加した経緯を説明する。
REJECTのスポンサーであり、高速通信回線「NURO 光」を提供するソニーネットワークコミュニケーションズも「eスポーツやゲームを楽しむすべての人と、その熱狂を支えるクリエイターの未来をサポートしたい」(NURO事業部マーケティング部 益田千種さん)という思いから参画した。

プロジェクトは2024年12月にスタートし、福岡校の1~4年生と神戸校の1年生による全6チームが参加。約2カ月にわたって、益田さんやREJECTのメンバーからアドバイスを受けながら企画・立案を重ね、最終選考で選ばれたのが「傀儡杯」だった。
傀儡杯を企画した神戸校1年生の中島さんは、「授業の一環で取り組むことが決まった時は、有名なREJECTと一緒に何かできることに驚きました。ただ、イベントの企画段階では“何が視聴者にとって面白いのか”“コミュニティのために何ができるのか”など、かなり悩みました。モニターの前でペンを片手に考えに考えた末、ふと降りてきたのが『傀儡杯』でした」と振り返る。
イベントでは、福岡校の先輩と協力して台本づくりを担当。「イベントが始まるまでは『ああ、始まるんだなあ』とぼんやり考えていましたが、視聴者の方々のポジティブなコメントを見たら、すごくうれしかったです。またこういった機会があったら参加したいです」と話した。
台本づくりに携わった福岡校3年生の石矢さんは、「学校で開催するイベントの台本を何度か作ったことがあるので、その経験が生きました。ただ、これまでは自分たちで考えたイベントの台本を作っていたのですが、今回はほかの人が考えたイベントだったので、どのような意図があるのか、どのような目的があるのかなど、すり合わせながら作るのが大変でした。いい経験になりました」とコメント。当日は配信管理を担当した。

講師として参加した益田さんはイベント後、「イベントを開催するにあたって、数回のオリエンテーションを行い、視聴者目線の大切さや、コミュニティとの関わり方などはお話しました。その後、出てきたアイデアはどれもオリジナリティがあり、フレッシュで驚きました。中間発表から最終選考の間にプレゼンテーションのスキルも向上していて、学生とは思えない内容でした」と語った。
REJECTの岩村さんは、「学生の方のアイデアをもとにイベントを実施するのは初めてだったので、最初は不安がありました。ただ、所属のタレントからも改善案が出るなど、さまざまな方の意見を入れた結果、ポジティブなコメントも多く、いいイベントだったかと思います」とコメントする。

タレントを起用したイベントを一から準備して開催するのは、学生でなくても難しい。しかし、企業プロジェクトであれば、アイデア次第で大きなチャンスを手に入れることができる。こうした取り組みを通してイベントを開催する魅力を知り、イベントの裏側に対する想像と現実のギャップを埋めることができれば、eスポーツ業界を目指す学生増え、人材不足の解消につながるかもしれない。

岩村さんは、「学生の方と一緒にイベントを開催するという経験を積めたのは、私たちにとっても財産です。年に一回ほどこうした取り組みを実施したいと考えています」と、今後についても前向きな姿勢。イベント考案者になれるチャンスはまだまだありそうだ。
関連記事
こく兄さんが目隠しでスト6!? 学生企画「傀儡杯 Powered by NURO 光」、REJECTチャンネルで配信へ
外部リンク
傀儡杯 Powered by NURO 光(REJECT公式YouTubeチャンネル)
https://www.youtube.com/live/L1h3DkUBuNE
NURO 光
https://www.nuro.jp/hikari/
福岡デザイン&テクノロジー専門学校
https://www.fca.ac.jp/
神戸・甲陽デザイン&テクノロジー専門学校
https://www.kobe-tech.ac.jp/

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