コラム
2022.01.16
eスポーツ×教育の最前線! セガの高校eスポーツ部応援プロジェクトとは
- 大会/イベント
- ぷよぷよ
- 解説
青山学院大学総合プロジェクト研究所「知財と社会問題研究所」は、青山学院大学eスポーツ研究会(R3K)の第1回目として、「eスポーツの社会的価値を考える:eスポーツ×教育の最前線『高校eスポーツ部応援プロジェクト』の実践」を2021年12月18日に青山キャンパスで開催しました。
登壇したのは、セガ ジャパンアジアパブリッシング事業部 eスポーツ推進室室長の五十嵐勝氏、同eスポーツ推進室チームマネージャーの正廣康伸氏、JeSU公認プロプレイヤーの飛車ちゅう氏です。講演では、セガがプロ選手と協力して、どのように高校eスポーツ部を支援しているのか紹介しました。
オンラインコーチングサービス
セガは現在、プロプレイヤーと協力しながら、高校生によるeスポーツ活動をさまざまな方面から支援しています。例えば、3カ月ワンクールのオンラインでのコーチングサービスは、これまでに50校の高校で実施しました。その名の通り、プロ選手が生徒にパズルゲーム「ぷよぷよ」の上達方法を教える講座です。締めくくりとして参加校対抗大会を実施することで、練習から競技大会参加まで、生徒はeスポーツ選手が辿る一連の流れを体験することができます。
21年12月の時点で2回開催されており、合計で50校、400人が参加しています。コーチングサービスを提供する理由について、五十嵐氏は「先人のノウハウを伝えることで上達する充実感と、さらにその先にある新しい世界を開拓できるよう後押ししています。多くの人は2?3連鎖で止まってしまいますが、コーチングにより狙って8連鎖ができるようになると、人に教えたり、プロ同士の対戦で何が起きているのか分かったりと“面白く”なるはずです」と説明します。
飛車ちゅう氏は、「コーチングを通して、生徒が論理的に物事を考えることができるようになってきます。課題をこなせた生徒が、別の生徒に教えるなど、コミュニケーションも生まれました」と、コーチングによる効果を紹介。大会に出場する際は卒業証書の代わりにユニフォームをプレゼントし、一丸となって頑張ってきた思い出を形で残すとのこと。大会には“卒業生”も参加可能なので、大会のレベルが徐々に高まっていきそうです。
コーチングサービスは、プロプレイヤーのセカンドキャリアとしても注目されています。現在は受講人数に対して講師が不足している状況。想定外の需要に驚いていると言います。ぷよぷよの腕に覚えのある人は、プロに挑戦してみるのも選択肢の一つかもしれません。
ぷよぷよプログラミング
また、シンプルな仕組みを生かして、ぷよぷよをプログラミング学習の教材として提供しています。「学校がゲームをそのまま受け入れるのは難しいです。しかし、プログラミング教育は小学校の授業で必修になっています。親しみのあるゲームを教材として学習することは生徒のやる気にもつながっているはずです」と五十嵐氏は期待します。
ぷよぷよプログラミングは、本物の「ぷよぷよ」と同じ画像素材を利用して、プロが使う開発環境で本物のプログラミングを体験できる無料ツールです。見本のソースコードを書き写しながら、何がどのように作用するのか学びます。多くの生徒が夢中になっているゲームをきっかけに学習を促す仕組みは「ゲーミング英会話」にも見られます。ぷよを落としたり、回転させたりと、見知った動きを自分がプログラミングして再現すると一層の達成感があり、自然と意欲も出てくるはずです。
ゲームが学習教材として浸透してくれば、ゲームの社会貢献、社会的意義が見直され、社会的地位の向上が期待できる。eスポーツ部を設立するためのハードルも緩和される可能性があります。
プログラミングの授業のあとも、学校で大会を開きます。生徒主導で実施することで、今後も独自で大会を開催できるよう基礎をつくっています。実況解説にはプロ選手が入りますが、司会進行や実況・解説を生徒自身が担当することもあるそうです。文化祭や学校説明会などで紹介できることが増えるほか、eスポーツ大会はプレイヤーと観客だけでなく、運営、動画配信、映像制作、写真撮影、広報活動、データサイエンス、ゲーム会社など、さまざまな役割があることを学ぶことができます。
高校eスポーツ部応援プロジェクト企画
セガの計画では、今後、高校eスポーツ部応援プロジェクトの参加校を1,000校まで広げていきたいとのことでした。目標は、ほかの運動部の生徒や顧問の先生からも「きちんと活動している」と思ってもらえるような活動に育てていくことだそうです。
eスポーツの社会貢献の事例
ぷよぷよが活用されているのは、教育現場だけではありません。近ごろは福祉や地方創生にも活用されるようになってきました。例えば、神奈川県の日本アクティビティ協会では「健康ゲーム体験」で高齢者がぷよぷよに親しみました。熊本県美里町では「eスポーツで“いい里”づくり」、鹿児島県の障がい者施設で「就労支援にeスポーツ」など、さまざまな場面で活躍しています。
正廣氏は、「ゲームは目と手の高度な連携なので、プレーするとかなり頭を使います。これが脳の活性化につながるわけです。現在はユニバーサルデザインを意識したコントローラや視線で操作するシステムも開発されているので、参加の垣根も低く、さまざまな方が競技者になることができます」と、ゲームをきっかけにさまざまな課題を解決できる可能性があると語ります。
きっかけになるeスポーツ
今後は、施設や地域を元気づけるためのeスポーツイベントに、運営側として高校生が参加する流れができると、部活動の社会貢献にもつながりそうです。すでにeスポーツ部がある学校では、施設へのプレゼンテーションや学校説明会を生徒が主導しているケースもあります。ゲームが得意な高校生が活躍できる場として定着するためにも、セガのような取り組みは一層大切になっていきそうです。
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