コラム

2024.04.20

実験に参加してゲームも楽しむ!?つくばのeスポーツイベントOWL FESをレポート!

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 筑波大学スポーツイノベーション開発研究センターと茨城県は3月26日につくば国際会議場(茨城県つくば市)で、「茨城県eスポーツフェス OWL FES 2024」を開催しました。「する・みる・ささえる」をテーマとしたイベントの模様について、来場者へのインタビューなども交えてレポートしました。(取材・文/ 寺澤 克)

OWL FESが3月26日に開催

eスポーツをする、見るだけじゃない 実験に参加し、体験もできる

 このOWL FESは、「実験」にも触れられるというのがユニークな点です。

複数タイトルのeスポーツ体験ブース!実験器具も体験できる!?

 イベントでは、複数のタイトルが体験できるブースや物販、セミナーやエキシビションマッチが開かれました。

体験ブースでは、FC 24やストリートファイター6、VALORANTのほかに、
JUST DANCEなどの体を実際に動かすゲームもラインアップされた


 よく見てみると、見慣れない器具が。実はこれ、編集部でも以前取材した筑波大学松井崇氏の研究で使用していたもので、装着すると対戦相手の心拍数が振動として伝わってくる着るスピーカー。これにより、オンライン環境でも幸せホルモンとも呼ばれるオキシトシンの分泌が活性化されるのだそうです。

実際に装着してゲームを体験することもできた
筑波大学の研究内容を展示するスペースも

早稲田大学が大金星!観客たちも実は被験者!

 メインステージでは、筑波大学の主催した大会で優勝を収めた早稲田大学esportsサークル、地元茨城のプロチームORB GARDENの2チームが、世界規模の学生大会Red Bull Campus Clutch 2023で日本代表チームとして戦ったGYUDON EATINGと対戦するエキシビションマッチが行われました。


 前半の早稲田大学 VS GYUDON EATINGでは、序盤に早稲田が大きく先行するも終盤にGYUDON EATINGが追い付くという展開に。オーバータイムまでもつれ込んだ末に、なんと早稲田大学が勝利しました。ORB GARDEN VS GYUDON EATINGでは、両者一歩も譲らず、シーソーゲームの展開が続き、GYUDON EATINGがプロチームに勝利しました。

試合の模様は「いばらきeスポーツ産業創造プロジェクト」のYouTubeチャンネルからチェック!↓↓

GAME1 早稲田大学eスポーツサークル vs. GYUDON EATING
https://www.youtube.com/watch?v=90LT6P5R2-U

GAME2 ORB GARDEN vs. GYUDON EATING
https://www.youtube.com/watch?v=-kTvZaDfYNg

 実はこのエキシビションマッチは実験の一つ。事前に募集した被験者を集めて試合を見てもらい、その心拍数を計測していました。既往の研究で、スポーツを見ると選手と観客の心拍数が同調し、絆が形成されることがわかっています。絆が形成され「面白い」と感じると観客の再訪性も高まる、それがeスポーツでも同じなのかという点を今回は検証していました。

eスポーツの歴史や課題、健康への影響 すべて詰まったトークセッション


 「eスポーツ教育的効果に関するセミナー」と題して行われたトークセッションでは、eスポーツを研究する、筑波大学の松井崇氏、東京理科大学の柿原正郎氏、eスポーツのコンサルティングなども手掛ける戦略ファームLunaTone Inc.CEOのヒョン・バロ氏、茨城県産業戦略部産業政策課のeスポーツ推進担当リーダーを務める三嶋達典氏(現:土木部検査指導課課長補佐)の4人が登壇。講演内容は教育的効果というものの、その枠を超えeスポーツの可能性をも示唆する興味深いものとなりました。

eスポーツは国々で独自の発展をする 日本は社会的な意義を持つ傾向

 最初にヒョン・バロ氏は、eスポーツのこれまでの歴史を解説しながら、「実際にプレーしないけど見る」層が増え、ゲームへの触れ方にパラダイムシフトが起きていることを指摘。そこから幅広い企業がeスポーツに関わるようになったといいます。さらに、各国の市場の発展パターンが違うことにも言及しました。

ヒョン・バロ氏


バロ氏 例えば、韓国の場合は、特定のタイトルが盛り上がってeスポーツ市場が発展したと言えます。アメリカでは複数のタイトルが流行しているほか、大学の競技シーンがすごく盛り上がっています。ほかにもドイツやポーランド、いろいろパターンがあります。どのケースにも共通して大事なのは、eスポーツのコミュニティを次第に大きくして発展していったという点でしょう。

 一方、日本は市場の発達でいえば後進。そこには様々な課題がありましたが、今では徐々に改善しつつあります。すごく面白いのは、海外と違って発展が必ずしも大都市中心ではないこと。しかも収益化が主目的でない、シニア向けイベントや社会人向け大会など、社会的な意義を持ったeスポーツ活動が特に日本では多いなと感じています。

eスポーツに関する情報を発信することで親世代の理解を促す必要がある

 次に柿原氏が登壇。同氏は、googleで10年、yahooで4年在籍し、現在はデジタル領域のユーザー行動分析、インサイト探索、マーケティング戦略立案に携わった実務経験をもとに、デジタル環境下の消費者行動に関する実証研究を進めています。自身もダークソウル3を1000時間以上プレーするなど、筋金入りのゲーム好き。そんな柿原氏は、eスポーツを支える側、大人や親に対してメッセージを投げかけます。

柿原氏


柿原氏 国際教育eスポーツ連盟ネットワーク日本本部(NASEF JAPAN)と取り組んだ調査で、親側は子どもがゲームをするのは良くないと感じているということがわかりました。水泳を子どもにさせる親は多いです。フィジカルスポーツも元はと言えば娯楽から始まったもの。それとeスポーツは何が違うんでしょうか。どちらも人と人とが競技をするのは同じなので、いろいろな教育的な効果が生まれるはずです。

 今では、アジア競技大会の正式種目としてeスポーツが選ばれようとしています。スケートボードだって、10年ぐらい前は「なんか兄ちゃん姉ちゃんが遊んでるね」ぐらいの認識でしたよね。潮目が変わったのは、東京オリンピックで13歳の西矢椛選手が金メダルを取ったとき。将棋の藤井聡太棋士もプロ入りしたのは14歳でしたが、批判されることだったでしょうか。なぜゲームはいけないんでしょうか、という話になってくると思います。もちろん、より理解を深めていくためには、親世代に対してeスポーツの情報を発信する必要はありますが、親側もスケボーや将棋に対する意識とeスポーツに対する意識、その違いを考え直してみてほしいです。

楽しみながら健康になろう 「eスポーツ道」のススメ

 松井先生は、eスポーツが「楽しい」「うれしい」という前向きな気分になれる点に着目。楽しみながら行動変容を促し、誰もが健康を手にできる方法や文化を形成する「eスポーツ道」に基づき研究を進めています。まずは、簡単にこれまでの研究の成果を総括。オフライン対戦でスポーツと同じオキシトシンが分泌されeスポーツの身体性が証明された、運動をするとeスポーツのパフォーマンス高まる、高齢者がeスポーツをすると認知機能が高まるなど、研究結果から明らかになったeスポーツの意外な一面を披露しました。そして、このイベントでの実験がもたらす効果に言及しました。

松井氏


松井氏 心拍数が同調するというのがチームワークの秘訣ですが、これはeスポーツでも同じです。今回のエキシビションマッチも皆さん楽しんでいただけていると嬉しいんですが、バスケットボールなどフィジカルスポーツでは、観客と選手との間にもその心拍数のシンクロが生じることがわかっています。それが面白さや「また見たい」というロイヤリティに関係してくるので、eスポーツでもこのシンクロ関係が生じているということになれば、継続的なイベントの開催やビジネスへの活用にも期待できる。今後もみなさんと一緒に「eスポーツ道」をつくっていきたいと思います。

松井崇先生の研究に関する詳しい内容はコチラ!↓

スポーツ科学の側面からeスポーツにアプローチ!筑波大学・松井先生に聞くeスポーツ科学 前編
https://esports.bcnretail.com/column-interview/interview/231028_004514.html

運動・栄養・休養を意識すればゲームが上手くなる!?筑波大学・松井先生に聞くeスポーツ科学 後編
https://esports.bcnretail.com/column-interview/interview/231104_004536.html

「面白そう」「楽しそう」を大切にeスポーツ産業を根付かせたい

三嶋氏


 「eスポーツ推進担当リーダー」が設置されたのは2019年のことで、三嶋氏は3代目。県が事業に取り組み始めたのは、国内初のeスポーツ国体「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」の開催がきっかけです。eスポーツの認知向上などを目的に、現在までイベントの開催や誘致、普及啓発活動を続けてきました。

三嶋氏 我々のこの取り組みは一過性で終わらせるのではなく継続した事業として、eスポーツを産業として根付かせようというものです。2024年1月現在でいばらきeスポーツ産業創造プロジェクト推進協議会は130の企業・団体が加盟しています。県庁に画面を映し出してみんなでゲームを楽しむとか、フォートナイト上でイオンモールを再現して高校生たちで競争してもらうとか、本当に前例にとらわれず「面白そう」「やってみると楽しいんじゃないか」という点を大切にどんどんチャレンジしています。今後我々だけでなくこの話を聞いてくださっている方とも一緒に事業を進めていければ幸いです。

GYUDON EATINGのファンや、家族連れ、進路を探す高校生などいろいろな層が来場!

 さて、研究などもテーマにしていたユニークなイベントでしたが、天候も悪い中、いろいろな方がゲームの体験やエキシビションの観戦に来ていました。実際にどんな人たちがイベントを訪れたのか、来場者に話を聞くことができました。

大阪から!将来に向けeスポーツに関係する仕事や学校を選ぶヒントを探しにきた

 最初に話を聞いたのは、大阪から来たというF.TさんとH.Hさんの二人。H.Hさんはこの春高校生になるとのことで、「参考になれば」ということで話を聞きに来たそう。

大阪から来たというF.Tさん(左)とH.Hさん


──今回はどのような目的で来られたのですか。

F.Tさん H.H君が今度高校生になるので、大学とか仕事とかeスポーツに関する進路に進むうえで何かヒントになるものはないかなと大阪から来ました。私は教育関係の仕事をしていまして、今回は彼の付き添いです。

──H.Hさんはやはりeスポーツが好きでそういう仕事がしたいんですか。

H.Hさん はい、将来eスポーツに関係する仕事とか、大学とかでもそういった勉強ができないかと興味があるので探しているところです。元々eスポーツ選手なんで。

──今回のイベントの感想は。

H.Hさん VALORANTはプレーしていませんが、エキシビションマッチはすごく楽しかったです。13対4からGUNDON EATINGがオーバータイムまで持ち込んで、すごかったですよね。

F.Tさん というか、このイベントもいろいろな企業が協賛して開催していてそこもすごいと思いましたね。

部活動で参加!地元茨城の高校からeスポーツ部員も!

 会場には制服を着た生徒らしき姿も。水戸市の水戸葵陵高校の生徒たちは部活動で今回のイベントに参加しに来たそうです。S.HさんとS.Fさんもエキシビションマッチの観戦をかなり楽しんだ様子でした。

S.Hさん(左)とS.Fさん


──今回はどんな経緯でこのイベントに?

S.Hさん 今回はeスポーツ部の活動としてイベントに参加しています。eスポーツの体験会があるとのことで、今回ここまでやってきました。

──イベントの感想は?

S.Hさん 最初の方は落ち着いてみていたんですが、オーバータイムとかがあったりで、終盤はとんでもなく興奮しちゃって。

S.Fさん 拍手とかしたりね。

S.Hさん なんなら面白すぎて叫んでいたかもしれない(笑)。

──VALORANTはプレーされるんですか?

S.Hさん はい。やっぱりVALORANTプレーするので、人一倍エキシビションマッチを楽しめました。

S.Fさん 僕はプレーしないですけど、部活動ではスマブラとリーグ・オブ・レジェンドをプレーします。

──スマブラはどのキャラ使うんですか。

S.Fさん VIPには届かないぐらいですが、プリンを使います。

──ほかにもブースは回られるんですか。

S.Hさん はい、ストリートファイター6を今からプレーして、他のゲームを遊んでいきたいと思います。

ぷよぷよとスト6プレイヤーの夫婦も家族で来場

 かなり慣れた手つきでストリートファイター6をプレーしていたのはtkb18さん。今回は奥様のにゃ~めんさんと娘さんと一緒に会場に訪れたそう。tkb18さんは普段から格ゲーを、にゃ~めんさんはぷよぷよをプレーしているそうで、お互いにさまざまなゲームイベントに参加しているのだとか。

にゃ~めんさん(左)・tkb18さん夫妻


──こういったeスポーツのイベントにはよく行かれるんですか。

tkb18さん 私は定期的に「茨城 eスポーツ」とかで検索してたまに行くぐらいですね。eスポーツ自体に興味があって。スト6で言えば水戸のイベントとか、この前の東京メトロカップの予選に出たぐらい。

にゃ~めんさん 私はぷよぷよの大会に結構出ているので、X上でいろいろとフォローして行ける範囲で参加しています。この前に茨城県内で開かれた「連鎖キング決定戦」みたいなライトなイベントは、娘と二人で行ったりします。

──ではもう日常的にゲームに親しんでいるといったところでしょうか。

tkb18さん はい、家でも結構、家族でそれぞれ好きなゲームをやっている感じですね。

にゃ~めんさん そうですね。娘だけじゃなくて私たちもガンガンゲームをプレーしてますね(笑)。

──ところで、着るスピーカーを付けてプレーしていましたが、ご感想は。

tkb18さん 展開が変わる度に相手の鼓動が速くなっているなとか、改めて自分の心拍数も上がってくなって、共振しているのを実感しました。これが相手の見えないオンラインで、互いの脈拍が伝わるんだったら、家に居ながらでもお互い近くでプレーするのと近い感覚になるよねと納得しました。

見るだけじゃない!GYUDON EATINGファンも駆けつけた!

 エキシビションマッチの観客の中にGYUDON EATINGのファンの人もいました。「純白の右上半身」さんと「清純派アイドルババアさん」の二人は、見る専なのかと思いきや、プレイヤーランクも高い本格派。プレイヤーネームを聞いたときは思わず聞き返してしまいました。

純白の右上半身さん(左)と清純派アイドルババアさん


──エキシビションマッチを見られていましたが、今回は応援ですか。

純白の右上半身さん はい、GYUDON EATINGのファンなんで。応援しに来ました。

──今回のイベント感想は。

純白の右上半身さん GAME1では負けてしまいましたがめちゃくちゃ強かったですよね。4点からオーバータイムまで行っていたし。

──あれはすごかったですね。お二人は見る専門なんですか。

純白の右上半身さん いいえ、実際に自分たちでもプレーします。

清純派アイドルババアさん 私もそうですね。VALORANTやってます。

──プレーもされるんですね。ちなみにランクはどれぐらいですか。

純白の右上半身さん 私はプラチナ2です。

清純派アイドルババアさん 私はゴールド3です。

──かなりやり込まれているんですね。今回は地方で開かれたイベントですが、ご感想は。

純白の右上半身さん プロの試合も見たりするんですけど、こういうイベントももっと増えてくると、eスポーツのすそ野が広がって良いのかなって思いました。


 トークセッションでもあったように、eスポーツを社会に根付かせるためには、その効果についてもしっかり研究する必要があります。eスポーツに大学として取り組む筑波大学、事業として取り組む茨城県、両者の活動がさらに広がりを見せると、国内のeスポーツ市場もさらに活気づくのではないでしょうか。今後も両者の動きに注目しましょう。

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外部リンク

筑波大学 体育スポーツ局
https://www.tsukubaowls.com/

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