インタビュー
2020.11.13
ゲームの中にもプロカメラマン、ゲッティイメージズ ジャパン代表取締役に聞く「eスポーツ写真の未来」
- インタビュー
eスポーツ業界の報道写真はなぜ顔写真ばかりなのか──。eスポーツシーンに思いもよらない角度から斬り込んだのは、Getty Images(ゲッティイメージズ)。世界のマスメディアに写真や動画を提供する、今年で創立25周年を迎えた世界最大級のデジタルコンテンツ企業だ。リアルの写真を撮り続けてきたはずが、なぜeスポーツ業界に参入するのか。その真意を、ゲッティイメージズ ジャパンの島本久美子代表取締役社長に聞いた。
ゲッティイメージズは、五輪やFIFA、MLBなど85以上のスポーツ団体と提携しており、さまざまなスポーツシーンの盛り上げに携わっている。さらには水中写真を初めて導入するなど、新しい技術の導入にも積極的だ。このように、常に先を見据えて活動してきたゲッティイメージズが、「次にくる」とフォーカスをあてたのが「eスポーツ」。島本社長は、「よりeスポーツの人気が出るような写真を撮っていく」と意気込む。
──eスポーツの報道を振り返ってみると、当サイトを含めて、確かに顔写真が多い印象があります。
島本 eスポーツの人気は世界的にも徐々に伸びていますが、雑誌や新聞ではなかなか扱われません。経験上、スポーツなどの競技シーンが報道で取り上げられるには、写真があって初めて実現する部分もあります。特に、eスポーツは新しい競技なので、見たこともない人は多いはず。人に注目するのは大切ですが、eスポーツの面白さを伝えるには、パワフルなビジュアルが大切です。
──パワフルなビジュアルというと、どのような写真が考えられるでしょうか?
島本 例えば、モータースポーツをモチーフにしたゲームです。もともと、当社にはモータースポーツに精通したカメラマンがいますから、その知見を生かします。近頃のゲームはクオリティが高く、サーキットのどこで撮影すればいいのか、どの時間帯がきれいに撮れるのか、といったノウハウをそのまま当てはめることもできます。
さらにゲームの中なら、コースやカーブの中央からの撮影や走行中のタイヤに寄った撮影などができるでしょう。身体的な危険性はありませんから(笑)。こうした現実では実現できない、「ゲームならではの写真表現」がゲームごとにあるはずです。そうした写真を開拓し、雑誌や新聞で使われるような、その“すごさが分かる瞬間”を撮影していきます。
──ゲームの知見も必要になりますね。
島本 人材はこれから育てていきます。また、並行して団体やコミュニティとの提携も進めていく必要があるでしょう。オフィシャルでしか撮影できない写真がありますし、報道写真なのでアップロードする速さも重要です。そうした意味でも、主催者との協力・信頼関係は欠かせません。
ゲームの開発陣と連携し、それまで撮影機能のなかったゲーム内に、新たに撮影機能を追加する日が来るかもしれません。そうすることで、ゲームの魅力を一層引き出し、認知度向上やシーンの盛り上げにつなげていきたいですね。
──ゲームは写真よりも動画の方が分かりやすいシーンもあるかと思います。
島本 動画と写真には、それぞれの役割があります。動画はゲームの詳細を把握するのには役立ちますが、編集作業や視聴に時間がかかります。一方、写真は雑誌や新聞といったマスメディアでも利用できるため、ゲームを知らない人にも届けられる可能性があります。ただ、その競技、今回でいえばeスポーツの魅力を伝えられる一瞬を探す難しさはあります。eスポーツにはさまざまな種目がありますから、人材育成やノウハウの蓄積はしっかりと進めていきます。
特に、ゲッティイメージズが撮った写真は世界中で使われる可能性がありますから、プレーヤー自身やゲームタイトル、スポンサーの知名度にも好影響が出ると考えています。新聞、雑誌、テレビ、ウェブニュースと、さまざまな国のさまざまなメディアに露出することで、得られる恩恵は大きいはずです。
──いつか、雑誌や新聞でもeスポーツの写真を日常的に見る日がくるのでしょうか。
島本 そんな時代がくると思います。メジャースポーツほどの規模になるのではないでしょうか。今はまだ投資段階ですが、eスポーツ(ゲーム)の人口からみれば可能性はあるでしょう。でも、もっと大きくするにはスポンサーの存在が欠かせません。新聞やテレビで取り上げられるような、スポンサーにとって利益のある写真、惹きつけられる写真が大切になります。人の写真だけではなく、eスポーツの競技中に起きていることのすごさが伝わるような写真を目指していきます。
■略歴
大阪府出身。1991年に神戸大学経済学部卒業後、大阪ガスに勤務。その後渡英し、ゲーム会社を経て01年に英国のパブリシティポータルサイト「イメージネット」に入社、グローバルセールスダイレクター、04年にゲッティイメージズ(イギリス)のセールス シニアディレクター、09年に帰国し、ゲッティイメージズのアジアヴァイスプレジデント兼ゲッティイメージズ ジャパン代表取締役に就任。(現任)
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