インタビュー
2023.06.30
高校eスポーツの“三つの価値”とは、高校生2大eスポーツ大会の運営が語る
- 大会/イベント
東京ビッグサイトで6月28?30日の期間に開催されている「eスポーツビジネスEXPO」で、E5esports Worksで取締役 戦略室 室長を務める西川典孝氏が29日、「高校eスポーツが拓く未来の可能性」についてセミナーを開催しました。
E5esports Worksは、全国高校eスポーツ選手権やSTAGE:0など、高校生の2大eスポーツ大会の運営に携わるeスポーツ関連企業です。西川氏は2020年に同社の代表取締役に就任。23年6月から現職で経営戦略を担当しています。
西川氏は冒頭、「eスポーツは教育に悪影響なのではと思われるが、高校eスポーツシーンで何が起きているのか知ってほしい」と話し、高校eスポーツの現状について説明しました。
高校生2大大会のうち、全国高校eスポーツ選手権は2018年にスタートした全国規模のイベント。毎日新聞社と全国高校eスポーツ連盟(JHSEF)が主催で文部科学省の後援があることから、保護者や教員などから信頼を置かれています。「eスポーツを日本の文化に」という思いからスタートし、第1回は115校、153チームが参加。22年度に実施した第5回には、278校、690チームが出場しました。
もう一つの「STAGE:0」は同じ高校内のチームで日本一を争う点は同様。一方で22年開催の第4回は、全国2060校、2559チーム、6728人がエントリーするという、日本最大の高校eスポーツ大会です。スマホゲームを採用しており、参加しやすい点も特徴。テレビ東京と電通が主催しているので、ゲストにタレントを起用していたり、テレビ番組で放送したりと、規模とあわせて高校生の憧れにもなっています。
こうした大会を定着させるため、E5esports Works擁するサードウェーブが注力しているのが高校eスポーツ部への支援です。さらに、顧問の先生同士で練習試合の募集や悩み事の相談ができるコミュニティ形成をサポートすることで、高校でeスポーツに取り組みやすい環境の構築を目指しています。
大会の運営やeスポーツ部への支援を通して、西川さんは高校eスポーツに大きく“三つの価値”があると話します。それが、「男女や体格差に関わらず同じ舞台で競うことができるユニバーサルスポーツとしての価値。登校のきっかけになったり、留学生との交流のきっかけになったりする学生生活での価値。大会で活躍したことで、プロやストリーマーとして活動する道が開けるキャリア教育の価値」です。
事例として挙げたのは、岡山共生高等学校で活躍していた赤バフ選手(佐倉涼太さん)です。彼は重い喘息を患っていたことで体調を崩すことが多く、友だちとの距離が離れてしまい、中学はほとんど登校できずにいたそうです。自分を変えたいという思いから高校は通信制ではなく通学を選択。最初は苦労しながら登校していましたが、eスポーツ同好会に参加し、信頼できる先生、気の合う仲間ができたことで学校生活が楽しくなったと言います。
第1回の全国高校eスポーツ選手権では、リーグ・オブ・レジェンド(LoL)部門に出場するため、自ら校内で仲間を募集。LoLは日本でプレーしている人が少ない一方で、海外では人気なことを知っていたので、留学生に片っ端から声をかけてチームメイトを集めました。この時のチームメイトは今でも連絡を取り合うかけがえのない友人になっているそうです。
その後、高校生大会で活躍したことで三つのチームから声がかかりプロ選手へ。その傍らで、自身の経験からeスポーツを活用した登校支援をしたいと考え、不登校の生徒・保護者に向けた講演会を実施しました。また、専門学校岡山ビジネスカレッジのeスポーツビジネス学科の立ち上げに参画。プロ選手の引退後、現在は同校の教員として勤務しています。
このほか、高校2年生のころにSTAGE:0の優勝チームでエースとして活躍したSoda選手は、東京大学に合格するなど、勉強とeスポーツの両立の道も示されています。
高校eスポーツ大会は、新年度が始まってから開催の告知がある、大会前日になっても選手に必要な情報が行き渡っていないなど、運営面の問題から学校側が公欠や試験にあわせて予定を立てにくい指摘もあります。今後も高校eスポーツ大会を続けていくために、運営と学校が連携して解決していかなければならない課題です。一方で、西川氏が挙げたように不登校の解消やコミュニケーション能力の向上など、高校eスポーツには課題を乗り越えて実施する価値があります。
こうした事情を踏まえながら、西川氏は「eスポーツは若者と将来の可能性を結びつける架け橋」と強調。「チームメイトとともに一生懸命練習し、真剣にeスポーツに取り組む高校生の姿をぜひ一度観戦してもらいたい」と締めくくりました。
7月1日、2日には、STAGE:0 2023「LoL部門」「クラッシュ・ロワイヤル部門」のブロック代表決定戦のライブ配信があります。8月5?7日には各競技の決勝大会のライブ配信です。日本で最大の高校eスポーツ大会を観戦すれば高校eスポーツの魅力の一端が見えるかもしれません。
■関連記事
■外部リンク
E5esports Works
https://www.e5esw.co.jp/
おすすめ関連記事
新着記事
-
コラム
“学生×eスポーツで何か絡みたい社会人” 配信技研 取締役 アユハさん主催の交流イベント「ULPA(ウルパ)」 潜入レポート
2024.11.01
-
新製品
スナドラ8 Gen3 LV搭載 REDMAGIC 独自冷却システムと大容量バッテリーで長時間プレーも安心な12インチゲーミングタブレットをグローバル展開
2024.10.31
-
新製品
35ms低遅延モード・ハイブリッドANC搭載 finalがゲームからエンタメまでこれ一台なワイヤレスイヤホンをREBブランドから発売
2024.10.31
-
大会情報
岡山ではブランド牛を無料提供、徳島にかげっちさんのスト6対戦会が初進出などなど 直近開催のeスポーツ・ゲームイベント特集(10月5週版)
2024.10.31
高校eスポーツ探訪
-
2024.08.02
eスポーツが学校生活の活力に 立正大淞南eスポーツ部「GEEK JAM」 ランクイモータルのプロ志望も入部!? 部員インタビュー
-
仙台城南高等学校
2023.08.12
部活動を通じて磨かれた指導力、知識量、分析力 仙台城南高等学校eスポーツ部 後編
記事ランキング
-
1
サービス
2024.10.25
使うのはドライビングシミュレーター 大阪電通大 eスポーツ競技者の疲労緩和や環境改善サポートへ研究開始
-
2
大会情報
2024.10.29
Riot Games ONE 2024 オフラインイベント内容公開!DFM、ZETA、Fnatic、LEVIATANによるエキシビションなど3プログラム 先行チケット販売中
-
3
解説
2023.04.15
VALORANTの戦績トラッカー「Tracker.gg」、使い方を日本語で解説
-
4
解説
2021.09.28
FPSでよく使われる用語(スラング)一覧|意味や使い方を紹介!
-
5
eスポーツ団体
2024.10.28
鳥取・北栄町がeスポーツで地域活性化 企業版ふるさと納税活用で図書館にeスポーツ設備導入へ まずは高校生を中心とした活動展開を目指す