インタビュー

2023.11.23

力強く そして静かに燃ゆる青い炎 “Blue Flare” 青森発のeスポーツビジネス団体がめざすものとは? 前編

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 Blue Flareは、青森県でeスポーツイベントを開催する、最も活発な団体と言えるでしょう。2022年11月から活動を開始し、1周年を迎えたばかりの同団体。23年度には青森市の市民活動活性化事業補助金の支援対象として採択されました。編集部でも何度かBlue Flareのイベントは取り上げてはいますが、一体どういった経緯で作られた団体なのか気になっていました。そんなわけで、今回は前後編に分けて、代表を務める大地さんにBlue Flareの設立から現在、その先の展望まで聞いてみました。(取材・文/寺澤 克)

“まだ”企業ではないビジネス団体 イベント企画を手掛け 近い将来企業化へ

大地さんは、Nintendo Switch「マリオテニス エース」で国内50位以内に入るほどの腕前だったことも。オンライン大会で好成績をおさめるも、
任天堂のメールに気づかず
賞品の公式Tシャツを貰いそびれた経験がある


──Blue Flareという団体について教えてください。企業とは異なるのですか。

大地さん(以下敬称略)私が発起人になって立ち上げた、eスポーツなどのゲームを活用するビジネス団体です。収益性を確保してスタートアップ企業の設立につなげるための組織として立ち上げました。そのため、「まだ企業ではない」と言う方が正しいかと思います。

 現在のメンバーは23人で、会社員もいれば学生もいます。今年6月に説明会を開いた時には、多くの学生から活動に賛同してもらい、メンバーが増えました。

Blue Flare


──どんな活動をしているんですか。

大地 現在は、青森県を中心にゲームのイベントを展開しています。自主的にイベントを開催することもあれば、イベント運営の請負業務などもやっています。

 昨年(2022年)活動を始めてから、高齢者向けのイベントなどを運営したり、青森県eスポーツ連合さんから仕事を請け負うこともありました。10月には、七戸町の町民文化祭でeスポーツブースを出させてもらいました。

 まだ成長段階ではあるんですが、イベントの実績は着実に積んでいます。ただ、これだけで収益を上げるというのはなかなか難しい。そのため、ライブ配信や専属クリエイターによる制作業務など、周辺領域を含めたビジネスモデルの確立を起業準備と並行して行っている。今はそんな段階です。

 あと、毎週2~3回、オフラインの定期的集会(通称「ラボ」)を開いており、そこでイベントで使用するゲームの検証やイベントプログラムの制作、オリジナルグッズの展開など多岐にわたる活動をしています。

ラボの活動風景


──オリジナルグッズですか。

大地 はい。あくまで試験段階ですけど、たとえばテーブルクロスだとか、今私が着ているこのTシャツもその一つです。地元にある「あおもり藍」という染織工芸で染めてもらったものです。

 地元との連携やコラボレーションをビジネスの軸の一つとしていきたいという思いもあり、積極的に地元産業や文化とコラボしていくことをコンセプトにしています。このTシャツは外部団体と連携して初めて製作したグッズ第1弾ですね。

オリジナルTシャツには胸元にBlue Flare、
肩口にあおもり藍のロゴを配置。
ちなみにモデルは副代表を務めるともやんさんだ
裾付近にかけては藍染特有の鮮やかなグラデーション。
バックにもBlue Flareロゴをあしらった


──仮にグッズを商品化したとして、その収益はやはりメンバーの方々に振り分けることになるのですか。

大地 はい、その通りです。先ほど言った請負業務でもそうでしたが、しっかりとお金は発生していてそれをメンバーに支払っています。ボランティアって聞こえは良いかもしれませんが、個人負担になると続けるのが難しいですし、しっかりと責任を持って運営していくならば、初めからビジネスの形態をとった方が理にかなっているという判断です。

 まずは真剣にeスポーツを普及させていきたいというのが最優先です。今は自分たちの時間を使った任意の活動で、時間は限られていますし、安定して収益を確保する段階まで至っていません。ゆくゆくはそうしたいという願望はあります。もしそうなるなら、まず私が今の仕事を退職して、みんなを巻き込んでいく必要があるでしょうけどね。

──ということは大地さんも本業で働く傍らこうした活動を?

大地 そうです。こうして日中に取材に応じられるのは、現在の仕事が夜勤だからです。

──仕事をしながら空いた時間にはBlue Flareとして活動して、休みがなくて大変ですね。

大地 まあ、そこはしょうがないですよね。起業を志すならばこれぐらいやって当然です。

「なら自分が」とコミュニティ仲間と立ち上げ ビジネススクール入学がきっかけに

──そもそもBlue Flareはどのようにして誕生したのですか。

大地 もともと私がデジタルハリウッドSTUDIO青森のWebデザイナー専攻というところに今年2月まで在籍していまして、会社員として働きながらホームページの制作やデザインについて勉強をしていました。

 それでカリキュラムの中間課題で何か自由なものを作って良いということになったので、eスポーツに関するコンテンツをつくろうといろいろ調べるようになりました。

──なぜeスポーツを題材に選んだのですか。

大地 デジハリを運営する社長が青森県eスポーツ連合の専務理事の方で、雑談をしていた時に、いまいちeスポーツの普及が進まないという話になったんですね。私もeスポーツはもともと興味があって、本業の方でeスポーツについて調べたり、青森県eスポーツ連合の活動に足を運んだこともありました。そうした背景から、なにか心に芽生えてくるものがあったんですね。

 あとは、eスポーツの普及について関係者の話を聞いていると、「こういう理由があってできない」とよく皆さんおっしゃるんです。そういった話を聞いていたら、じゃあ自分がやればいいのかなって思いまして、自分が所属しているDiscordコミュニティに「地元からeスポーツを普及させる活動をやりたいんだけど」と投げかけてみたんです。

 賛同してくれる人がけっこういたので、そこから資料とかを作って、22年の11月14日に決起集会を開いた。これがBlue Flareの始まりです。

──では、デジハリ青森に通ったことが始まりだったと。

大地 そうですね。最初は勤めている会社で新たなプロダクトを生み出せないかなと考え、Web関係の技術を学び始めました。結局、会社的にそういう風土がなかったと言いますか、それで学ぶ意味を失いかけてしまったんですね。そんな中でeスポーツの話が舞い込んできました。

 調べてみるとeスポーツのイベントや配信の見栄えをよくする技術など、ライブイベントに通ずるものであったり運営の部分であったり、分野が多岐に渡るんですよね。これは地元でやれたらすごく価値があると思いました。

 それと青森県のデジタル化の度合いって、全国でもワーストに近いスコアなんです。eスポーツを通じてデジタル技術の認知向上や普及促進を目指せば、ビジネスだけでなく社会的なミッションにもなる。これだったら自分としても面白くやれそうだなと考えました。

青森市の補助金にも採択 青森のeスポーツ普及に向け新たな一歩に

──青森市の市民活動活性化事業補助金にも採択されたそうですが。

大地 活動をスタートさせたのは良いのですが、やはりメンバーで資材などを持ち合わせるのにも限界があり、まとまった量が必要になると難しい。「なんとかならないかな」と悩んでいたところに、補助金関係に詳しいメンバーが、この存在を教えてくれました。

 それで急ピッチで資料を作って、市役所に何度も足を運んで無事採択されました。みんな大喜びでしたね。立ち上げて半年ぐらいの団体にお金をいただけてすごく助かりますし、活動にも弾みがつきました。

──市からのお墨付きではないですけど、しっかりした団体ということの証明にもなりますよね。

大地 そうですね。しっかりと資料を作って自治体にも説明をしてきたし、少なくとも変な団体ではないと認められたのがうれしかったです。青森県でも特に大きな、青森市、弘前市、八戸市の3市では、eスポーツというものを公に認めているわけでありません。しかし、eスポーツに関する団体に(自治体が)補助金を出したという事実を一つつくることができたのは大きな成果です。これからは、別の民間団体とのコラボもしやすくなるでしょうし、心強いです。そういった意味で、この地域にとっては新しい一歩になったのではないかな、と思っています。


 後編では、今後のイベントに向けて取り組んでいることや、将来の展望について語ってもらいました。さらにeスポーツイベントを開きたいと考えている人にメッセージを送ってもらいました。後編の配信は12月2日の予定です。

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外部リンク

Blue Flare ホームページ
https://www.blueflare.jp/

Blue Flare X公式アカウント
https://x.com/BlueFlare1114?s=20

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