インタビュー

2023.12.02

企業化の先には2026年国体も!“Blue Flare”青森発のeスポーツビジネス団体がめざすものとは? 後編

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 前後編に分けて掲載する、青森発のeスポーツビジネス団体「Blue Flare」代表の大地さんへのインタビュー。前編では、立ち上げのいきさつや普段の活動、さらには青森市の市民活動活性化事業補助金の支援対象として選ばれたことについて話してもらいました。後編では、現在準備を進めるイベントのことから、企業化などを見据えた将来の展望まで、Blue Flareの今とこれからについて語ってもらいました。(取材・文 / 寺澤 克)

 Blue Flareの立ち上げまでのいきさつがわかる前編の記事はコチラ↓

力強く そして静かに燃ゆる青い炎 “Blue Flare” 青森発のeスポーツビジネス団体がめざすものとは? 前編
https://esports.bcnretail.com/column-interview/interview/231123_004600.html

直近のイベントに向け準備中 自治体側からも声がかかるように

──現在取り組んでいることはなんでしょう。

大地さん(以下敬称略) 直近のイベントに向けた準備を着々とやっています。12月3日に市内で行われるダンボール造形の祭典「ダンボリアン」でeスポーツブースを出展するので、内容を詰めているところです。

青森市・東奥日報新町ビル New'sで開かれる
ダンボール造形の祭典「ダンボリアン」


──これはどういった経緯で出展が決まったんですか。

大地 かなり個人的なつながりなんですが、会社の先輩だった人が今居酒屋をやっていて、そのツテで紹介してくれました。ちょうどダンボリアンの知名度が県内ではかなり高まってきていて、今回は新しい取り組みがしたいという要望もあり、デジタルとアナログの融合をテーマにブースを出展してみようということになりました。

 今回はボンバーマンR2とスペランカーを使ってeスポーツブースを展開しようと考えています。

オフラインで開かれている定期集会(通称“ラボ”)の様子。
ここで今後のイベントなどについて話し合う


──スペランカーをチョイスするなんて珍しいですね。

大地 イベントで使用するゲームに関しては、どういったところが面白いか、ゲーマーが食いつきそうかといった部分をプロジェクトチームのみんなで検証しながら選んでいます。当然スペランカーもプレイしてみたんですが、ちょっとの段差を降りるだけでゲームオーバーなんて、大げさすぎて逆に面白いですよね。ゲーマーの間では突っ込みどころの多いゲームとして有名ですが、そこが逆に話のきっかけになったり、ヒントを出し合うことにつながったりと想定以上に面白かったです。

 ほかにもイベントの予定があります。12月9日に行う青森県初のシャドウバースのEvent Support地方大会の運営をすることになっています。

青森市新町のまちなか温泉青森センターホテルで開催する
「Shadowverse ES地方大会 2023 Winter青森大会 」。
優勝者には「RAGE Shadowverse 2024 Spring Day2」への
招待権が与えられる


 こちらは夏にシャドウバースの大会を開いたときに、弘前大学のシャドウバースサークルの方と話す機会があったことが発端です。今では全国都道府県対抗eスポーツ選手権の1競技になるほど盛んではあるんですが、その下地になるような地方大会が県内にはなかったんですよね。それで地方の大会に参加するには、秋田県や岩手県に遠征する必要があったようなんです。だから「青森でやってくれたらうれしいし、県内のシャドバユーザーにとっても励みになります」と話していたんです。

 それなら我々には大会運営のノウハウがあるし協力できるんじゃないかと思って、場所取りからはじめて開催する運びとなりました。

──やはり大会やイベントを開くときは、地元の声がきっかけになることが多いんですか。

大地 そうですね。ストリートファイター6のイベントなんかは、青森県内でも趣味の集まりという感じでやっている団体はなくはないです。ただそれだと発展性もあまりなく、ゲーマーの集まりに留まってしまいます。

 私たちは地元の飲食店のブースを出してもらうとか、ゲーム好きだけの集まりじゃない、やったことない人でも楽しめたり、地域のみんなで集まれるイベントを目指していますから、方向性が少し異なります。

 そういう意味では、自治体の方からも既に全年齢が楽しめるようなイベントを企画してほしいという要望も来ています。近いうちにそういったものも告知できるときが来るんじゃないかなと思っています。

──自治体側から声がかかるのですね。先ほど青森市の方には何度も足を運んだとおっしゃっていましたが、反応はどうでしたか。

大地 話を聞いてみると、eスポーツはそもそも自治体側にノウハウがあるわけではないですし、なかなか手を出すのが難しい分野らしいんですよね。もちろん興味はあるはずなんです。私たちのイベントのポスターとかも市役所に貼らせてもらいましたし、存在自体には全く否定の立場をとっていません。

 eスポーツの利活用は競技シーンだけでなく、さまざまな分野・業界が横断的に関わります。福祉であったり、教育であったり、地域振興でもある。だからトップの人がやると言えば、専任チームをつくるなりして対応できるのですが、それ以外なら、誰か熱意のある人が取りまとめるしかないんです。

 ですから、私たちのような団体が実績とノウハウを地道に積み重ねて、必要な時があればそれを展開できるようにしておくことも大切だと考えています。

いよいよ企業化が現実的に 2026年国スポも見据え地方eスポーツを盛り上げたい

──今後の展望について教えてください。

大地 引き続きではありますが「目標をもってスタートアップ企業を目指し、自らで収益化できるビジネスモデルを構築する」です。

 11月14日にBlue Flareは1周年を迎えました。前々から「2年で芽が出なかったらプロジェクトを凍結する」とメンバーには言ってきました。しかし1年間活動をしてきて、予想以上に活動が上手くいっています。

Blue Flareの掲げる起業までのロードマップ


大地 現状では、Blue Flareの公式サイトに掲載しているロードマップACT1~3のうち、2までクリアしています。ノウハウや実績を積み上げながら、企業や団体、自治体と連携を図り、すでに一般客や企業を巻き込んだイベントが運営できています。

 そして次はいよいよ営利組織として活動するという段階にまで到達しています。

──営利の話で言うと、既に請負業務などで収益を得ているのではないですか。

大地 確かにイベント運営業務を受託し、お金をいただくという意味で収益を出していると言えるかもしれません。しかしそれでは相手方に依存する下請けのようなもの。固定収入があるわけではないので持続性に欠け、本当の意味で収益化をしているとは言えません。

 私たちが目指すのは、スポンサーを集めて、自分たちが主催する大会やイベントを開くこと。さらには、これまでの企画ノウハウなどを集約し、パッケージ化することで、それを商品の一つとして販売することです。そうしてサービスを売り出して、ユーザーに買ってもらう、このサイクルを自ら生み出すことが真の収益化ではないか、と個人的には考えています。

──すると、将来的な活動は青森県内だけに留まらない?

大地 それも考えています。青森県を含めた「地方eスポーツ」という括りで考えると、どのようにイベントを開くのかといったモデルがまだ確立されていないと感じます。eスポーツ連合や協会が主導で行うものはたくさんありますが、一企業として行っているというケースは実はそんなにありません。

 その中で「地域×eスポーツ」をテーマに掲げている富山県のZORGEという会社は、目指すべきモデルの一つとしてこれまで意識してきました。部署の一事業としてeスポーツを扱うことはありますが、ZORGEのように専従で事業を展開している会社はあまりない。私たちも青森県内で「地域×eスポーツ」の会社を設立し、他の地域企業の参考となる存在になれれば良いと考えています。

 あと、オンライン大会ならば海外の仕事も受けることができると聞いています。幸いメンバーの中には配信技術などに詳しい人がそろっているので、ゆくゆくはそこも武器になっていくのかなと。とにかく、青森だけの仕事を受けるというイメージにはしないと思います。

 もちろん、青森県や青森市とは引き続き連携していきたいです。それについては、青森県を舞台に国民スポーツ大会(国体)が行われる26年を一つの目標にしていこうかなと考えています。

─国体というと、全国都道府県対抗eスポーツ選手権を見据えるということですね。

大地 はい。26年までに、私たちがeスポーツイベントを運営するノウハウを備え、青森県に根差す団体として地位を築き上げることで、国体を盛り上げていきたいという思いがあります。

 青森の地元の人間が加わることで、新たな試みにもつながってくるだろうということで、最近では日本eスポーツ連合の定期ミーティングなどにも参加しています。その中で、現在開催されている国体なども情報共有させてもらっている状況です。

 既に青森県eスポーツ連合が組織され、活動をしていますが、私たちのように自治体とも密に連携を取り、大会やイベント運営のノウハウも積み上がりつつある団体が共に協力すれば、よりよい大会を開くことができるはず。そのためにもこれからさまざまなイベントを運営、企画していき、さらなる経験を積む必要があります。

「Blue Flare」は、
青森の「青=Blue」と賑わいを生み出す「灯火=Flare」に由来する。
大地さん曰く「青い炎は酸素が行きわたっているから青い。
赤い炎と比べると風が吹いても消えにくく、
静かに、でも熱く燃えている」というイメージだそう

イベントの企画には「熱量」が必要!

──さて、最後にeスポーツイベントを企画したいと考えている方々にメッセージを送っていただきたいと思います。そこで質問です。大地さんは、イベント企画で大切なものを一つ挙げるとすれば、それは何だと思いますか。

大地 そうですね……「熱量」です。

──熱量ですか。

大地 はい、それだけですね。それがあれば何でもできるので、熱量があるならやるべきだと、イベントを企画したいと考えている人に伝えたいです。

 私は別にeスポーツはすごく得意なわけではないし、何かの第一人者というわけでもないです。ただ、団体立ち上げの前にeスポーツの情報を調べているとき、イベントを開催する技術力があってもやらない人に大勢会いました。「じゃあ何でやらないの」って聞いたら「そこまで熱量があるわけじゃないから」「やらなくても生活できているから」というんですね。

 でも、もし仮に「自分の地域にもこういうものがあってほしい」と強く願っている人がいるのであれば、何が何でもやるべきだなと思います。10年後振り返った時に「やっておけばよかったな」と思わないか、ちょっと自問自答してみればいいです。私はそれを自分に聞いてみたら「あー、このままずっと今の日常を続けていたら、たぶん後悔する」と思いました。

 まだ私も1年しか経ってませんけど、仲間がたくさんできて、おかげさまで定期的に活動できています。だから、自分の熱量に耳を傾けるといいますか、自分の心の声を取りこぼさないようにすることも大切かなと思いますね。

──今回は貴重なお話をしていただき、ありがとうございました!

 大地さんは終始淡々と答える姿が印象的でしたが、言葉の節々からeスポーツに対する確かな熱意を感じ取ることができるインタビューとなりました。今後は徐々に活動を広げていくということなので、ますます注目が集まりそうです。

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外部リンク

Blue Flare ホームページ
https://www.blueflare.jp/

Blue Flare X公式アカウント
https://x.com/BlueFlare1114?s=20

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