インタビュー

2025.01.09

「君にとって最初のスポンサーは親御さん」トンピ?さん 数々のイベントで実況を務めるゲームキャスターに聞く学生時代とキャリア

記事をシェア
エックス
フェイスブック
ライン

 【ゲームの進路相談室・第9回】練習を重ねた選手たちが熱い試合を繰り広げ、たくさんの観客が熱狂するeスポーツシーンは、さまざまな人によって支えられています。連載企画「ゲームの進路相談室」では、そんな“eスポーツに関わる職業”と“その職業に就いた経緯”を紹介。将来の仕事をぼんやり考えるきっかけを提供します。

トンピ?さん
トンピ?さん


 今回は、数々のゲーム大会で実況・解説を務め、現在も幅広くeスポーツの分野で活躍しているゲームキャスター・トンピ?(福岡智洋)さんに、学生時代のことや実況者としてのキャリアの築き方、eスポーツに情熱を注ぐ学生たちへのメッセージを伺いました。

(取材・文/小川翔太)

自身の学生時代について ゲーム人生の始まりはAVA 次第にイベントも主催するように

──学生時代はどのように過ごしていたのでしょうか。

トンピ?さん(以下、敬称略) 小学校時代は、同級生がたった17人という小規模な学校で育ちました。

 両親はゲームへのマイナスイメージが強かったのかもしれません。ゲームキューブやニンテンドー64の時代でしたが、ゲーム機を買ってもらえず、外で遊ぶことが多かったですね。だから当時の私はサッカー少年でした。

 初めてゲーム機を手に入れたのは中学生になってからです。周りがニンテンドーDSで遊んでいる中、自分はゲームボーイアドバンスで遊んでいました(笑)。

 そんな状況でPCが唯一、グラフィックなどのクオリティが高いゲームを遊べるハードでした。中学2年生の時に友人の「ケンちゃん」から「Alliance of Valiant Arms(AVA)」というオンラインFPSゲームを勧められました。それが私のゲーム人生の始まりです。

──両親に家庭用ゲーム機の制限をされ、結果的にオンラインのPCゲーム(eスポーツ)の道に進むことになった、というのが興味深いですね。

トンピ? そうですね(笑)。その後、高校では「AVA」のクリアファイルを持っていたことがきっかけで、別のクラスの友人と意気投合し、5人でクラン(チーム)を作ることになりました。そのチームで大会に出場し、リーグ戦で日本一になることができたんです。

 Aランク入りするほどのチームでしたが、メンバーは「楽しむこと」を重視していたので、「自分たちでも楽しめる場を作ろう」という発想でイベントを主催したり、ネットカフェのオフラインイベントでボランティアスタッフとして働くようになりました。

 この頃にeスポーツカフェから「実況をやってみないか」と声をかけてもらったことも、今のキャリアにつながる大きな転機でした。最初は定点カメラを設置して、ネットで見ている人と会場を繋ぐ中継役のような仕事でしたが、そこから「伝えることの楽しさ」を実感し、少しずつキャスター活動の経験を積んでいきました。

 部活動では陸上部に所属し、砲丸投げやリレー選手として活動していましたし、同時に図書委員長も務めていました。部活に大会運営、委員会の仕事と、振り返ると本当にマルチタスクな学生時代でしたね。

トンピ?さん

大切なのは「名刺」? 学生時代やっておいて良かったこと

──学生時代にやっておいて良かったことはありますか。

トンピ? 名刺交換の経験ですね。本来は社会人になってから行うものですが、私は高校3年生のときに「トンピ?」という名前で活動を始めたタイミングから名刺交換をしています。

 名刺は名前を覚えてもらう手段として有効ですし、X(旧Twitter)の二次元コードを貼ればフォロワーを増やすことにもつながります。当時はSNSがまだ発展途上だったため、自分を証明するツールとして名刺は特に欠かせないものでした。

 eスポーツ活動をしている学生なら、名前や大学名、サークル名を記載した名刺を作ることで、周囲に自分の存在を証明しやすくなります。将来の活動やキャリアにつながる第一歩として、ぜひ作っておくことをおすすめします。

──最初に名刺を作ろうと思ったきっかけは何ですか。

トンピ? きっかけは所属したい大学サークルの存在でした。高校3年生のときに入りたいサークルがあり、そのサークルの名刺を先んじて作ってもらったんです。

 いざ使ってみると、「大人に認知してもらうためにこれは便利だな」と。

 特に威力を発揮したのは、就職活動の時です。選考で他者からの推薦文を求められることがあったのですが、私は学生時代に名刺交換をしていたインテルの副社長から推薦をいただいたんです。そのおかげで、内定を一発で獲得することができ、名刺の重要性を強く実感しました。

 今では周囲の学生にも、「名刺は早めに作っておいた方がいい」と伝えています。

トンピ?さん

学生の頃やっておきたかったこと 人となり示すには配信活動も重要

──学生時代にやっておきたかったことはありますか。

トンピ? 動画制作や生配信、YouTube運営は、学生のうちに取り組んでおくべきだったと感じています。今や他のキャスターの多くがYouTubeやX(旧Twitter)で定期的に配信をしており、これらのスキルは必須になっています。

 私自身は、キャスターと社会人の仕事を両立させる中で、eスポーツにおける新たな前例を作りたいと考えていました。その一方で、「30歳まではSNSとイベント出演だけでどこまでやれるか挑戦してみたい」という気持ちもありました。

 結果として、SNSやイベント出演の実績を積み重ねることで信頼を得て仕事につなげられる、ということは証明できたと思います。ただ、その過程で「動画制作やパーソナルな発信」にもっと早く取り組んでおけば良かったとも感じています。

 テキストベースのSNS、特にX(旧Twitter)だけでは、自分のパーソナルな部分を十分に伝えることが難しいんです。

 「何をしている人なのか」が伝わりきらず、「(トンピ?さんは)いつも忙しいのではないか」と言われたり、日々、誤解が生じているなと感じます。ですから、TikTokやYouTubeといった動画媒体で日常や自分の人柄を発信することは重要です。動画編集スキルも仕事に直結する場面が多く、学生時代に習得しておけば間違いなく役に立つはずです。

 現在、私自身もYouTubeショートやTikTokを活用して、自分のパーソナルな部分やeスポーツの現状を発信する準備を進めています。ゲームやコミュニティを広げるために「自分自身を媒体」として使い、多くの人に興味を持ってもらえるような活動を目指しています。

トンピ?さん

「両親の納得が『eスポーツ人生』の第一歩」 eスポーツを頑張る学生にメッセージ

──eスポーツに打ち込む学生や生徒にメッセージをお願いします。

トンピ? まず最大のスポンサーは親御さんだと意識してほしいです。自分のことを全く知らない人に、スポンサーになってもらうのは非常に難しいことですから。

 親は自分のことを最も理解してくれる存在。だから、彼らを納得させることが「eスポーツ人生」の最初の一歩になると私は思います。

 親御さんの支援があるからこそ、学校に通えたり、デバイスを買ってもらえたりする。そのことを忘れずに、親を説得でき、安心させられる材料を見つけ出すことが大事ではないでしょうか。

 私自身、大学卒業までずっとゲームを続けていましたが、学業も疎かにせず、教員免許を取得しました。教員免許は通常の大学卒業よりも多くの単位が必要となります。睡眠時間や遊びの時間を削って勉強し、努力の証明を形にしたことで、親も私の進む道について少しずつ理解を示してくれるようになりました。

 現在では、会社の代表として結果を出し続け、両親も私のことを全面的に応援してくれています。

 やはり自分のことを最も知っているのは親です。親を納得させられないようでは、この先の道のりは険しいでしょう。だからこそ、努力の証明として結果を形にすることが大切です。eスポーツを本気で頑張るなら、自分の活動や実績を示せるよう努力を惜しまないでほしいですね。

(編集:BCN eスポーツ部)

関連記事

「ゲームを思い切りやるためにもしっかり勉強すべき」平岩康佑さん 第一線で活躍中のeスポーツキャスターに聞く学生時代とキャリア

プロ志望の学生が「今やるべきこと」は?ZETA DIVISION Lazさんが東京アニメ・声優&eスポーツ専門学校のトークショーで語ったこと

岸大河さん&OooDaさんに聞く学生時代とキャリア、「やるなら全力、結果・検証まで」

外部リンク

トンピ?さん オフィシャルサイト
https://www.tonpiofficial.com/

部活紹介

おすすめ関連記事

eスポーツ部の活動日誌

新着記事

ゲーミングデバイス情報

  

ゲーミングデバイス情報

新製品 レビュー 部活紹介 eスポーツ部の活動日誌