インタビュー
2024.05.01
岸大河さん&OooDaさんに聞く学生時代とキャリア、「やるなら全力、結果・検証まで」
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3月に開催された「VALORANT Challengers Japan 2024 Split 1 Playoff Finals」で総合MCを務めた岸大河さんとOooDaさんは、数々のeスポーツシーンをキャスターとして支えています。もともとは別の道を目指していた二人ですが、紆余曲折を経てプレイヤーからキャスターへと転身してきたとのこと。どのような経緯で今の職にたどり着いたのか。学生へのメッセージと共に振り返ってもらいました。
取材・文・写真/小川 翔太 編集/南雲 亮平
今回、インタビューで聞いたのは下記の4点です。
・初の名古屋開催となった「VCJ 2024」について
・お二人はどんな学生だった?
・岸大河さんの「出会いたい学生」とは
・OooDaさんの「セカンドキャリア支援」について
最後に「eスポーツを頑張る学生と親御さんへのメッセージ」もあります!
初の名古屋開催となったCHJPについて
──「VCJ」初の名古屋開催となりましたが、キャスター席からの見て、いつもと様子が異なる点などありましたか。
OooDaさん(以下、敬称略) 今回、出場している3チームのうち、「Sengoku Gaming」と「REJECT」は、初のオフライン参戦ですので、これらのチームのファンの方々もたくさん来場されていて、普段とは客層も変わっているように思います。
昨今、eスポーツ業界を盛り上げようと、各地方や都道府県の自治体やイベント会社が頑張ってくださっています。名古屋では「DetonatioN FocusMe」を筆頭に、コミュファ(中部テレコミュニケーション)など「名古屋のローカルでeスポーツを盛り上げよう」という根強い動きはずっとあったんです。
名古屋を活動拠点としている、MCや実況者、芸人さん、タレントさん、アナウンサーさんといった方々もeスポーツ業界を盛り上げてくださっています。
そういった経緯もあり、今回『VALORANT』のイベントが名古屋で行われるということで、名古屋の皆さんにすごく喜んでいただけたのかなと思います。運営の方曰く、来場者の40%ほどが名古屋の方だったらしく、僕らもとても嬉しかったです。
岸大河さん(以下、敬称略) 来場者の応援ボードにも「名古屋で開催待ってました!」「開催ありがとう!」というメッセージが多く見受けられました。
── 来場者のインタビューでも地元開催を喜ぶ声が多くありました。あこがれの選手が身近にきたらワクワクしますよね。
岸大河さんの学生時代について
──来場者のなかには学生の方も多くいらっしゃいましたが、自分が学生の頃にはこのような規模のeスポーツ大会が開催されるとは思ってもいませんでした。お二人はゲームでキャリアを築きましたが、どういった学生時代を経てここまで来たのでしょうか。
岸 学生時代はサッカーを頑張っていましたが、そのうち、引きこもりになってしまいました。当時、僕の中には「サッカーと学業は両立すべき」という考えがあったのですが、学校に行けず、両立できていない自分には「プロになる資格はない」と思って、サッカーを諦めてしまったんです。
その後は、母親と父親の言うことを無視しながらゲームをしていた時期がありました。
両親が僕の夢を応援してくれるようになったのは、僕がFPSの大会で優勝して成果を出した時です。その時、両親は「この子は引きこもりで、学校に行っていなかったけど、自分の好きなもので将来を明るく見据えている」と思ってくれたのかもしれません。
落ち込んでいた時期は「もう何にもしたくない」「働きたくもない」「学校にも行きたくない」というように殻にこもってしまっていたんですが、その殻に穴を開けて、光を差し込んでくれたのがゲームでした。恐らく(自分だけでなく)両親も同じことを思ったんじゃないかな。
両親に対しては、やる気や熱意を常に伝えていたので、「本当に大丈夫なの?」と心配はしながらも、応援はしてくれていました。結果を残すというのは大事ですね。結果が残せないのであれば、両親の言うことはしっかり聞くべきでしょう。
(自分が親になった今)もちろん親としては子どもの活動を応援したいけど「将来苦労するんじゃないか」とか「できれば普通の人生を歩んでほしい」とか、そういう心配の気持ちはあります。
しかし、僕自身が「一般的な人生」を歩まずに親になったので、子どもが「何かに挑戦したい」と言うのであれば、応援したいですね。やるならしっかり集中して、人生を懸けて勝負してほしいです。
OooDaさんの学生時代について
──OooDaさんの学生時代はeスポーツではなく、ヒップホップ業界や映画監督の仕事にご興味があったと伺っていますが、学生時代はどのように過ごしていたのでしょう。
OooDa 学生時代、ヒップホップとか自分の好きなことを色々やりながら「映画監督になりたい」と思って東京に出てきたんです。
その後、自作映画を数本作ったのですが、うまくいかず、引きこもっていた時期がありました。その頃にオンラインゲームと出会って、ゲームをやっていくうちに、友達ができて、ゲームのコミュニティに所属するようになりました。
ゲームのコミュニティで「ちょっと実況してみない?」と声をかけてくれた方がいて、遊び半分で実況を始めてみたら、仕事として定着したんです。
(岸さんと同じように)僕にとってもeスポーツは、社会復帰させてくれたものでしたね。当時はうちの両親もかなり心配していたんじゃないかな。
──映画やヒップホップも、かつてはメインカルチャーからは外れていて、隅っこで熱く盛り上がっているものという印象がありましたが、eスポーツもそういった面でシンパシーを感じたり「(eスポーツが)自分と相性が良かった」と感じる部分はありますか。
OooDa そうですね。僕が学生の頃、ヒップホップなんてみんな知らなかったんですよ。
ZeebraやDragon Ashぐらいの有名な方ぐらいしか知られていなくて、当時はラッパーも食べていけない時代だったと思います。やがては「高校生RAP選手権」を皮切りにどんどん広がっていって、今ではドームを簡単に埋めてしまうほどのアーティストもたくさん出てきていますよね。
そういった、サブカルチャーからメインカルチャーに近づきつつあるという面では、(ヒップホップや映画は)eスポーツと似ているなと思います。
岸大河さん「見つけられる側の大人」になったことについて
──BCN eスポーツ部の過去のインタビューで「業界に入った後、いい大人と出会うことが大事だ」というお話をされていましたが、そのお考えは変わりないですか。
岸 そうですね。昔よりはだいぶ、eスポーツ業界から(悪い大人が)淘汰された気がしますね。
僕らの中で「淘汰された」と感じている背景としては、(僕らの周囲では)規模の大きい現場が増えてきた、という点があります。ただ僕らが関わることが少なくなってきた小~中規模のイベントでは、もしかしたらまだ悪い大人がいるかもしれないですね。
表からは見えないところで悪さをしている人がいるというのを耳にすることもあるので、気をつけながら、eスポーツ業界を歩んでいくのがいいと思います。
── 時を経て、今度は岸さんが「頼られる“いい大人”側」になったかと思います。以前と比べて、岸さんを見つける学生に変化はありますか。
岸 ここ最近、学生さんと仕事をすることが増えました。仕事だけでなくプライベートでも会うことがあるんです。実況で関わったり、専門学生や大学生向けの講演でお会いしたり。
直接僕にDMを送ってくださる方々もいらっしゃいます。例えば、僕の会社のマネージャーになってみたいという学生さんと何度か面接をしたこともあります。
そのほか、「自分の学校の研究で『eスポーツがどういう状況になっているか』を調べているので、インタビューをさせてほしい」というようなDMをいただくことが増えてきました。時間が許す限りはなるべく答えようとしています。
また学生さんからは「eスポーツの将来に興味があり、僕のキャスターになったきっかけを知りたい」というご質問も多いです。今後、伸びるであろう産業に対してより深掘りしてみたいという意欲や、好きなことをより知りたいという気持ちがあるんでしょうね。
最近の学生さんは、大人よりも丁寧なメールを送ってくれるのでびっくりすることもあります(笑)。僕よりもメールを書くのがうまいんじゃないのかな(笑)。
OooDaさん「セカンドキャリア支援」のきっかけ
──OooDaさんは、24年2月に「プロゲーマーのセカンドキャリア支援」についてSNSで発信※をされましたが、こちらのきっかけを教えてください。
※OooDaさんの投稿
(https://twitter.com/OooDa/status/1760142085477535932?s=20)
OooDa Xでのあの発信のきっかけは、eスポーツリーグ「X-MOMENT」の終了が発表されたことです。これについては正直、いろいろと思うことがあって「どうして終わってしまうんだ……」という気持ちでいっぱいでした。
自分も『PUBG MOBILE』担当として関係者のひとりでしたので、先に情報を得ていたのですが、周囲が「3年間、運営ありがとうございました!」と話す中、僕はどうしても感謝の意を表すことができませんでした。
言葉を選ばず言うと「なんで3年で辞めてんの?」って、僕の心中は穏やかではありませんでした(笑)。
このリーグの終了を以って、多くの『PUBG MOBILE』のプロチームが解散、大勢のプロゲーマーが放出されてしまいました。
リーグが終わること自体は仕方ないことではあるので、恐らく選手やチームの方々も、ある程度は覚悟していたのかもしれません。
でも、このタイミングで「僕のできる限り、救える範囲で救ってあげたい」「裏側で支援するんじゃなくて、表だって自分が発信してやっていこう」と考え、発信を決断しました。
あのポストをきっかけに、200人ぐらいが相談に来てくれました。
これまでも「プログラミングを教えたいという学校」や「熱意ある若者を就職させたいというネットワーク関係の会社」などに人材を紹介してきた実績があります。
過去、皆さんが知っているようなプロゲーマーさんを、某ゲーム会社に紹介した実績もあります。これからも支えていきたいです。
eスポーツを頑張る学生と親御さんにメッセージ
──最後に、自分の好きなものに熱中している学生さんたちに勇気を与えるようなメッセージをいただきたいです。eスポーツは世間的に認められてきたものの、まだ一般的な部活動とは差があり、学生たちがeスポーツに打ち込むとなると、後ろ指を刺されながらになることが多いのも現状です。世間とのギャップを感じつつも頑張る学生さんに向けてお願いします。
OooDa 色々やってみるのがいいと思います。(僕自身のように)その中で本当に自分にあっているものが「続く」んじゃないかなと。
今の世の中、チャレンジできることが昔より多くなったと思います。PCやインターネットを通じて、自分で会社を起こす人もいるでしょうし、VTtuberや歌ってみたなど、やりたいことにいろいろとチャレンジできる世の中です。いつどこでスポットが当たるか分からない時代になったといえるでしょう。
岸 本当にやりたいのであれば、「一旦、全力でやってみた方がよい」というのが僕の意見です。その上で「どんな結果が得られたのか」「(結果が出ていないのであれば)何が厳しいのか」「何が今いけるのか」を下調べして、自分の実力も考慮して、進む道を選んだ方がいいと思います。
もちろん世界では、プロゲーマーとして賞金を稼ぐ選手もいますが、それ以外の80%ぐらいの選手は稼げていないような印象があります。まずは現実を見て、業界にいる人たちの意見をしっかり聞くことが大切ですね。
また、親御さんに伝えたいことは、(子どもに)「やめなさい」と言う前に、子どもが進もうとしている道や業界のことを、少しでも知っていただきたいということです。
(子どもがプレーしているのは)どういうゲームがあって、どんな選手がいて、どんなイベントがあるのか。eスポーツ業界について、関心を持っていただいた上で、それでも「是が非でも止める」のか「心配しつつも背中を押してあげる」のかの判断をしてもらえたらと思います。
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外部リンク
VALORANT Challengers Japan 2024 Split 1 Playoff Finals
https://valorantesports.tokyo/2024_Split1_Playoff_Finals/
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