大会レポート
2020.01.12
甲子園感覚で観戦できた! eスポーツ初心者目線の第2回全国高校eスポーツ選手権決勝大会レポート(13:tournament-report)
- LoL
- 大会/イベント
第2回全国高校eスポーツ選手権決勝大会の2日目、『リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends=LoL)』部門の取材に行ってきた。
だが、私はこれまで一度もリーグ・オブ・レジェンドに触れたことがないので不安で仕方ない……。取り急ぎ、ゲームをプレーする(といっても序盤のチュートリアルを終えたくらいまで)、前回大会の配信をチェックする、など勉強してみたが、“面白い!”と感じるまでは、のめりこめなかった。追いかけているチーム、選手もいない。
それでも、大会を観戦すると予想に反して“面白い!”と感じたのだ。その楽しさを、レポートを通じて共有したい。
観客は、基本的に出場選手の関係者が中心だと思える。同級生とおぼしき若い人が多かったが、プレス陣以外も大人の方がちらほら見かけた。先生、あるいは親御さんだろうか。試合中は、観客の誰もがスティックバルーンをたたいたり、歓声を上げたり、熱心にプレーヤーを応援していたのが印象的だ。
基本ルールはシンプルなリーグ・オブ・レジェンド
大会2日目は、リーグ・オブ・レジェンドというゲームの決勝戦。119校の頂点が、この日決まる。ゲーム画面を見るとごちゃごちゃしていて難しそうに見えるが、その本質は「先に相手陣地の本丸を壊すこと」だけ。目的は意外とシンプルなのだ。
ゲーム内容を軽く説明しよう。リーグ・オブ・レジェンドは、青陣営・赤陣営でそれぞれ5人のチームを作り、相手陣地の「ネクサス」という物体を破壊したチームが勝者となるPC向け対戦ゲームだ。相手陣地への道中には、タワーと呼ばれる要塞があったり、相手チームのプレーヤーが邪魔をしてきたりするので、それらをかいくぐって攻め込まねばならない。
目的はシンプルなのだが、ゲームに日常ほとんど触れない人にとっては、観戦のハードルが高いだろう。格闘ゲームや初日のロケットリーグならまだ分かりやすいが、リーグ・オブ・レジェンドはパッと見たときの情報量が多く、プレー中に飛び交う専門用語も多い。
操作キャラである「チャンピオン」なんて、大会時で約140体もいる。初代ポケモン並みだ。しかも、チャンピオンごとに使える技や特徴が異なる。
そんなリーグ・オブ・レジェンドを、初めてeスポーツを観戦する私が、また同じような大人の観戦者が、本当に楽しく見られるのだろうか。始まる前はそんな不安で頭がいっぱいだった。
同じ懸念を運営側も想定していたのだろう。準決勝が始まる前に、ゲームルールについての簡単な説明が実施された。説明があっても、プレーしたことがない人にとっては、なかなか理解が追いつかないかもしれない。でも、そんな人にも楽しんでほしいという強い意気込みが伝わってきた。
試合が始まると高校生たちの雰囲気が一変!
そうこうしていると、開会式がスタート。ベスト4に勝ち残った選手の入場とあいさつが始まった。選手たちはまだ高校生ということもあり、緊張で固くなった様子がうかがえる。大会といっても、ベスト4を決める予選はネットワーク上での対戦となるため、学校や自宅など慣れた環境でプレーできる。こうしたリアルの舞台での対戦に、慣れないプレーヤーも多いだろう。
場慣れしていなさそうだと顕著に感じたのは、各選手がステージ中央に立ってポーズするシーン。スポットを浴びると恥ずかしいのか、ポーズは一瞬で解いて、足早に元の位置に戻ってしまう。プロであればあまり褒められた行為ではないが、人の注目を集める舞台に上がった経験がないであろう若者だ。そうした初々しさが、普段はただの高校生なのだと感じる。
そんなゆるい雰囲気も、試合が始まると一変。対戦中の選手たちの表情は真剣そのもので、刻一刻と変わる状況に緊迫した声を上げる。ゲームといっても、もくもくと画面に向かうわけではなく、コミュニケーション能力も求められる。プレー中はボイスチャットで同じチームのプレーヤーと常に声をかけあうのだ。
リーグ・オブ・レジェンドでは、位置取りの報告やサポートの依頼、戦略変更の報告など、話し合うべきことは多い。こういうところは、野球やサッカーなどフィジカルスポーツと変わらない。
実況・解説があるから初心者でも安心して楽しめる
初心者の私がeスポーツの試合を心から楽しめたのは、実況者・解説者の存在が間違いなく大きい。
eスポーツでは、野球やサッカーのパブリックビューイングのように、大きなディスプレイに映し出されたゲーム画面を観戦する。ありがたいのが、ゲーム中、実況・解説の担当者は常に“今なにが起きているのか”を解説してくれることだ。
スポーツ大会の会場では実況・解説の声が聞こえないが、eスポーツの場では実況・解説付きが一般的。各チームがどんな意図を持って動いているのか、相手がそれに対してどのような対応策を狙っているのかを、平易な言葉で細かく説明してくれる。
複数のチャンピオン同士がぶつかり合う集団戦は、リーグ・オブ・レジェンドの山場。すぐに決着するのだが、時間当たりの情報量は膨大だ。状況説明のためにどうしても早口にまくし立てるところも……。リアルタイムでは、どちらが優勢かくらいしか把握できず、なかなか頭が追いつかない。だが、試合の合間にはハイライトをじっくりと説明しているので、そこである程度、選手たちの戦略の巧みさや高度な操作スキルを理解することができた。
一つひとつのチームにストーリーがある
今大会、見事優勝したN高等学校「KDG N1」は、前回大会で準決勝で苦杯をなめている。昨年もチームのエースとして活躍していたmarimo選手はそのとき、優勝セレモニーで舞った「金色のテープ」を一つ持ち帰っていたという。今大会での雪辱を誓うためだ。
そして、見事優勝を勝ち取った直後のインタビューで、marimo選手はテープを持った手を掲げて、こう言った??「今日ここに、これ(テープ)を返しに来ました」。
ちょっとできすぎな気がしなくもないが、正直いってしびれた。昨年の悔しさを1年間、かみしめていたのだろう。そして決勝戦では、1年間培った個人技・チーム戦略で相手チームを圧倒し、見事に雪辱を果たしたのだ。
甲子園や箱根駅伝が盛り上がるのは、「チームのストーリー」がいろいろな形で共有されるからだろう。全国高校eスポーツ選手権でも、準決勝まで勝ち上がってきた4チーム全てが、それぞれストーリーを持っていた。そして、それが解説や試合前後のインタビューで観客と共有される。これも観戦が楽しめたポイントだろう。
学生スポーツとしての発展に期待
学生スポーツというと、野球やサッカー、テニスなどが一般的。これらに限らず、スポーツに青春をささげた人も少なくないだろう。この日、恵比寿に集った24人の選手たちは、リーグ・オブ・レジェンドで研鑽を重ねる日々を過ごしている。青春をささげる対象が違うだけだ。
すべての選手が積み上げてきた技術と経験、プライドをかけて戦いの舞台に上がった。選手たちが真剣に技術・戦略を磨き上げてきたからこそ、試合中のひりつくような空気が生まれ、ゲームの展開に老若男女が一喜一憂し、歓声を上げた。
ネットの配信でも構わない、eスポーツの試合を一度見てほしい。その熱狂が画面越しに伝わってくるはずだ。そして、eスポーツ大会にもぜひ足を運んでみてほしい。選手たちが青春をささげる理由を、観客が熱狂する理由を、きっと理解できるはずだ。
初心者でも気軽に楽しめた全国高校eスポーツ選手権。第3回の開催決定も発表され、19年茨城国体での「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」も成功に終わり、学生の間でeスポーツ人気が今後さらに増していくのは確実だ。回を重ねていけば、部活としてeスポーツに力を入れる強豪校も現れるだろう。この大会が甲子園や全国高校サッカー選手権大会のように、多くの人が気軽に楽しめる学生スポーツに成長するのも、そう遠くない未来のことなのかもしれない。(浦辺制作所 澤田竹洋)
(c) 2019 Riot Games, Inc. All rights reserved.
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