大会レポート
2023.09.26
兵庫県の高校生主催eスポーツ大会、実施までの道のり 「eスポーツ大会のすばらしさがここに」
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兵庫県の私立市川学院 市川高等学校 情報メディア部は8月27日、市川町文化センターで「市川高校eスポーツ大会 2023」を開催しました。プロジェクトを主導したのは同校の生徒です。神戸電子専門学校esportsエンジニア学科の先輩たちからノウハウを学び開催。当日は会場に140人ほどが入りにぎわったとのこと。同校の情報メディア部の宮本美穂教諭に、大会開催のきっかけから実施までの経緯を聞きました。

高校生主導大会の企画が立ち上がったきっかけ
市川高校eスポーツ大会 2023のプロジェクトが本格的に動き始めたのは5月のことです。
もともと、学校見学会の一環として実施していたeスポーツ部の活動体験は中学生に好評で、毎回列ができるほど大盛況でした。いつも部室がいっぱいになっていたそうです。さらに、23年度は同校の新しいコース「地域探究クラス」が始動しており、地元市川町とコラボして授業を実施する機会が多くありました。
情報メディア部では、「自分たちも学校の魅力発信や地域を一緒に盛り上げるきっかけをつくろう」と考え、今回の大会を企画しはじめました。
実施にあたり、最初に相談を持ち掛けたのは市川町の商工会青年部。アイデアを話した結果、賛同した青年部のメンバーがサポートについてくれることになりました。また、市川町の施設である「市川町文化センター」は同じ町内の学校は無償で借りることができるということから、場所に関する費用面のハードルはなくなりました。
それから間もなく、22年度から部活動をサポートしてくれている神戸電子専門学校esportsエンジニア学科の先生に、大会開催までサポートしてほしい旨を依頼。同学科の先生はすぐに快諾したのち、5月10日には同学科の生徒や先生、市川高校の生徒と顧問でオンラインミーティングを行いました。
ミーティングでは、今回の企画では市川高校の生徒たちが自分たちで企画・運営を行うことを目標とし、教員ではなく高校生自らが専門学校の先輩にわからないことを聞き、アドバイスをもらいながら進める、という大筋が固まります。コミュニケーションツールは従来使っていたDiscord。新しいサーバーを立てて、やり取りを開始しました。

先輩のリードで進行
準備期間で課題となったのは、夏休みによるスケジュール調整でした。3年生は進路指導や進学補習が入ったり、2年生もオープンキャンパスに参加したりと、なかなか全員揃いませんでした。
加えて、校外の施設での eスポーツ大会は初めての挑戦であったため、全員が何を質問すればいいのか、どこから手を付ければいいのかわからない状態からの立ち上がりでした。せっかくつくったDiscordサーバーも、最初はうまく活用できません。しかし、立ち往生していると専門学校の生徒や先生が「チラシつくりましたか?」「ゲームタイトル決まりましたか?」など、上手にリードしてくれて、少しずつ少しずつ進めていきました。
ミーティングは学内でも、3年生を中心に複数回実施。まずは当日までにすべきことの把握、そして役割分担です。事前だけでも、ゲームタイトル選び、ルールづくり、選手エントリー時期とその方法の模索、観戦方法と来場者数の予想、広報の仕方についての考案、必要な機材数の割り出し、ホールの舞台配置の案作り、会場の配線確認、進行表やシナリオ作成など多岐にわたります。もちろん、進行表作成や配線確認などの要所では、顧問らがサポートに入りました。
このほか、エントリー受付開始後はチーム分け、トーナメント表作成、名札作成。選手らへの連絡は学校事務がサポートしてくれました。実施に向けては、スライド画像作成、動画作成、BGM決定など。前日には機材を搬入し、照明や機材をチェックして、リハーサルも行う必要があります。

“巨人の肩に立つ”
7月に入ると、市川高校の生徒たちは、神戸電子専門学校esportsエンジニア学科の生徒が開催する大会(ゲームタイトルは『スプラトゥーン3』)に招待されます。
Discordで交流のある先輩たちに直接会ってアドバイスをもらえるチャンスとあって、市川高校からは8人の生徒が会場である兵庫県神戸市の「eSPORTSアリーナKOBE三宮」を訪問。会場内は撮影自由で、生徒たちは参考のために大会の様子を撮影しながら、運営に必要な進行表や演者台本をもらって帰りました。そこで見たことや知ったことが最終的に大会をつくっていく上で大変参考になり、企画を進めるスピードが一気に上がりました。ゲームタイトルは『スプラトゥーン3』に決定しました。

「大成功」の大会本番
参考資料をもとに準備を進め、ついにやってきた本番当日。会場の市川町文化センターには、生徒と学校職員を含めて約140人ほどの人が入りました。さらには市川町長や、衆議院議員、兵庫県議会議員など市政に関わる来賓もあり、注目度が高まります。
結果として、大会は進行表通り進みました。やや余った時間には、大会優勝者と情報メディア部の精鋭たちによるエキシビジョンマッチも実現。開催前にはモニターの数が足りないなどのトラブルが発生したものの、大会中は機材トラブルもなく、「大成功だった」そうです。
同校の卒業生が働いている地元企業が協賛に入り、来場者向けのお菓子を振る舞ったほか、市川町商工会は大会参加者を対象に、町内の飲食店16事業所の無料チケットが当たる抽選を実施するなど、さまざまなサポートがありました。

「eスポーツ大会のすばらしさがここに」
宮本教諭は、「まだ若い高校生たちがこの規模の大会を開催することができたことに驚きました。生徒たちによる会場での案内、選手誘導やサポート、司会や実況解説について、素晴らしかったと多数声をいただけたことが、顧問としては何より嬉しく思いました」と、反響があったことを喜びます。

「今回の大会は市川高校情報メディア部だけでなく、学校をあげての協力、地域や企業のサポート、専門学校との連携などがなければ不可能だったと考えています。
学校教育は、地域の連携なくしては成り立たないものだと痛感しました。いろいろな大人と関わることで、今まで個人単位で行動することの多かった生徒たちが社会を知り、ただ人と繋がるだけでなく、一緒に一つの目標を成し遂げるために努力するという体験を得たことで、私たち教員が想像する以上に成長したと思います。
eスポーツ大会のすばらしさはまさにここにあったのかと実感しています。一人ではできないことでも、多くの人が力を合わせたら成し得ることができるということを、ゲームを通して生徒たちが経験できたことは最大の収穫でした」(宮本教諭)。
自分が好きなことを認めてもらい、そこからさらに新しい自分を発見していった3年生は、ほとんどの生徒が進学先を情報系の学校とし、これから受験していく予定。今大会で得た経験は、さまざまな場面で活かすことができるはずです。
(文・市川高校 宮本 美穂 教諭/編集・BCN eスポーツ部 南雲 亮平)
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外部リンク
市川学院 市川高等学校
https://www.ichikawa.ed.jp/

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