コラム
2023.06.09
eスポーツを企業マーケティングに活用するには? 電通×ライアットゲームズ、初の企業向けカンファレンスを共催
- 大会/イベント
- VALORANT
ライアットゲームズ(ライアット)と電通は6月8日、電通ホールで「eスポーツ市場をけん引してきた実績と、eスポーツを活用したZ世代マーケティングを語る」と題して、企業向けのカンファレンスを共催しました。両社は5月18日にアジア圏に向けた戦略パートナーシップを結んでおり、その後初の共催カンファレンスとなりました。
プログラムでは、まずライアットの日本法人社長の藤本恭史氏、LunaToneのFounder&CEOのヒョン・バロ氏らがZ世代に向けたeスポーツマーケティング活用について解説。次にライアットのAPACエリアでHead of Esportsを務めるショーン・オー氏がeスポーツの盛り上がりとその成功事例や今後の展望について語りました。最後に、バロ氏、ライアットのAPACエリアでDirector of Commercial Partnershipsを務めるデレック・ウィンダー氏、電通の中野義将氏の3名によるパネルディスカッションを行いました。司会はゲームキャスターの岸大河氏です。
はじめのあいさつとして電通のコンテンツビジネス・デザイン・センターeスポーツ事業部長の金原玄樹氏が登壇しました。
金原氏は、「eスポーツという名前は浸透したが、どういう経緯で、またどういった構造をしているのか深く理解している人は少ないと思います。マーケティングにおいてeスポーツが胸を張ってその選択肢の1つになれるよう、“コンテンツの成長”、“eスポーツへの熱狂”、“Z世代との接点としての活用”の3つをライアットさんと取り組んできたいと考えています」と、話しました。
藤本氏は、「2022年にVALORANT Champions Tour(VCT)でZETA DIVISIONが世界3位をとったことがターニングポイントになり、日本のeスポーツシーンが変わってきていると感じます。Z世代は、推しを見つけるとさらに深い界隈に入り込み、多くの時間を使い、投資する世代です。eスポーツにおける推しといえば、プレイヤーや実況者、チームなどいろんな推しがあって、VALORANT界隈なるものも出来上がっています。運営者としていろいろなシーンを提供しているつもりですが、今のストリームはこうしたファンたちによるところが大きいと感じています」と、VALORANTのeスポーツシーンを取り巻く現状について分析します。
バロ氏は、「Z世代とeスポーツは親和性が高いです。その1つの要素として選手とZ世代の年齢層が近く応援しやすいという点があります。そしてZ世代はさまざまなアクションを起こし、自分がよいと思ったものを周りの人に勧めたり、広めたりします。eスポーツはプロシーン、自治体との協力、学生たちの活躍など、1つのシーンに対してさまざまな掛け算をすることができます。複数のレイヤーに分かれてeスポーツシーンが存在するので、それぞれのマーケット、シーンに合わせたマーケティングを展開するのが今後のポイントではないでしょうか」と、展望を語りました。
今や韓国でのメジャープロリーグであるLeague of Legends Champions Korea(LCK)を立ち上げたショーン氏は、「昨今のeスポーツは、すべての伝統的なスポーツの人気を上回っているといえます。アジア圏についていえば、LoL韓国リーグを立ち上げたときは、会場を埋めるためにあらゆる努力をしたものですが、現在では、強力なブランドパワーでY・Z世代に大きな影響力を持つほどに至りました。日本の市場は、成長の余地がまだまだあります。ライアットはeスポーツ業界をけん引していきたいと考えており、ファンに素晴らしい体験を届けるために電通と共同して取り組みを進めていきます」とコメントします。
パネルディスカッション
最後にバロ氏をファシリテーターに、デレック ウィンダー氏、電通の中野義将氏がeスポーツをテーマにパネルディスカッションを行いました。
ハイブランドや自動車メーカーなど すでにeスポーツでマーケティングを展開
バロ氏 企業マーケティングにeスポーツを活用するにはどういった手法があるのですか。
デレック氏 例えば、ティファニーは大会のトロフィーを作成し、ニューヨークのストアで飾りました。考えてみるとこれは、トロフィーをティファニーという有名ブランドの店舗でみられる瞬間をファンに提供したと言えますね。特別な体験も提供したわけです。
そしてトロフィーにはトロフィーボックスも必要です。そこでルイヴィトンは、トロフィー用のトランクを作成しました。さらにLoLからインスピレーションを得て、新たにバッグも作りましたよ。実物のバッグは、自分には買えるようなものではないほど希少性が高くなりました。私も見たことはありません。
そしてメルセデス・ベンツとはうれしいことにさらに今後3年間のパートナーシップ延長契約を結びました。チャンピオンステージを作成するなど協力して貰っていますが、さらにゲーマーとのコネクションを作りたいとベンツが大きく踏み込んできたことを意味しています。
最後は皆さんもご存じのキットカットですね。eスポーツの会場などでファンに商品を配る際に、宝箱からそれを取り出すといった取り組みをしていました。さらにはLoLのゲーム内でキットカットのIPを利用し、マーケティングに活用していました。
日本市場は急成長中 ゲーム会社として社会的活動にも精力的に取り組む
バロ氏 日本市場についてどうみていますか。
デレック氏 日本はAPACの将来を担っています。このカンファレンスではライアットゲームズが日本で急成長している奇跡について話しました。最大のチャレンジは、これからどうこの成長を加速させ、維持していくかという点です。そのためにも電通と共同して進めていくことが必要です。
バロ氏 ゲーム会社としてどのような社会的活動をしていますか。
デレック氏 ソーシャルインパクトを高めるために何ができるのか考えるためのチームを作りました。これまで2300万ドルをチャリティーに寄付してきたほか、eスポーツ大会で使用した何百もの椅子もすべて寄付しています。一番誇りに感じているのは、ノンバイナリーリーグがあること。これは、すべての裏方やホストなど、男女の垣根なく、女性にも役割を担ってもらう取り組みでもあります。
バロ氏 司会の岸大河さんにも伺いたいのですが、プレイヤーでもある岸さんは、最近のVALORANTの盛り上がりについてどう思いますか。
岸氏 流行るだろうなとは思っていましたが、まさかここまで早く波が来るとは、というのが感想です。少し前は、タクティカルシューターは韓国産のものがたくさん出てきましたが、そのほとんどがサービス終了するなど、ジャンル自体が下火でした。しかし、それがまた復活し、それがVALORANTだったというのは全く想像できませんでした。さらにその世界大会が東京で開かれるなんて予想外です。
バロ氏 岸さんの考えるVALORANTの魅力って何ですか。
岸氏 たくさんありますが、私は、キルサウンドが武器によって違うということですかね。どんどん音が段階的に上がって沸かせる音が鳴るんですよ。そしてプレイヤーの視点でいえば、世界大会が開催されていて、「ランクマッチを続けていれば自分もプロと肩を並べられる」と、プレーしていく先が見えやすいということでしょうか。そして登場するエージェントたち。それぞれの背景もポイントですが、出身地特有の訛りでちゃんとしゃべっているなど、そういう細かなコンセプトを入れ込んでくるのが非常に魅力的ですね。
そして、うまくゲームとマッチさせてマーケティングを展開する企業さんもあるのですが、日本のeスポーツ大会はその点堅苦しいと感じる部分があります。校長先生のあいさつや点呼からスタートするとか段階を踏んでいく感じです。大会では、試合開始までに30分ほどスポンサー紹介があったりする。観客たちは試合を見たいんだという気持ちがあるので、もっとインターバルの間に何か工夫して、ゲーム性を取り込んだ紹介の仕方を考えたほうが、もっと宣伝効果が出るのではないかと思います。
バロ氏 最後に電通の中野さんに伺いたいのですが、eスポーツをマーケティングで活用するために一番大事なことは何だと思いますか。
中野氏 藤本さんからも話があったかもしれませんが、"界隈"という言葉、これに対する理解ですね。どういう風に界隈としっかりコミュニケーションが取れるのか。“authenticity”という言葉があります。直訳はうまく伝えれないのですが、おそらく本物であるということを意味する言葉です。企業体としてありのままでかつ、界隈に対してベストなコミュニケーションをする。これがauthenticityなのではないでしょうか。
ライアットは世界をけん引する企業、彼らとほかの企業をブリッジングしていくのが電通の役割です。電通も世界に多くの拠点を持っています。各拠点でゲームに強い人材をキャスティングしながら、どの界隈でも間違いのないコミュニケーションができるようサポートしていきたいと思います。
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■外部リンク
電通とeスポーツのリーディングカンパニーであるライアットゲームズの日本法人は、アジア圏に向けた戦略パートナーシップを締結
https://www.dentsu.co.jp/news/business/2023/0518-010612.html
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