解説
2024.08.20
ゲーム実況をする上で知っておきたい「配信ガイドライン」とは?
- 解説
ゲーム実況はすでに多くの人に親しまれているコンテンツですが、配信する内容によっては著作権に触れるリスクがあり、ゲーム会社の利益を損なう可能性があるので注意が必要です。ゲーム会社によっては、自社の利益を守るために配信ガイドラインを作成し、公開していることも多いです。
そこで今回は、ゲームの配信ガイドラインについて詳しく解説します。トラブルを避けて楽しく配信するために欠かせないものなので、ぜひこのコラムを読んで、配信のリスクを回避してください。
ゲーム実況における「配信ガイドライン」とは
ゲーム実況は2000年代初期から存在していたといわれており、意外と歴史があります。それから約20年が経過した現在では、インターネット環境が広く普及し、ごく当たり前になったので、実況する人も視聴する人も劇的に増加しました。今ではゲーム配信は、世界各国で広く親しまれるようになっているコンテンツだと言えます。
そしてこのように、ゲーム実況が私たちの間で身近になってきたことから、各ゲーム会社は、ゲームの著作権を守り、ネタバレを防止することなどを目的とした「配信ガイドライン」を作成するようになりました。
しかし、それでもなお、2023年5月には特定のゲームの結末がわかる動画を配信したYouTuberが、ユーザー体験を損なわせ、営業上大きな損失を与えたとして逮捕されたという事件が起こりました。配信をしていただけで逮捕されてしまうケースが実際に起こったことは、多くのゲーム配信者に大きな衝撃を与えました。そしてこの事件によって、ガイドラインを守る重要性が改めて再認識されるようになりました。
配信ガイドラインはゲーム会社ごと、あるいはゲームごとにそれぞれ公表されています。会社ごと、ゲームタイトルごとに目を通すのは大変な作業な。面倒に感じる人もいるかもしれません。
しかし、配信の内容によっては法に触れる可能性もあるので、配信を実施する前には必ずガイドラインに目を通しておくことを習慣にしましょう。
ゲーム実況を配信するときに確認したい流れ
この項目では、ゲーム実況の配信を行う前に、ガイドラインに抵触しないようにするためにはどのようなステップを踏むべきか、流れにそって解説していきます。
(1)配信したいタイトル(ゲーム会社)を検索し、ガイドラインを探す
ゲーム配信のガイドラインは、タイトルごとの場合と、ゲーム会社が自社のゲームに対するガイドラインを一括して公開している場合の2通りがあります。
そのため、まず「配信するタイトル名+ガイドライン」という二つのキーワードで検索してみましょう。そしてタイトル単位のガイドラインが見つかれば、その内容をしっかり確認して、ガイドラインに記載の事項を守って実況を行ってください。
一方、対象とするタイトルの配信ガイドラインが検索してもヒットしない場合、そのタイトル単体のガイドラインが存在しない可能性があります。その際は、今度はそのタイトルをリリースしている「ゲーム会社名+ガイドライン」というキーワードで検索してください。また、ガイドラインではなく、規約という言葉が使われていることもあるので注意しましょう。
配信を行う前には、このようにしてガイドラインを探し、禁止事項や許可されている内容を確認する工程が必要となります。配信の前段階の準備項目としてしっかりチェックしておきましょう。
(2)ガイドラインを確認し、配信プラットフォームが許諾対象かどうかを確かめる
検索を行って発見した配信ガイドラインには、全ページに目を通しておきましょう。そのうえで、配信を許可しているプラットフォームが何なのかを確認します。
例えばYouTubeを使って配信したいのであれば、YouTubeで配信することがガイドライン上で許可されているかを確認しましょう。場合によってはゲーム会社のホームページで禁止事項が書かれている可能性もあるので、ホームページも忘れずにチェックすることをおすすめします。
(3)規約を遵守の上で配信を行う
ガイドラインで許可されている内容であれば配信しても問題ないので、その内容に沿って配信を行います。
中には、禁止と書かれてはいないものの、許可もされていないグレーゾーン的なものも見受けられます。しかし、ほとんどの企業が、ガイドラインの内容について、個別の質問には対応しないという趣旨を記載しています。「ガイドラインに書かれていないことは、基本的に禁止されている」と考え「書かれていないことはやらない」と決め、配信を行った方がトラブルが起きず安心です。
もしも、少しくらいなら大丈夫だろう、と油断して動画を配信し、結果的に法に触れてしまったとなると大変です。最悪の場合、逮捕される可能性もあります。逮捕されれば、実名報道のリスクもでてくるため、自分の素性がバレてしまう身バレにもつながります。警察沙汰になったうえに名前まで知られてしまったら、その後の活動、ひいてはこれからの人生にも影響が及びます。
配信ガイドラインの種類
この項目では、実際に存在するガイドラインの概要を紹介します。
会社単位で定められているケース
多くのゲーム会社は、自社が権利を持つゲームについて一括して配信ガイドラインを発行しています。ここでは、有名な三つのゲーム会社が発行している配信ガイドラインの概要を紹介します。
会社単位のガイドライン例(1)任天堂
スーパーマリオシリーズやゼルダの伝説シリーズなどで知られる任天堂は、2018年に「ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン」を公開しています。
その中には、営利目的でなければ任天堂のゲームの動画やスクリーンショットを投稿して良いと明記されています。また、ニコニコ動画やYouTube、Twitchなど記載のプラットフォームを使用すれば動画やスクリーンショットを投稿して収益化できる、という趣旨の記述も確認できます。
ネットワークサービスにおける任天堂の著作物の利用に関するガイドライン
会社単位のガイドライン例(2)カプコン
ストリートファイターシリーズやモンスターハンターシリーズなどで知られるカプコンは、ホームページ内に「カプコン動画ガイドライン(個人向け)」という項目を設けて、配信可能な内容を記載しています。
カプコンも任天堂と同様の方向性で、YouTubeやTwitchでの配信を許可しています。ただし、ゲーム内のムービーを流すこと、自分でプレーしていない、編集していない動画の投稿は禁止されています。
会社単位のガイドライン例(3)フロム・ソフトウェア
ダークソウルシリーズやSEKIRO、エルデンリングで知られるフロム・ソフトウェアは、「動画・画像の投稿に関するガイドライン」という項目で、動画・静止画投稿の許可条件を記載しています。
ガイドラインでは「個人」に対する動画配信を対象に内容が記載されており、事務所と契約しているVTuberなど、法人、個人事業主やプロダクションなどと契約している人はと別途問い合わせる必要があります。
また、フロム・ソフトウェアがリリースしているタイトルには他社が著作権を持っているものがあります。これらのタイトルについては、個別のガイドラインを探すか、または著作権を持つ会社のガイドラインを確認しましょう。
ゲームタイトル単位で定められているケース
次に、ゲームタイトル単体にガイドラインが作られている事例を紹介します。
ゲームタイトル単位のガイドライン例(1)ファイナルファンタジーXIV
スクウェア・エニックスは、個別のタイトルごとにガイドラインを出す傾向にあります。MMORPGの「ファイナルファンタジーXIV」もそのひとつです。
「ファイナルファンタジーXIV 著作物利用条件」では、営利目的の配信を禁じる一方、YouTubeやTwitchなどを利用して配信することは許可しています。
ゲームタイトル単位のガイドライン例(2)ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S
同じスクウェア・エニックスのRPG「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S」にも、このタイトル専用の規約「動画・生配信・画像投稿に関するガイドライン」が作成されています。
この中では、YouTubeやニコニコ動画などを使って非商用目的で配信することは認めています。しかしその一方、ボイスドラマ部分の生配信や動画投稿を禁じています。また、シナリオに大きく関わる部分を配信する際は、「ネタバレあり」の表記をお願いしているのも特徴です。
ゲームタイトル単位のガイドライン例(3)桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~
コナミは「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!」について、「『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』動画投稿ガイドライン」を守っていれば、「動画投稿し放題!」、「収益化もOK!」と明記しています。
ガイドラインではYouTubeやニコニコ動画などでの配信が許可されています。その中で営利目的の利用は禁止としつつ、指定の動画配信サイトを用いた収益化は営利目的としないそうです。
「桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~」動画投稿ガイドライン
配信ガイドラインで見落としがちなポイント
配信ガイドラインを読んでも見落としてしまうポイントがあります。ここではその見落としやすいポイントについて記載します。
許諾対象タイトルでも重大なネタバレを含むシーンは配信NGな場合がある
動画配信を許可しているタイトルでも、重要なシーンのネタバレを禁止する項目が指定されていることがあります。例えば前述のスクウェア・エニックス「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて S」では、ムービーシーンのみの配信や、単純操作を繰り返してゲーム内の楽曲をBGM化することを禁じています。
プログラム(システム)による収益化は細分化されている
多くのゲーム会社がYouTubeやニコニコ動画などのプログラム(システム)で配信することと、その結果として収益を得ることを許可しています。しかし、収益を得る方法を細分化して、ある部分を不可とするケースもあります。
例えばフロム・ソフトウェアは、YouTubeなどを使った結果として収益を得ることを認めています。しかしその一方で、配信に対する投げ銭(スーパーチャット)として視聴者から直接的に金銭を得ることは禁じています。この場合、「投げ銭が可能なシステム自体を利用できない」と勘違いしそうですが、設定によって投げ銭ができないようにしたり、配信する側が視聴者に注意を促して投げ銭をしないように呼びかけたりすれば問題ないとしています。
複数の配信プラットフォームで配信(投稿)を考えている場合は一つ一つ確認する
配信ガイドラインには、使用しても問題ない配信プラットフォームがそれぞれ記載されています。例えば、YouTubeやTwitchなどは多くの場合許可の対象ですが、会社ごとやタイトルごとにガイドラインが出ている以上、油断は禁物です。
また、会社としてのガイドラインも内容が更新されるので、以前は大丈夫だったプラットフォームが不許可となっている可能性もないとは言いきれません。例えば、先ほどのファイナルファンタジーXIVのガイドラインは何度も改訂されています。
使用予定のプラットフォームが許可されているのかどうか、毎回確認しておきましょう。
配信ガイドラインは画一化されているわけではないので絶対に斜め読みしない
各社の配信ガイドラインには類似の記載がありますが、どれも同じではありません。そのため、「A社がOKだったからB社も大丈夫だろう」と油断せず、各社、各タイトルのガイドラインをしっかり読み込むクセをつけましょう。
また、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジーシリーズ」はナンバリングタイトルだけでも10作以上ありますが、シリーズで統一されたガイドラインはありません。そのため、各タイトルで配信したいと思ったら、個別に存在するガイドラインを確認していくしかありません。
似たような内容が多い中で少しだけ内容が違う、なんてことも多いので、プレー中に他のガイドラインと混同するリスクもあります。そんな事態を避けるためにも、斜め読みをせず、都度情報を再確認することを習慣づけましょう。
【まとめ】ゲーム配信は配信ガイドラインをしっかりチェックした上で行おう
ゲーム会社は自社の利益を守るために、会社ごと、あるいはゲームタイトルごとに配信ガイドラインを作成しています。ガイドラインは一見似たようなことが書かれていますが、油断せず会社やタイトルごとに、しっかり確認することが重要です。
ガイドラインの確認をおろそかにすると、最悪の場合、法的な措置を取られてしまうこともあります。ガイドラインを読み込む習慣をつけ、安心して配信を楽しみましょう。
関連記事
ゲーム部屋の防音対策!実況やボイスチャットをしても問題ない環境の作り方