インタビュー

2024.02.21

ゲームが受験に活きる時代! 人生の分岐点は「ファームクラフト」

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 ゲームが受験に役に立つ時代が来ています。茨城県立太田第一高等学校の3年生 益子愛さんも、ゲームで得た経験を活かした一人。春からは、茨城大学 地域未来共創学環に通うことになりました。受験は総合型選抜。試験の場で、どのような体験を、どのように発表して道を切り開いたのでしょうか。さっそく取材してきました。

取材・文・撮影/南雲 亮平

茨城県立太田第一高等学校の3年生 益子愛さん
(2024年1月撮影)

ファームクラフトが人生の分岐点

── 合格、おめでとうございます。

益子さん(以下、敬称略) ありがとうございます。

── 受験の際に、ゲームに関する取り組みについて発表して、合格したとうかがいました。「受験」と「ゲーム」はなかなか結びつかない言葉で驚きましたが、試験ではどのようなお話をされたのでしょうか。

益子 受験では、2022年に参加した「NASEF FARMCRAFT いばらきコンテスト」について、活動報告書や面接で発表しました。「マインクラフト」を基礎とした農業シミュレーションゲーム「FARMCRAFT(ファームクラフト)」の中で、茨城県の農業やSDGsに関する課題解決に取り組み、その成果を発表するというコンテストです。

 この時のテーマは「茨城県が抱える農業課題をもとに、儲かる農場をつくる」でした。ざまざまな調査や議論を通して、私たちのチームは儲ける手段として、ブランド化や有機栽培による販路開拓、拡大を目指しました。ゲームの仮想空間の中で、考えた解決策を何度も試しながら農作物を育てたところ、なんとか成果を出すことができたんです。その結果を動画にまとめて提出したところ、「茨城大学 農学部賞」を受賞することができました。

 ファームクラフトの言語が英語だったうえにマインクラフトも初めてだったので、みんなで英語を訳しながら指示やツール、操作方法を理解するところから始めました。英語は苦手でしたが、ALTでジョシュア・ランベラン先生が応援に来てくれた頃にはすっかり慣れていました。害虫や雑草対策、作物の選択、天候変化など、複雑な条件のもと、試行錯誤しながら有効と思える仮設を立てて取り組みました。大変なことでしたが、少しずつ成果が出たことから、チームで協力して課題を解決していく喜びを学びました。

 また、茨城県の農業課題を調べたところ、人材の育成から産業基盤の強化、販路開拓、拡大まで、解決すべき部分が多岐にわたるということも分かりました。以前は農学部の志望でしたが、こうした経験から、農作物を生産するということよりも、農業の収入を増加させて、より魅力的な産業にすることに興味関心があるということに気が付きました。将来は農業系の公務員になり、人材不足の対策に取り組みたいと考えています。

2022年のNASEF FARMCRAFT いばらきコンテストで
茨城大学農学部賞を受賞した茨城県立太田第一高等学校 / ボンバーズ
(中央右が益子さん)


── 人材不足の対策にはどのような手段が考えられますか。

益子 化学肥料や農薬をできるだけ使わず、可能な限り環境に配慮した有機栽培が有効だと考えました。消費者の健康志向からニーズが高まり、高価で取引されるからです。

 ただ、ファームクラフトでも、実際に有機栽培で生産するためには多くの労力が必要なことは経験しました。そこで、有機栽培で多少の虫食いがある作物でも、農薬や化学肥料の影響が少ない証であるというイメージを高め、ブランド化することで、人材不足のなかでも農家が有機栽培に取り組みやすくしたいと考えました。

 ほかにも、よく行われている野菜の収穫体験のように、消費者が有機野菜の生産過程を見学したり、収穫したりできる機会をつくることで、理解を深めて付加価値を高めるなど、将来取り組みたいこともいくつか見つかりました。

── ファームクラフトを通じて、視野が広がったんですね。もともと農学部を目指していたということでしたが、どうして農業に興味をもったのでしょうか。

益子 親戚などに農業に関係する仕事をしている人がいましたし、わたしのおじいちゃんも売ってはいないのですが農作物をけっこうつくっていて、畑仕事を手伝う機会があり、そこで農業に対して興味を持ちました。

── では、先ほど挙げていた農業に関する課題も、実体験に基づいていると。

益子 茨城県の農業課題を調べるなかで、高齢化などの事情で農業を含む一次産業は人が減っているという問題を目にしました。実際、自分の周りでも感じています。おじいちゃんの家は田舎なので周りは田んぼばかりなんですが、やっぱり近くの田んぼでは、所有者が高齢化して、後継者もいなくてお世話ができなくなり、田んぼが荒れてしまったというのも見ています。そういったところを見て、残念な気持ちになり、対策を考えるようになりました。

左から、カナダ出身のALTジョシュア・ランベランさん、益子さん、石井さん

チャレンジが経験値に

── 春から通うことになる茨城大学 地域未来共創学環では、そういった問題の解決について取り組むことになるのでしょうか。

益子 私たちが一期生になるので、これからのことにはなりますが、こちらでは茨城県を中心に、地域を活性化させるためにどのようなことができるのかを考えたり、地域密着型で問題解決を図ったりします。生まれ育った地元が大好きなので、地元の問題を解決していきたいです。

── 一期生となると、これから開拓していくことになりそうですね。マインクラフトも初めてということでしたが、コンテストで使ったファームクラフトは天候変化などもあり、リアル指向だったかと思います。現実とは異なる点なども含めて、プレーした感想を教えてください。

益子 シミュレーションゲームのいいところとして、結果が出るのが早いということがあります。現実だと1年待たなければいけない作物も、ゲームだとすぐにできちゃいます。

 気になる点としては、現実には害虫や雑草、天候などだけでなく、あらゆる環境があって、ゲームの中の結果がそのまま現実の結果にはならない点です。農薬を使ったら、現実世界なら周りの森林やほかのところにも影響が及ぶこともあります。そういったところまで含まれていないところは、やはり違うかなと思いました。

 あとは、初めてだったという理由もあるかと思うのですが、キャラクターを操作して害虫や雑草を駆除するのは難しかったです。たくさん出てきますし、少し操作を間違えて元気な作物を傷つけてしまったこともたくさんあります(笑)。みんなで繰り返しプレーして、少しずつ改善していきました。現実も害虫・雑草対策は大変だと思いますが、ゲームでも苦戦しました。

将来の夢について話す益子さん


── ファームクラフトのプレー動画を見ていると、シューティングゲームのように駆除していたので、確かに大変そうです。そもそもNASEF FARMCRAFT いばらきコンテストには、農業について勉強するなかで出会ったのでしょうか。

益子 ファームクラフトは英語の石井先生が「あいちゃん、農業志望だったよね、こういう大会あるよ」と、授業後に声をかけてくださいました。それで、ほかの人を誘ってやってみようと思ったのがきっかけです。最初は軽いノリでした。

石井典子教諭 私は茨城県の教育委員会からのお知らせで見つけたかと思います。とにかく、賞をとっても取らなくても、生徒にはなにか経験してほしいといつも思っていて、今回もエントリーしてほしかったんです。それに、益子さんはほんとになんでも、「どう?」って言うと積極的に挑戦するので声をかけました。

益子 いろんなことに取り組むのは、けっこう楽しいので、今回のような活動やボランティアなど、いろいろ首を突っ込んでいます。

── ボランティアと言うと、先ほどお話していた有機栽培の野菜の収穫体験などでしょうか。

益子 子どもたちが屋外でごはんをつくったり、テント泊したりする体験会で、そのグループリーダーのような感じで参加しています。面白そうだと思って参加して、活動していくなかで職員の方々と仲良くなって。先輩たちもいろいろ教えてくれますし、それがすごく楽しくて続けています。

── コンテストだけでなく、一期生であったりボランティアであったり、いろいろ物怖じせずにチャレンジするんですね。高校生なので勉強は基本としても、コンテストにボランティアと忙しそうですが、部活もなにかやっているのでしょうか。

益子 部活動は文芸部と数研部です。


── 二つも……? しかも振り幅がすごいですね。

益子 文芸部では年に短歌や短文、小説を書いて年に2回コンクールに出したり、部誌をつくる会でお互い評価し合ったりしています。数研部では、数学の問題をネットで調べてみんなで解いています。世界的な問題とかではなく、どちらかと言えば小学生でも解けるような、ちょっと頭を使う問題ですね。学校の掲示板に問題を載せて、次週に回答を掲載する、といったこともやっています。

── 今回、ファームクラフトは3人チームでしたが、お二人は部活の仲間だったのでしょうか。

益子 違う部活でした。チームメイトは、本当にたまたま、石井先生が声をかけたときに、一緒の教室にいた人に声をかけました。一人はクラスメイトですが、もう一人は違うクラスです。

── コンテストに提出された動画では、即席とは思えないほどまとまっていました。益子さんは、コンテストではどのような役割だったのでしょうか。

益子 私は何か発案して、それについてみんなで調べるなどしていました。いわゆる、リーダーのような役割だったかと思います。

── ボランティアでの経験が活きているのかもしれませんね。動画もそうですが、最初に説明していただいた活動報告も、すごくわかりやすく整理されていました。何か意識していることはありますか。

益子 私は1回考えたことを、全部とにかく紙に書きます。適当に並べてみて、同じ要素をつなげたり、被ったものを消したりと、自分の中で整理するために一回吐き出した方が早いと思います。その後、文章にしてから、石井先生に添削してもらいました。

── ファームクラフト茨城コンテストの提案から、そこで経験したことを活かした受験対策まで支えてくれた石井先生とのコンビネーションも欠かせなかったんですね。新しい舞台でも頑張ってください。ありがとうございました。

茨城県立太田第一高等学校


 ゲームは勉強の妨げになると避けられることもありますが、考えてプレーし、そこで得た経験を言葉に、そして形にすることで、自分がどのような体験をしたのか整理することができ、新しい視点や学びを得ることができます。

 例えば、eスポーツに取り組むなかでチームのピンチを救った経験は「トラブルが発生したときでも、冷静に仲間を鼓舞して対処します」と、オフライン会場で成績を残した経験があれば「緊張する場面でも実力を発揮することができます」と言い換えることができます。ひたすらに練習することも大切ですが、その時間を将来どのように活かすのか考えてプレーしてみると、いつもとは違う学びが見つかるかもしれません。

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外部リンク

茨城県立太田第一高等学校
https://www.ota1-h.ibk.ed.jp/

NASEF Farmcraft
https://nasef.jp/action/farmcraft/

NASEF Farmcraft いばらきコンテスト
https://www.ibaraki-esports.com/ibaraki_farmcraft/index.html

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