インタビュー

2024.12.06

「分からないことをそのままにしない」 元鉄道整備士!?東京メトロeスポーツ担当者に聞く学生時代とキャリア

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 【ゲームの進路相談室・第8回】練習を重ねた選手たちが熱い試合を繰り広げ、たくさんの観客が熱狂するeスポーツシーンは、さまざまな人によって支えられています。連載企画「ゲームの進路相談室」では、そんな“eスポーツに関わる職業”と“その職業に就いた経緯”を紹介。将来の仕事をぼんやり考えるきっかけを提供します。

東京地下鉄 eスポーツ担当 山崎 士さん


 今回は、東京地下鉄でeスポーツ担当者として「東京メトロカップ」の開催に尽力した、山崎 士さん(※崎はたつさき)に「なぜ親子向け大会を開いたのか」「どんな仕事なのか」に加えて、eスポーツを頑張る学生たちへのメッセージを伺いました。

(取材・文・写真/小川 翔太 編集/松永 華佳)

なぜ「親子向け」eスポーツ大会を開催したのか

──なぜ東京メトロは学生や親子向けのeスポーツ大会を開催したのですか?

山崎さん(以下敬称略) TOPPANさんから親子duo大会in東京を弊社主催で開催しないか、というお誘いがあったんです。

 ゲームの本質は「ダイバーシティ」だと思っているので、年齢や性別を問わず楽しめるゲームの魅力に気付いて欲しく、「誰でも参加していいんだよ」というキッカケをつくる大会を開催したいと考え、開催することを決めました。

──親子や家族向けのeスポーツ大会を開催してよかったと思った瞬間とは?

山崎 家族同士がゲームを通じて絆を深めたり、学生たちが仲間と競い合ったりする姿を見ると、「またこういった大会をやりたいな」とやる気が湧いてきますね。大会後に、参加者から「家族で一緒に楽しめた」とか「この大会のために頑張って練習してきた」という声が届くと、本当にやって良かったと感じました。

 ちなみに大会後のチャットについて運営会社の方に聞いたところ「eスポーツの大会後でここまでポジティブなメッセージで溢れかえるのは珍しい」とのことでした。

 普段、家族でフィジカルスポーツの大会に参加する機会はあまりないと思いますが、eスポーツなら家族でも一緒にプレイしやすいですよね。そういった意味でも、家族大会というのは、参加者の皆さんにとっても有意義なイベントになったと考えています。

東京地下鉄 eスポーツ担当 山崎 士さん

イベントの企画全般と運営会社やスポンサーとの調整、ゲームタイトルの選定など幅広い業務を担当

──家族大会ならではの印象的なエピソードはありますか?

山崎 「Apex Legends」の家族向け大会は、親子や兄弟、夫婦が一緒にゲームを楽しむことを目的に企画されましたが、参加者の割合は、親子、兄弟、夫婦でほぼ均等!それぞれのグループが約3分の1ずつを占めていました。偏りが出ると思っていたので意外な結果でした。

 また、最高齢の参加者は63歳で、祖父母と孫のペアもいらっしゃいました。家族全員が世代を超えて一緒に楽しめる場を提供できたということが感慨深かったです。

──大会においてどのような仕事をされていましたか?

山崎 私が担当したのは、イベントの企画全般と運営会社やスポンサーとの調整、またゲームタイトルの選定といった部分です。

 「ストリートファイター6」の大会では、格ゲーの文化でもあるプロとアマチュアが同じ舞台で戦える場を作りたいという思いのもと、レギュレーションの整備などを行いました。大会運営には多くの課題もありましたが、最終的に多くの参加者が「プロ選手と対戦できて嬉しかった」「初めて格ゲーの大会に参加しました」といった声を寄せてくれたのが印象に残っています。

 どちらの大会も、eスポーツを通じて普段は触れ合えない層が一緒に楽しめる場をつくることができたと感じていますし、運営としても非常にやりがいのある経験となりました。

東京地下鉄 eスポーツ担当 山崎 士さん

整備士のころに「eスポーツ担当やります!」と立候補

──どのような経緯で現在の仕事に就かれたのですか?

山崎 元々は東京メトロで鉄道整備士として働いていました。2012年に高校を卒業して東京メトロに入社し、約12年間は電車の点検整備に従事していました。

 でも、整備士として働く中で、仕事自体は面白さややりがいを感じつつも、心のどこかで「本当にやりたいことはこれなのかな?」という想いが芽生えてきたんです。

 ただ、私には家族がいて、特に子どもがいることから、転職には迷いがありました。そんな時に、社内公募制度の存在を知り、この制度を使えば、東京メトロで働きながらも自分が本当にやりたい仕事に挑戦できるかもしれないと考えて応募しました。

 そして、現在の「企業価値創造部」に異動することになりました。

──「企業価値創造部」はどのような部署ですか?

山崎 企業価値創造部は、東京メトロの新しい事業や価値を生み出すための部署です。私は主にeスポーツ関連のプロジェクトを担当しています。鉄道業界とは全く違うフィールドですが、私自身も「Call of Duty」や「Apex Legends」といったFPSゲームが好きで、長年ゲーマーとしてeスポーツに興味を持っていたので、この異動は本当に自分に合っていたと感じています。

 社内公募制度を通じて新しい仕事に挑戦できた、そして自分の好きなeスポーツに携わることができている。本当に幸運なことだと思っています。

東京地下鉄 eスポーツ担当 山崎 士さん

仕事も遊びも「分からないことをそのままにしない」

──学生時代のeスポーツ活動で得た経験のうち、どのようなことがいまの仕事で役立っていますか?

山崎 「調べる力」と「共有する力」です。

 私はどんなことでも「好奇心を持ち続けること」が大事だと考えています。公私問わず、常に新しいことに興味を持って、探求していく姿勢を持つこと。きっとどんな仕事にも役立つことでしょう。

 例えば、ゲームをしていると「なぜ勝てなかったのか」とか「どうすれば上手くなるのか」を考えて調べたりしますよね。

 仕事でも同じです。分からないことを放置せずに自分で調べて理解しようとする姿勢が、成長の鍵です。

 また、社内でのコミュニケーションや社外とのつながりを大事にすることも重要だと思います。特に今の部署に移ってから実感しているのは、一人でできることには限界があるということです。

 だから、普段から周りの人と積極的に関わり、情報を共有したり、意見を交わしたりすることが、結果として仕事をスムーズに進める上で役立つんですよね。

東京地下鉄 eスポーツ担当 山崎 士さん

eスポーツを頑張る学生にメッセージ

山崎 学生の皆さんに伝えたいのは、まず「ゲームが好きなことは決して悪いことではない」ということです。eスポーツの世界には、いろんな戦略的思考やチームワークが必要ですし、それらのスキルは将来の仕事でも役立つ場面がたくさんあるでしょう。

 だから、ゲームが好きというだけで将来に不安を感じたり、後ろめたく思ったりする必要は全くありません。

 また、ゲームをしていると自然と身につくコミュニケーション能力も仕事上で活用できます。オンラインゲームでは、顔の見えない相手と意思疎通をしながら戦略を立てたり、チームで協力したりする必要があります。

 これも、仕事の現場でとても役立つ力です。だから、eスポーツを通じて学んだことを、自信を持って他の分野にも活かしていってください。

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外部リンク

東京メトロ
https://www.tokyometro.jp/index.html

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