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部活動とは辛くて楽しいもの 本気の文武両道で目指す“勝ちにいくeスポーツ” 飛龍高等学校

【高校eスポーツ探訪・8】 ゲームを競技としてプレーする「eスポーツ」と学校でおなじみの「部活動」が一つになった『eスポーツ部』。その目新しさゆえ、楽しさや自由を求めて入部を希望する人は多いかもしれません。しかし、ゲームを扱うとはいえ部活動であるeスポーツ部は学校教育の一部です。生徒の成長を目的としており、成長には楽しさだけでなく辛さや厳しさもつきもの。静岡県の私立高校である飛龍高等学校eスポーツ部は、ゲームに対する姿勢によって部員を二つのチームに分けることで勝ちにいくeスポーツを目指す仕組みを作ります。今回は顧問の池田先生と生徒の3人に話を聞き、その活動について取材しました。(取材・文/銭 君毅)

左から部長の竹田将由君、望月春菜さん、伊藤龍之助君(写真:飛龍高等学校提供)
顧問の池田基樹先生

eスポーツ部が“なめられる”印象を払拭する

――まずは現在のeスポーツ部の活動状況について教えてください。

竹田君(以下、人名は初出以降敬称略) ロケットリーグとリーグ・オブ・レジェンド(LoL)を中心に平日は16時から18時30分まで、土日祝日は9時から12時まで練習しています。グランツーリスモとフォートナイトは部活中に練習はしていませんが、大会には出場しています。21年の4月には30人くらいの希望者がいたんですが、現在は私たちを含めて新2年生7人で活動しています。

――30人もいたんですか。

竹田 さまざま理由で少なくなってしまいました。誰でも入部することはできるんですが、勉強面でのルールや地道な練習に耐えられる人が少ないのかもしれません。

――勉強面でのルールですか。

竹田 私たちのeスポーツ部では、Aチームとeチームの二つのクラスがあります。Aチームでは本気でeスポーツの練習に励んで、大会にも積極的に出場して優勝を目指すチームです。eチームは、enjoyを意味するチームで、大会への出場は自由ですし、決まったタイトルもありません。Aチームのメンバーが定期試験で成績が悪かったリすると、eチームに移動することになって、そこで勉強に取り組んで定期試験で結果を出せばAチームに戻れるという感じです。

池田先生 軽い気持ちで入ってくる子たちが多くて。やっぱり、土日も含めて毎日練習のために学校に来たり、普段は違うゲームをやっているのに、大会が近くなると競技タイトルしかできなくなったりといったことに耐えられない子もいますから。ただ、だからと言って退部してしまうと、周りからの視線も冷たい。であれば、eチームというドロップアウトした子たちの受け皿を作ってあげたかったんです。

Aチームは生半可な気持ちでは続かない(写真:飛龍高等学校提供)

――Aチームでは実際にどんなルールがあるんですか。

池田 ルールと言っても基本的なところだと思うんですけどね。定期テストで赤点を連続して取ってしまうとAチームにはいられないとか、遅刻欠席をなるべくしないとか、生徒指導を受けるようなことを何度もしないといった内容です。特に勉強に関しては、顧問が3人付いているのでテスト前はどこの部活よりも時間を設けて勉強をさせています。赤点ラインも20点、30点という世界で、一生懸命勉強していれば取らないと思います。

竹田 試験前は、部活でゲームをやる時間を減らして試験勉強をしていて、土日も試合がないときは学校に来て半日勉強しています。顧問の先生が3人もいるので、わからないことはいつでも質問することができます。

池田 うちは進学校ではないので勉強が得意な子たちが集まるわけではないんですが、やっぱりeスポーツには「勉強をしなくなるんじゃないか」とか、「夜遅くまでやって遅刻や欠席が多いんでしょ」という印象がありがちです。学校のお金でゲームをする以上、こういったイメージを払拭したかった。他の部活にはない基準なんですけどね。

望月さん 常日頃、先生からは「eスポーツ部だからという理由で、ナメられるな」と言われていて、欠席・遅刻をしないことはもちろん、他の生徒の見本となるように生活面だけでなく勉強面にも力を入れています。

――しっかりと意識の共有をされているのは素晴らしいですね。ただ、他の部活にはないとおっしゃっていた通り、eスポーツ部にだけ特別なルールがあるというのは、現時点でeスポーツに悪い印象がある象徴のようにも思えます。

池田 eスポーツが仮に市民権を得られる時代になったとしても、勉強というのは何をするにしても一番大事だと思うので、そのスタンスは崩さないつもりです。あと、コロナの関係で勉強させる時間がなかなか取れなかったっていう事情もあります。学校に来れなくなって家で勉強することが必要になったとき、恥ずかしながら、勉強が苦手な子たちが多いので、なかなか一人で取り組むことができない子たちが出たんです。今後については、生徒の事情や時代に合わせて基準を厳しくしたり、ゆるくしたりしようと思います。

保護者からもらった資金でゲームを買うのか

――eスポーツに対するネガティブな印象というお話がありました。現在もそういったものは残っているのでしょうか。

池田 残念ですが、根強く残っていると思います。

望月 私も、以前友人に「大会が近いし練習しないとな」といったとき、「手を動かしてるだけでしょ?」とか、「ゲームやってるだけでしょ?」といった感じで遊んでいるように思われていたみたいです。私たちとしては他の部活動と同じように、高校生活の中で好きなことや興味があることと向き合い、一生懸命に取り組んでいる点で変わらないと思っているんですが……。

池田 そもそも私自身にもそういったネガティブな感情があったので、学校側からeスポーツ部設立の話があったときは断っていたくらいですから。

――先生ご自身にもあったんですか。

池田 保護者からいただいたお金でゲームをするための施設に高額な投資をする罪悪感がありましたし、保護者もゲームをさせるために学校へ子どもたちを預けているわけではないでしょうから。ただ、これまで彼らは校内でeスポーツ選手権を運営したり、地域イベントに参加してくれたりと、一生懸命やってくれていて、私自身、今ではeスポーツに対する悪い見方は全くなくなっています。あとは、この変化を他人に伝えていければいいかなと思っています。

目の前のことに一生懸命なのは普通の部活動と一緒(写真:飛龍高等学校提供)

――保護者からはいかがでしょうか。

池田 中学生の保護者が見学に来たりすることがあるんですが、逆に「勉強面は大丈夫ですか」という質問はあまりされたことがないような気がします。一番最初に「勉強をこれだけやっています」という面をみてもらっているので、勉強しないとAチームに入れないという空気感を出せているからかもしれません。むしろ、一番される質問は「機材は足りるのか」というところでしょうか。

――それは確かに気になりますね。実際のところどうでしょう。

竹田 設備については、現在ゲーミングPCが4台とPS4が3台、ノートPCが5台あります。あと、4月には新しいPCが4台届く予定です。

池田 今は7人なので足りていますが、最初の頃は1日1人15分くらいしかグランツーリスモを練習できないような状況でした。

――現在からは考えられないですね……。ちなみに皆さん、今ほしい機材などはありますか。ゲーミングチェアやマウスとか……。

竹田 チェアは……特にはいいですかね。

池田 ほんとに? 今こういったビジネスチェアみたいな椅子でやってるんですよ。(練習に使っている椅子を見せる)

竹田 (笑)。長時間(この椅子でプレーすること)はちょっと難しいですけど、今はPCとかが足りない状況なので、そっちを優先したいなって感じています。

望月 そうですね、PCは増えてほしいなって思います。全員でやりたいので。

伊藤君 僕も今の椅子で問題なくできているので、1人1台ぐらいのPCはあったらいいなって思います。

1年生が全国ベスト16に入るためには

――続いてイベントについてお聞きしたいと思います。全国高校eスポーツ選手権などではロケットリーグ部門でベスト16位などの実績を残されているそうですね。

生徒 ありがとうございます。

――参加してみていかがでしたか。

伊藤 全国高校eスポーツ選手権は、ロケットリーグで出場する初めての全国大会。とても緊張して……。初戦は思い通りにプレーできないことがありましたが、勝ち進むにつれて自信を持てるようになって、ゲームだけじゃなく、全国大会という場を楽しむことができました。最後は予選トーナメントの決勝で負けましたが、予選決勝に立ち、全国トップの強さを知ることができたのは、eスポーツ1年目にとって良い経験だった思っています。あと、配信を見て、僕たちの名前を知ってくれたりしたのは嬉しかったですね。

池田 彼はフォートナイトとロケットリーグといろいろと出場してくれたんですけど、どちらも予選決勝まで上がってくれたりした実力者でもあるんですよ。

伊藤 どちらの大会でも本当に勉強になりました。ただ、フォートナイトの予選決勝は本当にレベルが高くて、レベル差をすごい感じましたね。

――1年生でこれだけの実績を残すのは難しいと思うんですが、部活全体での練習に秘訣とかはあるんでしょうか。

竹田 やっぱり短期間で上手くなるのはよっぽどセンスがある人じゃないと難しいと思います。毎日必ず基礎練習を続けて、簡単なことから苦手を克服することで、全体的に自分のパフォーマンスが発揮できるようなると思います。とにかく練習の数をこなしていくことが本当の秘訣なのかな。

――基礎練習といってもいろんなやり方があると思うんですけど、具体的にどんなものでしょうか。

竹田 LoLの場合だと、僕たちはいつもプラクティスモードでミニオンのラストヒット(注:敵モブを倒すこと。クリープスコアが得られ追加ゴールドを獲得できる)だけをとるCS(クリープスコア)練習とか、メンバー同士のカスタムマッチでの対面練習とか、その時に大事になってくるミニオン(モブのこと)のウェーブ管理とかもプラクティスやカスタムのモードを利用して練習しています。毎日だいたい基礎練習に30分かけていて、その後にチーム練習をする感じです。

――これからは新1年生も入学してきますが、これらの練習でより飛龍高校が大会で活躍する場が増えそうですね。

竹田 そうですね。ただ、現在は人数が少ないので全員が大会に出場していますが、今年度からどれだけ人数が増えても最大で2チームまでしかエントリーしないと言われていいます。競争させて切磋琢磨するためだとか。

池田 これは先ほどの設備の話にもつながるんですが、サッカーとかバスケとかでもフィールドに立てる人数は限られていますし、コートで練習できる子たちもやっぱり限られていますよね。今年度もおそらくたくさんの入部希望者がいると思うんですが、その子一人一人に機材を与えて全員を試合に出場させるという方針ではありません。試合に出る責任感や重み、楽しさを分かってほしいので、どんなに多くても来年も2チームしか大会には出場しないようにしようと思っています。

――レギュラーのような考え方ですね。

池田 そうですね。

――昨年は沼津青年商工会議所が主催された「沼津eスポーツフェスティバル」にも出展されていましたね。ロケットリーグブースで無料体験の運営をされていたそうですが、感想としてはいかがでしたか。

伊藤 さまざまな年代の方とふれあいながら、eスポーツの魅力だけでなく、ロケットリーグの魅力を知ってもらえたと思っています。後から私たちの説明がよかったって聞いて、自信につながりました。また、「ゲーム」を部活動として本気で取り組んでいる姿も多くの人に知ってもらえるよい機会だったと思います。学校見学にきた中学生や保護者の方にもe沼に参加していたことを知っている人も多く、認知度が上がったと思います。

望月 30代くらいの方が「どうすれば上手くなれますか」って聞いてくれたり、本当に小さい子たちが車を走らせて遊んだりして、いろんな楽しみ方をしていました。

地域イベントでは老若男女のゲーム好きと交流

――イベント自体は11月でしたが、皆さんはつい最近まで中学生だったわけですよね。それが高校に上がってすぐに子どもや年上に教えるというと大変だったと思います。

望月 何というか、自分自身もゲームが好きっていうのがあったのでゲームの楽しさを共有できるって意味ではとても楽しく会話ができました。

1人1人が目指すeスポーツ部のこれから

――それでは、インタビューの最後に部活における目標についてお聞きしたいと思います。まずは伊藤君からお願いします。

伊藤 全国高校eスポーツ選手権と、先日やったNASEF JAPAN 京都ロケットリーグ全国オープン、東海4県ロケットリーグ高校生大会すべてで、岐阜県の可児工業高等学校に負けてしまっているので、まず可児工業に勝てるようになるのが一つの目標です。あと、今チームとしてのロケットリーグのランクがチャンピオンくらいなのでその上のグランドチャンピオンになりたいと思っています。

――ライバル高校に可児工業さんがいらっしゃるんですね。この辺りとは練習試合はしているんですか。

伊藤 はい。やらせてもらいました。

――勝率についてはいかがですか。

伊藤 勝ったり負けたりでまだ100%勝てるほどではないので、次は頑張ります。

――本番での強さが手に入れられたらって感じですね。続いて望月さんは。

望月 私は、LoLとロケットリーグを並行してやっていて、大会の期間とかだとどちらに偏っちゃうときがあるので、どちらも平等にうまくなっていっていきたいなと思います。どちらもランクをあげて頑張りたいです。

――ゲームを二つ並行してやるっていうのは難しいですよね。

望月 キーボードとコントローラーで操作方法やゲーム性が全く違いますし、試合時間も全く異なるので難しいですね。でも、どちらも大会は定期的に開催されるのでどちらも頑張っていきたいところです。

――この悩みはプロシーンにはない高校eスポーツだからこそですね。竹田君はどうですか。

竹田 僕は、今LoLを中心に練習しているんですが、もともとやっていたグランツーリスモの練習を再開するか迷っているところです。もうすぐ1年生が入ってくるので、グランツーリスモを教えられる人が現段階で僕しかいないため、コーチという立場であれば頑張っていこうと思っています。

――ここはある意味、部長としての責任みたいなところもあるんでしょうか。

竹田 そうですね。後はLoLの実力がまだみんなに追いついていないので、まずはみんなの足を引っ張らないようにしたいと思っています。

――確かに責任もあるかもしれませんが、楽しみながら頑張ってほしいですね。最後に池田先生はいかがですか。

池田 生徒にはゲームを通じて、人として成長してもらえるのが一番いいんじゃないのかなと。もちろん試合に勝つというのも大事だし、それも一つの成長だと思うんですけどね。かっこつけるんじゃないですけど、ゲームを通して、人は成長できることを広く知ってもらえたら、みんなWin-Winなんじゃないかなと思います。

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