eスポーツ団体
2023.09.30
大会やスクリム開催の負担軽減!競技レベルの向上にも!eスポーツ×生成AI研究会に聞く今後の展開
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7月12日にeスポーツ事業を手掛ける合同会社e-Zipと、esportsチームRuffianが共同して、「eスポーツ×生成AI 技術イノベーション研究会」を設立しました。生成AIを活用してeスポーツ大会のポイント集計や、判定の自動化を目指すことを主な取り組みとして挙げています。現在の活動や今後の目標、研究会設立のいきさつについて、Ruffian創設者で同研究会を運営する鈴木香里さんに聞きました。(2023年9月7日取材)(取材・文/寺澤 克)

元テレビマンという異色の経歴をもつ。
コロナ禍の自粛期間の中でPUBG Mobileにハマり、
チームを作ろうと決意したのだという
きっかけは大会運営 ポイント計算が大きな負担に
──そもそも研究会設立のきっかけは何だったんですか。
鈴木さん(以下、敬称略) 私が代表を務めるeスポーツチームRuffianが活動をしていた時もそうでしたが、多くのeスポーツタイトルはスクリムを組む、大会を開催する、もしくは参加するといった時に、リザルトを確認してポイントをカウントする人員が必要になります。これが大変なんです。
──それは例えば、大会参加者からリザルト画面のスクリーンショットを受け取って、それらをすべて集計作業するというところですか。
鈴木 そうなんです。人がExcelに数値を打ち込んで計算するので、これをAIで自動的に集計できないかというところが研究会の主な設立要旨です。
──ちなみにその集計作業には具体的にどれぐらいの人員が必要なんですか。
鈴木 おそらく最低で3人は必要ですね。試合の規模感にもよりますが、5人ぐらいいれば十分といったところでしょうか。大きな大会であれば、大々的にポイントをカウントするということはできるかと思います。でも、これだけの人数を例えば地方で開催する大会やイベントで集めようとしたときには難しいじゃないですか。
──なるほど。するとこうしたリザルト集計作業を自動で処理できれば、かなり地方イベントを開催しやすくなりますよね。
鈴木 はい。近年はeスポーツを活用しての地方創生などが期待されているかと思うのですが、こうしたスコアの集計作業が楽になれば、もっとイベントを開きやすくなるはずです。さらに生成AIを活用すれば、eスポーツという競技の質も高められるのではないかとみています。
──質を上げる、ですか。
鈴木 はい、リザルトの集計だけにとどまらず、AIを活用すればデータの分析も可能です。将来的にはeスポーツチームの戦術解析にも活用できるかもしれないと考えています。例えば、バトルロイヤル系のタイトルであれば、個人の撃破数を可視化してランキングにまとめられれば、それだけでも非常に有用な情報となるはずです。
私は今、韓国で活動するPUBG Mobileチーム「Team Vision」にサポートという形で携わり韓国の競技シーンについてもリサーチしていますが、他チームのコーチたちの反応を見ているとやはりAIを活用した戦術分析を行っている方もいるようですね。
──では既に業界の中では活用しているところもあるのですね。
鈴木 おそらく公にしていないものの、ほかのチームでは既に導入を進めているのではないかと思っています。
重要なのは、AI技術によってこれら集計や分析が個人単位でできるようになるかもしれない点です。eスポーツにはプロ選手はもちろん、プロとまではいかないまでも、楽しくプレーしたいという人もたくさんいます。彼らが気軽にデータを分析したり、スクリムを開いたり、そうした環境が構築できたとしたら、eスポーツのハードルはさらに低くなります。選手たちからすれば、人員の心配をしなくても選手がしたい練習ができるようになるかもしれない。いずれにせよ競技レベルの向上、eスポーツの普及にもつながってくるはずです。
手探り状態でもスコアの抽出などは有効性を確認
──研究会のメンバーについては。
鈴木 メンバーは私のほかに4人います。e-Zipの役員を務める萩谷さんのほか、インフルエンサーやメディアアナリストといった構成になっています。
──TikTokのフォロワー数がかなり多い方もいらっしゃるんですね。特殊なメンバー構成ですね。
鈴木 生成AIを活用してeスポーツに生かすというのが基本路線ですが、我々自身がAIについて学ぶ、これも研究会の活動目的の一つです。そしてeスポーツだけにとどまらず我々の研究成果が一般企業などでも活用できれば良いなという思いもあります。

(@Ruffianesports)から引用
──なるほど。では現状の活動についての感触はいかがですか。
鈴木 正直、今は手探りの状態と言って良いです。一時話題となったChatGPTのほか、Pythonを使用した画像認識、BingAIなど、いろいろな手法を試しているところです。

AIを使ったさまざまな試みに挑戦している
──確かに、生成AIは非常に長いプロンプトを書かないと思うような成果物が生まれないとはよく聞きますし、難しそうですね。スコア集計の自動化についてはいかがですか。
鈴木 少なくとも人力で打ち込むということはなくしたい、そして理想としては集計結果が表として生成できるというところまで行きたいです。まずOCRを使用すれば、かなりの精度でリザルト画面から数字を取り出すことができています。しかしそれをExcelファイルに落とし込むとなるとまだまだ手間がかかっているかなという段階です。
AIの専門家・eスポーツアナリスト求む!来年度春には具体的方向性示したい
──今後の研究会の活動について教えてください。
鈴木 今年中にはAIのプロフェッショナルと、プロのアナリストの二人を研究会にお呼びしたいと考えています。まずAIに精通したプロがいないとシステムの構築はできません。さらにeスポーツに対する質を高めるためには、プロのアナリストも必要です。特にVALORANTのアナリストは相手の分析に何十枚ものレポートを作ってしまうほど分析力が高いと聞いています。こうした人材がいればぜひ、研究会の議論に加わっていただきたいと考えています。
──新たなメンバーを加えるのですね。生成AIの活用について何か動きはありますか。
鈴木 今年いっぱいは最適解をとにかく探るということになろうかと思います。AIを活用したスコア集計方法には、一つのAIモデルを使うか、それら複数を使い分けるかといった選択肢がありますが、AI技術は日進月歩。もしかしたらもっと良い方法が生まれるかもしれない。なので幅広い視点であらゆる可能性を考えた方が良いと考えています。
──何か成果を公にできるとしたらいつぐらいになるでしょうか。
鈴木 スコア集計では既にスクリーンショットからデータを抽出するということは可能だと確認できました。来年の春までには、さらにExcelに落とし込んで省人化できる、というような具体的な成果を公にしたいと考えています。
──来年の春頃ですね。それでは成果がありましたらまた改めて取材させていいただきます。ありがとうございました。
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外部リンク
eスポーツ×生成AI 技術イノベーション研究会 X(旧Twitter)公式アカウント
https://twitter.com/EsportsAITech
note 雪肌精粋 ゆきはだせいすい
https://note.com/rrllll2/

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