大会レポート
2023.03.18
品川翔英高校・ePARA・BASEがeスポーツ交流会! 障がいを知るきっかけに
- 高校eスポーツ
品川翔英高等学校のeスポーツ部が2月28日、ePARA、BASEとの交流会を開催しました。eスポーツを通じて障がいに関する相互理解を深めるための取り組みです。当日は、同校のeスポーツ部の部室に11人の参加者が集まり、パネルディスカッションや「Call of Duty Mobile」による対戦でにぎわっていました。
交流会に参加したePARAは、eスポーツを通じて障がい者が自分らしく、やりがいをもって社会参加する支援を行う会社です。バリアフリーeスポーツに関するニュースを発信するだけでなく、「ePARA CARNIVAL 2022 SPRING」などの大会/イベントも企画・運営。障がい者雇用の推進や情報発信を通じて、世の中に「困難や限界を超える精神や力」への気付きを与え、誰もが輝ける社会の実現を目指しています。
同じくBASEは、アスリートチーム「BASE Athletes」を擁しています。2019年8月に日本初のeスポーツ選手の障がい者アスリート雇用を実現して活動を開始。それ以降、eスポーツ・パラスポーツの活動に取り組むスポーツチームです。eスポーツをはじめ、ボッチャなどのプレイヤーとして活躍する障がい者アスリート3人で活動。eスポーツを通じた自治体の交流施策の企画・実施や、社内コミュニケーションの促進などに取り組んでいます。
品川翔英高校のeスポーツ部は、既報の通り、eスポーツに真剣に取り組む部活です。
入学前からeスポーツ部立ち上げ決意 品川翔英高等学校【前編】
https://esports.bcnretail.com/highschool/221016_000777.html
今回の交流会は、参加者それぞれの自己紹介とパネルディスカッション、交流試合というスケジュールで進行しました。ディスカッションのテーマは「1.eスポーツで乗り越えられるバリアって?」と「2.eスポーツで果たしたい夢は?」。そのあとは「Call of Duty Mobile」を使っての交流試合となりました。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、主に2のテーマについて活発に議論。ePARAのチーム「FPS Fortia」に所属するGreenBirdさんは、「eスポーツで社会を変えたいです」と話します。GreenBirdさんは生まれつきの自閉症スペクトラム(ASD)とのこと。青年時代までは、「好きでなったわけではないのに、どうして自分だけ」と向き合うことを避けていました。しかし、社会人になっても上手くいかないことがあり、その時に初めて障がいと向き合う覚悟をしたと話します。
そういった経験から、「近ごろ、児童虐待のニュースが目立つようになってきました。私も幼少期から少年期にかけて家庭内暴力のある家で育ちましたので、虐待を受けた人にとってのアフターケアの大切さを知っています。これをeスポーツで実施できればと考えています」(GreenBirdさん)と夢を語ります。
品川翔英高校eスポーツ部の前部長の杉本翔さんは、「手の神経を切るほどのけがをして、スポーツは難しい状況になって、少しふくよかになりすぎた時期がありました。その時にいじめられることがあったのですが、そんななかでもゲームだけは続けることができたんです。それが心を落ち着けて、いろいろ見つけることができる居場所になりました。高校でも悩む人の居場所をつくることができればと思って部活を立ち上げました。今後も、さまざまな人の居場所を用意していきたいです」と、eスポーツ部をつくった経緯を紹介しました。
ePARA所属のTORIさんは、「障がいがあると世界が狭くなってしまうことも多いのですが、eスポーツであれば、教育の機会や外の世界と触れあえることができる契機にもなります。さらに、お金を稼げるようになれば、もっと世界は広がります。あとはシンプルに、障がいのあるなしに関係なく、みんなでゲームが楽しめればと思います」と話しました。
アスリートチーム「BASE Athletes」に所属するyujikunさんは、東京eスポーツフェスタや東京ゲームショウに登壇するなど、選手だけでなく幅広く活動しています。「私はプルーンベリー症候群ですが、昔は検索してもほとんどヒットしませんでした。でも、いまは検索したらさまざまな情報や、私の名前までヒットするようになってきました」と、eスポーツを通じて自分が認知されつつあることを実感していました。
交流試合
交流試合では、最初は品川翔英eスポーツ部と、ePARA・BASEの大人連合が5対5のマルチプレイヤーモードで対戦。大人連合は「最近、プレーしてないなぁ」などと予防線を張り、さっそく“大人らしさ”を見せつけますが、品川翔英eスポーツ部は動じずに勝利しました。
全6試合ほど行い、途中でメンバーをシャッフルして混合チームで対戦するなど、参加者は交流しました。参戦した品川翔英eスポーツ部のメンバーは、全員がMVPを獲得する快挙となりました。
大人のなかで唯一MVPに輝いたFPS Fortiaのジジさん(大学生)は、試合中から「みんなうまい!」「ナイス!」と前向きな声をかけ続け、対戦を一層盛り上げていました。そういった意味でもMVPと言えるかもしれません。ジジさんは、パラテコンドーの元日本代表強化指定選手。手帳には「先天性左上肢骨形成不全症」とあるとのこと。スポーツ選手だった経験が、eスポーツにおいても前向きな姿勢につながっています。
eスポーツを通じて広がる輪
今回のイベントは、ePARAの加藤大貴代表と、品川翔英eスポーツ部がTwitterでつながったことがきっかけ。eスポーツ部と外部とのつながりをつくろうとして活動していた品川翔英のTwitterアカウントを加藤代表がたまたま見つけて交流がスタート。2022年は「ePARA CARNIVAL」の運営をサポートするなど、関係を深めました。
障がいのあるプロ選手が活躍して有名になればなるほどファンが増え、それに伴って障がいへの理解を広げ、深めることができます。今回の取り組みでは、少なくとも品川翔英高校eスポーツ部のメンバーにとって、障がいをより深く知るきっかけになりました。当事者だけでなく、周囲の人が理解することでバリアは低くなっていきます。
品川翔英eスポーツ部の現部長の渋谷海斗さんは、「前部長がつくってくれた土台に、これからもいろんなつながりを用意していきたい」と話します。今回参加したePARA、BASE、品川翔英高校eスポーツ部は、引き続き、eスポーツを通じて理解と友好の輪を広げていく方針です。
■関連記事
■外部リンク
品川翔英高等学校
https://www.shinagawa-shouei.ac.jp/jhhs/
ePARA
https://epara.jp/
BASE
https://binc.jp/
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