大会レポート
2023.10.14
C++でゲーム開発する専門学校!? TGS2023で見つけた学生たちの努力の結晶
- 大会/イベント
史上最大規模の出展数となった「東京ゲームショウ2023」は、総来場者数24万3238人という大盛況で幕を降ろしました。
幕張メッセのホール3に構えていたゲームアカデミーコーナーもにぎわっており、ECCコンピュータ専門学校、バンタンゲームアカデミー、総合学園ヒューマンアカデミーなどさまざまな学校が軒を連ねました。出展数は48校と、こちらも史上最大規模です。
コンテンツのクオリティも過去最高レベルになっており、学生が作ったプロ顔負けのゲーム作品や学生とインフルエンサーのガチ対談など、ほかのブースに負けないぐらい活気に溢れていました。
「東京ゲームショウ2023」
『東京ゲームショウ2023』は、9月21日~24日まで(21日~22日はビジネスデイ、23日~24日は一般公開日)の4日間にわたって幕張メッセにて開催された日本最大のゲーム見本市です。コロナによる自粛期間を経て、4年ぶりとなる幕張メッセ全館を利用してのフル開催(昨年は一部の館を利用しての開催)でした。
ゲームアカデミーコーナーの注目ブースをピックアップ!
今回はユース世代を応援すべく、ゲームアカデミーコーナーを取材。各ブースの担当者や生徒に話を聞きました。
創志学園 クラーク記念国際高等学校 CLARK NEXT Tokyo
高校生eスポーツ大会において、上位入賞の常連校であるクラーク記念国際高等学校。第4回全国高校eスポーツ選手権の『リーグオブレジェンド』部門では、見事に同校の「Yuki飯食べ隊」が日本一となったことで話題を呼びました。
ブースでは、プログラミング&デザインコースを専攻する生徒のゲーム作品を展示。開発に携わった生徒に話を聞いてみると、ゲーム制作に取り掛かる前に、1年生から数年間かけて受けたマーケティングの授業を参考にしたとのこと。自分本位でゲームをつくるのではなく「誰に遊んでもらうゲームなのか」を意識してゲームのコンセプトを決めたようです。
マーケティング授業の内容は、実際に家電量販店に行き「どういうゲームが売れ残っているのか」を取材するという本格的なもの。その調査で得た情報を、自身が制作するゲームのコンセプト作りに活かしていました。
ゲーム内容は、机の上を左から右にキャラクターが歩くという、横スクロールのアクションゲームです。「自分たちと同じ、学生に遊んでもらうこと」がコンセプトになっており、教室を舞台として、身近なモノ(机、PC、本、ペン)がステージのモチーフになっていました。
実際にプレーして特に驚いたのが、別ステージへの移動に用いられた、画期的なアイデアです。ステージの終わり際に、単にワープするのではなく、机の端にあるPCから伸びたLANケーブルに触れることで、そのケーブルを経由して隣の机にワープするという、遊び心満載の発想です。
「製品として販売してほしい」と思えるほどのクオリティと個性的なコンセプトであり、授業での学びが凝縮された素晴らしいゲーム作品でした。
ルネサンス高校グループ
高校eスポーツの名門校ルネサンス高校グループは、2023年度の「STAGE:0」で、『VALORANT』部門と『リーグオブレジェンド』部門で優勝するという快挙を遂げました。
同校のブースでは、生配信している様子を公開しており、取材したタイミングでは有名プロゲーマーや実況者と生徒の対談を配信していました。入学を検討している親子連れが多く立ち寄っていたようです。ブースの担当者が、保護者からの質問に対してヒアリングを中心に相談に乗っていた姿が印象的でした。
北海道情報専門学校
北海道情報専門学校は、北海道内で最大規模のIT系の専門学校。ブースでは、聖剣が突き刺さった岩をモチーフにした、大掛かりなゲームを出展していました。1チーム3人で構成された、総勢15チームがそれぞれ自分たちのアイデアでゲームを制作。そのうち学校内での予選を勝ち抜いた2チームがブースに出展していました。
選りすぐりのチームの作品ということで、クオリティも規模も凄まじかったです。剣と盾を使ってポーズを取るゲームとのことで、カメラでこちらの動きを認識してゲーム画面に反映します。人物の後ろを多くの人が通過することが想定されるTGSの会場で、いかにポーズを認識させるかを工夫して制作されていました。
トライデントコンピュータ専門学校
トライデントコンピュータ専門学校は、1984年開校(当時の名前は名古屋情報処理専門学校)という、国内の情報教育のパイオニアともいえる存在です。
教育現場のゲーム制作では、ほとんどの場合、ゲームエンジンという比較的簡単にゲームを作れるツールを用います。ところが同校では、C++を用いた本格的なプログラミングによる、ゲーム制作を教育しています。これは開校40年の歴史と蓄積された技術を持つ、同校だからできる教育スタイルといえるでしょう。
先生によると「ゲームエンジンの制作だけだと、根幹の技術や仕組みを理解せずに卒業してしまう。だからプログラミング言語による制作技術を教えている」とのことでした。
また実習の内容について聞いてみたところ、これが驚きの連続でした。Nintendo Switchでプレーできるゲーム制作を課題として用意したというのです。Nintendo Switchのコントローラーにどうやってオリジナルのゲームを認識させるのかわからない状態からスタート。その制作方法を調査する段階から、生徒が進めているのです。
また制作ツールの使用許諾や版権関係の調査など、所謂「許可取り」も生徒が主導で行い、先生はサポートに徹するとのことです。極めつけには、全ての制作を自分たちでやるのではなく、部分的に作業を切り出して外注するという、マネジメントやディレクションの訓練もあるということが分かりました。
先生は「実際の制作現場に近い環境にすることで、実践的な力が身につき、生徒たちもそれを楽しんでいる。私たちが知っている方法ではない、新しい方法で課題を突破してくることがあるので、私たちが生徒から学ぶこともある」と語りました。実践的かつストイックな教育環境に至った理由や背景が良くわかりました。
「各校のスタンスが見えた出展ブース」
どの学校も個性的なブースを出展しており、各行の教育方針が垣間見えた取材でした。ゲームの展示が主だったゲームアカデミーコーナーではありますが、中には生配信イベントを行う学校もあり、ゲーム市場の盛り上がりやeスポーツの発展に伴う、ブースのコンテンツの多様化を感じる「東京ゲームショウ2023」でした。また来年も楽しみです。(eスポーツジャーナリスト・小川)
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外部リンク
東京ゲームショウ2023
https://tgs.nikkeibp.co.jp/tgs/2023/jp/

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