大会レポート
2025.03.21
波乱の幕開け!? スト6の世界大会「CAPCOM CUP11」グループリーグ予選、日本選手の動向を振り返る
- 大会/イベント
- ストリートファイター
3月5日から5日間、両国国技館にて、「ストリートファイター6」(スト6)の世界大会「CAPCOM CUP11」(CC11)が開催されました。CC11は、2024年シーズンに世界各国で行われた大会で出場権を得た選手48人が個人戦を行うCCと、日本と北米、欧州の3地域で行われているチーム対抗のリーグ戦「ストリートファイターリーグ(SFL)」のワールドチャンピオンシップの二つの大会で構成されています。この記事では個人戦のCC11、それも5~7日に行われたグループリーグのDay1~3の模様をお届けします。

CC11の出場権を得た48人は抽選によって八つのグループに振り分けられます。それぞれのグループで総当たり戦を行い、上位2人がTOP16トーナメントに進出します。TOP16トーナメントはダブルエリミネーション方式で、すべてBO5(3先)。各グループの1位抜けはウイナーズサイドに、2位抜けはルーザーズサイドに配置されます。つまり、2位抜けは後がない状態からのスタートとなります。

日本人選手の参加は5人。グループAの板橋ザンギエフ選手、グループCの翔選手、ときど選手、グループEのふ~ど選手、グループHのShuto選手です。
グループリーグは3日間行われ、各リーグ5試合、全15試合です。グループはABC、DEF、GHの三つに分けられ、全日程で出場順が変わるようになっています。ちなみにDay1はABC、DEF、GHの順で、Day2はDEF、GH、ABCの順。Day3はGH、ABC、DEFの順で行われました。各グループは6人なので、各選手は3日間で全5試合。三日でならすと1試合の日と2試合の日がありました。
日本開催ということもあって注目の集まっていた日本人選手の結果から言うと、板橋ザンギエフ選手が2勝3敗で脱落。翔選手が4勝1敗で1位抜け、ときど選手は3勝2敗で2位抜け、ふ~ど選手は5勝で1位抜け、Shuto選手は4勝1敗で2位抜けでした。TOP16トーナメントには、ウイナーズ2人、ルーザーズ2人になりました。
板橋ザンギエフ選手は初日、二日目と精彩を欠き、3連敗を喫してしまいます。しかし、最終日は連勝し、2勝をあげました。CCの大舞台で少し慎重になりすぎた感があったように思えましたが、3日目は大胆に択を仕掛け、得意の読み合いに持ち込み、いつも通りの試合展開を見せていました。
翔選手とふ~ど選手はまさに他を寄せ付けない強さで圧勝しました。ウイナーズサイドということもあり、優勝を期待せざるを得ない状態です。

板橋ザンギエフ選手


全勝でウイナーズサイドに進出です
起死回生のときど選手
圧巻だったのがときど選手。Day1は1試合で1勝したものの、Day2では連敗してしまいます。Day3開始時点で、TOP16入りはかなり厳しい状態です。条件としてはまず自分自身が2勝すること。
1戦目は優勝候補でもある翔選手との対戦でしたが、勝利をつかみ取りまずは第一段階をクリア。第2段階では、勝利数で3位以下にならないこと。よって第二戦で同グループのZangief_Bolado選手がJabhiM選手に勝たなくてはなりません。ここは完全な他力本願となりますが、Zngief_Bolado選手が勝利。次の段階となる第三戦は対GGHalibel選手戦での勝利でしたが、こちらも達成。これでときど選手は3勝2敗(+1)の成績で終わります。
第四戦はZngief_Bolado選手対Dual Kevin選手戦です。このふたりは2勝2敗なので、どちらかがときど選手と勝敗が並びます。この時点でZngief_Bolado選手は-2なので、2-0で勝利しても±0となり、ときど選手のポイントを上回りません。かたやDual Kevin選手は+1なので、勝利すれば+2以上のポイントとなり、ときど選手を上回ります。
ときど選手はDay31戦目で翔選手に2-1で勝利しているのですが、これが2-0であれば、Dual Kevin選手が勝利しても、2-1であれば同点、そして直接対決ではときど選手が勝っているので、ときど選手が上回ることになります。しかし、そうならなかったので、今回もZngief_Bolado選手が勝利するしか道はありません。そして、その願いをZngief_Bolado選手は叶えます。
これでもう進出かと思いきや、最終戦にJabhiM選手が残っています。JabhiM選手は2勝2敗+1です。対戦相手は翔選手ですが3勝1敗で+4。翔選手が勝利すれば文句なしの1位通過ですが、もし敗北するとJabhiM選手が3勝2敗+2以上となり、ときど選手を追い抜かします。それどころか2-0で勝利すれば、JabhiM選手が3勝2敗+3となり、翔選手は3勝2敗+2となり、1位通過も逆転されてしまいます。つまり、ここは翔選手が勝利することが、日本人選手のワンツーフィニッシュの条件となるわけです。期待を背負った翔選手でしたが、無事に条件をクリア。ときど選手は2回の自力、3回の他力を得て、TOP16に滑り込みました。


ときど選手は感謝しかないはず
グループHのShuto選手は強豪AngryBird選手を倒しますが、Day2でSole選手に敗北してしまいます。AngryBird選手は勝利した試合はすべて2-0、負けたShuto戦も1-2と最大ポイントを稼ぎ、同じ4勝1敗ながらAngryBird選手が1位抜け、Shuto選手が2位抜けとなりました。
最終的にTOP16トーナメントに進出した選手とトーナメントの組み合わせです。


若干15歳のチリ出身リュウ使いや、E.本田の登場
日本人選手以外で注目を集めたのは何と言ってもチリの新星、Blaz選手です。最年少となる15歳でありながらグループリーグを全勝で突破。若さだけでなく、その強さも魅力の一つです。
さらにメインで使っているキャラクターはリュウ。飛び道具の波動拳、無敵の昇龍拳を持つキャラクターは胴着が多いことから“胴着キャラ”と総称されるキャラクターの内の一人です。「スト6」にはさまざまな胴着キャラがいるなかで、リュウはほかの胴着キャラよりも特化した部分が少なく、使用する魅力に欠け、選択する優先順位が下がってしまいます。
なので、日本のeスポーツシーンでは胴着キャラを使う人が多い割に、リュウの使用率が低く、大会では中々みないキャラクターです。しかし、日本が生んだストリートファイターシリーズの“顔”ともいえる存在なので人気は高く、大会に出てくるだけで盛り上がります。そのうえ、5戦全勝する活躍を見せるのであれば、盛り上がらないわけがありません。
SFL Pro-JPやストリーマーの大会を中心に「スト6」のeスポーツシーンを観てきたファンにとっては、大会開始までBlaz選手のことを知らなかったと思います。ところが、一夜にして日本のファンの心をわしづかみにしました。古参のプレイヤーからすると、32年前に行われた両国国技館で1万人の参加者を集めたスーパーファミコンの「ストリートファイターIIターボ」の大会で優勝した当時14歳の中野サガット少年を重ねた人もいるのではないでしょうか。もしくは、中学生で「ストII」の全国大会で優勝したウメハラ選手を彷彿とさせたかもしれません。

15歳の少年が全勝でグループリーグを突破するとは誰も思わなかったことだろう

ほかにもJak選手のカメラ目線、GGHalibel選手のワイプでの豊かな表情、NoahTheProdigy選手の大興奮のインタビュー、Xiaohai選手の発言など、選手の個性や人となりがわかる場面も多くあり、その場でファンになった人も多いのではないでしょうか。




日本開催の海外大会だからこその魅力
海外選手が多く集まる国際大会の楽しみのひとつは、日本とは違うキャラクターのティアやトレンドが見える点です。先ほどのBlaz選手のリュウやVxbao選手のE.本田以外にも、日本の競技シーンではあまり見られないキャラもたくさん出ていました。
そのひとつがテリー。イヤー2のダウンロードキャラクターで、「餓狼伝説」からのゲストキャラクターですが、日本人プレイヤーにはあまり刺さらなかったキャラクターです。しかし、CC11ではテリーをメインにする選手もおり、日本では見ない戦い方もしていました。
Day2でときど選手と対戦したJabhiM選手はSA1のバスターウルフの使い方が秀逸でした。特にケンの主力技のひとつである迅雷脚にバスターウルフで割り込んでいるシーンはやり込みとケン対策の入念さを感じました。ほかにもリリース間もない不知火舞を使う選手が数人おり、海外での「餓狼伝説」や「The King of Fighters」シリーズの人気の高さも伺えました。
Broski選手が使うA.K.Iが、OD紫煙砲からの紫煙追を対空技に使っており、日本ではあまり知れ渡っていない使い方のようでした。日本は選手の層が厚く、情報共有が密なので最適解を見つけやすい反面、隠れた使い方や弱いと言われるキャラの能力の引き出しが弱くなると言う側面もあります。
そのようななかで海外勢が訪れたことにより、新たな潮流が生まれるのは、プレイヤーにとってもファンにとっても喜ばしいこと。2024年もmenaRD選手がブランカを使って猛威を振るうまでは、日本の競技シーンにおいてブランカは選択肢に入っていませんでした。以降はSFLなどの競技シーンでブランカが多く見られるようになりました。

今回の大会で使用されたキャラクターは22キャラ(おそらく。漏れがあったらすいません)。使用されなかったのはリリー、マリーザ、ジェイミーのみ。勝利の為に強いキャラを選ぶのは競技シーンの常套手段ですが、これだけバラエティに富んだキャラクターが出たのは、見ている方にとっては楽しすぎました。
多少の性能差や相性はあるものの、どのキャラも強くなる可能性があるバランスの取れたキャラ作りをしている証拠と言えるかもしれません。そういう意味ではTOP16だけでなく、グループリーグのすべての試合を観ることで、いろいろな発見もできるかと思います。まだ見ていない人はアーカイブで見直すことをオススメします。
関連記事
オフライン「スト6」の楽しさが凝縮! かげっちさん主催「FightersCrossover」現地レポート
15時間以上の死闘!? 4200人参加の第14回「トパチャリ」レポート 決勝戦は「2時半の中段」!
「プロにはない魅力」aleluさんも興奮 「全高e」初となるApex Legends部門 大会レポート NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権
外部リンク
カプコンカップ11
https://sf.esports.capcom.com/capcomcup/cc11/jp/

おすすめ関連記事
-
大会レポート
Apex Legends 大学日本一は「近畿大学」に マイナビeカレ esports全国大学選手権2025 大学対抗部門 世界大会出場予定のYuri選手が躍動
2025.03.27
-
大会レポート
初代王者は「日本大学」に 賞金100万 マイナビeカレ スト6大学対抗部門 「日大のLeshar」大将 タンタンメン選手が活躍
2025.03.26
-
大会レポート
学生考案「傀儡杯」が7.5万再生と好評! きっかけは「ふと降りてきた」 REJECT×NURO 光の背景も
2025.03.26
-
大会レポート
起死回生のG8S、スト6世界最強チームへの軌跡をレポート! SFLWCの優勝インタビューも
2025.03.24


高校eスポーツ探訪
-
2024.08.02
eスポーツが学校生活の活力に 立正大淞南eスポーツ部「GEEK JAM」 ランクイモータルのプロ志望も入部!? 部員インタビュー
-
仙台城南高等学校
2023.08.12
部活動を通じて磨かれた指導力、知識量、分析力 仙台城南高等学校eスポーツ部 後編

記事ランキング
-
1
施設
2025.03.10
千葉に4月開校のNTTe-Sports高等学院、校内を公開 eスポーツとデジタル教育で未来を切り開く新たな学び場
-
2
施設
2025.03.11
町田駅から徒歩6分 eスポーツカフェ「NOABOX町田店」グランドオープン ハイスペックPCを完備 個室でブートキャンプも可能
-
3
大会情報
2025.03.11
しょぼすけさんやにぶぶさんら有名配信者24人がロケリで激突! 「すぱこら!ロケリ杯」が4年ぶりに復活
-
4
eスポーツ団体
2025.03.08
岸大河さん・OooDaさんらが会場を散策 豪華ゲスト登場の「IBARAKI GAMING DAY」 約2300人が来場 ゲーマーや家族連れでにぎわう
-
5
解説
2023.04.15
VALORANTの戦績トラッカー「Tracker.gg」、使い方を日本語で解説