大会レポート
2025.03.24
起死回生のG8S、スト6世界最強チームへの軌跡をレポート! SFLWCの優勝インタビューも
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3月5日~9日の期間に両国国技館で行われた「CAPCOM CUP11」(カプコンカップ11、CC11)の最終日には、「ストリートファイターリーグ(SFL) ワールドチャンピオンシップ(WC)」が開催されました。日本で開催しているSFL Pro-JPと北米で開催しているSFL Pro-US、欧州で開催しているSFL Pro-EUのそれぞれの地域チャンピオンチームが集結し、世界一のチームを決定します。今回はGood 8 Squad(G8S)が見事優勝を勝ち取り、先日のCC11の翔選手に続き、日本開催、日本チーム優勝となりました。当日の様子を振り返ります。
(ライター・岡安学/撮影・志田彩香)

オープニングイベントでは「スト6」日本イメージソングである「恋しさと せつなさと 心強さと 2023」を篠原涼子さんが会場で歌うというライブパフォーマンスがあり、一気に会場のボルテージがあがりました。ライブパフォーマンスは、オフライン会場限定でしたが、SFLWCの開幕のコールも篠原涼子さんが行い、配信で視聴している視聴者も盛り上がったことでしょう。

(撮影:岡安学)

「恋しさと せつなさと 心強さと 2024」を熱唱してくれました
(撮影:岡安学)

(撮影:岡安学)
SFL Pro-JPからはご存じG8Sが参戦しており、ガチくん選手、ぷげら選手、カワノ選手、YHC-餅選手が登録しています。SFL Pro-USからはFlyQuest(FQ)が参戦。EVO 2024で世界チャンピオンとなったPunk選手を筆頭に、Shine選手、Psycho選手、ChrisCCH選手が登録。SFL Pro-EUからは日本でもお馴染みのバード兄弟が所属するNinjas in Pyjamas(NIP)が参戦し、AngryBird選手、Big Bird選手、Veggey選手、Phenom選手が登録しています。

ガチくん選手、ぷげら選手、カワノ選手、YHC-餅選手

Shine選手、Psycho選手、ChrisCCH選手、Punk選手

AngryBird選手、Big Bird選手、Veggey選手、Phenom選手
大会レギュレーションは、まず3チームによる予選リーグを行います。それぞれのチームと1戦し、勝利数が最も高いチームが1位抜け、その次に勝利数が高いチームが2位抜け、最も勝利数が少なかったチームが敗退となります。同じ勝ち数だった場合、ポイントが優先されます。対戦はSFL本節と同様に3対3の星取戦で、BO3の先鋒と中堅が勝利するとチームに10ポイント、BO5の大将で勝利すると20ポイント入ります。20-20になった場合は、BO1の延長戦が行われ5ポイント加算されます。
これまた本節と同様ですが、ホーム&アウェイ方式を採用し、アウェイ側のチームは3人分のオーダーを最初に提出し、ホーム側は対戦前にひとりずつオーダーを出すことができます。本節ではすべてのチームとホームとアウェイで対戦していましたが、SFLWCの予選ではそれぞれのチームと1戦しかしません。どのチームもホームとアウェイを一度ずつ行うのですが、どちらのチームがアウェイになるか、ホームになるかは運任せとなります。
決勝への切符の行方
予選第一試合はアウェイのG8S対ホームのNIPです。G8Sは先鋒ガチくんラシード、中堅ぷげらジュリ、大将カワノ豪鬼の布陣です。これに対してNIPは先鋒にPhenomキャミィ、中堅にBig Birdラシードを当ててきます。相手に優位なキャラや選手を被せられるホーム側のNIPでしたが、連敗し、20ポイントを失います。そこで大将戦はAngryBird選手が豪鬼ピックで登場。お互いに2セット取った状態での5試合目の第1ラウンド。お互いに体力がわずかなうえ、バーンアウトしている状況となります。AngryBird選手が斬空波動拳で削りにかかりますが、カワノ選手は波動拳で対応、少しずつ距離を詰めて、射程圏内に入ったところ、AngryBird選手の斬空波動拳に昇龍拳を合わせて勝利します。このまま一気に次のラウンドも取り、G8Sが40-0で勝利しました。


予選第二試合はアウェイのFQ対ホームのG8Sです。FQは先鋒・Psychoキンバリー、中堅Shineキンバリー、大将Punkキャミィというオーダーです。先鋒で出たカワノ選手が勝利した後、中堅でG8Sが出したオーダーはなんとYHC-餅選手。得手不得手の差が激しいダルシムにとって、短期決戦での出番は少なくなりがちで、SFL Pro-JPのプレイオフやグランドファイナルでも出番はありませんでした。しかも相手が選択したキンバリーは、ダルシムにとって不得手とされる相手で、このオーダーは相手も会場も驚かされたことでしょう。ただ、それ以上に待ちに待ったYHC-餅選手の登場に、5日間行われたCC11の中でも1、2を争う大歓声が沸きました。
結果として、1セットを先取するものの、逆転負けを喫しました。最初は、先鋒が勝利したことで余裕ができ、プレイオフから出番のなかったYHC-餅選手への温情登板かと思うところもありましたが、相手に十分なプレッシャーを与え、抑止力としての存在感を高めた良い作戦だったようにも思えました。大将戦はぷげらジュリがPunkキャミィに先に2セット取ったものの、逆転で敗北となりました。これでFQは30-10で勝利です。

会場は大盛り上がり
予選第三試合はアウェイのNIP対ホームのFQです。FQが勝利すれば2勝で1位抜けが確定ですが、NIPが40-0で勝利すれば逆転で2位通過も見えてきます。また、30-10でNIPが勝利した場合は、1勝1敗で3チーム並び、G8Sが1位抜け、FQが2位抜けとなります。延長戦が絡んで20-25でNIPが勝利した場合は、FQが1位抜けとなります。なので、圧倒的にFQが有利に思えましたが、それほど有利はなく、敗退まであり、気の抜けない試合となりました。
NIPのオーダーは、先鋒・Phenomキャミィ、中堅・Big Birdラシード、大将・AngryBirdケンです。先鋒はG8S戦では出場しなかったChrisCCHテリーが登場。Phenom選手を倒します。ここで、NIPの予選脱落が確定しました。しかし、中堅のBig Bird選手、大将のAngryBird選手が勝利し、G8Sが1位通過の援護をした形となりました。



決勝戦 G8S対FQ
決勝戦はG8S対FQです。1位抜けしたG8Sがホームスタートです。本来はホーム側が有利なのですが、予選の3試合ともアウェイ側が勝利しています。本節でもDivision Sはアウェイの方が、勝利数が多い逆転現象が起きています。ちなみにG8SはDivision Sです。決勝戦のレギュレーションはプレーオフで行われたものと一緒で、先鋒、中堅、大将戦を一巡として、ポイントを奪い合います。
ポイントとセット数は予選と同じですが、一巡のポイントが同点になっても延長戦は行われず、次の巡目に移行します。巡目が変わるとホームとアウェイも入れ替わります。勝利条件は先に70ポイントの獲得。最短で2巡目、最長で4巡目で決着がつきます。
一巡目はFQがアウェイで、オーダーは先鋒・Psychoキンバリー、中堅・Shineキンバリー、大将・Punkキャミィです。つまり、予選と同じオーダーです。これにG8Sは予選と同様に先鋒にカワノ選手を投入します。しかし、ここで敗北となってしまい、中堅はガチくん選手が登場し、見事に勝利。大将はぷげらジュリを出し、予選のリベンジを挑みます。2セットまで取るものの、最終セットを取られ、Punk選手が勝利します。これで1巡目は30-10でアウェイのFQがリードします。


起死回生のG8S、救世主カワノ
2巡目のG8Sは先鋒・ガチくんラシード、中堅・ぷげらジュリ、大将・カワノ豪鬼で迎え撃ちます。FQは先鋒のPsychoキンバリーが勝利、中堅のChrisCCHEDもPsycho選手に続きます。これでポイントは50-10。大将戦は20ポイントなので、FQは世界一にリーチをかけたことになります。ここでカワノ選手が覚醒し、Punk選手相手に3連勝し、2巡目は50-30で終わります。大将戦に勝ったG8Sが追い上げているような印象がありますが、2巡目はお互いに20ポイント取り合っただけなので、ポイント差は一巡目と変わりません。




3巡目はFQがアウェイ。ここで、FQが会場を揺るがすオーダーを発表します。なんと3人ともキンバリーのトリプルキンバリーを出してきました。Punk選手はメインキャラクターがキャミィですが、SFL Pro-USの本節でもキンバリーを出しており、サブキャラとして十分戦力になるレベルです。どのみち被せられるアウェイ側としては、全キャラ同じにすることでオーダーに関するホームの優位性を無くすこともできます。

また、2巡目で活躍したカワノ選手がPunk選手の対策要員として被せてくる可能性があるとしたら、Punkキンバリーでカワノ選手を釣り、先鋒と中堅でカワノ選手以外を倒すと言う作戦も見えてきます。つまり、奇をてらったように見えるオーダーですが、かなり考え尽くされ、最適解に近いものだと言えます。

しかし、FQにキンバリー使いが多く、Punk選手もキンバリーを使えることを知っていたG8Sはトリプルキンバリーに臆することなく、ひとりずつ倒していきます。大将戦で再び、Punk選手とカワノ選手が対峙。最初はPunk選手のキンバリーの動きについていけず、2セット連取され、FQが世界一に王手をかけます。カワノ選手は、ここから徐々にいつもの逆択が通りだし、起き攻めも読みが通り始めます。
特に柔道と言われる画面端の連続投げや、柔道を意識させてのシミー(投げると見せかけて投げ間合いの外に逃げ投げ抜けの隙を誘う行為)が高確率で決まります。そして、フルセットフルラウンドの末、最後も画面端からの投げ4連発でPunk選手を下しました。





G8Sは、賞金8万ドルと共に、CC12の出場権を獲得。大会開始前にSFLWCに出場している3チーム12名はeスポーツワールドカップ(eWC)の出場権を与えられる発表もされていたので、出場権を得る為に1年活動すると言っても過言ではない、ふたつの世界大会の切符を両方手にすることとなりました。

優勝チームにインタビュー
――優勝おめでとうございます。3巡目はFQがキンバリー3連続というオーダーを出してきましたが、G8Sのオーダーはどのように決めたのでしょうか。
ガチくん選手 ここまでゆうくん(ぷげら選手)が、キンバリー戦を一度もやっていなかったんですけど、キンバリー戦は自信があると言うことで行ってもらいました。Shine選手には1巡目で被せて勝利していたので、自分が行かせていただきました。
――優勝して、来年のCC11の参加資格、そしてWCへの出場でeWCの出場権を得ることができました。例年であれば、CCの出場権を得ることを目標に1年間活動してきたわけですが、その点はいかがでしょうか。
ガチくん選手 明日からちょっとは休ませていただきますけど、CCの出場資格を得ていたとしても、多分やることは変わらないですね。それこそリーグに専念できるようになるので、来年も勝てるようにしていきます。大会も多分、なんだかんだ行けるところは行くと思います。モチベーションは下がらずにできるかな。
YHC-餅選手 やることは変わらないですね。今まで通り、楽しくゲームをして、結果として大会で成績が残せたら良いなと言う感じです。ゲームを楽しんでやっていくと言うスタンスは崩さずに行きたいと思います。
ぷげら選手 あまり変わらない気がしますが、その2枚の切符を持った状態でシーズンがスタートすると言うのはそうそう無い事だと思います。なので、大会やそのほかのことに対して、いろいろ考える余地はあるなと思います。それが何かというのはまだちょっと分からないですけど。
カワノ選手 eWCとCCが確定したことで、海外に行く機会はすごく減ると思います。なので、ダイエットをしようかと思います。海外ってやっぱり食生活が凄く大変なので。痩せてメディア受けをちょっと気にしていこうかなと思います。

――YHC-餅選手は体力的に遠出をすることがないと言うイメージだったんですけど、eWCのサウジアラビアには参加されるのでしょうか。
YHC-餅選手 今のところは行く予定で計画しています。せっかくの機会ですし、行った人が良い大会だったと言っていたので。私はただのサラリーマンですが、仕事の都合もなんとかできそうですし、体力的にも最近調子が良いので、頑張ってみようかと思います。
――団体戦の魅力があればお願いします。
ガチくん選手 自分が負けたり、逆に誰かが負けても、フォローしあって、最後に勝つと言うのは個人戦ではない感覚ですね。今回のWCでは日本の12チームと戦った上で代表として出たということもあり、背負うものが大きかったですね。
YHC-餅選手 全然違った感じで挑めることができて凄く楽しかったです。SFLは4人チームですが、楽しさも嬉しさも4倍、悔しさも4倍と言う感じなんです。今日の優勝も個人戦の4倍嬉しかったです。最後の試合は出番がなかったんですけど、ChrisCCH選手が出たら出ようかって話はありました。ChrisCCH選手はダルシムが嫌だったかもしれません。新キャラのテリーはこちらもやりにくいところはあったんですけど、相手が警戒して出さなかったのであれば、チームが勝つことに寄与できたのではないかなと。
ぷげら選手 個人戦だと勝って終わると嬉しいだけで終わるんですけど、団体戦だとチームは勝ったけど、自分は結果が出せなくて悔しい部分もあったりします。そこは違いますね。今日は本来で言えば6~7割悔しいとなるんですけど、あまりにもWCで勝てたのが嬉しすぎて。
カワノ選手 月並みな言い方ですけど、やっぱり協力できるといのは凄く良いことだと思っています。今日はなんとか勝ちましたけど、本節ではEDが猛威を振るっている中、YHC-餅選手が勝ってくれたり、メンバーがフォローしてくれていて。長期間なので、対策間に合っていないなら、ほかの人のために協力するみたいなのができるのは凄い良いなと思います。
――今回は日本開催でしたが、前回のWCで敗退した時より、自国開催のメリットはありましたか。
ガチくん選手 声援がなければ、流れはFQに行ったままだったと思います。あの声援があったから、踏ん張れました。あと、普段と同じ練習ができたことですね。海外でも海外選手や渡航している日本人選手と練習できるんですけど、今回みたくキンバリーみたいな使い手が少ないキャラの対策をする場合、日本であれば、探して協力してもらうことができるので。
YHC-餅選手 前回は出ていないんですけど、これだけの人が集まって、みんなで応援してくれているのは力になりました。近いというのは1番ですね。島根から来ても飛行機ですぐに到着しますけど、海外だと疲れてしまいますね。
ぷげら選手 アメリカの時は声援が全然違っていて、今回はそれに助けられた部分は絶対にあるなとは思っています。体調面のコンディションも違うと思います。普段の生活の中に大会があったと思えるのは大きなアドバンテージでした。ギリギリまで寝ていられたり、食事も普段と変わらなかったり、海外遠征は結構疲労が出てしまうので。
カワノ選手 声援は大きいですね。対戦相手の様子をみて攻め方を考えたりしますが、この行動の方が雰囲気的に良いだろうって感じで、行動を選べたのは凄くありがたかったですね。今回は海外の選手は大変だろうなって言う気持ちはありました。ただ、僕らも海外の大会に行った時、大変な立場になるので。やはりそこが一番でしたね。
――ありがとうございました。
FQとNIPには、個人戦のCC11に出場している選手が在籍していました。G8Sには出場者はいなかったものの、それでも世界一に輝くことができました。これは、日本選手の層の厚さ、日本開催のCAPCOM Pro TourやWorld Warriorで勝ち抜くことの難しさが表れていると思います。それだけに、CC12への出場権獲得は選手にとって喜ばしいことなのではないでしょうか。
SFLはeスポーツの国内プロリーグ戦として数少ない貴重な存在です。さらに世界大会での優勝がCC出場に直結するようになり、出場チームは益々力を入れてくることでしょう。3月で現状のチーム編成の契約が終わり、4月から徐々に新体制の発表がなされると思います。来シーズンはどんな戦いを見せてくれるか今から楽しみです。
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外部リンク
カプコンカップ11
https://sf.esports.capcom.com/capcomcup/cc11/jp/

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