大会レポート

2025.03.22

選手の数だけドラマがあった両国国技館、「カプコンカップ11」TOP16を振り返る

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 3月5日~9日にかけて、両国国技館で「カプコンカップ11」および「ストリートファイターリーグ: ワールドチャンピオンシップ 2024」が開催されました。前回の記事ではカプコンカップ11(CC11)のグループリーグ予選の模様をお伝えしましたが、今回はDay4で行われた予選を突破した16人によるTOP16トーナメントです。TOP16トーナメントを制したのは日本のIBUSHIGIN所属 翔選手でした。

(ライター・岡安学/撮影・志田彩香)

↓↓前回の記事(グループリーグ予選の様子)はこちら↓↓
波乱の幕開け!? スト6の世界大会「カプコンカップ11」グループリーグ予選、日本選手の動向を振り返る

選手の写真
優勝して100万ドルの賞金を手にした翔選手
大会の写真
CC11のDay1~3のグループ予選を勝ち抜いた16名によるトーナメント


 TOP16トーナメントはダブルエリミネーション方式のトーナメントです。2回負けると敗退となり、試合はBO5(5先)で行われます。グループリーグ予選で各グループを1位で通過した選手はウイナーズサイドに、2位通過した選手はルーザーズサイドからのスタートとなります。つまり、2位通過の選手は背水の陣でトーナメントに挑むことになります。ウイナーズサイドとルーザーズサイドのトーナメントは以下の通りです。

トーナメント表
ウイナーズサイド
トーナメント表
ルーザーズサイド


 まずはウイナーズサイドの1回戦から。どのカードも気になるところですが、その中でも特に注目したいのが翔選手対Blaz選手戦と、ふ~ど選手対LeShar選手戦。翔選手は予選での調子が良く、優勝候補のひとりと言える存在です。対峙するのは15歳の若き新星Blaz選手。若さを活かした反応の良さと思い切りの良さで予選を全勝で突破しています。最近は日本でも若手選手の台頭著しく、ベテランと若手のバランスが取れてきている印象です。その中においても15歳は破格の若さ。このまま次世代を担う存在となれば、「スト6」ひいては格ゲー界隈はしばらく安泰と言えるでしょう。

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グループリーグ予選から大活躍のBlaz選手


 もうひとつの注目カードは、ふ~ど選手対LeShar選手のEDミラー。ふ~ど選手は2年連続でCAPCOM Pro Tour(CPT) World Warrior(WW)を勝ち抜き、CC11への切符を手にしており、CC11グループリーグは全勝で勝ち抜いています。かたやLeShar選手はストリートファイターリーグ:Pro-JP(SFL)で無類の強さを発揮し、Yogibo REJECTのディビジョン優勝の立役者として活躍しました。またSFLに参加するため、CPTジャパンプレミアで2位以上を獲得するという狭き門をくぐり抜けています。SFLグランドファイナル以降、調子を落としていましたが、CC11グループリーグ予選ではSFL本節の強さを取り戻しています。このふたつのカードは事実上の決勝戦と言える程の好カードといえます。

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全勝で予選を勝ち上がったふ~ど選手
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尻上がりに調子を伸ばし、SFL本節の強さが戻ってきたLeShar選手


 翔選手対Blaz選手戦の翔選手はJPをピック。CC11はJP1本で通すと思われます。Blaz選手はケンをピック。リュウよりも突進力があるケンの方がJPに合うと被せた様子。しかし、翔選手はもともと胴着使いと言うこともあり、相手の動きを封じ込め連勝します。そこでBlaz選手は豪鬼に切り替えますが、これも刺さらず、危なげなく3-0で翔選手が勝利しました。

 LeShar選手はふ~ど選手にとって、WWでももち選手に勝利するために協力してもらったスパーリングパートナーでもあります。お互いに手の内を知った中での対戦です。お互いにセットを取り合い、2-2で最終セットまでもつれ込みます。最終セットはLeShar選手の攻撃が噛み合い、一方的な展開でLeShar選手が勝利しました。そのほかのウイナーズサイドは、NoahTheProdigy選手とJuiceJoe選手が勝利しました。

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屈指のルーク使いであるNoahTheProdigy選手
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AngryBird選手を倒す大金星をあげたJuiceJoe選手


 ルーザーズサイド1回戦はウイナーズサイド以上に注目カードが目白押しです。特にMenaRD選手対Xian選手、Xiaohai選手対Shuot選手はグランドファイナルで行われても不思議ではない組み合わせです。

 MenaRD選手対Xian選手戦は、MenaRD選手がルークを出し、Xian選手のDeeJayで対峙します。フルセットまでもつれ込みますが最後はXian選手が勝ちきりました。MenaRD選手は複数のキャラクターを使いこなすマルチキャラ使いですが、選手紹介の登録キャラクターがザンギエフになっていたので一応メインはザンギエフとなります。しかし、グループリーグにはEDやダルシム、TOP16でもDeeJayが相手で、ザンギエフと相性が悪いうえにほかの持ちキャラであるルークやブランカの方が相性の良い組み合わせとの対戦となり、結局、一度もザンギエフを出すことがありませんでした。そういう意味ではMenaRD選手は対戦相手に恵まれなかったと言えます。

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対戦相手に恵まれなかったにもかかわらずTOP16まで進出したMenaRD選手
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調整されてもDeeJayを信じ使い続けたXian選手


 Xiaohai選手はベガをピックし、Shuto選手の前に立ちはだかります。SFL本節では散々見てきたベガ豪鬼戦です。どちらが有利と言いにくい組み合わせですが、Shuto選手は慣れていると言える組み合わせで、3-1で勝利しました。そのほかの試合は、ときど選手とNL選手が勝利。Phenom選手、Broski選手はここで脱落です。

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勝利の咆哮をあげるShuto選手
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TOP16では残念ながら勝利することができなかったXiaohai選手
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薄氷を踏むがごとく、ギリギリの状況が続くときど選手
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力を見せつけて1回戦を突破したNL選手
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A.K.Iの魅力を存分に見せつけたBroski選手
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惜しくも初戦敗退となったPhenom選手


 ルーザーズサイド2回戦はルーザーズサイドの勝者とウイナーズサイドの敗者がぶつかります。ここでふ~ど選手対ときど選手の日本人対決が発生。結果としては、ときど選手が勝利しました。ときど選手は他力と自力を総動員してグループ予選をギリギリ2位で通過している一方、ふ~ど選手は圧巻の全勝1位抜けでしたが、過去の経緯は関係ありませんでした。ルーザーズサイド2回戦を勝ち抜いたそのほかの選手は、AngryBird選手、Blaz選手、Shuto選手です。

対戦の様子
ふ~ど選手とときど選手による日本人選手対決が勃発
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Shuto選手に敗れ敗退となったTakamura選手
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激戦を終え、お互いを称え合うときど選手とAngryBird選手


 ウイナーズセミファイナルは、翔選手がNoahTheProdigy選手を倒し、LeShar選手がJuiceJoe選手を破り、ウイナーズファイナルに進出します。

 ここからのルーザーズサイドは、Blaz選手の独壇場と言える活躍を見せます。ルーザーズ2回戦からキャラピックをリュウに戻します。すでに会場はBlaz選手の魅力にとりつかれており、リュウが画面に現れるだけで、会場が割れんばかりの歓声に包まれます。Xian選手を逆3タテで下すと、Shuto選手とはフルセットフルラウンドの激戦をリュウのみで勝利します。

 ルーザーズ準々決勝ではNoahTheProdigy選手のルークに対してもリュウピックし、これまた逆3タテで勝利します。ルーザーズセミファイナルでの対戦相手はあのAngryBird選手。「ストII」以来の伝統のリュウケン対決となるかと思いきや、AngryBird選手は豪鬼を選択。Blaz選手はもちろんリュウ。そしてよもやのAngryBird選手に対しての逆3タテを喰らわせます。もはや、この日のヒーローはBlaz選手であったと言っても過言ではありません。

選手の写真
握手をするJuiceJoe選手とLeShar選手
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ルーザーズに移行してからも強さを存分に発揮したAngryBird選手
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快進撃をみせるBlaz選手


 ウイナーズファイナルで翔選手に敗北したLeShar選手がルーザーズファイナルの相手となります。Blaz選手もLeShar選手も同日、翔選手に敗れており、どちらが再挑戦の権利を獲得するかの戦いです。いつもはタイムアウトも視野に入れるほど、じっくりと戦うLeShar選手ですが、Blaz選手のアグレッシブな戦いに当てられたか、かなり攻めっ気のある戦いを仕掛けます。しかし、殴り合いの展開こそBlaz選手の望むところで、あっという間に2セットを連取します。3セット目はLeShar選手のSA3に対して、Blaz選手もSA3で対抗し、お互いの技が空振ると言う極限状態の技打ちも出ます。最後はLeShar選手のバーンアウト状態を逃さず、翔選手への挑戦権はBlaz選手が獲得しました。

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翔選手への挑戦権はBlaz選手に。
LeShar選手からその思いを託された


 グランドファイナルは、翔選手とBlaz選手の再戦です。Blaz選手は、今回は自分が使い続けたリュウを信じて選択します。鋭い読みと反応の良さとアグレッシブな攻めで、翔JPを追い込むBlaz選手。明らかに前回の試合とは違います。これに対して、翔選手は落ち着いて対処し、ジャストパリィで切り替えます。さらに遠距離戦が得意なJPに近づく為にドライブゲージを多めに消費するBlaz選手にバーンアウトを促し、優位な状況を作り出します。それでも安易に攻め込まず、終始冷静に対応した翔選手が3-1で勝利しました。

 Blaz選手は、リュウに変更し、翔選手を何度も追い込むシーンがありましたが、さすがにグランドファイナルの場で緊張があったのか、これまで見なかったコマンドミス、コンボミスが発生し、チャンスを逃す場面もありました。ここは翔選手との経験の差、大舞台の慣れの差が出たと言えるでしょう。

選手の写真
すでに王者の風格で入場する翔選手
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15歳とは思えぬ落ち着きで戦いの舞台に向かうBlaz選手
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勝利したあと、喜びと同時に安堵の表情を見せる翔選手
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プレッシャーからの解放でその場に座り込む翔選手と死闘を繰り広げた相手に敬意を示し、声を掛けに行くBlaz選手

記念すべき大会に

 CC11は翔選手の優勝で幕を閉じました。初めての日本開催、32年前にSFC版「ストリートファイターIIターボ」の全国大会が行われた両国国技館が会場、そして賞金100万ドル、日本人選手の優勝。まさに記念すべき大会となりました。

 Punk選手を始めとする強豪選手がTOP16トーナメントに進出できないほどの激戦となったグループリーグ予選、若き新星の登場と、プレイヤーの層の厚さも感じました。CPTのレギュレーションで世界各国の選手が出場しやすくなった反面、強豪国、強豪地域の選手の出場枠が減った感がありましたが、そこまで「スト6」が浸透していない国や地域の代表が活躍し、世界にはまだ見ぬ強豪が埋もれていることを証明しました。

選手の写真
優勝トロフィーを掲げる翔選手


 来年もCCは開催することが発表され、会場はまた両国国技館となりました。今回の感動を再現されるとなると今から胸熱です。配信でCC11を観ていた人は、是非会場に訪れることをオススメします。配信でも現地の歓声を聞くことができましたが、その盛り上がりは比較できないレベルです。会場であの熱量を感じてみてください。

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外部リンク

カプコンカップ11
https://sf.esports.capcom.com/capcomcup/cc11/jp/

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