大会レポート

2025.04.24

プロの指導が結果につながる! 「埼玉eスポーツキャンプ2025」、大宮駅ならではの楽しみも

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 3月27~29日に埼玉県さいたま市にて「埼玉eスポーツキャンプ2025(eキャン)」が開催されました。eキャンは高校生を対象としたeスポーツのトレーニングキャンプでタクティカルシューティングゲーム「VALORANT」のスキル向上が目標です。

eキャンの写真
eスポーツキャンプに参加した生徒とコーチのTORANECOさんとRetloffさん


 大宮駅を中心に、東日本各地のアンテナショップである「まるまるひがしにほん」をオリエンテーション会場とし、eスポーツ施設の「eSPORTSCAFE AIM 大宮店(AIM)」「e-WORLD 大宮」の2箇所を練習会場として、集中キャンプを行いました。

 最終日には、複合施設である大宮ソニックシティにて、キャンプの成果を発揮する大会も開かれます。参加人数は25人。募集要項にランク制限は設けていなかったので、最高ランクであるレディアントに到達している超上級者からまったく初めてプレーする人、コンソール版でしかプレーしたことがない人など、幅広い実力の高校生が参加していました。

 この25人の参加者を実力が均等になるように五つのチームに振り分け、3日間はチームで活動します。違うランク帯、実力差がある参加者がチームを組むことで、普段とは異なった練習やコミュニケーションを図る必要があり、これもeスポーツキャンプの狙いの一つと言えます。

 また、振り分けられたチームは、デュエリストやコントローラー、センチネル、イニシエーターの四つの役割がキレイに振り分けられているわけではないので、誰がどの役割を担当するのか、チーム構成についても話し合っていました。Day3の大会ではヘイブンとアセントのふたつのマップを使用することになっているので、それに合わせたキャラクター選びも会議で決めていきます。

eキャンの写真
3日間一緒に練習する5人ひと組が五つ。
チーム名やチーム構成は最初に会議で決定した


 埼玉eスポーツキャンプは今回が2回目の開催となりますが、2023年まで泉佐野市で行っていた「泉佐野eスポーツキャンプ」を引き継いでおり、累計すると4回目の開催となります。会期は3日間あるので、通いで参加する通所プランとホテルに泊まる宿泊付きプランの2種類を用意。全国各地から高校生が集結し、参加25名中16名は宿泊プランを選択しています。

プロの指導が光る

 指導するのは、「VALORANT」の日本公式キャスターとして解説を務めるRetloffさんと、実況を務めるTORANECOさん、元プロゲーマーで現在ストリーマーや講師を務めるFlaxさん、adeさんの4人。また5チームあるので、スタッフが各講師のフォローをし、うまく5チームが指導してもらえるよう工夫していました。

 トレーニング内容は、チームに分かれて行動し、チーム練習とほかのチームとの実践練習のスクリム、そして講師による座学の講義の3つです。そして最終日にはキャンプの成果を試す大会を開催します。ランダムで選ばれた2チームと対戦し、勝利数やラウンド取得数によって、決勝戦、3位決定戦を行い、最終的な順位を確定します。

 チーム練習やスクリムを行うのは、AIMとe-WORLDです。それぞれ2チーム10人が2店舗に振り分けられ、練習をします。各コーチはプレイヤーのスキルや戦い方を観察し、上達に必要な要素や練習方法を指導します。

eキャンの写真
コーチとして参加しているadeさん(写真左)、Retloffさん(写真左中)、TORANECOさん(写真右中)、Flaxさん(写真右)


 Day1とDay2は座学と実践(プレー)による特訓。講義ではまず「VALORANT」についてより理解度を高めるレクチャーを実施しました。大まかな戦略、個々の戦術などにも言及し、フィジカルに頼るだけではなく、しっかりと目的意識や行動意識を持って、良く考えてプレーするように呼び掛けていました。

 実際にゲームをプレーしての練習は、チーム同士のスクリム(コーチあり、コーチなし)とチーム内練習に分かれます。コーチありのスクリムは試合後にコーチからフィードバックがあり、見つかった課題や今後の練習方法などのアドバイスがあります。コーチなしのスクリムでは作戦会議から振り返りまで自主的に行い、自ら考えて試合に臨む力を養っていきます。

eキャンの写真
まるまるひがしにほんでは「VALORANT」について、
より理解を高めるための講義を実施した
eキャンの写真
AIMでの練習風景
eキャンの写真
AIMはフリードリンクでした
eキャンの写真
e-WORLDによる練習風景
eキャンの写真
スクリム中はコーチがしっかりと個々の状況をチェック。試合後に選手にフィードバックされる


 Day3はeスポーツキャンプの成果を見せる大会です。予選をAIMで行い、3位決定戦、決勝戦は大宮ソニックシティに移動します。試合は一本勝負で行われ、選べるマップはヘイブンのみとなっています。先述した通り、かなりランク差があるメンバーでチームを組んでいるので、組み合わせ次第では大きな実力差が出るかと思われましたが、予選では2勝が1チーム、1勝1敗が3チーム、2敗が1チームと混戦になりました。勝敗の決め手となったラウンド数もほとんど差がなく、実力が拮抗した大会でした。

 優勝したのはTeamE・teamさねぶたP。このチームで注目したいのは女性プレイヤーのねぐせちゃん。ランクはシルバーでキルジョイを使用していました。試合はイモータル2のさしみらいすさんを中心とした展開でしたが、要所要所でねぐせちゃんのキルジョイの動きが目立っていました。

 シルバーランクということもあり、遠慮しがちなムーブをしていたところ、コーチから「倒されても良いから、前に出て倒しに行ってみては」というアドバイスがあったとのこと。試合でその通りに動いてみたら、思った以上に相手を倒すことができて、チームの勝利に貢献できたと言います。

 コーチの話と試合内容から察するに、おそらく、スキルはシルバー以上のものをすでに持っていたのでしょう。ただ、失敗を恐れ、チームへ迷惑をかけないようにしたいと言う気持ちが強すぎたため、控えめな動きになってしまい、結果が出せなかったのかもしれません。

 そこを見抜いたコーチの助言はまさに至言で、彼女もeスポーツキャンプに参加した甲斐があったのではないでしょうか。もちろん、ほかの参加した生徒も経験を得て、実績を残したと思われます。強豪高校のeスポーツ部に所属していない限りはこういったプロからの意見を聞く機会もないので、それだけでもeスポーツキャンプに参加した意義はあったと感じました。


 また、残念ながらチームは3位となってしまいましたが、TeamB・こんそめのかたぎり選手の活躍も目を見張るものがありました。参加者の中で唯一の最高位レディアントで、彼の操るジェットはチームを牽引しつつ、個人成績も高いスコアを残していました。ひとりだけ動きが違うのは、おそらく「VALORANT」初心者でも分かるレベルでした。普段は同じランク帯のハイレベルな仲間や対戦相手と戦うことがほとんどで、初心者同然のメンバーと一緒に戦うことはなかったと言います。それだけに、ランクの離れたチームメイトに対してどのような指示や戦い方をしていけば良いのかを考えていました。かたぎり選手にとっては、eスポーツキャンプに参加したことは、対戦スキル以外の部分も伸ばす貴重な機会になったのではないでしょうか。

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大会の結果
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team さねぶたP
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CR(crazy rankers)
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こんそめ
eキャンの写真
頭NO
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ゆんつみれ

“eスポーツの街”大宮駅

 泉佐野市でのeスポーツキャンプは泉佐野オチアリーナですべてを行っており、基本的には会場とホテルしか行き来できませんでした。埼玉eスポーツキャンプでは、まるまるひがしにほんとAIM、e-WORLD、大宮ソニックシティの4箇所で行われ、大宮駅周辺にeスポーツ関連施設があることをさいたま市も大きくアピールできたのではないでしょうか。

 まるまるひがしは「eFootball」や「鉄拳7」の大会も開催されていましたし、e-WORLDは先日、プロゲーマーのゆうゆう選手による「鉄拳8」の大会が開催されていました。大会で使われた大宮ソニックシティの隣にはソニックシティホールがあり、賞金1億円超えの「Shadowverse」の世界大会が開催されたことでも有名です。参加者はeスポーツの街としての大宮を体感できたのではないでしょうか。コーチとして参加したTORANECOさんやRetloffさんも大宮の環境の良さに感嘆していたのも印象的です。

 昼の弁当は埼玉県内の食材を活かしたメニューを提供。こちらも埼玉県としては県の食材をアピールでき、参加者は豪華な弁当を食べることができ、こちらに関しても互いに利点があったのではないでしょうか。

施設の写真
eSPORTSCAFE AIM 大宮店。
普段はeスポーツ施設としてイベントの開催まで実施できる
会場の写真
まるまるひがしにほん。1階は東日本各地の名産を扱うアンテナショップだが、2階はビジネスサロンとして展開しており、会議室利用などで使われている。
eスポーツイベントも高頻度で開催
イベントの写真
e-WORLD 大宮。大宮駅東口から高島屋の先にあるeスポーツカフェ。プレイエリア以外に飲食エリアも完備

イベントの写真

昼食の写真
昼食で提供されたお弁当。かなり豪華


 惜しむらくは大会の様子を記録していたものの、配信はしておらず、動画としてアップする予定もないということ。先述した通り、公式大会でキャスターを務めるTORANECOさんとRetloffさんが一般プレイヤーの試合を実況解説してくれることは滅多にないことです。STAGE:0や全日本高校eスポーツ選手権でも準決勝以上に行かないと有名キャスターに実況してもらう機会はないので、本当に貴重な機会です。

 もちろん、自分たちが試合をしている時は実況を聞くことができず、選手名を呼ばれているシーンも観ることができません。参加している受講生の保護者としても、子どもたちの活動を観る良い機会となるので、限定公開の動画配信やDVDなどのメディアにして配布するなどの施策があると、より充実したプログラムになりそうです。

TORANECOさんとRetloffさんの写真
実況・解説をするTORANECOさんとRetloffさん


 ともかく、参加する生徒にしても、主催する自治体にしても利点が多く、効果も高いので、さまざまなところでeスポーツキャンプを開催して欲しいと感じました。

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外部リンク

埼玉eスポーツキャンプ2025
https://saitama.gloe.jp/

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