コラム
2023.10.07
eスポーツイベントを開くには何が必要?茨城・水戸で開催したeスポーツアカデミーをレポート
- 大会/イベント
茨城県は、いばらきeスポーツ産業創造プロジェクト事業として2020年から「eスポーツアカデミー」を定期開催しています。9月23日に行った同イベントは初回から数えて12回目の開催となり、この日のテーマは「0から始めるeスポーツイベント」でした。eスポーツのイベント企画を考える、ありそうでないセミナー。その模様と、参加者や登壇者の声を取材してみました。(取材・文/寺澤 克)
企画にはアドバイザーの起用がカギ?
対象は基本的に高校生以上ということでしたが、意外にもその年齢層はばらばらで、県の担当の三嶋さんも「こんなに幅広い年齢層になるのは初めてですね」と少し驚いた様子でした。
講師を務めたのは、アプリシエイトのeスポーツ事業部に所属する鶴見佑希さん。同社はいばらきeスポーツ産業創造プロジェクトの委託事業を請け負っています。鶴見さんはまずeスポーツの定義から説明をはじめ、どんなゲームタイトルがあるのかなど、初歩的な部分から解説を始めました。
「タイトルはどう選ぶか」「告知はどこですればよいか」「実際に起きたアクシデント」など、イベント主催者としての経験談を交えながら講演は続いていきます。中でも筆者が話を聞いていて大切だと感じたのは、「アドバイザー」を探すという点。
「スマブラは自分がプレイヤーでもあるので、どういった大会が魅力的に映るのかよくわかります。しかしストリートファイター6(スト6)については経験がなくどういった形式が求められるのかわからない」と鶴見さん。
スト6には操作遅延が少ないPC版の方が好まれるというのがプレイヤー間での常識。鶴見さんは、実際のスト6プレイヤーからヒアリングして初めてこうした情報を知ったとのこと。ゲーム内での常識を自分で調べるのには限界があり、実際にプレーしている人たちにしかわからないことはたくさんあります。このことからイベントを成功させるには、あるゲームタイトルに精通した人間、つまりアドバイザーに協力をお願いすることがポイントになるといいます。
実際に企画を立ててみる!ワークショップでは参加者が真剣に議論
一通り講義を終えた後は、実際にeスポーツイベントを企画するワークショップが始まりました。参加者をグループ分けし、「茨城県をeスポーツで盛り上げる」をテーマに、それぞれ企画を立てていきました。最後は各グループが企画を発表。どれも少し手を加えただけで実際にイベントを開催できそうな内容で、初めてとはいえかなり現実味のある企画が完成しました。
イベントを終えて 参加者の反応は…?
イベント終了後、ワークショップの感想について参加者に話を聞いてみました。
「ちょうどイベントを運営する機会があるので…」
参加者の一人に、制服姿で参加している学生さんがいました。なんと以前取材した水戸啓明高等学校の山崎惣介さん(※崎はたつさき)でした。10月15日に開催するポケモンユナイト大会「第1回 中学校eスポーツ選手権」の運営を務めるため、その勉強のために今回参加したとのこと。
山崎さん 直近で運営を務めるというのも理由ですが、将来はイベント企画の仕事に携わりたいという思いがあります。顧問の先生に話をして参加させてもらいました。今回学んだことを大会運営に生かしていきたいと思います。
「いつも見ている大会とか、eスポーツイベントの裏側を知ることができた」
そして親子でイベントに参加しているケースも。中学生の井上航希さんとお母さまの陽子さんは、特にイベントを計画するわけではないようです。しかし、話を聞いてeスポーツイベントの企画にはいろいろな段取りが必要になることが分かったといいます。
陽子さん 息子がロボット教室に通っていて、その大会の課題の一つにプレゼンテーションがあるんです。「eスポーツを盛り上げる」をテーマに設定したので、そもそもeスポーツとは何かを考える材料を探しに来ました。
航希さん 主にVALORANTをやっていまして、大会を見たりとかはよくするんですが、企画の部分とか具体的なイベントの裏側は初めて知りました。これから大会を見るときはスタッフの動きにも注意してみてみると面白いんじゃないかと思いました。
大切なのは、初めてでもとにかくイベントを開いてみること!
イベントを終えて「今日は本当に質問が多かったですね」と語る鶴見さん。参加者の熱心な姿勢に感心した様子でした。セミナー中何度も口にしていたのが「eスポーツイベントには失敗はつきもの」という言葉。さまざまな準備は前提として、当日のトラブルに冷静に対処できる体制を整える大切さを強調していました。
茨城県のeスポーツイベントを手掛ける以前から、水戸のスマブラコミュニティイベント「水戸スマ」の運営としても活躍してきた鶴見さん。意外にも始めた当初は「とりあえずやってみる」という何気ない考えがきっかけだったそうです。今回の参加者はほとんどがイベント開催の経験がない初心者。鶴見さんはそんな彼らの背中を押すように語りました。
鶴見さん とりあえずで自分もやってみたら、意外とそれがスマブラユーザーの中で広がりを見せたというのが率直な感想なんです。だから、とにかく一度イベントを開いてみてください。何か新しいものが見えてくるはずです。
ここ最近はeスポーツの大会やイベントが各地で開催されるようになってきましたが、そのノウハウをこうしたセミナー形式でレクチャーするのは貴重な機会です。茨城県内のeスポーツイベントの活性化につながるであろうこの取り組み。BCN eスポーツ部では引き続き茨城県内のeスポーツに関する取材を続けます。
書いた人
寺澤 克
上場メーカーの営業職から、ライターに転身。スタートアップ企業やインフラ系業界紙を経て、現在はBCN eスポーツ部の編集記者。グランツーリスモやスマブラに幼少期から親しんできたが実力は微妙。今回の取材で「スマブラはVIP入りが前提なんですよ」と言われカルチャーショックを受けている模様。最近の日課は、原神のデイリーを捌くこと。パイモンちゃんLOVE。
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外部リンク
【茨城県公式】いばらきeスポーツ産業創造プロジェクト
https://www.ibaraki-esports.com/
アプリシエイト 公式サイト
https://www.all-appreciate.com/
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